「ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデー ディア 智子~
ハッピバースデートゥーユー! おめでとう!」
ぱ~ん! ぱ~ん!
「藤田君、ありがとう。」
「さぁ、ろうそくを一気に吹き消してくれ。」
「うん。」
ふ~~~~~う。
智子は、一気に17本のろうそくを吹き消した。
最後に1本だけ残ったろうそく。
「おねがい。」
「ああ。」
2人とも身を乗り出した。
手を伸ばせば、届きそうな所に智子の唇が有る。
暫く見詰めあうと、やがて・・・。
ふ~う。
最後のろうそくを吹き消した。
部屋が暗闇に染まる前に、俺は智子の唇にキスをした。
情熱的で、熱いキスを。
「おめでと。 智子。」
「ありがと。」
見詰め合う2人。
智子の潤んだ瞳が艶かしい。
自然と微笑が零れてしまう。
外は昼前だから明るいが、気分を出すために窓は締め切っている。
俺は、ライターに火をつけると、燭台のろうそくに火を灯した。
揺ら揺らと動くろうそくの灯火に、智子の姿が映し出され、何とも形容のし難い幻想的な雰囲気をかもし出した。
「はい、一日遅れで悪いが、俺からのプレゼントだ。」
「うん、ありがと。」
俺は小さな手提げ袋の中から、真っ赤なリボンでラッピングされた長細い箱を手渡した。
智子は、真っ赤なリボンを解き、包みを綺麗に剥がすと、白い箱の中から細長い紫色のビロードケースを取り出した。
目を輝かせながらも、一瞬手を止めると俺の方をチラリと覗き込んだ。
俺がコクンと頷いてみせると、満面の笑みを溢しながら、そのビロードケースの蓋をあけた。
「わぁ~~~。 素敵なネックレス・・・有難うな。」
ホントに嬉しそうに、プレゼントを眺める智子。
今にも、頬擦りしそうな雰囲気だ。
「なぁ、着けても良い?」
「俺、着けてやろっか?」
「あ、お願い。」
俺は、席を立って智子の後ろに回った。
智子は、ネックレスを俺に渡すと、下ろした髪を擡げて着け易い様にしてくれた。
しかし、丁度ろうそくの光の影になったのか、暗くて中々嵌らない。
四苦八苦しながらも、どうにかネックレスを着けると自分の席についた。
智子は髪を整えると、行儀良く座りなおし、ポーズを取りながら『どう?』っと言っている。
「・・・良く似合うよ。」
「ホンマか? 嬉しいなぁ・・・なぁ、今日これ、ずっと着けてても良えか?」
「智子が良いならね。」
「うん、そうするわ。」
満面の笑みを零す智子。
暫くの間、智子は掌にそのネックレスを乗せたりしていた。
俺はと言うと、そんな智子の姿が微笑ましくって、ついつい見とれてしまった。
「・・・藤田君・・・如何したん。」
「ん? いや、これを渡すのに、結構苦労したなって思ってさ。」
「・・・バイト、大変やったの?」
「あ、いや・・・それも有るけど、昨日から今朝にかけて色々あったから・・・な。」
はぁ~~。
思い出しただけでも、溜息が出てしまう。
良く言えばドラマティック、悪く言えば・・・・・ん、何だろ?
兎に角、人生最悪の半日だった事だけは確かだ。
「何や、大っきな溜息ついて。」
「溜息も出したくなるって。」
「ふ~~ん、そうなん? なぁ、昨日の事教えてくれへん。」
「聞いても、つまんねぇ事ばっかだぞ。」
「ええやん。時間はたっぷり有るんやから。」
「ったく、しょうがねぇなぁ・・・。」
・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・。
題目 『 智子へのプレゼント 』
キ~ンコ~ン カ~ンコ~ン
キ~ンコ~ン カ~ンコ~ン
よし! 今日も授業が終わった!
これで、晴れて自由の身だ。
まぁ、智子の事考えてたら、授業所じゃなかったんだけどな。
そう言えば、智子ってやけに今日ソワソワしてたなぁ・・・。
放課だって、気が付けば居なかった事多かったし。
そのお陰で、今日一日二人っきりにもなれ無かったし、ゆっくり話しも出来なかったなぁ・・・。
ま、良いか、帰りはどうせ二人で帰るんだから、その時に言えば・・・・。
って、何時の間にか智子居ないじゃん。
って言うか、カバンもないし。
もう帰ったの?
・・・嘘だろ?
何時もなら、真っ先に俺の所にやって来て、『藤田君、一緒に帰ろか?』とか言うのに・・・。
今日に限って、如何したんだ?
