二次創作投稿(めがちゅ!)
「女神天国」
作:阿黒
あ、どうも。
俺の名前は川神幸介。今年の春に大学生になりました。
趣味はエロゲー。ぶっちゃけ年齢と彼女いない歴が比例する、いわゆるヲタクっす。
いやもーホント、長所なんてロクにないダメダメ男っすよー。自分でいうのもなんですけど、スケベでルーズで金無し車無し彼女無しで、いやもう夏休みも冷房もないボロアパートに引篭もってエロゲー三昧ですよ?
はっはっはっ。
ニート一歩手前?ってか社会不適応者?
はっはっはっ。我ながらもうダメダメ人間の極致ですよ?
「あのー、幸介さん?なんだか…思考がネガティヴになってません?」
はっはっはっ。俺はもう女の子とは縁の無い暗い人生をこれからもずーっと歩んでゆくのですよ。ハイ決定ー。
「おーい。おにーちゃーん。コウスケベー?」
「あの、幸介さん。お夕飯の時間ですから、そろそろ下に行きませんか?
今日はゴチソウですよー?チクワのテンプラですよー?」
そんな俺ですから俺以外の住人が全員女の子だなんてラブコメ設定な住居環境なんてファンタジーですし、しかも俺のためにご飯作ってくれる女の子なんて、一般的にはありえません。
あと、チクワのテンプラはおいしいけど、ゴチソウかっていうと…まあファウナ的にはゴチソウなんだろうなー。
「おーい。こらー。無視すんなコウスケベー」
うるせーナマイキ三女。お前の声は脳髄まで響くんだ。
なんでそんなにやかましいんだレア。
「あ~?なに~?どったの~?
あ、幸介また新しいエロゲ?ちょっと私にもやらせてやらせて」
え、ええい俺がやってるんだから無理に割り込もうとするな長女!
ム、ムネがあたるムネがっ!
「ぶー。ケチ~」
「幸介さん…えっちです…」
う。背後から突き刺さる、ファウナの冷たい視線が身に染みる。
「皆さん~?早く降りてこないとお味噌汁が冷めちゃいますよ~?
…あ、川神さん。ご飯ですからどうぞ下に……いっ!?」
ドタドタドタドタドタッ!
「ヨ、ヨルズさん!なに川神さんにくっついてるんですかっ!離れてくださいっ!」
「えー?べっつに管理人さんにどうこう言われることじゃないでしょ?」
「そ、そうかもしれませんけどそうじゃないんですぅ!
そ、そんなにくっついて、ム、ムネが川神さんの腕に…ッ!」
「だあってぇ、幸介おっぱい好きだし」
プニョプニョッ。
「ふおおおおおおおおおおっ!?」
「あ、幸介反応あった♪」
「ホ、ホッペにツンツン攻撃……ヨルズさん!」
「あ~~~~っ!なにお兄ちゃん誘惑しようとしてんのよこのタレパイ!」
「……レアちゃ~~~ん?ステキで美人なヨルズお姉様に何か言った?」
「うっさい!ちょっとムネ大きいからって威張るなヨルズ!どーせそのうち重力に負けて垂れ下がる運命よ!」
「あははは~。レアちゃん、何故かここにちょっとスゴイ薬があったりするんだけど、飲む?」
「うきゃああああああああああああああ!!?」
「ね、ねえさん…その見るからに怪しい、パステルカラーな薬は一体…?」
っていうか、アレ薬なんですか?
仮にも女神の持ち物とは思えないほど、どす黒いオーラを放ってるですよ?
「ふええええ…助けてお兄ちゃん!」
ぐはあ!!
こ、このナマイキ女神っ!普段はこまっしゃくれてるくせに、時々俺の萌えポイントの中心を的確に撃ち抜きやがるう!!
くそ、その涙目上目遣い、反則!
「おほほほほほほほほ…こ~すけぇ、まさかと思うけど、私じゃなくてレアの味方するのぉ?」
すいませんヨルズお姉さん、今の貴女は素で怖いです。
その、拳王みたいな周囲の空気が歪むほどのオーラはなんですか!?
「フ、ファウナ!管理人さん!助けてヘルプミー!」
この弁天荘の良心、真面目と癒し系の二大巨頭に思わず嘆願する俺です。
情けないとかゆーな。自覚してるから。
「…え、なにこれ、川神さんったらこんなゲームを…?」
「え、えっちですえっちですえっちです!」
「え、わ、こ、これ…い、いやしすぎですう…」
「えっちです!破廉恥です!卑猥です!」
あはははー、いつの間にか2人で俺がやってたエロゲー進めてますよー。
泣きそうな顔でマウスクリックする管理人さんと、顔を真っ赤にしつつ画面から視線を外せないファウナ。
ううう、何故か体のあちこちが痛いッ。
「はぅん……私という者がありながら、川崎さん……コスプレプレイとか好きならそうと…」
「幸介さんえっちです!えっちすぎです!……………い、言ってくだされば私が…」
「えーと。あなたたち、何気に大胆発言?」
あ、ヨルズ鎮静化。素に戻ってます。
っていうか、呆れてます。
「む~~。あんなに清純でピュアだったファウナお姉ちゃんがすっかり染まっちゃって…。
この、コウスケベ!」
グギャッ。
「のおおおおおおおおっ!?こ、小指ぃぃぃ!?」
「うっわー。足の小指って痛いのよねー。エグイわ、レア」
「だ、大丈夫ですか幸介さん!?レア!なんてことするの!!」
「川神さん!し、失礼します!てい!」
気合一閃、モンゴル相撲(?)の要領で敷いたままだった煎餅布団の上に俺を転がした管理人さんは、レアに踏んづけられた俺の足をとって。
「…あむ…」
「管理…なつき――――――!!」
うわ、なつき、俺の足を…頬張って!?
「うわ、管理人ちゃんスッゴーイ!足舐めプレイ~~」
はううう、口の中でなつきの舌が…レロレロって~~~~~~~!
「か、管理人さん…汚いよお?水虫うつるよ!?」
水虫なんかもっとらんわ!で、でも…確かにきれいとは言い難い…。
「こ、幸介さんの身体に、汚いところなんて…ありません…」
あの、ファウナさん、嬉しいようなくすぐったいような、そしてなんかエロいですその発言。
「ん…はい、どうですか川神さん?まだ痛いですか?」
「え、あ、いや…あ、癒しの法術、かけてくれたんだ」
でも、なつき…そんな躊躇無く、足を舐めてくれるなんて…。
「ありがとう…でもごめん、な…管理人さん」
「なつき、でいいのに…」
「あう……」
「ふふ……」
文字通り、女神のように微笑む管理人さん。実は本当に女神だけど。
自分の顔が赤くなってるとわかる。そして、目の前で微笑む管理人さんの頬も、赤い。
でも、俺は、俺たちは、互いの顔から、瞳から、目をそらせなくて。
「…幸介さん」
「なつき…」
「ストーップ!ストップです幸介さん!」
いきなり右腕にしがみついてくるファウナ。
「そーよっ!これはコーメーの罠よっ!」
同時に左腕にしがみつくレア。発言はよくわかんないけど。
「んん~~、抜け駆けはズルイよねぇ、管理人さん?」
そして背中から腕をまわすヨルズ。うわ、いやん、乳首つままないで!
ああもう、青い未成熟な肢体ともっちり安産型桃尻と熟れた豊満な巨乳がっ。
ヘブン?ヘヴンですか?今日の夕飯は三姉妹ドンブリですか!?
「う、う、ううううううううう~~~~~!
皆さんずるい!ズルイですようようよう~~~~~~~!!」
ぐほっ!
か、管理人さん場所がないからって腰に抱きつかないで!
我が愚息が熱膨張しそうであります!うわ、サラサラでふわふわな髪の毛がっ。
ていうかあの、皆さん?なんかどんどん力、強まってません!?
圧壊限界を超えてるっす!潰れる!絞まる!ジャンクマン!
「ちょ、ちょっとみんな!幸介さんが苦しそうじゃないですか!離れてください」
「え~~?じゃあまずファウナから離れたら?」
「なに言ってんのよ!ヨルズ離れろ!」
「う、ううう…離れなきゃ…でも離したくないの…」
あ、ああ、あああ…なんかこー、体のあちこちがミシミシいってるなあ…。
柔らかくて気持ちいいけど痛くて苦しいこの状況って、新しい拷問方法ですか?
ふ、ふふ…
そーいや…大岡裁きって…聞いたことあるなあ…
どういう意味だったっ…け…
「いやあああああ!?幸介さんの魂が口から出てる!?」
「も、戻して!押し込んで―――――!?」
「え~~~~~!?ど、どうやって!?」
「こ、こういのは…と、とにかく押し込めばなんとかなるものよ!」
いやヨルズそんな大雑把な……………って。
グエエエエエエエエエッッ!!!?
