「んでわ、おかわりいっきま~~~す♪」
『ふふっ、わたしの作った梅酒を気に入ってくれてうれしいわ・・・』
そろそろ酔いもピークに達しながらも、美味しそうにお酒を飲む祐一さん。わたしは見
とれるようにその様子を眺めます。
しかし、一体わたしどうしたんでしょう?こんなになるまで祐一さんにお酒を飲ませた
り、それをぽ~~~っと眺めたり、さっきからどうかしています。
そう、飲みだす少し前から・・・・・・・・
午後の十時を過ぎて、名雪もあゆちゃんも真琴も眠い目をこすりながら各自の寝床へと
行き、居間にはわたしと祐一さんの二人っきりになりました。
わたしは丁度いい機会だと思い、ここ最近になって気にかかっていたことを思い切って
祐一さんに聞くことにしました。
祐一さんがこの家に来て早二ヶ月、来月には名雪共々三年生になるわけでそろそろ進路
を決めなければなりません。
ただ、その「祐一さんの進路」が、わたしには気がかりでした。
祐一さんがこの家に来て、そしてあゆちゃんと真琴がこの家で暮らすようになって、以
前よりも家の中が明るく賑やかになりました。
いえ、わたしと名雪の二人で暮らしていた時が、暗く寂しかったわけではありません。
でも、もう以前のようには戻れません。祐一さんがいて皆がいるこの暮らしを知ってし
まったからには・・・・・・・・。
できれば、ではなく・・・・どうしても祐一さんにはこの家に残って欲しかった。わが
ままで身勝手なお願いですが、祐一さんはこの家に、この家族にとってかけがえのない人
になってしまったんです。
名雪も、あゆちゃんも、真琴も、皆祐一さんにここにいて欲しいと願っています。
そしてわたしも・・・・・・・
そんなわたしのお願いに、祐一さんは少し照れくさげに、それでも嬉しそうに応えてく
れました。
「オレ・・・、ずっとこの家にいます。みんなが、秋子さんがオレにここにいて欲しい
と思っていてくれるなら・・・。いや、オレこの家が大好きだから・・・・・」
その言葉にわたしは、嬉しさとそれ以上の何かがこみ上げてくるのを感じ、しばし祐一
さんをぼーっと見ていました。
「あ、秋子さん・・・どうしたんですか!?」
そんなわたしの様子を見て、祐一さんが慌てて声をかけました。わたしははっと正気づ
くとばつ悪そうに首を横にぶんぶんと振り
「い、いえ・・・どうしたんでしょうね?ほっとして、嬉しくなったら何故か・・・もう・・・・・・・・・
わたしったらいやですわ・・・・・」
「あはははははは(汗)」と少し冷や汗まじりに、誤魔化すように笑いました。
だけど、嬉しさからくる気持ちの高ぶりは抑えきれなく
「ねえ祐一さん、一杯どうですか・・・・?」
「え・・・?一杯って・・・」
「漬けておいた梅酒があるんですが、祐一さんがこの家にずっといてくれるお祝いで・・・ね」
「は、はあ・・・・」
戸惑いの表情をみせて呆然としている祐一さんをテーブルへと促し、わたしは二人のグラ
スとわたし特製の梅酒を並べ、二人だけの宴の支度を始めました。
最初は今ひとつ状況がつかめなかった祐一さんも、お酒がまわりだすと途端に饒舌になり
、名雪、あゆちゃん、真琴ととの「これからの生活設計」なんかも熱弁しだしてくれて、二
人の宴は終わる感じを見せずに今に至っているわけです。
だけど、本当にわたし・・・・どうしたんでしょうか
それは、祐一さんがここにいてくれるというのはとっても嬉しいし、わたしだって娘達と
同じように望んでいたことです。
でも、祐一さんの返事を聞いた時の、胸が優しく締められるような気持ち、そして抑えき
な浮き立った気持ち・・・・娘達の恋人、わたしの家族・・・・ただそれだけなんでしょう
か・・・それだけではしゃげるのでしょうか・・・・・?
そんなわたしの迷いを断ち切るように、唸り声が聞こえました。
「う~~~・・・・」
そろそろ祐一さんも限界にきたようで、テーブルにうっ伏していました。どうやら二人の
宴も終わりのようです。
そしてわたしの心の高揚も、それからくる迷いも、うやむやのうちに終わりそうです。朝
がくれば、普段どおりにわたしは祐一さんに接するでしょう。
『本当にそれで終わるんでしょうか?』
わたしの中でわたしが語りかけてきます、正直なところどうなんでしょうか・・・?
ぶんぶんっ
心にひっかかるものを振り払うように、わたしは祐一さんを揺り起こしました。
「祐一さん、お部屋に戻らないと風邪をひいてしまいますよ」
「ふ、ふわい・・・・・わかりまひた・・・・」
祐一さんはのろのろと起き上がりました、わたしは祐一さんの傍らに寄って祐一さんの体を
支えてゆっくりと歩きだします。
間近に感じる祐一さんの息遣い、そして祐一さんの体の温かさ・・・・・・
それらがまた、わたしの中で何かをこみあげさせて・・・・・・
「い、いけませんっ・・・・!!ああっ!?」
祐一さんの足とわたしの足がもつれあい、そのまま・・・・・
「きゃっ」
どすんっ!