(・・・プルルルル。 ・・・プルルルル。)
ガチャ・・・。
電話にも出ない・・・。
携帯・・・切ってるのかな。
家にも居なかったし・・・・。
あ、そうか・・・。今日は塾で模試か何か有るんだ。だから、早く帰えらなくちゃいけなかったし、今も携帯切ってるんだ。そうだよ、きっとそうに違いねぇよ。
それなら塾に電話して、模試が終わったら俺の所に電話する様に言伝を頼むか。
「・・・・・・(カチャ) あ、もしもし、私藤田と言う者ですが、そちらに通われている保科智子さんに言伝を頼みたいのですが・・・・・はい・・・え? はい・・・・あ、いえ、それなら結構です・・・・。 (かちゃ)」
え? 智子、今日塾休んでる? 一体どう言う事だ?
家にも居ないし、塾にも行ってない・・・。
・・・・・。
・・・。
もう10時か・・・。
何処行ってるんだろ、智子の奴・・・。
まだ家に帰ってないみたいだし・・・。
普通、自分の誕生日って、好きな奴と過ごしたいって・・・考えるよなぁ・・・・。
そう言えば、智子って、今日俺との接触をナチュラルに拒絶してた様な気がする。
まさか、俺以外に・・・・いや! そんな事・・・・有るはず・・・・ない・・・・よな。
ダメだ! こんな所で、つまんない事をくよくよ考えたって始まらねぇ。
兎に角、智子の家まで行って帰ってくるのを待とう!
もしかしたら、電話に出られなかっただけかもしれないし、もう帰ってるかもしれない。
今日中に、これを渡さなきゃ。
渡して、あいつの笑顔を見なきゃ・・・。
・・・・・。
・・・。
・・・・・やっぱり帰ってない。
呼鈴、何度押しても返事がない。
家の中真っ暗だし・・・。
どうしたんだよ智子。どこに行ったんだよ智子。
もうちょっとで、明日になる。
・・・俺、いったい此処で何やってるんだろ?
・・・ブロロロロ・・・・。 キィ・・・。
あ、車だ・・・こんな夜中に・・・。
・・・バタン!
あ、あれは・・・・。
「・・・今日は誘ってくれてありがとな。楽しかったわ。」
・・・智子?
「・・・ううん、多分ええやろ・・・・。うん、また誘ってな。ホントに今日はありがと。」
智子、あんなに嬉しそうに手を振って・・・。
運転手・・・男だったよなぁ・・・・。
こんな時間まで・・・・。
「・・・・バイバイ! またな!」
・・・いったい。
・・・どう言う事なんだよ。
・・・ブロロロロ・・・。
どう言う事なんだよ!
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
「へぇ~~。 そうやったんか。」
智子は、両手でほお杖をしながら、俺の話しに聞き入っていた。
蝋燭の炎の揺らめきのせいか、智子の頬が赤らんで見えるのは気のせい・・・じゃないと思う。
「へぇ~~じゃねぇだろ、こっちは気が気じゃなかったんだ。」
「ごめんな、藤田君。でもな、私、そんな事になってるだなんて・・・・。」
「・・・まぁ・・・・な。」
「なぁ、それからどうなったん?」
「それからって・・・・ああ・・・枕を濡らしながら一晩過ごした事か?」
「何やのそれ?」
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・。
「あれ? 藤田君どうしたん? 今日はえらく早いなぁ・・・。」
朝、駅前広場で智子が来るのを待っていた。
智子は俺を見つけると、何時も俺に見せる笑顔をして、何時もの様に小走りで駆けて来た。
全く変わらない、何時もどおりの智子。
何も変わらない。
何時もと何も変わらないはずなのに、何も変わらない笑顔を見せる智子に、言い様の無い怒りと猜疑心が湧き上がる。
「・・・昨日、何処行ってたんだ?」
優しい笑顔を見せる智子とは裏腹に、俺は最愛の恋人であるはずの智子を睨みながら、少し怒気の入った声を返す。
普段から目付きが悪いと言われていた俺の鋭い眼光に射竦められたのか、俺の何時もとは明らかに違う態度を敏感に察知したのか、智子の足が俺の手前で止まった。
「・・・昨日って。」
明らかに智子は動揺している。
その智子の表情を見た途端、俺の中で芽生えていた猜疑心が、智子への不信感に変わった。
「・・・塾・・・行ってないよな。 家にも遅くまで居なかった。」
「ちょっと用事が有ってな・・・出かけてたんや。」