ガキゴキっ。
ゴキャッ!!
* * * * *
「いやー。アゴの骨を外してまた入れるなんて、私も初めての経験だったわ」
「俺だって無理矢理アゴを外されて、強引にはめられるのは初めてだったわ!」
「でも、意外と何とかなるものね~」
「それだけで済ますな!すげぇ痛かったんだぞ!?」
「いーじゃない、ちゃんとご飯噛めるんだし」
「う、うう、ううう…」
「川崎さん泣かないで…まだアゴ、痛いですか?もう一度法術かけましょうか?」
「ううう、管理人さんは優しいなあ…」
「む~~~~…」
「ヨ、ヨルズぅ…ファウナお姉ちゃんからかつてないほど黒いオーラが…」
「フ、ファウナ~?…ご、ごめん、お姉ちゃんが悪かったから機嫌なおして」
「え?いえ、そうじゃなくて…。
その、でもヨルズ姉さんもあんまり無茶しないでくださいね」
こほん、と咳払いしつつ、ファウナはチラチラと俺と、その隣りで俺のアゴを気遣ってくれている管理人さんに視線を向けてくる。
なんか怖いです。はい。
その視線を避けるように、温めなおした夕食をかきこむ。
いつもどおり、ファウナと管理人さんが作るご飯はおいしい。みんながこの弁天荘にくるまでは、カップ麺とコンビニ弁当な食生活だったなんて、もう遠い昔みたいに感じられる。
…今年の夏。俺の人生は大きな転機を迎えた。
ある日いきなり女の子の生パン&胸モニュと接近遭遇するという、エロゲー的出会い。
そして雪崩のような展開でその女の子は実は女神で、世界を守るために貴方を殺します宣言を受け。
本気で死にそうな目にあいつつも、結果的には危機を脱し。
そして現在、俺は4人の女神様と一緒に生活しているわけで。
……改めて考えてみるまでもなく、どこのエロゲかラブコメかってベタな展開だが。
ただ、俺の中には『魔王の種』という物騒なものがあるという事実は変わらない。
もし俺の中の種が覚醒し、魔王が復活すると、この地球そのものが破壊されてしまうだろうという…なんだか現実離れした話。でも、それが俺の現実。
それを防ぐ一番確実な方法は、種の宿主である人間…つまり俺を殺すこと。
でも、ファウナたち女神は俺を殺さない道を選んでくれた。
そのために、魔王復活を目論む魔界側から俺の身を守りつつ、俺に魔王の種の滋養となる『穢れ』がたまらないようにするために、俺と一緒に住むことになった。
…ただ、その穢れを浄化する方法、というのが…ぶっちゃけ、エッチすること。
かくして。
B91を誇る、ムチムチプリン(死語)な長女・ヨルズ。
真面目で清純、素直で清楚で慈愛溢れる次女・ファウナ。
単純おバカでうるさいけれど、根はかわいい三女・レアことレウコテア。
お色気お姉様・メインヒロイン・妹ロリツンデレ系というツボを押えたラインナップの女神様と一緒に暮らし、エロエロプレイができるという、おめでとう俺!おめでとう俺!なパラダイス生活が始まったわけで。
勿論、魔界側も黙ってはいなかった。
新しい管理人という名目で俺に近づき、俺の中の魔王覚醒を図るため、悪魔・クロトこと黒崎なつきさんを送り込んできたのである。
でも管理人さん自身も知らなかったことだけど、実は彼女、以前に魔界に囚われた女神で、洗脳されて魔界の尖兵にさせられていたわけで。
…これは推測だけど、女神と悪魔、両方の力を使える便利な、しかしいざとなれば容易に切り捨てられる捨て駒として、悪魔・クロトは用意されたのだと思う。
でも魔界側の誤算は、クロトが女神に戻ることなど考えてもいなかったこと。
結果として覚醒一歩手前までいった魔王の種は深いダメージを受け、消滅こそしなかったものの、当分の間は活動不能になってしまった上に、俺の身を守ってくれる女神様は4人になって。
ファウナ達によると、魔界側は当面、種復活の計画は凍結した模様。一方で魔王の種を俺から取り除く方法もまだ見つかってはおらず、今後も引き続き監視続行というのが天界の意向だという。
つまり、4人の女神様との半同棲状態な俺の生活は、これからも続くというわけ。
正直、魔王の件が片付いたらみんなは天界に帰ってしまうのだろうと、ちょっと悲しく覚悟していた俺としては、素直に嬉しい。
嬉しいんだけど。
「…まあ、でも、色々あるんですよ皆さん?冒頭からちょっと現実逃避してみたくなるくらいには」
「あの、誰に言ってるんですか幸介さん?」
「いやほら一応状況説明をいれとかないと。画面の向こうの人に」
「はあ…?」
どーもファウナはこういう場合のお約束というものがまだわかっていないらしい。
まあ、なんやかやで今日の夕食も賑やかに、楽しく終わった。
* * * * *
「もうすぐ夏も終わるなあ…」
「まだまだ暑いから全然実感湧かないけどねー」
「う~~~~」
いつものように後片付けをしているファウナと管理人さんが立てる水音が、台所から聞こえて来る。
それを残りの3人が玄米茶など啜りつつ、居間で待つのがここ最近の流れだった。
いつもはレアがアニメなどを見たりするのだが、今日はテレビを消して、静かにお茶を飲んでいる。俺たちとしては珍しいけど、時にはこんな風に落ち着いた時間を持つのも、いいものだ。
「レアー、夏休みの宿題はちゃんと済ませてるの?もうすぐ新学期始まるんだし」
「…嫌なこと聞くわね、ヨルズ」
「私だってこんなこと言いたかないわよ柄じゃないし。
でも後で泣きを見るのはアンタなんだからね?」
「わかってるよぅ。ヴ~~~」
「…そっか。レアってまだ女神見習だしな。っていうか、女神って学校あるんだ?」
「あるわよ。というか、天界のシステムが人間社会の元になってるんだから」
「ふーん。神様なのにお役所とか研究所とかネットとか、随分俗っぽいなーとか思ってたけど、似ているのが当然なのか。
…あれ?ってことは、もしかしてレア…」
「そ。学校が始まったら、レアは天界に帰らないとね」
「ヴ~~~~~~~…」
眉をしかめ、機嫌悪そうに玄米茶を啜るレアだった。
「…いや。私、人間界に残る」
「あのね、まだロクに法術も使えない半人前以下のくせに、そんなことできるわけないでしょ。
いくら大神さまがアンタには甘いって言っても、こればっかりはどうにもならないから」
「だあって、私、ファウナお姉ちゃんと一緒にいたいもん。
どうせならヨルズが帰ればいいのに」
「私が帰ってどうなるもんでもないでしょ。
大体、私とファウナは天命を受けてこっちに来てるんだから。
私たちはここにいるのが仕事なのよ?」
「ズルイよう。私もこっちにいたい。私、人間界大好きなのに~~~~!」
「…ずっと住むには色々大変だけどね。天界とは構成元素も違うし」
「ううう……」
いつもは自分の要求が通らないと騒ぎまくるレアだけど、今日は歯切れが悪い。
それは、ヨルズの言うことが正しいのだということを、自分でもわかってるからなんだろう。
「冬休みまで待ちなさい。週末には遊びに来てもいいから」
「だって、お姉ちゃんいなくて幸介もいなくて…そんなの、寂しいよ…」
俯き加減にポツリと、元気なくレアが呟く。
それは、いつもとにかく元気いっぱいなレアには似つかわしくない姿で。
「…どちらかというと、幸介に会えないのが寂しいんじゃない~?」
「そ、そんあわけ…そ、その…」
反射的に言い返しそうにして、結局また俯いてしまうレア。
なんだか、見ていて少し切ないかもしれない。
「…幸介はどう?レアいなくなると寂しい?」
「え?俺?」
ニヤニヤ笑いで俺を見遣るヨルズと、何か期待してるような、仔犬のような瞳で俺を見るレア。
一瞬、からかってやろうかなという気持ちも起こったけれど。
「それは……やっぱり、寂しいよ。こっちに残れるものなら、残って欲しいと思う」
「お兄ちゃん…」
少しだけ、嬉しそうに頬を染めるレアに、俺は照れて視線を逸らした。
「あっそ。じゃ、これにサインしなさい」
ドサッ、とちゃぶ台に結構な量の書類をヨルズは積み上げた。
「な、なによこれ?」
「え~と、休学届とか、人間界への残留申請書とか、まあ色々。あと住民票かな」
「え?え?」
「とりあえず通信教育と短期集中講座、足りない分は私とファウナが指導するということで。
期末と実技試験だけは向こうで受けなきゃいけないけど、それくらいは我慢しなさい」
「え?え?え?…ヨルズ、それって…」
「でもただでさえ劣等生のアンタがこっちに残ろうっていうんなら、天界にいる時の2倍も3倍も努力しなきゃダメよ?留年なんか許さないからね」
「………お姉ちゃん!!」
レアがヨルズに抱きつくなんて、初めて見た。
感情が昂ぶって、自分の胸にむしゃぶりついたまま言葉も出せない末妹の頭を撫でてやりながら、ヨルズがこっちを見て苦笑する。
あー。姉妹って、いいな。
思いがけず、いい場面に遭遇してしまった。
「良かったですね、レアさん」
「ふふ。でも、がんばらないとね、レア。
ちゃんと学校卒業して、一人前の女神になって、お姉ちゃん達を助けてね?」
洗い物を終えた2人が、追加のお茶菓子を持って居間に入ってきた。
そのまま俺の右にファウナ、左側に管理人さんが座ってくる。
俺はファウナに顔を寄せて、そっと話しかけた。
それに気づいた管理人さんも耳を寄せてくる。
(でもさ、結構大変だったんじゃない?天界の事情なんてよくわからないけど)
(ええ。姉さんも随分骨を折ったみたいですけど…)
(あれ?ファウナさんも一緒に手続されたんじゃないんですか?)
