マルチの話番外編 ~マルチのいないマルチの話~
あの時彼は何を思い、如何に行動しようとしたのか?
くのうなおき
四月八日、始業式。二年になって、また神岸さんと同じクラスになる。
配布されたクラス編成表を心臓が縮こまる思いで受け取り、同じクラスに彼女の
名前を見つけて天にも上る心地になるのは、高校の合格発表の時以上の緊張と喜
びの差とも言おうか。
教室に入って、頭に黄色いリボンを結んだ彼女の姿を見つけて、改めて同じ
クラスとなった事を確認し喜びを感じる。
一年の終り頃に髪型を変えたのだが、以前のお下げもほんわかした可愛らし
さがあって良かったが、ぱあっと花開いた感じのボブカットに黄色いリボンは
さらに華を増した感じがして、改めて惚れ直すと同時にこれで彼女に目を向け
る男達が続出するのではないかとの不安もわずかながら感じさせる。
彼女の席に行って「また一年よろしく」と挨拶をする。一年の時はそれほど
会話を交わさなかったが、まがりなりにも一年同じクラスでいて更にまた同
じとなったわけだから挨拶をしておく事に何の問題があろうか。当然というか
幸いというか、彼女もまたオレの事をちゃんと覚えていてくれて、「こちらこ
そ一年間よろしく」と微笑みを浮かべた挨拶を返される。この時のオレの気持
ちは「幸せ」という言葉で括るにはあまりに深く広い。これからの進展が全て
自分の思いのままにいくのではないか、そういう予感さえ抱いてしまうようだ。
何にしても幸先の良いスタートだ。一年の時以上に積極的に彼女に接してい
けば二年の終わりまでには恋人関係というのも、都合よすぎる展開予想とは言
えないかもしれない。
四月九日、先日の幸先良い気分が一転して不安に襲われる。
部活が終わって着替えている最中に校内の女の子達の話題が出た際、嵐田が
「そういえば、矢島のクラスの神岸だけどさ、髪型変えて何かすげぇ可愛くな
ったと思わないか?」と言い出す。
それに同調するように南や草間も「ああ、オレもそう思う」「何かこう・・・
ぱあっと花開いた感じだよな」と言い出し、しばらく神岸さんの話題で持ちきり
となる。正直、ここまで神岸さんに目をつけてる奴等がいるとは予想していなか
った。今はまだ皆、軽口を叩き合ってるレベルでしかないが、これが何時「本気」
の話になるか、ならないという保証は全く無い。
お下げの頃からずっと彼女を見てきた者からすれば、髪型が変わってから騒ぎ出
す連中など噴飯物でしかないのだが、それでも彼女に対して好意を持っているのは
事実だ。もし彼女に告白でもしようものなら、よっぽど間抜けなミスでもしない
限り、押しに弱そうな彼女はその告白を受け入れる可能性は非常に高い。
一年間じっくりと親交を深めて関係を進展させる予定だったが、とてもじゃないが
そんな悠長な事はしていられなくなったようだ。
四月十日、昨夜一晩中今後の対策を考えたが、結局「ライバルを出し抜く」以外
に策は無いとの結論に至る。
「ライバルを出し抜く」、言い換えれば「先に神岸さんに告白」してしまう事
であり、これがまさに「シンプルイズベスト」ではないかと思う。押しに弱そうな
神岸さんの事だ、こちらから告白してしまえばなし崩しに受け入れてくれるだろう。
もし万が一告白を受け入れてくれなくても、「まずお友達」からにはなるだろう。こ
れだけでも他の奴等よりは有利な位置にあるし、あわよくば牽制にもなりうる。
問題は「如何に告白の場に持っていくか」だが、単独で事を起こすより「協力」を
仰いだ方がよさそうだ。一年間同じクラスだったとはいえ、会話もそれほど交わして
いない相手に、いきなり押しかけられては向こうも面食らって告白どころでは無くな
るかも知れない。それより知人からの紹介という形で告白の場に持っていくほうが
彼女も心の準備ができるのではないだろうか。
神岸さんには中学以来の友人が三人いる。一年の時に同じクラスだった長岡志保、今
現在同じクラスの佐藤雅史と藤田浩之。ただ、この三人の内最もというか、唯一頼りに
なるのは佐藤だけだ。