「・・・男・・・とか。」
搾り出すように口から出したその言葉。
信じられない現実を、笑って否定して欲しいとの僅かな願いを残して。
「・・・男って・・・・まさか、藤田君、見てたん!」
俺の僅かに残された希望と願いは空しく消えた。
智子は、否定をしなかった。
むしろ・・・肯定した。
「昨日は何の日か知ってるか?」
何かが崩れ去った。
信用と、信頼と、愛情が、一気に崩れ去った。
何かが切れて、何かが終わった様な気がした。
「・・・昨日って・・・まさか・・・藤田君。」
「そうだよ!智子お前の誕生日だよ! お前に誕生日プレゼント渡したくって、お前の家まで行ったんだ!」
「ま、待ってな! 誤解や!」
「何を待つんだ! 何が誤解なんだ! 自分の誕生日を俺以外の奴と過ごしたくせに! この事実の何処が誤解なんだ!」
「藤田君、お願いだから落ち着いて、な。 私の話しも・・・。」
「もう、お前の話なんて聞きたくない! ・・・お前とは、もう・・・・。」
そこから先の言葉を、俺は言う事が出来なかった。
抑えられない感情の高まりが、激昂が、俺の口から最後の言葉が吐き出される寸前、駆寄って来た智子の唇によって閉ざされた。
押し付けるだけのキスからは、何時もの様な温かみも愛情も感じられなかった。
ただ、悲しみと、困惑が智子の唇を通して伝わってきた。
「・・・お願いや。 お願いやから、それ以上言わんといて・・・。」
震える唇を離すと、俺の背中に手を回し、強く、強く抱締めてきた。
余りの事に呆然となる俺。
まさか、智子がこんな事をするとは思ってもみなかったからだ。
小刻みに震えるか細い肩を見ながら、そんな事を考えていた。
「なぁ、落ち着いて私の話し聞いてくれる? ううん、お願いやから私の話を聞いて欲しいんや。」
「・・・・・。」
零れ落ちる涙を拭おうともせず、哀願するかの様にすがり付く智子の姿を見ていると、俺自身の胸を焦がした怒りや悲しみや、不安感や、猜疑心といった色々な感情が徐々に萎えていった。
「私な、藤田君に隠してた事が有る。」
「・・・・・何だ。」
「・・・私な・・・私な。」
「・・・・・。」
「・・・私な、阪神ファンやねん。」
「・・・・・・・・・・・・・・え? 阪神・・・ファン?」
「そうや、阪神ファンや。」
「阪神って・・・野球の?」
「当たり前やん、それ以外何が有る言うんや。」
「・・・・は、はぁ。」
つまりは、こういう事らしい。
昨日は、阪神応援団の知り合いから、チケットを分けてもらい、ヤクルト戦を神宮まで見に行った。
残念な事に、星野監督が宙を舞う所は見られなかったものの、緊迫した接戦に興奮してしまい、気がついたら終電が無くなっていたため、応援団の人に乗せて来てもらったらしい。
「何で阪神ファンだって事を、俺に隠す必要が有るんだ?」
「だって・・・だって、前、藤田君言うてたやん。 自分は巨人ファンやって。 だから言われへんかったんや。
私が阪神ファンや言う事がばれたら、藤田君に嫌われる思うたから・・・・。」
ちょ、ちょっと待てよ・・・。
それじゃぁ、まるで・・・。
「それに・・・一緒に黄色い法被着て、六甲おろし・・・歌ってくれんやろ。」
「それは嫌だ。」
俺は、はっきりと断った。
「だから、言われへんかったんや。なぁ、私の言った事信じてくれた? なぁ、誤解とけた?」
信じるもなにも・・・。
誤解もなにも・・・。
「・・・もしかして、俺の早とちり・・・。」
「う、うん・・・。」
一気に気が抜けた。
気が抜けると同時に、智子の事を信じてやれ無かった事が恥ずかしく思えた。
「智子! ごめん! 俺・・・・。」
言葉が続かなかった。
自分に対する憤りと、智子に対する悔恨で胸が一杯になった。
手をついて、土下座をしてでも許しを請いたい、そんな気持ちだった。
「ええよ。 大事な事を言わなんだ私も悪いし、お互い様や。それに、藤田君の新しい一面も見られたしな。」
「新しい一面・・・何だそりゃ?」
「案外おっちょこちょいで、それから、意外と嫉妬深い所かな。」
智子は、片目を瞑りながら、悪戯っぽく微笑んで言ってのけた。
「な、な・・・・・・。」
「あれ? 違う言うんか・・・・。」
口を尖らせる智子。
・・・・く、くそう・・・・・可愛いじゃねぇか!