(大事な所は姉さんが全部1人で話をつけたんです。
その…色々と、強引というか……無茶なこともやったみたいで)
(……あー。上司の弱味をつついたりとか?)
(あ、あはは…)
(ひ、否定しないんですねファウナさん…でも確かにそういうことなら、ヨルズさんでないと)
「あれ?もしかして私、腹黒とか思われてる?」
「どうしたのお姉ちゃんたち?何の相談?」
「うひゃあああっ!?」(×3)
いつの間にかこちらを不思議そう(というか不審そう)な目で見ているヨルズとレアに、俺達はズザザッ!と後退した。
「む~。なに?ナイショの話?」
「え、あ、いや、その…ねえ?管理人さん?」
「はぅ!?私に振らないでくださいよっ…そ、その、たいしたことじゃないんですよ?」
「そうそう!え、えっと…管理人さんも目覚まし女神隊に入りませんかって」
「え?管理人ちゃんもやる?アレを?」
少し驚いたようなヨルズの顔を見ながら、俺は苦し紛れの言い訳のネタを、ちょっと想像してみた。
朝、俺が目を覚ますと、枕元には白いキャンギャルっぽい女神服を着た4人がスタンバっていて。
『かみたま~』『かみたま~』『かみたま~』『かみたま~』
『『『『目覚まし女神隊!!!』』』』
「…ごめんファウナ、俺、朝くらいフツーに優しく起してもらいたいんだけど」
「え?そうなんですか?じゃあ女神っぽく、よりマイルドに」
「でもやっぱりランダムで一撃死することもあります♪」
「死ぬの無し!っていうかなんで死ぬの!」
「えーと…腹上死?」
「ある意味男の浪漫!でもそれ女神っぽいデスカー!?」
「えーと…よくわかりませんけど、川神さんが普通がいいとおっしゃるんでしたら、そうしましょうか、皆さん」
ううっ、さすがは管理人さん。癒し系おねーさん!
「では、モンゴル相撲を取り入れて」
「イヤすぎです!」
そして何気に、天然ドジっ娘属性(涙)。それはそれで萌えるんですけど。
「んー。そおね、折角だし。
レアの弁天荘残留も含めて、ちょっと話し合っておきたいことあるんだけど」
と、珍しく少しだけ真面目な雰囲気で、ヨルズが切り出してきた。
その空気に、俺達もやや居住まいを正してちゃぶ台につく。
「まずは、改めて状況の確認。
先日の騒動で、魔王の種は覚醒の一歩手前、本当にギリッギリのところで、なんとか食い止めたわけなんだけど」
そうそう。俺、死にかけたしねぇ。
「でもエネルギー充填120パーセント、もう発射直前というところで致命的なダメージを負ったことで、魔王の種は現在ほぼ全ての活動を凍結した状態にあるわ。
っていうか限りなくエネルギー残量0。ライフゲージ0.5ドットってとこ。
もー先走り汁たれまくりな勃起状態のオチ○ンチンを無理矢理へし折られた悲惨な状態?」
「ヨルズ…わかりやすいけど、聞くだけで痛いですそのたとえ」
「でも…お陰で種は消滅こそ免れたものの、ほぼ再起不能な状態です。
今の川神さんに『穢れ』を注入しても、それを滋養にすることさえ、できるかどうか」
かつては俺の中の穢れを高めようと画策していた身として、いたたまれないものがあるのだろう。
そう呟く管理人さんはの声は少し、沈んでいた。
「あー。まあそう気にしないで。
で、みんなもだけど幸介?アンタ、これからは自分の身の安全については、ある意味前よりも気をつけなきゃいけないんだからね?」
「はい?」
ヨルズが何を言おうとしているのかよくわからず、首を傾げる俺の横でファウナがハッとして顔をあげた。
「そうか…魔王の種が凍結状態にあるということは、種の防衛本能も働かなくなるってこと?」
「防衛本能…」
言われて俺もハッとした。
種と俺とは一蓮托生、俺が死ねば種も死ぬ。だから種は常に宿体である俺を危険から守ってきた。
最初の出会いの時、俺を殺そうとして、雨霰のように繰り出されたヨルズとファウナの法術を、特に身体を鍛えてるわけでもない俺が避けることができたのは、その恩恵。
種が憑いている影響で、子供の頃から俺は不運続きだった。けれどそんな俺が大きな事故に遭ったりするようなことは無かったのも、種の加護があったから。
「それに幸介は、目の前で誰かが危険な目にあおうとしていたら、考えるより先に助けようと飛び出すタイプでしょ?
それはそれで立派だけど…私らとしては危なっかしくてヒヤヒヤもんよ?」
「でもヨルズ、その優しく献身的な気高さが、幸介さんが幸介さんたる所以だし…」
フ、ファウナ…聞いてるこっちが恥かしくなるですよ。
「そーなんだけどね。
でも、幸介が危険に無頓着なところってそれだけじゃなくて、今まで魔王の種に守られているのに馴れきってるところもあると思うわけよ」
「俺が…守られなれてる?」
「言葉を変えると、危機意識が無いってこと。
今まで種に守られて、たいしたケガを負ったことないから『危険』というモノはどれだけ危なくてヤバイものなのか、未経験なのよね。
だから、無自覚だけど守られ続けてきたことで、どこかで『自分は危険な目に遭ったりはしない』って思ってない?」
「そんな…ことは…」
ない、とは思う。思うけど…。
でもキッパリ否定しきれない。
そんな俺を、ヨルズは軽く睨んだ。
「…はっきり言えば幸介、あんた危険を舐めてるでしょ?
だから平気で自分を犠牲にできるの。自己犠牲はご立派ですけどね、アンタをガードするあたしらの身にもなれっつーの。
幸介がそんなヘラヘラしてたら、守りきれるもんじゃないわよハッキリ言って?」
「…姉さん!そ、そうかもしれないけど、もっと他に言い方があるでしょ!」
「ファウナは幸介に甘すぎるの。コイツ馬鹿なんだから、はっきりキッパリ言ってやんないと理解できないでしょ?」
「ヨルズ!」
「…いいよファウナ。ヨルズの言うとおりだし
確かに俺…考えが甘いところは多々あるし、実際、今指摘されたことなんて、言われなきゃ分らなかっただろうな。
これからは、自分でも注意するよう心がけるよ」
素直な気持ちで、俺はそう言った。
それに、こんな事で姉妹ケンカなんてさせたくないし。
「…ごめんなさい幸介さん。ヨルズ姉さんも幸介さんを心配してのことなんです。
でももう少し、気配りとか言い様を考えてくれても…」
「わかってるって。元をただせば俺が頼りないのがいけないんだから、そんなに気に病むことはないって」
「でも…なんだか幸介さんが貶められているようで、私…」
「ファウナ…」
ファウナは、憂い顔まで可愛くて美しい。
耳の少し上に、アクセサリーのような白い羽根が生えている意外は、人間の女の子と何も変わらないように見えるけど…
ファウナの美しさは人間を超越している。正しく女神のものだ。
一緒に暮らしていても、やはりつい、魅せられて…
ぎゅうううううううううう!