長岡に間を取り持つよう頼んでは冗談扱いされて、更にはその「頼んだ」という事実
すらも茶化されて言いふらされる恐れがある。一年間あいつの行状を嫌というほど間近
で見させられた人間なら誰でもそう思うだろう。
藤田については、あの目つきの悪さとやる気なさそうな態度が致命的だ。おそらく
こっちが頼んでも「面倒くせぇ」の一言で蹴られてしまいそうな気がする。何より問題
なのは三人の中で一番神岸さんと付き合いが深いと思われる所だ。毎朝のように一緒に
登校したり、屋上で二人で弁当を食べていたりと、一見恋人同士ではないかと疑いたく
なるような行動が多い。藤田本人にその気がなさそうなのが幸いではあるが、下手に藪
に蛇をつつくような真似はしたくない。
結局、佐藤に頼むしか方法がないが、佐藤なら話を持ち掛けやすいし、何だかんだで
色々協力してくれそうな気がする。しかし、佐藤が神岸さんに気が無さそうなのは本当に
運が良いとしか言いようが無い。サッカー部のエースで優等生で誰にでも人当たりが良い
、殆ど非の打ち所の無いような男が神岸さんにアタックをかけたら、即交際間違い無し
だろう。何故長年の付き合いながらそういう関係にならなかったのかは不思議で仕方ない
のだが、今はその幸運を喜ばねばならない。
本当ならすぐにでも佐藤に話を持ち掛けたいのだが、段取りも考えねばならないし、話
を切出すのは明日にしよう。
四月十一日、佐藤に話を持ちかけるも断られる。
「浩之に悪いから」、それが佐藤の言い分だ、というかその一点張りである。こちらとして
は「はいそうですか」と引き下がってしまうほど軽い問題ではない。かと言って佐藤にこれ以
上無理強いするのも得策ではないので、その場は引き下がって新しい対策を練る。
しかし「浩之に悪いから」という事は、藤田にはその気があるというのだろうか?それとも
既に藤田と神岸さんは付き合っているという事なのだろうか?いずれにしても本人に確かめな
い事には先へは進まない。あのおっかなそうな男に話を切り出すのは気が引けるが、だからと
言って他に手は見つからない。ここは思い切りが必要だ。
四月十二日、藤田に話を持切り出そううとするも果たせず。
休み時間は佐藤や長岡と話をしていたり、ふらふらとどこかへ出かけてしまったりと、捕まえ
る機会が全く無かった。全く腰の定まらない男だ。土曜日に告白に成功して、日曜日に神岸さん
とデートという計画は白紙に終わる。
四月十四日、またも藤田に話を切り出せず。
休み時間、ふらふらと出掛けるのを追いかけて話を切り出そうとしたが、中庭で、先週から
この学校に試験運用で来ているメイドロボットと楽しそうに話しをしていたので諦める。
犬にやたらと話し掛けるメイドロボットも珍しいが、そのメイドロボットとにこやかに話し
をしている藤田も珍しいといえば珍しい、あんなに楽しげに話しをする奴だとは思いもしなかった。
その後も休み時間ごとに藤田に接触を図るも、メイドロボットの所に行ったり、神岸さんと
話をしていたりと、まったく機会を得られず。藤田に罪はないがいい加減苛立ちを覚える。
四月十五日、どうしても藤田に話を切り出せず。
キューピットが意地悪な試練を与えているのだろうか?ふらふらしてないと思ったら長岡が教室
にやってきたり、宮内さんがやってきたりと藤田の周りは毎時間ごとに騒がしい。教室にいない
時には例のメイドロボット・・・(「マルチ」と言うらしい)と話をしていたり、そのマルチも
藤田が来るととっても嬉しそうだ。あの目つきの悪い犯罪者顔の男のどこがいいのか、と聞く
のは簡単だが、それは藤田の持つ魅力に気付いていない戯言なのかもしれない。何にしても藤田
が自分の中で油断ならぬ強敵になってきている。
四月十六日、十七日、十八日
神岸さんの人気の急上昇、佐藤の協力拒否、そして、どうしても藤田に話を切り出せない現状
・・・・・いずれも予想もしない事態の連続なり。
しかし、それが恋愛における試練の常識というなら我何を迷わん。一刻も早く藤田に話を切り
出し、続いて神岸さんに告白!
