題目 『 来栖川綾香の日記 』
「・・・綾香、これなに?」
「ん? 私の日記。 こら、見るんじゃない!」
「良いじゃねぇか、減るもんでもなし。」
「そりゃ、減る事は無いでしょうけど・・・、女の子の日記を、黙って見るなんてデリカシー無さ過ぎよ。」
「だから、許可を貰おうと・・・。」
「却下!」
「『却下』と書いて、『りょうしょう』と読む! 強行突破!」
げしっ!
「あうぅぅぅ・・・。」
「言う事聞いてくれないと怒るよ。」
「殴ってから言うな! それもグーで! 鳩尾に、しっかりクリーンヒットさせてんじゃねぇか!」
「うん。 綺麗にきまったねぇ♪」
「何だ『♪』は! っつったく・・・綾香と一緒にいると生傷が絶えやしねぇ・・。」
「生傷の『原因』が、何を言うかなぁ・・・。」
「・・・まぁ良い。 綾香聞いてくれ! 俺はお前の事が好きだ! 大好きだ! 愛してる!」
「な、何よ・・・いきなり・・・。(ぽっ) し、知ってるわよ・・・。(真っ赤)」
「その、暴力的かつ凶暴な所も含めて綾香の全てが好きだ!」
「な、何? 何気に途中で引っかかった所も有るけど、まぁ良いわ。 嬉しいわ、私も浩之の事大好き!」
「俺は、俺の目の前にいる綾香だけじゃなくて、俺の知らない綾香ももっと知りたいんだ。 だから、これ読みたいんだ。」
「・・・そう・・・それじゃ仕方ないわねぇ・・・って、浩之、何言わすのよぉ! あ~~あ、もう読んでるしぃ・・・。 ホントに手が早いんだから・・・。」
「何々・・・。 3月10日(月) 晴れ ランニング
10km、マシーントレーニング×3セット、打ち込み
3分×20本、スパーリング 3分×10セット・・・・。」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・?」
「・・・綾香・・・」
「・・・何?」
「これ、何?」
「私の日記♪」
「トレーニング表だろ?」
「う~~ん、そうとも言うかも・・・。」
「っつたく・・・全部そうか?」
「そんな事も無いよ、始めの方だけ・・・かな。」
「って事は、後ろの方はまともなんだな。」
「う、うん・・・・。」
「ったく・・・。 何々・・・。」
3月11日(火) 晴れ
今日、公園で変な奴に会った。
ルックスは、・・・まぁ『普通』かな。
小さな女の子の傍で、大きな木を蹴ってた。
始め、女の子を苛めているのかと思ったけど、どうやら、木に登ったまま下りられなくなった仔猫を助けようとしているみたい。
意外と良い奴かも知れない・・・。
そのまま素通りしても良かったんだけど、あのまま木を蹴り続けてたって、100万年経ったって仔猫ちゃんを助けられなさそう。
仕方が無いから、手伝ってあげる事にした。
女の子にアイスを渡して、彼の上に乗った。
やっとの事で、細い小枝で怯えている仔猫を助け出した。
それを伝えようと下を見たら、彼が上を見ていた。 しかも、しっかりスカートの中を凝視して・・・。
もう!最低!男ってみんなそう! 何で、こんな布っ切れ見て喜ぶんだろう?