「イダダダダダダ!?な、なんでいきなり腕を抓るんですか管理人さん!?」
「知りませんっ」
ぷい、と拗ねて明後日を向く謎な管理人さん。
さらにその向こうで、何か不穏な顔して指ワキワキしているレアが不気味だ。
「あー。話、続けてもイイ?そこのラブコメ」
「なんか不本意な呼ばれ方した気もするけど、どうぞ」
あーわかいもんはいいやねー、と小声で呟いてから、ヨルズは話を再開する。
「で、次の課題。
今現在、幸介がムラムラと欲情の炎をムッツリこもらせて穢れがたまっても」
「ヨルズ……お願いだからもう少し、俺を労わった表現を使ってください」
「……幸介のリビトーが限界値まで高まっても、理性を無くして暴走、幼女レイプ現行犯逮捕される可能性は、今のところ無いわけなんだけど」
「何故、幼女レイプと限定するぅ!」
一応、抗議はしてみるけれど、聞く耳なんざ持ちやがりませんぜこの女神。
「でもまあ、穢れが種の活力になるのは間違いないわけで、今後も幸介の穢れはこまめに浄化しておくのは必須ね。
それでー、今までは一応、全員で負担してたわけなんだけどー、……どうする?」
「ど…どうするって」
「んー、だからローテーション組んで全員で持ち回りにするか、それとも誰か1人担当を決めて専属でお願いするか…」
穢れを払う、と言えば聞こえはいいが、その具体的内容は、セックス。
とにかく女神の体内に精液(の中に含まれる穢れ)を出せば、後は女神の力で浄化される。
だから女神としては見習のレアでも、浄化はできたんだけど…。
「で、では直接責任のある私が担当にっ!」
「住人の健康管理も管理人たる私の仕事ですから!」
ほとんど同時に挙手したファウナと管理人さんが、油の切れた機械みたいなぎこちない動きで互いを見た。
「……私は天界から幸介さんを守るために遣わされました。
どうか管理人さんは弁天荘の管理に専念なさってください」
「いえいえ、アパートの管理も幸介さんの面倒も、十分両立できますから。
最大戦力たるファウナさんは、どうぞ心置きなく幸介さんの身を警護してあげてください」
「そんな、管理人さんにそこまで甘えるわけにはいきません。
管理人さん、町内会の仕事もあるし、多忙でしょう?
…というか、幸介さんの健康管理なんて管理人さんの仕事じゃないですし?」
「いえいえ、先日全国管理人協会で、店子の管理も責任もってみるように決定したんです。
町内会の仕事だって毎日あるわけじゃないですし、大丈夫ですよ?
むしろ私としては、虚弱体質なファウナさんの方が心配なんですけど~」
「別に私は虚弱体質じゃないです!それは別の理由が…ゴニョゴニョ。
あ、それじゃあ私が幸介さんの面倒を私が見ますから、管理人さんは私の健康管理をお願いします。
住人の面倒をみるのが管理人さんの仕事なんですよね?」
「…クラス1stの女神がなに甘えたこと言ってるんですか。自分の体調くらいきちんと自己管理してください。私は幸介さん専属の管理人ですから(ニッコリ)」
「あれ?さっきといってることが違いますよ?それが一社会神として正しい態度でしょうか?(ニコリ)」
うはあ。
顔は笑ってるけど怖い。怖いでありますよ!
つか、管理人さん髪が赤く!赤くなってる!クロト化してるって!
「だいたい幸介さん専属ってなんですか専属って!
不公平です!エコヒイキです!猫可愛がりです!」
「か………か、かまいません!
わ、わたしは、わたしは幸介さんの女神です!幸介さんのためだけの女神でいいんです!」
―――ピシッ。
あ。
あ、あああ、な、なんか、なんか決定的な何かにヒビが!
破滅の音が!?
個人的には嬉しすぎるんですけど!
「うわっちゃ~~…言い切っちゃったよ、管理人ちゃん」
「いや落着いてる場合じゃねーってヨルズ。ファウナが、なんか固まってるんですけど?」
「慌ててもしょうがないでしょ。ここは覚悟をきめてふんばる時じゃない?」
ふんばるってなにを――と、問い掛ける間は無かった。
「ずっこ~~~~~~~~~~~~い!!
そんなのダメ!不許可!エラー!
お兄ちゃんはわたしのなんだから盗るな――――――!!」
レウコテア大爆発!
視界の隅で、さらにピシリと反応するファウナの姿が、何故かもの凄く不安。
「えー、とりあえず専属担当は置かないってことでオッケー?」
「命の危険を感じますので、是非そうしてください」
「「幸介さん(お兄ちゃん)ひどい!!?」」
「そうですっ!ええそうですともっ!
この際ですから誰が幸介さんの女神か、ハッキリさせておきましょうっ!?」
うわ、ファウナ逆切れ!!
怒ってる、めっさ怒ってるよ!!
っていうかちょっと…やばくない!?
知ってるよ!このメチャクチャ危険な感じって…力の暴走じゃ!?
って、空気がプラズマ化してません!?
「えいっ、静脈に秘密注射♪」
「はうっ!?」
気づいた時には、背後からヨルズがファウナの白い首筋に、怪しい薬液が詰まった注射器を突き立てていた。
糸の切れた人形のように、ファウナがバタリと倒れる。
「ファウナさん!?」「お姉ちゃん!?」
「だーいじょうぶ、ちょっと精神安定剤撃ち込んだだけだから」
「でも、あの…ファウナさん、口からあぶく噴いてるし」
「ん~。ま、そういうこともあるわよ」
「白目、むいてるよ?」
「寝てる時は誰でも白目をむくって」
「でもなんか…顔色がどんどん青黒くなってるような…」
「この娘ってちょっと低血圧気味だからー…ってのは、ダメ?」
「管理人さん法術!」
「は、はいっ!」
「お、お姉ちゃん死なないで~~~~~~~!?」
「死なないわよ…多分…あ」
「「「あ、ってナニ~~~~~~~~~~~!!」」」
「え、いえ、たいしたことじゃないのよ~?
じゃあこの気付薬使ってみる?」
「…理由は不明ですけど、それは止めた方がいいような気がします!」
管理人さんが何かに脅えたような顔と口調でキッパリ拒絶した。
覚えてはいないはずだけど……体がヨルズの薬を覚えているんだろうなあ。
「え~?せっかくセイロ○ンベースで開発した新作なのに」
「絶対に止めて下さい。妹を失いたくないのなら!」
「ぶー。失礼ー。…じゃあ次善の策で」
すう、と深呼吸して、ヨルズは手で口の周りにメガホンを作り、構えた。
「ああっ!幸介が幼稚園児のスカートをめくろうとしてる~~!」
「えっちな犯罪許しません――――――――!!!」
ファウナ、一気に帰ってきました。
良かったけど…キミ、そんなキャラだった?
「あー。なんか専属を決めちゃうと、避妊具より薄い女の友情がズタズタのボロボロに破綻ぽいから、今後も分担するということで?」
「………………」
どさくさ紛れに結論を出してしまおうとしたヨルズの目論見は、3人分の沈黙に挫かれたようだった。
「あれ?イヤなの?」
「イヤよ!」
「脊髄反射で返事するんじゃないガキんちょ。もーちょっと脳細胞つかいなさい」
「その…理性では、理解してるの。理解してるつもりなのよ、姉さん…」
「でも感情が納得しきれないというか…その…」
歯切れ悪く、ファウナと管理人さんも消極的ながら反対してくる。
「んなこといってもさー、幸介は1人きりなんだから。
誰か1神だけの彼氏になっちゃったら、当然他の神は失恋ブロークンハートよ?」
「ぶほっ!?」
「なに咽てんのよ幸介。そもそもアンタが誰か1神に限定しないからこんなややこしいことになってるんでしょーが。責任とれ、責任」
「いやそんな、彼氏って…」
「……私らが任務だけでアンタと肌を合わせてるだなんて、そんなふざけたこと抜かしたら全殺し一歩手前→管理人ちゃんの治癒法術無限ループだかんね、このラブコメ男」
「…そ、それは…その…」
「ちなみに女神の処女4神分食っといて、他の女とくっついちゃったらどうなるか…フフ、早く殺してくれって泣き叫ぶような目にあわせてくれる…」
「アンタ本当に女神サマですかヨルズ?」
「でも姉さんのいうとおりです」
「ファウナ…あの、冗談に聞こえないっす」
「冗談じゃありませんよ?」
うわーん、管理人さんマジ悪魔モード!いやクロトの頃の管理人さんもそれはそれで可愛いんだけど!
「…そうだよ。特に私なんて、…うしろ…まで」
「「「え~~~~~~~っ!!!」」」
あははー、レアー、それ何気に爆裂弾だってー。
いや穢れ高まってたとはいえ、トイレに不法侵入してまで強引にやっちゃったのは十分反省してますからー(涙)
「えっちですえっちですえっちですえっちですえっちですえっちです!!!」
「…そんな…私、それ、してもらったことないのに…」
「幸介。……あんた……あんた、レアはまだ子供なのに…妹になんてことしてくれんのよ!?」
三者三様に怖いです。
特にヨルズが冗談抜きで激怒してるっぽく。
…死ぬかな、俺。
「う~ふふふふぅ。こーれはちょっと…思い知らせてやらないといけないみたいねぇ?
川神幸介くん?」
「まままままて!まって!話せば!話せばわかる!