・・・・・・・明日は絶対にそうなるように祈ろう・・・・・・・・・・・・
四月十九日、今週はついていなかったのかも知れない。
放課後、マルチの掃除を手伝っている藤田を見かけた。
藤田、今週はずっとお前を観察する結果となってしまったが、お前がとってもいい奴で
ある事が分かった。人は見かけによらないというが、宮内さんや長岡、来栖川先輩、果て
はあの無愛想な保科までがお前と話をしている時は物凄く楽しそうなのが何となく分かっ
たような気がする。
・・・・・・・だから藤田よ、オレに神岸さんに告白するチャンスをくれないか?
四月二十一日、正直話を切り出す雰囲気では無し。
朝来てからずっと意気消沈気味の藤田。神岸さんが話しかけてもどこか元気が無い。とは
言っても、いつものやる気なさとは全く違う、何か妙に寂しげな感じだ。
とりあえず今日も話を切り出すのは諦める。
四月二十二日、藤田が気力を取り戻したようだが、どうも以前とは違う。
神岸さんと話をしていても、以前のようなぶっきらぼうな感じは影を潜め、以前と比べると妙に優しい。
自習の時間でも大半が雑談に夢中になっているというのに、真剣に問題集とにらめっこしている。
それどころか問題が自力で解けないと知るや否や、神岸さんを誘って隣の保科と三人で「勉強会」
を始めだした。
奴の中で何かが変わり始めている、早く手を打たなければ如何ともし難い事態になりそうな気が
する。
・・・・・・・・しかし、ふと思う事は、ここ一週間ばかり藤田に話を切り出す事ばかり考えて
いて、神岸さんへの地道なアプローチが全くおろそかになっていたような気がする。
神岸さんへのアプローチをしっかりしていれば、告白に漕ぎ着けなくとも「勉強会」の仲間に加わ
ったりする事ができて、自然神岸さんに自分をアピールする事が出来たのではないか?
もしかしてオレは「間抜け」なのだろうかと、自分自身に対して疑問を抱く。
四月二十三日、先日の反省から改めて基本に立ち返る事を試みる。
朝教室に入って、真っ先に神岸さんの席へ向かう。別に告白するわけではない。日頃の何気ない
挨拶から人間関係が始まるというセオリーを実践するだけだ。
「おはよう、神岸さん」、彼女は一瞬びっくりした表情を浮かべるが、すぐに笑顔をみせて
「おはよう、矢島君」と返してくれた。滅多に言葉を交わさない相手に対しての返事としては
まずまず希望を持ってもいいのかも知れない。
「・・・・・・あの、どうしたの?」、その後が続かず言葉を捜すオレに神岸さんが訝しげに尋ねる。
早く何か話題を出さねば・・・・・オレは焦る。
「あ、あの・・・・・」
「はい?」
「神岸さんって、いつも藤田と一緒に登校してるけど・・・・もしかして・・・」
「や、やだぁ、まだそんなんじゃないよ。そんなんじゃないんだけど・・・・・・(ぽっ)」
・・・・・・・・・オレは一体何をやってるのだろうか?
頬を真っ赤にしてもじもじしている神岸さんに、「ご、ごめん!変な事聞いちゃって!」
とたった今の会話を打ち消すように言うと、自分の席に向かう。
ある程度自分の中で流れができた路線を急に変更するのは、かえって墓穴を掘る事になりかねない
という事が分かった。
あっちこっちふらふらせずに、最初に決めた策を根気良く実践していく事に勤めよう。
しかし、神岸さんの藤田に対する感情はどうみても「お友達」や「幼馴染」に対するそれとは違う
ような気がする。もしかしてもう手遅れなのではないのだろうか?