二人とも倒れてしまったのですが、その体勢が・・・・・、祐一さんがわたしの上に覆い被
さるようになってしまって、さらに祐一さんの両手がわたしを抱きかかえるような感じになっ
ってしまっています。
「ゆ、祐一さん・・・・だ、だめです・・・・」
慌ててわたしの上にいる祐一さんをどけようとするのですが、何故かそうするのに「ためら
い」を感じ、どけようとする手はそのまま祐一さんの体に吸い付くように離れません。
どきん・・・どきん・・・・どきん・・・・・・・・・!!
そして高鳴る胸の鼓動
『やっ、やだ・・・・・・!』
怯えとか負の感情ではない胸の高鳴り・・・、何かを期待しているような胸の高まり・・・
うやむやのうちに消えてしまうはずだった「心の高揚」が、またわたしのなかで起こりだし、
わたしはそれに戸惑い・・・・、いえ、もう「その感情」を認めなければならない所まできて
しまったようです。
娘と同じ年の男の子、姉の子供でわたしとは叔母と甥の関係・・・・、世間では、いえ娘
達だって許してはくれないであろうその「想い」
だけど、成長した彼と共にすごした時のなかで、「想い」急激でなくなくとも緩やかにわた
しの中でわたし自身が意識しないうちに大きくなっていきました。
もう目をそらすことも、うやむやにしてしまう事もできないくらいに・・・・・・・
「祐一さんっ・・・!」
背中にまわした手にいっそう力を込めて抱きしめようとした時・・・・
「すぴ~~~~すぴ~~~~~」
子供のころから変わらない可愛らしい寝息の音が、わたしの耳に入ってきました。
「・・・・・・・・・・・・(汗)」
まるで気勢を削ぐかのような能転気そうな寝息に、わたしは気恥ずかしさを感じ
「もうっ!」
とちょっと乱暴に祐一さんの体をどけました。
ごろんと転がった祐一さんは、目覚める様子もなくそのまま幸せそうに眠っています。そん
な祐一さんを眺めているうちに、先程の激しい心の高揚も、気恥ずかしい思いも落ち着いてゆ
くのを感じました。
「ふふっ」
思わず出してしまった笑い声、それは子供の頃と変わらない祐一さんの無邪気な寝姿に対し
てでしょうか?そんな祐一さんに「想い」をぶつけてしまおうとしたわたしに対してでしょう
か?
おそらくその両方なんでしょうね。でももう、戸惑いもその「事実」から目を逸らそうとい
う気持ちも、気恥ずかしいという気持ちも、わたしの中にはありませんでした。
わたしの中の気持ちを認めた安堵の笑い・・・・なんでしょうね。
結局、祐一さんの部屋まで運んでいくのはあきらめ、ソファーの上に祐一さんの体を横たえ
てその上に毛布をかけました。
すやすやと眠る祐一さんを飽きもせず眺めるわたしですが、先ほどのような高揚感は起きま
せん。
でも、穏やかで暖かな想いがわたしの中でゆっくりと流れつづけています。
それは背徳の想い、許されることの無い想い。だけどもう打ち消すことはできない想い・・・
・・・・。今わたしにできることは、その想いを認め逃げないこと、そしてその想いが故に祐一
さんを、名雪を、あゆちゃんを、真琴を不幸にしないこと。
これから先「どうなっていく」のかは分かりません、でもきっと大丈夫です。
わたしが求めるのは祐一さんとだけの幸せではなく、祐一さんの皆の幸せだから・・・・
祐一さんの髪に手を伸ばし、そうっと撫で上げます。祐一さんが気持ちよさそうに「う~~ん」
と寝言をあげます。
そんな祐一さんの姿に胸がぽっと熱くなります、そして自然と口にでる言葉
「『背徳』してもいいですか・・・・・・・?」
・・・・ってなんでそんな事を言うんでしょう!?
「いやだわ・・・」と苦笑してもう一度言い直します、今のわたしの素直な想いを。
「大好きですよ・・・・・祐一さん・・・・・・」
そう呟くと、わたしは祐一さんの唇にそっと軽く唇を重ねました
終
後書き
「了承学園」以外でTH以外のSSを書くのって初めてだよな・・・・
普段から「秋子さん萌えじゃ~~~」と言ってるわりには全然秋子さんSS書いていないという
のは、我ながらちょっとおかしいかもと、初めての秋子さんSSに挑んだわけですが、中々「初挑
戦」というのは上手くいかなくて、何度も何度も書き直しな羽目になりました。
それでもなんとか「オレの大好きな秋子さんはこうなんじゃい!!」という想い(煩悩?)で何
とか書き上げた次第です。
まあ、「ファンタジー」ですからね、あんまり突き詰めても仕方ないと(^^;;