だからその両手に握った極太注射器はやめて!
せめて一本にして!というか、なんですかそのマーブル模様な液体って!!?」
「ファウナー、管理人ちゃーん、ちょっとそこのバカ、押えといて」
「はい」「わかりました」
「たすけてー!ショッ○ー!人体改造魔がここにイル――――!
っていうか『そこのバカ』って俺!?俺だって認めちゃうのファウナさん&管理人さん!?」
「あーもううるさい。黙れ」
ズキュウウウウウウウウウウウウウウン!!(例のJoJo擬音)
「あ、あの、姉さん…今更だけど、これ…何の薬?」
「まだ実験段階だけどね。うまくいけば、ある意味、彼氏問題は片がつくかも」
「へ?どういうことそれ?」
「…あの、皆さん?今更ですけど幸介さんは大丈夫なんでしょうか…?」
最初に感じたのは激痛。気を失うことすら許さぬ、全神経、全痛覚からもたらされる激痛。
幸いにしてその痛みは一瞬で引いてくれた。引いてくれなきゃ正気を保っていられたか、正直自信ない。
だがその後にやってきた、コレは、一体なんだろう。
体のうちから熱いものが吹き零れそうで、しかしそれを噴出する出口がなくて。
内圧が際限なく高まり、いつか、炉の限界を超えるまでに熱く、滾る…。
このままだと、俺、壊れて……
「うああああああああああああああ―――――!!?」
「あっれはーデビルっデビルマーンデビールマーン♪」
「姉さん…女神的にその歌はどうかと」
「名曲じゃないですか、ファウナさん」
「レア、時々管理人さんのセンスがわかんないよ…」
「「「「思いっきり他人事ですかアンタたちゃ!」」」」
思わずツッコミ入れた自分の声に違和感を覚え、俺は口をつぐんだ。
多重奏というかドルビーサウンドというか…。
つか、なんか、視界が広い。
なんだかぐるり360度、見えているような???
あ、なんか約一名をのぞいて、みんなが唖然としてる。
そして、例外の約一名は…
「完成!アシュ○マン幸介~!」
「ちょっと姉さん!なんなんですかコレは!?」
「こ、こ、コウスケベ、手が1,2,3…8本あるし、顔も左右前後についてるよ!?」
「まさに魔界のプリンス・悪魔六騎士が一…」
「「「「いや、ア○ュラマンなら三面六臂だから、顔と手が1人分多いですよ?」」」」
「…意外に冷静ね、幸介」
「「「「驚いてるわい!驚いてるけど…どこから慌てたらいいのか、わかんねえんだよ!」」」」
「あー、うるさいから4つの口で同時に喋らないでよ。耳、痛いじゃない」
「人の身体を改造しといて、それしか言うことないんかっ!?」
「えー。改造人間ってかっこいいじゃない。仮面ライダーみたいで」
「こんなライダーいるかよ!?」
「最近のライダーは電車に乗ってくるわよ?」
「関係ねえだろこの際!?いや俺も、電車はどうかと思うが!」
「よねぇ?RXの時も車に乗ったらドライバーじゃんって思ったけど」
「あのー、姉さん?幸介さん?話が別な方向へ逸れちゃってるんだけど…」
ファウナの控え目なツッコミに、俺はポン(×4)と手を打った。
「で!結局なんなんだよコレは!?」
「えーと、だからー。
私達は4神。でも幸介は1人。
誰か1神が幸介とラブラブしてると、残り3神はあぶれちゃうわよねぇどうしても。
と、いうわけで、1人で4神相手できるように、ちょっと人体改造してみました☆」
「これがちょっとか!?って、あ…」
俺は4対の手が絡まないように気をつけながら、そっとズボンに手をやった。
服の上からでもわかる。定位置以外にも、腰の左右と尻の上に一つずつ、なにか強張りが…。
「「「「って我が事ながら気味悪い――――――――!!!?」」」」
「そお?結構かっこいいと思うけど?」
「そんなんお前だけだ馬鹿~~~~~~~!!」
「いかな温厚な俺でもこれはちょっとシャレになんねえぞ!?」
「というわけで、覚悟しやがれヨルズ~~~」
「「「「ふっふっふっふっふっ」」」」
「え、いや、あの、幸介?
僅かな間でうまく身体の制御をこなせるようになったわねーっていうかその…
一斉にワキワキ動く計40本の指がスッゴイ不気味っていうか怖いわよ?」
「「「「内臓をぶちまけろ――――!!!!」」」」
必殺・バルキリースカート!!
俺の八本の腕はどこぞの武装錬金のロボアームばりな高速精密動作を行い、不良女神の四肢を捕らえた。
そして――
「究極!超悶絶くすぐり地獄極楽ハメ殺し前から後から~~~~~!!」
「うわ止めて幸介ブハハハハハハハハハハ!
くす、くすぐったひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、いいいいやややややめ、やめてぷりゅふくく、よ、よわ、弱ッ、そこダメにににににに~~~~~!?」
まともにやれば、いくら俺の手が当社比4倍になったとはいえ所詮人間の腕力、ヨルズはあっさりその戒めを振りほどいてしまうだろう。
ならば攻撃こそ最大の防御。攻めて攻めて攻め抜いて、そんな暇なぞ与えぬことが上策!
横腹を上から下へと微妙にさすったり!
「えひゃあっ!?」
膝裏を指でコチョコチョしたり!
「きゃふぅ!」
ふとももを優しく撫で上げたり、鎖骨の窪みを指でなぞったり、耳朶を甘噛みしたり!
「ふぁあぁぁ…くふぅ…ひゃうん!?」
それ全部同時にやっちゃったりしてー。
「~~~~~~~~~~~~~~っ!!?
こ、幸介っ、こうすけ卑怯~~~~~~~~~~!!
よわいとこばっかり――――――――!!」
とまあ御覧のとおり、いつも飄々としたヨルズもたちまち艶っぽい声に――って、アレ?
「ああもう、我慢できない…じらしちゃヤダあ、幸介~~~♪」
「はうっ!?ついいつもの癖で対ヨルズ用性感帯マッサージフルコースを!!?
しかもいつもの4倍早回しで!?」
「幸介さん…えっちです」
ファウナの呆れと諦め半々の言葉に、他の2人までうんうんと頷いてます。
自覚はしてるし今更ですけど、やっぱイタイなあ。
「…で、ヨルズ?これ、どうやったら元に戻るわけ?
まさか解毒剤とか準備してないとか言わないよなあ?」
「失礼ね。毒じゃないんだから解毒剤とはいわないわよこの場合」
「効果的には十分猛毒じゃい!いいからとっとと元に戻してくれやがりなさい!」
いい感じにやさぐれてます。無理もないと思います。
これで、元に戻る薬なんか無いとか言われた日には、泣きますよ?
「ごめん、泣いて?」
「心読むな~~~~!ってか、無いのかよ!?」
「だって元に戻す必要ってある?」
「…その心の底から不思議そうな疑問は止めてくれなさい。本気で怖くなるから」
「そうよ姉さん。市販品の服はサイズが合わないから不便じゃない」
ファウナ。そのとおりだけどもっと切実な理由は思いつかないですか?
「効果は一時的なものだから、時間が経てば自然と元に戻るわよ?」
「あ、そーなの?…でも、とれくらい待てばいいんだ?」
「ざっと80年♪」
「待てるか――――!!」
「きゃ~~、どさくさでムネ揉まないで~~…というか、もっとスゴいことして~~」
拘束されながらすげぇ余裕ですヨルズ様。ああ畜生、このまま本当に犯してやろうか。
…イマイチ報復になってないのが業腹だが。
「あー、ぶっちゃけ、ヌケば元に戻るよ?
この薬って精力剤の一種なの。だからガス抜きすれば手を生やしてる活力が無くなるから」
うわ、ベタだ!ベッタベタだ!!
俺はある予感を覚えて振り返ろうとして…その必要は無いことに気づいた。
今の俺はそのまま後ろが見える身体になっていたから。
「…そう…そうよね?これは幸介さんのため…幸介さんを助けるため!」
「そうですよね?そうなんですよね?こうしないと、川神さんが…」
「も、もうヨルズったら!いっつも回りに迷惑ばっかかけるんだから、このバカ姉!」
うわーい、皆さん言い訳MAXですネ?
顔まっかっかで視線を泳がせつつも、微妙に嬉しそうだ!
「じゃあそういうわけだから幸介――。
もう4神がかりでウッフーンでアッハーンなことになっちゃうから覚悟してね?
うっふっふ、スーパー天国を見せてあ・げ・る」
貞操の危険というものを漠然と感じながら、俺が思ったことは、ただ一つだった。
「ヨルズ…オヤジくせえ」
「こ・お・す・け・ぇぇぇぇ!?」
「姉さんダメ―――!次元破壊ハンマーはダメ――――!!?」
* * * * *
♪シャラランシャラランシャラララララン
♪お~ね~が~い ヘルプミー
「電波ソングは脳にくるからやめろおおおおおおおぉぉ!!」
やめろおおおおおおおおおお!