いや、まだ「付き合っている」までは至っていないのだから、まだまだこちらにもチャンスはある
はずだ。勝負は下駄を履くまでわからない、藤田の方に彼女に対して気がなければオレが入り込む隙
は充分にある!
四月二十四日、二十五日、二十六日、二十七日
・・・・・・神岸さんをゲットする作戦のはずなのに、肝心の神岸さんが作戦を妨害している。
改めて、藤田に接触をはかる作戦に出たが、ここぞという時になると決まって神岸さんが藤田の
所にやってくるから、全然藤田に話し掛ける事ができない。今週に入ってから神岸さんが藤田の所
に来る回数がやたらと増えている。藤田も藤田で、全然面倒くさそう、嫌そうな顔してないし・・
・・・・・もう、二人はくっついているのではないのだろうか?
いや、まだ分からん。数日前は神岸さんは「付き合ってる」という事を否定していたし、今はそれ
を信じる他ない。
四月二十八日、昼休み、今日もあの二人は一緒に食事をしていたようだ。
神岸さんの作った弁当、物凄くうまいんだろうなぁ・・・・・・・・ちくしょう、藤田のやつめ・・・
明日は休日、二人の仲が進展しないのを祈って眠りにつく。
四月三十日、とうとう藤田と話す機会ができた!
今まで全く機会が訪れなかったのは、おそらくキューピットの試練だったに違いない。「少ない
チャンスをものにする事の大切さ」を、キューピットはオレに教えたかったのだろう。
一時間目が終わると神岸さんは教室を出た、トイレだろうか?保科は職員室へプリントを受け取りに
行ったし、藤田の近くには邪魔な者は誰もいない。この間隙を逃さずオレは藤田の席へまっしぐらに
突き進む。
「な、なんだ・・・・矢島、そんなに息荒くして?」
「ぜい・・・ぜい・・・・あ、す、すまん・・・・」
「言っとくけど、オレにはその気ねーからな」
「そうじゃないっての!!」オレは思わず怒鳴る、オレだってそんな気は全くないわ。
「まあ、信じるとするか・・・・で、一体そんなに急いて何の用だ?」
あいまいな言い方、遠まわしな言い方はかえって話をややこしくしかねない。ここは正攻法だ。
オレは軽くすぅっと息を吸って、胸の鼓動を抑える。藤田は怪訝な表情を見せるが、そんな事知った
こっちゃない。重大な話をしなければならない時にあがっていてはどうしようもない。せっかく巡りに
巡ってきたチャンスを無駄にするわけにはいかないのだ。
正直、ここまで至るのに幾多の困難があった。しかし、オレはそれにめげる事無く初心を貫き、つい
に藤田との「対決の場」に来る事が出来た。もう怖いものは無い、オレは勝利を確信する。このまま藤田
が神岸さんと付き合っている事を否定し、オレが神岸さんに告白する段取りをつけてもらい、神岸さんは
オレの告白を受け入れ・・・・オレの脳裏に、これからの予想がまるで既成事実のように浮かび上がって
くる。
不安な要素はすべて脳裏から消え去っていた、いや、もし残っていたとしても、わずかなチャンスを
ものにした事から来るオレの絶対な自信の前では、もはやこれから先に待っているであろう限りなき喜び
を彩る「過去の思い出」でしかない。さて、ゴールデンウィークは神岸さんとどこへ遊びに行こうか?
いや、修学旅行で、二人っきりで自由行動って事も考えた方がいいな。
これから先の明るい未来を考えて緊張も大分ほぐれたオレは、藤田が聞き漏らさないよう、ゆっくり
間延びしないように言った。
「単刀直入に聞くが、藤田、お前神岸さんと付き合ってるのか?」
五月七日、・・・・・・・・・・・・北海道は快晴だ・・・・・・・・
リムジンバスを降り、皆が思い思いのグループを組んでそれぞれ目的の場へと向かっていくのをぼんや
りと眺めていると、視界に神岸さんと藤田の姿が目に入った。その仲睦まじい恋人同士の姿に、オレは
数日前、藤田に「神岸さんと付き合っているのか?」と聞いた時の事を思い出した。
「単刀直入に聞くが、藤田、お前神岸さんと付き合ってるのか?」
オレがそう聞くと、藤田はちょっと逡巡しながらもオレから目を逸らさず、少し照れくさげな顔をして
はっきりと言った。
「ああ、付き合ってる」
・・・・・・・・・ほえ・・・・・・・・・・・?