でも、その事を後で指摘してやったら、どぎまぎしてて可愛かった。
からかい過ぎたお詫びに、食べかけのアイスあげちゃった。
でも、後でよく考えたら、これって彼と間接キスしたって事よね。
ちょっと大胆な事しちゃった・・・。
ま、いいか・・・・。
4月11日(金)晴れ
偶然ってホントに怖いわ。
習い事に行くのが嫌で、セバスから逃げ回っていた時、例の『のぞき君』に会っちゃった。
名前は、藤田浩之って言って、これも偶然なんだけど、芹香姉さんと知り合いみたい。
もしかして、芹香姉さんの表情が明るくなったのは、浩之のせいだったりして・・・・。
そう思って、芹香姉さんに浩之の事話たら、ちょっと拗ねた様な、でも、顔を赤らめていた。
浩之も、芹香姉さんの事、満更でも無さそうだし・・・。
良いなぁ、ちょっと妬けちゃうなぁ・・・。
でも、芹香姉さんの気持ちも判る気がする。
浩之って、他の男と違う雰囲気が有るし、話してても楽しい。
河原での野球も楽しかったし。
また、会えると良いな。
4月14日(月)晴れ
神様の悪戯にもほとほと困ったものね。
クラスの子達と一緒に帰ってた時に、偶然浩之に会っちゃった。
でも、再会は最低・最悪だった。
友達と話をしてたら、いきなり私の事、後ろからくすぐる奴がいたの。
痴漢だと思って、試合でも滅多に出来ない程、見事に鳩尾にエルボーを叩き入れちゃった。
まさか、それが浩之だなんて思わないじゃない。
やっとの事、公園のベンチまで連れてきたら、薄情者達はさっさと帰っちゃうし、置いて帰る訳にもいかないし・・・・。
結局、浩之が目を覚ますまで、膝枕しててあげた。
でも、不思議。
膝に置いた浩之の頭、重く感じないんだ。 ううん・・・とっても心地良い。
気絶させたのは悪いけど、浩之の可愛い寝顔をじっくり見てたから、全然退屈しなかった。
浩之が目を覚ました時だって、『ああ、良かった』と思う反面、『もう少し、このままが良いなぁ』って思っちゃった。
どうしてだろ・・・・不思議だなぁ・・・。
4月16日(水)晴れ
朝からそわそわして、落ち着かない。
何をしても、何をやっても、上の空。
何故だろ? 判らない。 けど、探さなくっちゃって思ったら、チャイムと同時に校門を出てた。
何を探せば良いのか判らなかった。
町中探して、走り回って、くたくたになって、もうダメって思った。
諦めて帰ろうかと思った瞬間。
私の前に、浩之がいた。
『探し物』見つかった気がする。
浩之も息を切らせながら、汗いっぱいかいて、私の事一生懸命探しててくれたみたい。
それなのに浩之ってば、そっけない返事するもんだから、浩之らしいって言うか、何か無性に可笑しくって・・・。
気がついたら、例の河原に来てた。
誰にも話して無い、昔の話をしてた。
『言いたくない。』と思った事まで、『聞いて欲しい』って思った。
憧れていたあの人の事も・・・。
浩之に私の電話番号を教えた。
浩之に会うのに、町中走り回るのは、もう御免だから。
でも、浩之・・・私の電話番号知ってる男の人って、浩之だけなんだよ。
4月17日(木)晴れ
浩之から電話がかかってきた。
女の子から電話番号を聞いたら、直ぐにかけてくるのは、基本中の基本。
でも・・・・無理よ!無茶よ!無謀よ!浩之ってば、私と格闘技で対決するだなんて。
無知って罪よねぇ、エクストリーム初代チャンピオンの来栖川綾香に挑戦するだなんて・・・・。
昨日の話、気にしての事だと思うけど・・・。
案の定、お話にならなかったけど、私のトラウマのために体張ってくれるなんて・・・。
ちょっと嬉しいなぁ・・・・。
4月21日(月)晴れ
浩之ってば凄いの。
昨日より、今日のが格段に強くなってる。
多分、今日より明日の方が、もっと強くなってると思う。
少しこつを教えただけなのに、まるでスポンジが水分を吸うように、何でも吸収していく。
浩之って、私をわくわくさせてくれる。
浩之って、私を楽しませてくれる。
浩之って、私を喜ばしてくれる。
浩之って・・・・・あれ?何だろ?
4月22日(火)晴れ
この頃、私・・・変。
浩之の事しか頭にない。
放課後の電話が待ち遠しい。
あ~~ん、どうして時間って、こんなに遅いんだろ?