おおおお…お?
「…いきなり豪快な寝言かましてくれるわね」
「いや一度脳裏に浮かぶと、メロディがなかなか離れてくれないからな。恋○CHU!とか」
何気なくやりとりを交わしてから、俺はハタと気づいた。
居間の明りは点いていない。時計は無いが、感覚的に真夜中の12時くらいかと見当をつける。
それでも縁側の戸が開け放れているので、差し込む月明かりで居間のあちこちにファウナたちが横になっているのがぼんやりと見えた。
あらためて見直すと――後ろを見るのに振り向かなければいけないことが嬉しいのは初めてだ――俺自身も彼女達と同じく裸の上にタオルケットを被せただけの状態だ。
そして返事の主は縁側の近くの疊に座り、こちらを見ていた。
「…麦茶、飲む?」
軽くシャワーでも浴びたのか、バスタオルを巻きつけただけのヨルズは、行儀悪くあぐらをかいたまま、麦茶のコップを揚げてみせた。
「ごめん。少しもらえる?」
「はいは~い」
一応、タオルケットを肩から被ったまま、俺はヨルズの隣りに座ると、彼女の飲みかけの麦茶を受け取った。
3口ほど飲んで、また返す。
「で、どうだった?グアイの方は」
「…またそんな直接的なことを。そりゃ、良いか悪いかで問われれば、良かったけどさ」
「けど、なに?いつもより気持ちよかったでしょ?ウハウハ天国」
「良すぎるんだよ。……四人分の快感が同時に、一気に押し寄せてきてさ。
(ピー)が4本になっても、それを受け止める脳は一つなんだから。
…快楽も過ぎれば苦痛でしかないってのが、良くわかった」
「……あ~。なるほど。言われてみればそうよねぇ。人間の脳の処理能力を忘れてたわ」
フムフムと、純粋な研究心のみでメモをとるヨルズ。
いつもおちゃらけてるけれど、天界の薬学分野では若輩ながらもちょっとした権威だという。
確かに怪しくて妖しい薬ではあるが、効果の方は凄まじいものがある。
…もうちょっとマトモな方にその才能を向けてくれれば良いものを。
「えー。だってマトモじゃおもしろくないじゃん」
「ウケ狙わなくていいから。っていうか、心読むな!」
「別に法術使ってるわけじゃないわよ?そんなことしなくても、幸介の考えることなんてあらかた察しはつくから」
「へーへー。俺はどうせ単純にできてますよーだ」
「拗ねない拗ねない。で、どうよ?」
「どうよ、って…なにが」
「少しは気が晴れた?」
…なんと応じればいいのか。
それがわからないまま、ただ無言でいる俺を見遣り、ヨルズは少し苦笑したようだった。
「幸介って、真性のどスケベのくせして妙なところで真面目よねえ。
…ファウナ達もさ、口には出さないけど、なーんか幸介が元気ないように感じてるみたいで。
なんか悩みとかソレっぽいものとかあったら、このお姉さんに相談してみ?ん?ん?
大体、57.22%の割合で解決してあげようじゃない」
「解決率低っ!ちゅうかその数字の根拠は?」
「んー。過去の実例と照らし合わせて、あとノリとフィーリング」
「全然ダメじゃん!」
「あー。ほら、解決してあげるとは言わないけど、悩みを和らげるくらいはできるかもしれないし。ホレ、ズバーンと言うてみ?」
8割方は単に面白がってるだけのような気もするが、しかしヨルズも当事者の1神ではある。
それによく言えば真面目、悪く言えば頑固で融通のきかないファウナ達にはうまく言えないことも、ヨルズなら冗談のオブラートに包んで気軽に言えるかもしれない。
そう考えて、俺は質問してみることにした。
「じゃあ聞くけど…ヨルズから見てさ?
俺って、女の子にもてる要素って…ある?」
「モテ要素?
………………………………………ハッ」
ズバッ!
うわすげぇ!
もの凄まじく酷薄な冷笑THE BESTで応じてくれましたよこの女神!
しかも素で!冗談半分とかじゃなく!
「…え、えーと。じゃあその…一般論、ってことで。
男として、人間として、女の子にモテるモテないとかは関係無く、なんか一つくらい良い所かはないかなぁ、とか…」
「えー。そおねぇ。
幸介ってぇ……顔は人並み?よーく、よおぉぉぉぉく見れば、まあ可愛い系と言えなくもないような気がするけど。
社会的身分としては大学生。特に有名な大学ってわけじゃないし、しかも成績優秀であるわけでなし。そこらにいくらでもいるグータラ学生ね。
そして経済力においては言うに及ばず。将来性も皆無。
趣味にいたっては1にエロゲー、2に美少女フィギュア。
萌えアニメのDVDは数知れず、ネットの履歴を見ると18禁サイトに入り浸りと、まあ絵に描いてデジタルで動かしてるような典型的なヲタクちゃん、と。
川神幸介って人間はつまるところこーゆー人物なわけですがー。
…………あたし、どこを誉めればいいかな?」
「忌憚のないご意見、どうもありがとう」
「なによ?精神的に傷ついてごろごろのたうちまわるとかしなさいよー。
ノーリアクションじゃつまんないじゃない」
「十分に致命傷くらっとるわい!一言も言い返せない自分がとても口惜しいですわよ!?」
「あー。レアフィギュアとかきっちりゲットしてるところなんか、コレクター魂の証明というか美点っぽいかも?」
「無理に誉めなくていいから。俺が悪かったっす」
いやほら、自覚はしてますよ?
自覚はしてるけど、改めて言われると色々痛いです、はい。
そんな俺を、なんだかつまらなさそうな目で見ていたヨルズが、ハッと鼻で笑った。
うっわ、その肩を竦めるアメリケ~ンなしぐさがムカツクぜ!
「あ~?な~に~?
もしかして幸介、今更自分と私のような高貴で華麗で超絶美形な女神様とのレベルの違いに慄いちゃってるわけ?
でもそれも仕方無いわよねぇオッホッホッホッホ」
「ぶっちゃけお前とレアにはそんな遠慮はあんまり感じないけど、概ねそんな感じかな」
「ぬぁんですって!?
ファウナはともかく幸介的にはあたしって管理人ちゃんより下位ランキング!!?」
「……あ、一応、ファウナより下とは認めてるんだ」
「あはは。幸介~、図に乗るな?」
すいません全力で謝ります。
謝りますからパイナップルでも握り潰せそうな握力で、人の頭蓋骨を握らんといて下さい頭蓋骨がミシミシ嫌な音、立ててますから。
あと、何気に死にそうです。
「…ったく。
しっかし幸介…本気で今更よねぇ。私達の立場の違いなんて」
「うん…自分でもホント、そう思うんだけど」
「いいじゃない。
下手すれば一生、三次元の女の子とは縁の無い人生を送りかねない幸介が、私達みたいな女神とエッチ三昧なウハウハ同棲生活だなんて。
俺ってラッキーマン、とか思ってればいいじゃんがもうひろし?」
「…………」
「…やっぱそう簡単には割り切れない?というかツッコミ無し?
ま、幸介が本質的にはそういう善良な人間だから、私達も貴方を見捨てられなかったんだけどね」
すっかり氷が溶けてしまった麦茶のコップを飲み干して、ヨルズは一旦キッチンへ入った。
そして新しい氷を入れたグラスを二つ、持って来る。
「ほら」
「あ、ああ」
基本的に世話好きなファウナや管理人さんと違って、ヨルズは自分が今現在、興味を持つもの以外には特に関心はしめさない。
簡潔に言えば、自分本位な気分屋である。
グータラといってしまえばそれまでだし、半分くらいは実際その通りなのだと思うけど、一ヶ月余り一緒に暮らしてきて、ヨルズは決して情に薄いわけではないことは感じてる。
おちゃらけているようで、ヨルズって実は姉妹の中では一番の現実家だ。
まだまだお子様なレアは勿論、真面目なファウナは理想家であり、時に夢想家な所もある。だから――天界の決定と法に背いてまで、俺を助けてくれたのだけど。
でも、普通に考えれば、それはやはり無茶苦茶なんだと思う。なんせ世界の安全という責務より、私情を優先させたのだから。
その無茶を時に諌め、時にその無茶を通すための具体的な手段を講じ、そして――無茶な妹を庇って一人で責任を背負おうとするのが、長姉としてのヨルズだった。
その気配りと優しさを、普段から10分の1くらい出してくれればなお良いんだけど。
「だって私ってば…ファウナにラブラブメロメロなんだもん☆」
「だから心読むな。あと冗談だとは思うけど、49%くらいは本気っぽいから怖いです」
ヨルズって、その場のノリと勢いだけで妹を手篭めにしてしまいそうだからなぁ。
……はっ。何かシナリオ選択次第ではそんなこともあったような気が。
「でもまー、たしかにね。
どうせエッチするにしても、もっと顔がよくてお金があって甲斐性もあって、あと早くない男だったら良いのになぁとか思わないでもない」
「ヨルズ姉さん…いま、さらっと男の尊厳を傷つけてくれましたね…」
「あははははは」
笑って和ませようとするな。
「でもね。もっと広い目で考えてごらんなさい?
