To Heart SS
処分しなかった過去 くのうなおき
ここ数日間、浩之の家はてんてこまいの忙しさだった、というのも
双方の両親の積極的な勧めにより、浩之はあかりと晴れて学生結婚
する事になったのである。浩之の家は新しい住人を迎える為の大掃除
と物品整理が行われていた。
「参ったなあ・・・、こんなことなら思い切ってもっと早く処分するんだったぜ」
浩之は自分の部屋の片付けを行っていた。この部屋は自分だけでなく
あかりの部屋にもなるということで、色々と片付けなければならないものが
たくさんあった、そしてその中には今まで処分するのを後に後に延ばして
いた非常に厄介なものがあった、浩之は「それ」を目の前にしてどうしたものか
と悩んでいた。
「それ」はまだあかりと恋人同士になる前に入手したもの、若さゆえの過ち
、いや若さが求めていた答ともいうべきものかもしれない。
あかりと付き合う事となった時点でさっさと処分すべきだったのだが、処分
方法に困って結論を後に延ばしていくうちにすっかり忘れ去ってしまった。
そのつけが今、回ってきてしまった。
ちなみに浩之はあかりと結ばれてからは一度も「それ」のお世話にはなっていない。
「仕方ない、新聞紙で包んで後でこっそり持って行こう・・・」
最初からそうすれば良かったと浩之は思ったが、後悔しても後の祭、今出来る事
をやろうと思いなおした。
「あ、やべ、紐が無くなった」
あかりもマルチも各々の担当している仕事で忙しい、といっても浩之は二人に
買出しに行かせる気は全く無かった。
「あかりー、マルチー、俺、紐が無くなったから買いにいってくるぞー」
「えー、それならわたしがいってくるよー」
「いいえ、わたしが行ってきますー」
有り難いとは思いつつも
「おいおい、買出しぐらい俺が行ってくるって、他になにか買ってきて欲しい
ものはあるかー?」
「うーんとね、ガムテープが残り少ないから二個程買ってきて欲しいなー」
「わたしの方はありませーん」
「わかった、それじゃいってくるぜ」
「うん、ありがとう、浩之ちゃん」
そして浩之は「それ」をベッドの下に戻すと、買出しに出かけた。
あかりは押し入れの下に敷いてある古新聞がボロボロになっているのに
気付いた。
「あ、これ換えたほうがいいよね・・・・、そういえば浩之ちゃんの部屋に古新聞
があったような・・・・」
あかりは浩之がやはり自分の部屋の押し入れに使うといって古新聞を持って行った
ことを思い出した。
あかりは浩之の部屋に入った。
「あった、あった」
しゃがんで新聞紙を取ろうとしたとき、ふとベッドの下に目が行ってしまい、「それ」
があかりの視界に入ってしまった。
今まで何度も浩之の部屋に入ってはいたが、ベッドの下をわざわざ見るという事
は無かった、それなのに、こんな時に偶然とはいえ見てしまったということは浩之に
とっては不運としかいいようがなかった、更に不運だったのは、あかりがベッドの下に
あるものが何を意味するかを志保から聞いていたことだった。
『浩之ちゃん、まさかわたしに隠れてエッチな本を読んでいたというの? わたしじゃ
、わたしじゃ不満だっていうの!?・・・・・・でもまだそれと決まったわけじゃないし、
ひょっとしてマンガ雑誌かもしれないじゃないの、でもでもマンガといってもひょっとしたら
・・・・ええい、ここで悩んでもしょうがないわ! あかり、真実を見極めるのよ!!』
・・・・・・・真実はあかりの恐れていた通りだった。
「ただいまー」
「あっ、浩之さんおかえりなさい」
「あれっ、あかりはどこへ行っちゃったんだ?」
「えっと、新聞紙を取りに浩之さんの部屋に行ったはずですけど、まだ戻って
きてないみたいですねえ」
『やばい!!』
慌てて自分の部屋に飛びこんだ浩之だがすでに遅かった。
そこにはエッチ雑誌の束と恨めし気に浩之を見つめるあかりの姿があった。
「えっと・・・・、それはな、お前と恋人同士になる前に買ったもので・・・・・、お前
と結ばれてからはまったく使ってはいない・・って、いや、俺なにいってんだろうな
ははは・・・・・・・・」
「あ、あわわわっ」
まさにこれから修羅場となるであろう状況にマルチもただおろおろする他なかった。
「わかってるよ・・・・そんな事、わたしがね怒っているのはね・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「なんで胸の大きな人の本しか持ってないのー!!」
「あ、あかり・・・・」
「ふええええん! 浩之ちゃんは本当は胸が大きい娘が良かったんだね、わたしなんかより
レミイや志保や保科さんや芹香さんや綾香さんの方が良かったんだよね!!
