マルチの話 クリスマス番外篇
 
 二人で一つのプレゼント 
 

                           くのうなおき
 


 
 その日は朝方からいつもより肌寒さを感じ、空は厚い雲に覆われて、午後になってから
ちらほらと降り出した雪は夕方になって一層強くなっていった。例年より早く、そしてクリ
スマスの日に合わせたように降り出した雪は、まるで初めてクリスマスを迎えるマルチちゃ
んへのプレゼントのようにも思えた。
 
 
 
 「わあ・・・きれいです・・・・」
 
 
 
 生まれて初めて見る雪の舞う夜空の光景に、マルチちゃんは感嘆の声をあげながら食い入
るようにじっと見つめていた。パーティーの準備も殆ど終わり、わたしもマルチちゃんのそ
ばによって窓越しに見える夜空の幻想的な光景を見ることにした。
 
 「この調子で降り続けると、明日の朝は一面真っ白になりそうだよ」         
 
 「え?そうすると『雪合戦』なんかができるんでしょうか?」
 
 「そうだね、雪合戦もできるし雪だるまもたくさん作れると思うよ」
 
 するとマルチちゃんは、ぱっと顔を輝かせて
 
 「あ、雪だるまもいいです~~~~」
 
 と、すごく嬉しそうに言った。
 
 「じゃ明日は浩之ちゃんもバイトお休みだし、三人で一緒に雪だるまつくろうか?」
 
 「はいっ!」
 
 と元気良くこたえると、マルチちゃんは壁の時計を見て、そしてテーブルの上に置いてある
紙袋を見た。わたしが浩之ちゃんの名前を出したせいで、また気になったみたいだね。
 
 「もうすぐ浩之ちゃん帰ってくるよ、ふふっマルチちゃんったら気になってしょうがない
んだね」
 
 マルチちゃんはたちまち顔をあからめて
 
 「は、はい・・・・・・」
 
 と、もじもじしながら小声でぼそぼそと言った。わたしはそんなマルチちゃんの頭をそっと
撫でた。
 
 「でも、それは仕方ないよ。マルチちゃんの初めての浩之ちゃんへのクリスマスプレゼント
なんだし、浩之ちゃんが喜んでくれる顔を早く見たいっていう気持ちはよく分かるんだから」
 
 「あかりさんも、初めて浩之さんにプレゼントをあげた時って、こういう気持ちだったんで
すか?」
 
 「うん、早く浩之ちゃんに渡したくて、ずっとずっと気になっていたよ。どんな顔して喜ん
でくれるかな?とか、大切にしてくれるかな?とか、色々考えてて・・・・」
 
 ・・・・・と、「プレゼントをあげた後のこと」まで考えていて、志保にからかわれたこと
は内緒にしておこっと。
 
 そう言うと、マルチちゃんの顔が次第に曇ってきた。そして申し訳なさそうな顔でわたしを
見つめた。
 
 「・・・?どうしたの、マルチちゃん?」
 
 「あかりさん、今年はわたしの為に、浩之さんへのプレゼントを渡せなくなったから、それが
大変申し訳なくて・・・・」
 
 そう、今年はマルチちゃんにつきっきりで、プレゼントのマフラーを編むのを手伝っていたか
ら、結局自分のプレゼントまで手が回らなかった。だけどそれはわたしが望んでやったことだか
ら。わたしがマルチちゃんに、マフラーを編むことを薦めた、まだ編物に慣れていないマルチち
ゃんだからわたしがつきっきりでないと上手くいかないのは承知の上で。
 
 
 
 

 そしてその理由は・・・・・・・
 
 
 
 
 

 わたしは、すまなそうな表情をしているマルチちゃんに顔を寄せると、こつんと額を軽く叩いた。
 
 「こらっ、あのマフラーはマルチちゃんだけのプレゼントじゃないのよ」
 
 「え?え?え?」
 
 わたしの言葉に、何か大事なことを忘れたのではないかと慌てるマルチちゃん。
 
 
 「あのマフラーはね、マルチちゃんの想いだけじゃなく、わたしの想いも編みこんであるのよ」
 
 
 
 「あ・・・・・・」
 
 
 
 わたしの言いたいことが分かったように、マルチちゃんは声をあげた。
 
 
 
 
 「そうですよね、あのマフラーは、わたしだけじゃなくてあかりさんからの浩之さんへのプレゼ
ントでもあるんですよね」
 
 
 
 「そうだよ、わたし達二人からの・・・・・」
 
 
 
 
 
 
 
 いつまでもずっと一緒に、浩之ちゃんのそばにいたいという想いを込めたプレゼント・・・・。
 
 
 
 
 
 
 ガチャ、と玄関の鍵を開ける音がしたかと思うと、「ただいま~~~~」と、待ちに待った人の
声が聞こえた。
 
 「あっ、浩之さんです~~~~」
 
 マルチちゃんが嬉しそうに声をあげると紙袋を手にして玄関へ駆け出した。
 
 「もう、マルチちゃんったらせっかちなんだから」
 
 ふふっと笑いながら言うと、マルチちゃんは紙袋とわたしを見て「えへへへ・・・」と照れくさ
げに笑った。
 
 「さ、早く浩之ちゃんの喜ぶ顔を見に行こうよ」
 
 「はいっ!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  と、わたし達が玄関で浩之ちゃんの首にマフラーを巻いて、浩之ちゃんが照れくさげ
な顔をしながらも、喜びをいっぱいにした顔で「サンキュな・・・・」と言ってくれるシ
ーンを期待したんだけど・・・・・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 「ほらほら浩之ったら、そんな仏頂面してないでもっと嬉しそうな顔しなさいよ~~~♪」
 