そもそも女神と人間とでは、男だ女だいう前に、存在そのもののレベルが全然違うわけだし。
仮に全人類60億の頂点、天の道をゆき総てを司るアノ俺様でも女神にはとても釣り合わない。
もともと釣り合わないんだから、人間の基準で自分をあれこれ計ってもしょうがないんじゃないかな?」
「…比較対象がすごい微妙なんだけど、趣旨はわかったような気がする。
でも、だったら尚更……さあ?」
これは劣等感というものなのだと思う。
ファウナたち女神様って、本当に綺麗で素敵な…女の子だ。
そんな彼女たちが俺を好きだと言ってくれるのは、とてもとても幸せなことで、俺は世界一の果報者だと思う。
だけど、そうだから、俺は不安になる。
俺の大事な女神さまに、彼女達が俺にくれる幸福ほどに、
俺はお返しができているのだろうかと。
「――幸介」
穏やかに、ヨルズはそう言った。
月光に照らし出された顔は、優しかった。
「ほんと…あんたって人は、ほんと、時々、見かけからは思いも寄らないようなこと、考えるわよねぇ…」
微笑んで、でも少し困ったようにヨルズは俺の頬に手を添えて。
ギニュウウウウウウウウウウウウウウウウウ……
「いだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!?
なぜ、そこで頬をつねる!?」
「うっさい。その気持ちはもう!この子ったらなにいじらしいこと考えてんのよ~ってちょいムネキュンだったりするけれど!
でもね、なんでアンタわかんないわけ!?」
「あ、あの、ヨルズ…怒ってる?」
「怒って悪いか!」
「イヤ悪いかとかそうじゃなくて…落着いて。あと、ホッペも解放してくれると嬉しいです」
ブズッと唇をとがらせて、でもつねるのは止めて、ヨルズはこっちを睨んできた。
「…あんたさ。見てわかんない?」
「えっと…その…」
「見ればわかるでしょうが。ファウナもレアも管理人ちゃんも、あと私も!
あたしらのどこが、幸福そうじゃないっつーわけ!?あん!!?」
「――え…っと」
「いつもいつも一緒にいるのに!毎日がこんなに楽しいのに!
なのになんでわかってくれないの!?
私達はあなたがいるからこんなに幸せなんだってことに!」
「…………その」
はあ、とため息をついて。
多少トーンダウンして、ヨルズは言った。
「確かに人間と神の間には大きな溝があるけど。
でも神話の時代から、女神は時に人間に――勇者と呼ばれる者に、その寵愛を与えることがあったわ」
「ヨルズ――」
俺は、自分の額に汗が滲むのを感じながら、言った。
「勇者ってお前――恥かしくないの?」
「ごめん、ちょっと自分で言ってて後悔した」
赤面しつつ、素直にヨルズは認めた。
だがそれでもめげずに、真面目な顔と声を作って、言ってくる。
「でもね幸介。確かにあなたは勇者と呼ばれるだけのことはしてるのよ?
あなたは自分の中に魔王を封じ込めている。
それが世界を破滅から守っているのよ?大袈裟でも何でもなく。
あの時――魔王が復活しかけた時、それでも貴方は負けなかった。
必死に魔王に抗い、管理人ちゃんを…囚われていた女神を救い出した。
それは勇者の称号に値することじゃないかしら?」
「ヨルズ……」
俺は、自分の心を押えきれず、言った。
「………めっさ棒読みなんだけど」
「神の努力に水を差さないでよー。せっかくがんばって真面目っぽいこと言ってんのに」
「がんばらなきゃいけないのかよ。しかもそれでも『ぽい』なのかよ」
「あ――、う――。
でも基本的に嘘は言ってないよ?」
「…そうかもしれんが、なんかイヤだからやめてくれ」
「そ~ね」
やはり自覚があったのだろう、あっさりヨルズは頷いた。
そのことになんとなくホッとしたような気分になり、俺はせっかく入れなおしたのにまた大分氷が溶けてしまった麦茶に口をつけた。
「でもね。
正直な話。私、ファウナがアンタを助けるって言い出した時は、アンタに苛ついた。
せっかくあの優しいファウナが踏ん切りつけて魔王の種の宿主を消去する決意をしたのに、なまじアンタが善人だったから、ファウナはまた迷ってしまって。
しなくてもいい苦労を次々としょいこんで。
だから、アンタを殺しかけた時。
もうちょっと私がちゃんとアンタをブチ殺しておけば、妹に余計な苦労させずに済んだのにって思ったこともあった」
淡々とそういうこと言わないで欲しい。
怖いです、ヨルズ様。
アンタ、あの時は妙にノリノリだったし。いや、ファウナは姉さんは自分に人殺しをさせたくなかったんだって言ってたし、それは事実なんだろうけど。
「でもさー。
ほとんど魔王に身体をのっとられてたアンタが、まだ悪魔だった管理人ちゃんを私たちの法術から庇った時はさ。
目の前で死んでいくアンタを見るのは2度目だったけど…それが前と違って、イヤだった。
ただもう、すっごくイヤだった」
そう言うヨルズは俺から微妙に顔を背けていて、どんな表情をしているのかはわからない。
ただ、本当に、イヤそうだった。
でも、俺だってそーゆーこと言われて、どう返したらいいものやら。
「いやあ。はっはっは」
「気楽に笑うなボケェ!」
怒られました。しかも殴られました。グーで。
「…こほん。
ま、あれね。気にすんなーっていっても気にするか。
とりあえず、ここにそーいう悩み事かパーッと忘れられるほど飛んじゃう薬とかあるけど、飲む?」
「パーッと飛んで、こっちに帰ってこれなさそうだからいい。っていうかそんなもん勧めるな」
「欲しくなったらいつでも言いな?」
「いらないから。っていうかどこの売人ですかアンタ」
「…私は、時々、そうしたくなる事もあるから。
だから幸介の不安とかはわかるよ」
「え?」
唐突にマジにならないで欲しい。判断に困る。
というか…本当の本気で、真剣っぽい。と見せかけてやっぱオチャラケの前振りだったりするし。
そんな俺の内心を知ってか知らずか、ヨルズは自分のグラスを一息で空にした。
そのグラスの底に残った氷をじっと見つめて。
「私だって、時々ね。
不意に、心の中に、不安という影が差すことはある。
私は女神で、幸介は人間だから。
せいぜい60年もすれば、幸介はおじいちゃんになって、やがて寿命が尽きる。
幸介がいなくなった後、私たちはどうするんだろう…って」
ああ。
それは、俺も考えてた不安。
女神である彼女たちは不老不死だろうし。
「たとえ神でも、人間がもって生れた運命に介入はできない。本来はね。
私の薬で幸介を不老不死にしたり、天界の技術で生体改造とかすれば、幸介だって私たちと同じ時間を過せるようになるけれど…それは許されないことなの」
「うん…」
「そもそも有限生命体を不老不死にするのはどうしたって無理がでるから、最低でも人格崩壊とか人間として原形留めないコトに」
「だからどうしてお前のやることはそんなに物騒なんだよ!?」
「じゃあ折衷案ということで死徒二十七祖に入るとか」
「いやそれ別のゲーム設定だし!そもそもどこが折衷案!?」
真面目になりかけていた雰囲気がぶち壊しです!
というか…ヨルズの場合、これで割と真面目だったりするから怖い。
「――ともかく色々と考えてみたんだけど。
いずれ、私たちは別れなければならない時がやってくる。
天界からの指令とか、魔王の種の安全な処理方法が確立されるとか、色々あるけれど…。
でも、死別は必ずやってくる。幸介が人間である以上」
でも死別は仕方ないしそれは普通のことなんじゃ、と思いかけて。
それは神様には普通のことじゃないのだと気づいた。
「普通に生きていく。
普通に好き同士になって、普通に結婚して。
同じ時間を一緒に生きていく。
結婚して、子供ができて、家のローンや子供の反抗期に手を焼いたりしながら、一緒に老いていく。
その子供も成人して、家庭を持って、孫なんかできて。
体のあちこちにガタがきて、しわしわのじーさんばーさんになって。
いい歳こいて、でも全然人間が出来てなくて、子供や孫を困らせて悦にいるステキなシルバーライフを送ってさ。
そして、最後に見送られていく。
たった何十年かの、そんな普通の生き方」
少し困ったような、でも苦笑というほどでもない笑みを浮かべてヨルズは言った。
「少しだけね。少しだけ…そんな普通の人間が羨ましく思えた。
私たちにはそんな幸せは、幸介にあげられないから」
チン、とヨルズの爪が俺の手のグラスを鳴らした。
「いつか幸介がいなくなる時がくる。
その時のことを思うと、胸がとても苦しくなる。
あなたを殺しかけたことを思い出す。
ね、幸介?