「付き合っている」といのは、「お友達として」?いや、「お友達として」というのなら、こんなに
真面目な顔して言わないよな?でも、あれ?オレが予想していた展開と全然ちがうんですけど・・・?
「おーい、矢島?」
藤田はオレの目の前で手をひらひらとさせ、オレは我に返った。そして先ほどまでのオレの予想が
あくまで自分勝手な希望的観測による、果てしなく妄想に近い予想でしかなかった事を思い知った。
「えっと・・・・藤田は神岸さんと『恋人同士』の付き合いをしている・・・と?」
「ま、まあ・・・単刀直入に言うとそうだがな」
藤田は、頬をぽりぽりと掻きながら、あさっての方を向いて答えた。・・・・・・・決定的一撃。
「しかし、また何でそんなことを聞くんだ?」
「あ、いや・・・そのな、バスケ部の奴でさ、神岸さんにまぁ・・・その・・・・気がある奴がいて
それで、オレに『同じクラスだからちょっと確かめてみてくれないか?』って頼まれて・・・あ、そい
つの名前を言うのは勘弁してくれ」
オレはしどろもどろになりながら、ある事無い事織り交ぜて言った。ただし、オレもその一人でなおか
つ告白を目論んでいた事は当然伏せておいた。
「まあ、別にそいつが誰だかは興味ないが・・・・すまねえが、あかりは渡せない。そういう事だ」
藤田は苦笑しながらそう言った。その言葉はまるでオレに向けられたがごとく、ぐさりと胸に突き刺さっ
た。
「藤田・・・お前、無茶苦茶本気なんだな?」
「ああ・・・・随分待たせちまったからな・・・・・」
藤田は穏やかな眼差しの中に真剣な光を見せて、ぽつりぽつりと語りだした。
「・・・・あかりとはずっと長い付き合いでさ、いつもいつもオレのそばに居てくれて、オレをずっと
思っていてくれて、オレはあいつの気持ちを知っていたのに、オレだって同じようにあいつを思っていた
のに、それを認めるのが照れくさくて、認めることによって今までの関係が壊れるんじゃないかと恐れて
・・・ずっと目をそらしたままだったんだ・・・・」
「・・・・・・・・・」
「でもさ、色々あって落ち込んでた時にあいつがそばにいてくれて、あいつがオレにとってどんなに
大切な女の子なのか分かったんだ。そして関係を進めていく事を恐れちゃいけないって事もな。・・・
・・・大事な人に何も言わずに、そいつがいなくなってからその存在の大きさに気付いてからでは遅い
んだ。言えるうちに、自分の心に素直になれるうちに出来る事をしておかないと絶対に後悔する。
だからオレはあかりに『好き』だと言って、あかりもそれを受け止めてくれた・・・・・これから先は
どうなるか、神様でもねえオレ達には分からねぇ。だけど先に進んだ事を絶対後悔なんてしないように
、オレはあいつををずっと大事にしていく・・・」
藤田はそこまで話すと、「言い過ぎたか?」と少し慌てたがオレは「いやいや」と手を振った。
「お前がどれだけ神岸さんに惚れこんでるかってのが良く分かったよ」
・・・・・・・・・・だめだ、オレの入る余地全く無し
「そこまで言われたらなぁ・・・さすがに、オレもこれ以上はどうにもならんしな。バスケ部の奴に
はそういう事だから諦めろと伝えておくよ」
オレはきっぱりと諦めの意味を込めて言った。途端に藤田の血相が変わった。オレはすかさず藤田の
席から離れた。
「おいこら!『あかりは渡せねえ』だけでいいんだよ!!」
藤田が慌てて叫ぶが、しかし、それがちょうど席に戻ってきた保科にばっちり聞え、保科はにやにや
と藤田に笑いかけてきた。
「いやぁ~~・・・朝っぱらから熱愛宣言とは、やるなぁ・・・藤田君♪」