わたしなんて、わたしなんて浩之ちゃんの欲望の代用品だったのよー!!」
『ちょ、ちょっと待て! なんでそんな考えに行きつくんだ!?』
と思いつつも、今のあかりは聞く耳もたないという状態であることは浩之にも
わかっていた。しかしそんなあかりを放っておいたら、彼女の夫になる資格は
無いと浩之は感じていた。
『文字より言葉、言葉より行動!!』
浩之はあかりを抱きしめるとすぐさま唇を重ねた、マルチはこれから始まる事を
察して慌てて部屋を出た。
次の日の朝、昨日の怒り様がまるで嘘のようにあかりは上機嫌だった。
「おはよう、マルチちゃん♪」
「あ、おはようございますあかりさん」
「あのね、浩之ちゃんとっても疲れているみたいだから、今日一日寝かせて
あげようね、お部屋の整理なんかはわたし達でできるとこまでやろうよ」
「あっ、はい」
あかりの言葉と上機嫌さから昨日あれからなにがあったのかは想像がついた
がオーバーヒートしそうなのでマルチは想像するのを止めた。
『何にしろお二人が仲直りしてくれて良かったです』
『あかりのやつ、あんなに自分の胸のおおきさを気にしていたとは・・・・
これからはもっと気を使ってあげないと…』
窓から差込む日の光は黄色かった、腰に力が入らなかった。
あかりをなだめるのに一体何ラウンドを要したのだろう?浩之は思い出せなかった。
いや最初の段階であかりの怒りは治まっていたのかもしれない、後はただひたすらに
浩之に甘えたがっていたのかもしれない。
しかし今となってはどうでもいいことだ。
朝、浩之に見せた、浩之を気遣う優しい瞳、あれをいつも見るためならこんな疲労
にも耐えてみせる、そう思いながらも浩之は呟いた。
「普通、エッチな本に出る人の胸って大きいのが当たり前でしょーが」
終
後書き
予定していたSS後回しにしてなにかいてるんでしょうねわたしゃ(汗)
友人との与太話でとっさに思いついたのが今回の話です
しかし、浩之とあかりじゃ本当喧嘩になりませんね、すぐ仲直り
してラブラブモードに入っちゃう、全くやってられません・・・・・・・・。
ええと、ちなみにこの話は「緑色の墓標」「エンゲージロボット」
と同じ時間軸の話になっています、これから書いていくであろう
マルチシナリオのSSもすべて同じ時間軸の話となります、
(つまり「エンゲージロボット」がプロローグで「緑色の墓標」が
エピローグということになります)
でも今回の話を「緑色の墓標」に繋げていいのかなあ・・・・、
まあ、若い二人のちょっとしたドタバタということで大目に見ることにしましょう(笑)
それでは今回はこの辺で失礼します。
最後にHiroさん50000HITおめでとうございます!!
くのうなおき
何と言うか……男にとっては笑えないSSですねぇ(^ ^;
女性読者のみなさん、彼氏のベッドの下だけは見てはいけませんよ(爆
>若さゆえの過ち、いや若さが求めていた答ともいうべきものかもしれない。
その通り。みんな若さが悪いのさ。
浩之を責めることなど誰にも(男には)出来ない……よね(^ ^;
>「なんで胸の大きな人の本しか持ってないのー!!」
胸の大きさ……あかりちゃんにとっては切実なんですね。
>窓から差込む日の光は黄色かった、腰に力が入らなかった。
>あかりをなだめるのに一体何ラウンドを要したのだろう?浩之は思い出せなかった。
お疲れさまです(^ ^;
でもでも、あかりちゃんの笑顔の代償だと思えば安いものですよね(*^^*)
くのうなおきさん、楽しい(ある意味怖い(笑))SSをありがとうございました\(>w<)/
戻る