多分、私たち…もうあなたを無くしてしまうことなんて、考えられないと思うから」
人間は神様に願う。
でも、神様は誰に願うのだろう。
応えられない俺は、そんなバカなことを考えていた。
「あ、心配しないで?
幸介になんとかしてもらおうなんて、不可能なこと考えてないから」
「……あの、ヨルズ。
たまに、場の空気を読めとか言われない?」
「全然。なんで?」
あー。なんでこの女神さまは。
誰か言ってやる奴はいなかったのか。いなかったんだな。ふう。
「…たとえ神でも人間の運命には関われない。
魂の回帰に介入することは許されない。
――だからさ。私は待ってるよ」
「…え?」
「幸介でも輪廻転生って言葉くらい知ってるでしょ?というか、前世が誰それーとかいう設定のアニメって腐るほどあるからむしろ当然?
身も蓋もないけどさ」
「いや、本当な」
「あはは。でも、これは冗談じゃないよ?
今、生きてる幸介にする話じゃないけど、でも100年先か1000年先になるかはわかんないけど、それでも。
私、また幸介に会いに行くから。
その間は、ちょっと寂しいだろうけど」
「……俺、その辺の事情なんてよくわかんないけど。
でもその時の俺、みんなのことを覚えてるかな?
…こんな時は、絶対に忘れないとか言う方がカッコイイんだろうけど」
「正直ねー幸介は。
いいって。ちゃんと思い出させてあげるから。
それに、思い出せなくてもそれはそれで」
「え?」
穏やかに――とても穏やかな顔で、ヨルズは笑う。
バスタオル姿で体育座りという、なかなかに際どい格好ではあるのだが。
立てた膝にアゴを乗せ、ヨルズは少し首を傾げて言った。
「幸介が私たちのことを忘れてしまっても。
その時は、また最初から――最初から、やり直すことができる。
だから、もう一度、初めから好きになっていけばいいよ」
もう一度、初めから。
好きになって、恋をする。
みんなと、また。
再び。
それって、ちょっと寂しいけれど、ちょっとワクワクもするような、気がした。
「でもホンッと、前世から続く戦いとか何とかって設定って多いよねー。
白けるから止めろってホントに」
「なんでそう水をぶっかけるような発言をするかなこのお姉さんは」
まあヨルズだし。だからヨルズだし。
俺は苦笑しつつも、それを肯定する。
そしてヨルズは、ニヤリと笑った。
――いやマテ。ニヤリってなんですか?
「と・こ・ろ・で幸介?」
「その、あからさまに何か企んだニヤソ笑いはヤメロ――――!!
ちゅうか、何をシタ――――!!?」
「ほらー、昔の小学生向けの推理トリックに、氷の中心に毒薬を仕込んでおいて、飲み物に入れた氷が溶けたら毒が入るとかなんとか、そーゆーのあるよね?」
思わず手の中の、ほとんど氷の溶けた麦茶のグラスを見てしまう。
お、おのれヨルズ!こんなトリックと呼ぶのも稚拙で誰も試さないようなことを、平然とやってのける女神め!
「そこが痺れる憧れる?」
「ワケねーだろ!貴様、いったい何を……!?」
ドクンと、心臓が跳ねた。
さっきのアシュ○マン変化と同じような身体の熱さが、自分の一番奥で発火するのがわかる。
抑えきれないその圧倒的な熱量は、その奔流のまま身体を四散しようと――
すぽぽぽぽん♪
「…トリックベント!?」
「バラバラのマイク!?」
「忍法影分身!!?」
いつの間に目が覚めたんすかキミタチー。つーか揃いも揃って古い例えを!
「いよっし!幸介四つ身分身薬、概ね成功!」
「「「「だから人を怪しい薬の実験に使うな~~~~!!!」」」」
4人になった俺たちは、声を揃えて突っ込んだ。
「えー。だって人間相手に試さないと人体実験って言えないじゃない?」
「天界の倫理ってどうなってんだ――――!!?」
「なによ、とりあえず幸介ダッシュ1、何が不満か?あたしはちょい不満」
「…あんまり聞きたくはないけど、何が!?」
「本当なら七つ身分身で、幸介七人がかりでもう逆ハーレムっていうかすごいエロエロなことにー」
してもらいたいんすか、アンタ。
っていうか…元ネタは愛と正義の虹の人か?
「こ、幸介さんが4人…」
「両手に幸介……いやそれ以上なんだ……」
「ちょっと…いえ、かなりいいかも…」
俺の味方はいないんですかそうですか。
「でもまあ、贅沢はいうまい。アタシってほら慎ましい女だから。
みんなに一人ずつ幸介が行き渡るわけだし、これでみんな仲良くハッピーね?」
「姉さん……」(うるうる)
「お姉ちゃん大好き!慎ましいとかのタワゴトはともかく!」
「……できれば八つ身分身なら、1神に二人ずつ幸介さんが…」
俺に人権がないのはよっくわかりました。
っていうかめっさドライです皆さん。こういうとこ、神様ですね。
じゃ、ま、そういうことで。
「逃がさないんだから」(×4)
全員、一斉に、それぞれの女神さまに肩、叩かれちゃったよヲイ。
逃走は不可能っぽいです。
ファウナが、なんだか言い訳っぽく、微妙に目を逸らして言ってきた。(俺の一人に)
「あの…私も、本当はこんなこと、幸介さんの意思を無視して勝手にこんなことするのは、良くないと思います。
一人しかいないなら増やせばいいだなんて、幸介さん、モノじゃないんですから。
そんなの、間違ってると思うんです」
うんうん、そうだよねファウナ。
さあ、そこから女神として正しい正道に戻り、そして残りのみんなも説得してくれ!
「あー。
でも、とりあえず目の前に幸介がいたら、愛さずにはいられないよね?」
「核心つきすぎです姉さん―――!!」
「うわ~、あたしたちってやっぱり姉妹なんだなーって実感しまくりだよ~~」
こ、この腐れ三姉妹~~~~~~~~~~~~~~!!!
泣いてやる!グレてやる!
頭リーゼントにしてソリ込み入れてやる~~~~~~~~~~~~!!!
「あ、ちなみにこれもさっきの薬のバリエーションだからー」
「…………精力出せば一人に戻るとかいうんだろ、どうせ」
「えぐざくとりー!」
ひゃっほう。もうお約束すぎて、突っ込む気にもなれねえよ。
「…あの…幸介さん」
「なんですか管理人さん?」
「その…さっきのゲームみたいなこと、…してもいいですから」
え?ラッキー!!
「幸介さん…」「コウスケベ…」
うわ。じったりした視線が俺に向けられてるよ。(ダッシュ2・3)
「…幸介がそんな人間だから、あたしもあるかなしかの良心の呵責を感じずにすむわー」
「あるかなしかしか良心ないのかよ、女神」
アメリカンに肩を竦めるヨルズに、俺ダッシュ4はちゃくっと突っ込んだ。
<終わる>
【後書き】
と、いうわけで「めがちゅ!」です。
たしか、自分がショップで見たポスターには平成18年8月か9月末発売とかあったよーな記憶があるのですが、実際に発売されたのは12月でした。
よくあることです。
ゲーム中の季節はうだるような夏、ゲームキャラ達はエアコンどころか扇風機も満足にないようなオンボロアパートで何かというと暑いとかいっとるわけですが、プレイヤーは寒さに震えながらマウスクリックしております。
よくあることです。
プレイ中、何度か「これ、ジブリール3じゃないよな?」とパッケージを確かめることも、このメーカーのゲームならそう不思議なことではないかもしれません。
続編ができたらいきなり妹がいる設定に変わるかも、とか主人公が自虐ネタかましてくれるのは。
いや、よくあるけどそこはちょっと、考えんとあかんよ?
さて、久々のSSなので、ちょい勘が狂ってるような気もします。一応、管理人さんEND後のつもりではあるのだけれど。でもヨルズ姉さんメインなのは、姉さん目当てでこのゲーム買ったからです。
ちなみに攻略順はヨルズ→管理人さん→ファウナ→レアの順でした。
妹が一番最後なのは、単純に好きなものからつまんでいった結果です。
ちなみに管理人さんも微妙にお姉さんキャラかも。
いいね、姉。
ちなみに神様を数えるときは、SS内では1「神」とかしてますが、本来は「1柱」といったようなおぼろげな記憶が?