早く浩之と試合がしたいなぁ。
早く浩之に会いたいなぁ。
4月23日(水)晴れ
とうとう負けちゃった。
でも、全然悔しくない。 全然悲しくない。
全力では無かったけど、本気じゃ無かったけど、手を抜いていたわけじゃない。
負け惜しみじゃなく、この一週間で、浩之って本当に強くなった。
浩之の事、膝枕してあげた。
気を失っている浩之の顔、じっと見詰めてた。
そうしたら気付いたの。
隠しきれ無い、私の想い・・・・。
抑えきれない、貴方への想い・・・・。
伝えたい、私の想い。
溢れ出る気持ちに代えて、唇を重ねた。
私のファーストキス。
好きよ、浩之・・・。
4月26日(土)晴れ
芹香姉さんが、私の部屋に来た。
話の内容は判ってる。
きっと、浩之のこと。
芹香姉さんが、浩之を好きな事、知ってる。
知ってて、私、浩之の事好きになった。
芹香姉さんの、大切な気持ちを奪ってしまった。
私の大好きな芹香姉さんの事を、裏切っちゃった・・・。
折角、浩之のお陰で、芹香姉さん明るくなってたのに、私のせいで、また元に戻っちゃったら・・・・。
みんな私が悪いんだ・・・。
私のせいだ・・・。
私が、何も言えないでいたら、芹香姉さん、私の事優しく胸に抱いてくれた。
何時もの様に、優しく頭を撫でながら、今までに見た事も無い、飛びっきりの笑顔を見せてくれた。
『おめでとう、綾香ちゃん。 私の事は心配しなくても良いです。 浩之さんは、私にとって、大切なお友達です。
でも、綾香ちゃんにとっては、大切な人になったんですからね。 私の分まで、浩之さんと幸せになってください。』
囁くような声。
でも、私の心に強く響いた。
芹香姉さんの胸で沢山泣いた。
感謝の、謝罪の、そして喜びの涙。
私が泣き止むまで、芹香姉さんは、頭を撫でていてくれた。
温もりと優しさが伝わってくる。
芹香姉さん、有難う。
浩之、有難う。
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・どう、浩之、あなたの知らない私、いた?」
「・・・いや、いない。 俺の知ってる綾香だけだった。」
「でしょ。 私ね、浩之の事大好き。 浩之のいない人生なんて考えられない。
だから、浩之には、本当の私だけを見て、私だけを感じて、私だけを愛して欲しかったの。
浩之に愛されるため、隠し事をしたり、嘘をついたりしても、きっとそれって、本当の私への愛じゃなくって、私に似た私への愛だと思うの。
そんな、見せ掛けの愛に騙される浩之を許せないし、第一、浩之に嘘を付いた私自身を許せないの。」
「だから、浩之の前にいる私は、包み隠さない裸の私。 そんな私を愛してくれた浩之だからこそ、浩之に全てを捧げる決心したんだよ。」
「そうだよなぁ・・・。 すまねぇ、別に綾香の事・・・。」
「良いよぉ、謝らないで、別に怒ってる訳じゃないし、ね。」
「そうか・・・・有難う・・・。」
・・・ちゅ・・。
「・・・・・ねぇ、浩之・・・。」
「なんだ?」
「どうして私なの?」
「は?」
「私、芹香姉さんみたいに物腰優雅でも無いし、あかりみたいに家事出来ないし、琴音みたいに可愛く無いし、葵みたいに可愛げ無いし・・・。」
「どうして私なの?」
「ははは・・・。 そうだなぁ、落ち着きの無いじゃじゃ馬で、家事には縁遠いし、見て無いと危なっかしいし、言う事聞かねぇし、すぐ怒るわ、
殴るわ、拗ねるわ・・・。」
「・・・・・改めて言われると、『ムッ』っとするわねぇ。」
「でも、綾香だからさ。 それが嘘偽りの無い綾香だからさ。 理屈じゃねぇんだ。 俺の隣には、他の誰でもねぇ、綾香にいて欲しいんだ。
・・・・それだけじゃ不満か?」
「・・・・ううん。」
「それに、綾香の良い所、俺、いっぱい知ってるつもりだぞ。」
「浩之・・・。」
「俺は綾香を愛した、綾香はそれに応えてくれた・・・そうだろ?」
「・・・うん。(ぐすん)」
「これから、ずっと一緒だ。 悪い所を言い合うより、お互いの良い所を見つけ合っていこうぜ。」
「・・・そうね、これからも宜しくね、浩之。」
「俺の方こそ、宜しくな、綾香。」
(愛してるわ、浩之。)
(愛してるぜ、綾香。)
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コン コン
「うぉっほん・・・。 綾香御嬢様、浩之様、御式の準備が相整いまして御座います。
御来賓の皆様も、皆様お待ちかねで御座いますので、そろそろ、式場の方へ御移動下さいませ。」
「「・・・・・・。」」
「・・・・・続きは、後でな。」
「・・・えっちぃ。」
「さぁ、行こうか、綾香。」
「うん、行こう、浩之。」
ばたん
6月7日(土) 晴れ
今日で『来栖川綾香の日記』は、最後です。
明日になれば、私、『藤田綾香』になります。
これからは、最愛の浩之と同じ人生を歩んで行きます。
今まで以上に、二人で楽しい想い出を、沢山、沢山作っていきます。
もう、日記はつけません。
だって、二人の胸の中に全て書き留めておきたいから・・・。
・・・3人か(ぽっ)。
おしまい
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後書きみたいなものです。
ばいぱぁと申します。
私めの拙作を、読んで頂きまして、誠に有難う御座います。
また、掲載して下さいましたHiro様にも心より御礼申し上げます。
まづ、読み返した感想・・・。
長ぁ!!
そして・・・。
甘!!
です。
何と言うか・・・カフェ・オーレに砂糖3杯って感じですかね。
次は、もう少し辛口なSS書きたいですね。
おしまい