「い、いや・・・これは別に熱愛宣言とかそういう意味じゃなくて、おい、矢島!!さっきの事言い
やがったらただじゃおかねぇぞ!!」
後ろから藤田の声が聞えたが、オレはそれに構わず自分の席に戻った。・・・・・失恋男のからかい
ぐらい寛大に受け止めてくれぇ・・・・・ちくしょー・・・・・・
「ふぅ・・・・」
二人の仲睦まじく寄り添ってる姿を遠くから眺めて、オレはため息をついた。まったくどこからどう
見てもお似合いだぜ、あの二人はよぉ・・・・・
藤田の話を聞いた後も、尚もオレは未練がましく「もし、もう少し早く告白の段取りがついていれ
ば・・・」と考えていた。しかし、藤田の話を脳裏に何度も繰り返していくうちに、今までオレが見て
きた二人の姿を思い返す度に、結局、告白の段取りをつけても無駄であった事を知るだけだった。
もし仮に藤田に話を切り出しても、藤田が「付き合っていない」と言っても、おそらく藤田が目を
逸らしていた気持ちを藤田の目の前に突きつける結果に終わったかもしれない。もっと都合よく考え
てみても、神岸さんはきっぱりとオレの告白を断ったに違いない・・・・・ずっとずっと藤田を想って
いたその気持ちは、ちょっとやそっと・・・いや、どんなに強引に押してもぴくりとも動かなかっただ
ろう・・・・「押しに弱い」などと思っていたオレは、神岸さんの事を碌に分かっていなかったわけ
だ。そんなオレが彼女にアタックをかけた所でとんだ道化者でしかなかっただろう。
しかし、それでもオレは、藤田に「神岸さんと付き合ってるか?」と聞いた事、藤田から「とどめを
刺された」事を後悔してはいない。いくら碌に分かっていなかったとはいえ、オレはオレなりに神岸さん
が好きだった。例えその想いが藤田のそれに遠く及ばないにしても、オレは本気だった。
出来る事をしないで後悔なんかしたくなかった、だからオレはオレのした事を後悔なんてしない。
失恋した事実は事実と受け止めて、また新しい恋を探せばいいだけだ・・・・・・・・そういう
やり直しはいくらだって効く。
「矢島く~~~~ん、何してるの~~~~~~~?」
「こっちこっち、もうすぐバスが来るわよ~~~~~~」
同じグループの女の子達が手を振ってオレに声をかけてきた。そうだ、失恋したからってまだまだ
終わったわけじゃないぞ!オレと一緒に修学旅行を楽しんでくれる女の子がいるんだ。決着のついた
事にいつまでもうじうじしていてもしょうがないさ。
・・・・・・・・・・・・・・さて、修学旅行を存分に楽しむとするか!!
オレは「ごめんごめん」と謝りながら彼女達のもとへと駈け出した。
終
後書きのようなもの
年明けの最初の話は、つんつん頭の失恋話となりました(笑)
出来る限りつんつん頭を「ピエロ」扱いせず、あくまで「空気読めないアホだけど、気持ちは分かる
よ」という感じで話を書いたのですが、まあ、相手が笑いかけただけで、その先も上手くいくと思い込
んでしまうのは、話中のつんつん頭ほどでないにしろ、若い頃は少なからずの人が経験したのでは
ないかと思うのですが、いかがでしょうか?思い込みというのは、それが過度になれば狂気への道ですが
かといって、それが無ければ何事も先にはすすまない厄介なもので、つんつん頭の思い込みを「他人事
とは思えない」と感じていただけたら真に幸い、感じられなかったとしたら筆者の至らなさが故であり
ます。
それでは本年も「マルチ」を宜しくお願い致します。
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