「そうだよ! 悪いか!」
「ううん・・・。 嬉しいんや。 私に嫉妬してくれる言うんは、それだけ私の事を愛してくれてる言う事やろ。」
「・・・・当たり前だ。」
「その当たり前が、堪らなく嬉しいんや。」
俺の気持ちは、その一言で全て解き放たれた。
ただ、がむしゃらに智子を強く抱締めた。
智子も、それに応えるかの様に、俺を強く抱締めてきた。
「なぁ、1日遅れなんやけど、私の誕生日・・・祝ってくれへんか?」
「ああ、もちろん。」
「なら、今から藤田君の家に行こ。」
「え? 今から学校だろ?」
「ええやん、たまには。今日は、藤田君と、ずっと一緒にいたい気分なんや。」
・・・・・・。
・・・・・・・・・。
「大変やったんやね。」
「人事みたいに言うな。思いっきり当事者だろ。」
「うん、そうやな。でも良かったわぁ、仲直りが出来て。」
「・・・そうだな。」
そう呟きながら視線を落とした。
智子の事を、信じてやれなかった事が悔やまれて仕方がない。
ましてや、俺は智子に・・・。
「あのさ、智子・・・。」
俺の言葉は、俺の口に優しく触れた智子の人差し指によって遮られた。
「それはもう言わん約束やろ。」
「それでも・・・・悪い。」
「ええよ。」
今度は、智子から唇を重ねてきた。
駅前で泣きながらしたキスとは違う、優しくて、暖かくて、愛を感じるキス。
「愛してるよ、智子。」
「私も、愛してる。」
もう一度、今度は軽めのキス。
「なぁ、藤田君。 これからも、私だけを見て、私だけを感じて、私だけを愛してくれる?
今まで以上に、これからもずっと・・・・。」
「ああ、約束する。 今まで以上に、これからもずっと智子一人を愛していくよ。」」
「そう、藤田君ありがと・・・。 私な、今、とっても幸せや。」
「智子・・・・。 もっと、もっと幸せになろうぜ。」
「うん。」
俺達は、お互い身を乗り出すと、お互いの唇を求め合った。
愛を確かめ合うかのように、熱くて、情熱的に。
「・・・・・はぁ。」
唇を離して、お互いを見詰め合う。
智子の潤んだ目が、俺に注がれる。
俺は、智子の手を取った。
「さ、行くか。」
「へ? 何処へ?」
「2階! 俺の部屋! 愛を確かめに行こうぜ!」
「ちょ、ちょっと!何でそうなるんや! 私が言ってた”愛”言うんは、そういうんや無くて・・・。」
「いやか?」
「そ、そんな嫌なわけない・・・けど・・・。」
「ならOKだ。 今日は誕生日記念で、激しさ30%増しだ!」
「ちょ、ちょ・・・・そんな無駄に頑張らんでも・・・。」
「・・・・ちょ、ちょっと・・・。」
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・。
その頃、学校では。
「みんな! 知ってる? 今日の志保ちゃんニュースは聞き逃したらダメよ! なんと、あのお堅いので有名な2年B組の保科智子さんが、今朝登校途中に、同じクラスの藤田浩之と、大胆にも抱き合いながら熱いキスまでしたって言うから驚きじゃないの! それが、物陰に隠れてしたんなら、まだ奥ゆかしいんだけど、通勤通学途中の一般人が沢山集まってる駅前ロータリーの真々中で、人目を憚らずにしたって言うから、更に驚きよねぇ・・・・。
でも、ここからが肝心よ。 その後、2人はどうなったか知ってる?
なんと! 学校をサボって、手に手を取らながら、学校とは違う方向に駆けて行ったのが、大勢の生徒に目撃されてるのよ!
その後、2人は一体何をしてるのかしら? 不思議よねぇ・・・。 知りたい? 知りたいでしょ?
でも、大丈夫よ! この熱愛カップルの動向と、今日の行動については、この志保ちゃんが独占インタビューを行って、みんなには逐一お知らせするから。 しばし、待て!って所ね。 あと、それから・・・・・・。」
どうやら浩之の溜息は、明日以降沢山出る事になる・・・・かな。
・・・おわり
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あとがき
ばいぱぁです。
ここまでお読み下さいました皆様及び、私めの拙いSSを掲載して下さいましたHiroには深く感謝致します。
このSSは、私の愛すべき保科智子嬢の誕生日祝いとして作りました。
喜んで頂けたら幸いです。
因みに・・・・。
保科智子を愛する全ての皆様へ。
今回の人気投票では苦戦を強いられております。
一致団結して、せめて10位以内に入れましょう!
おーばあ