 パーティーが始まってから、もう何度目になるのだろうか。綾香さんがむすっとした顔をした
浩之ちゃんを囃し立てていた。
 
 「そうそう、そんな顔してたらいい写真が撮れないでしょ~~~?」
 
 と、志保も笑いながらカメラを構えている。
 
 「写真って・・・!!おいっ、これ撮って何しようってんだ!!?」
 
 顔をまっかにして志保に怒鳴る浩之ちゃんだが、志保は涼しい顔をしてそれを受け流し
 
 「やーねえ人聞きの悪い、今回のパーティーの参加者のみに限定配布するだけよん♪あ、今回
受験で参加できない姫川さんと松原さんにも特別にね~~~」
 
 「て、てめえ・・・・・」
 
 「あら~~~?ヒロは何で嫌がるのかな~~~?あんたのために可愛い女の子が二人、一生懸命
マフラーを編んでくれて、そして三人一緒にそれを巻いている・・・・とても幸せなことだとは思
わないの?」
 
 「そ、それはそうだけどよ・・・・・・」
 
 志保の「正論」の前に、しどろもどろになる浩之ちゃん、そしてさらに追い討ちをかけるように
 

 「そうそう、観念して素直に嬉しい顔して被写体にならんかい♪」
 
 
 「こうなったっら年貢の納めどきダヨ、ヒロユキ♪」
 
 
 「あははは・・・・浩之、これはもう逃げられないよ」
 
 「う~~~んとってもいい感じなんだけどな~。藤田君、恥ずかしがることはないと思うよ」
 

 ・・・・・・・こくこく・・・・・・
 

 「う、うぐっ・・・・・」
 
 
 
 それを後押しする保科さん、レミイ、雅史ちゃん、雛山さん、芹香さんの前に、浩之ちゃんは
顔を赤くしながら俯き、小さく唸り声をあげるだけだった。
 
 
 浩之ちゃんの首にはわたし達が編んだマフラーが巻かれていて、それは三人が巻けるくらい
長いもので、浩之ちゃんを真中にして両側のわたしとマルチちゃんの首にも巻かれていた。
 そして、当然のようにわたし達三人は体をぴったりと寄せ合った状態になり、今夜のクリス
マスパーティーの「肴」になっていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 浩之ちゃんのアルバイト先が来栖川エレクトロニクスなのだから、芹香さん綾香さんも一緒
に来るということはある意味当然だったんだけど、浩之ちゃんにわたし達のプレゼントを・・
ということばかり考えていたわたし達はそれに気づかず、玄関で綾香さんに紙袋に目をつけら
れてしまい、芹香さん綾香さんの「立合い」のもとわたし達のプレゼントを披露することとな
ってしまった。そして当然のように、パーティーの間中マフラーを巻いていることとなってし
まった。
 

 そして今現在に至ってるわけなんだけど、浩之ちゃんはパーティーが始まってから、ずっと
嫌そうな顔をしている。「浩之ちゃんの喜ぶ顔」を期待していたわたし達にはとてもがっかり
な結果だと思うけど、でも分かってる。浩之ちゃんが本当はとっても嬉しく思ってることを。
 憮然とした顔をしていても、時折マフラーをじっと見つめ、そしてわたし達を見る眼差しは
むすっとした口もととは対照的に、とっても優しさにあふれていた。きっとパーティが終わっ
って皆が帰ってから、その優しい目で「サンキュな・・・・」と言ってくれるはずと、わたし
達は信じている。
 
 
 
 
 
 できれば、皆の前でもそう言ってくれるともっと嬉しいんだけどね♪
 
 
 

 まあ、それは来年のクリスマスの課題ということで、今はその優しい眼差しに満足して、わ
たし達は体をますます密着させた。
 
 
 
 「はいは~~~い、いいわよ三人とも、そのままの状態でじっとしててね~~~~♪」
 

 カメラを構える志保の声に、浩之ちゃんもとうとう観念して開き直ったみたいで、わたしと
マルチちゃんの肩を抱いて一層体を密着させた
 
 
 「ひゅ~~~ひゅ~~~、ヒロったら大胆ねぇ~~~~~~♪」
 

 「う、うっせえ!!早く撮りやがれっての!!」
 
 「はいはい、照れない照れない、それじゃ三人とも笑って笑って~~~~うん、いいわよその
表情、それでは皆さん声をあわせていきましょうか~~~☆」
 
 
 

 「「「「「「「せ~~~のっ!!(せ~~のっ)」」」」」」」
 
 
 

  パシャッ☆
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 シャッターが切られる直前に、ふと見上げた先に映った浩之ちゃんの表情は、照れくささ
をただよわせながらも、とっても嬉しそうな顔をしていた。マルチちゃんもそれに気づいた
ようで、写真を撮り終った後、浩之ちゃんごしに顔を見合わせて微笑みあった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    終
 
 
 

 
 
 
 
 

 
 
 後書き
 
 今回は、エッチネタ、妄想ネタは一切ございません。いや、本当ですよ。下を見ても「裏」
バージョンなんてありませんよ!!(^^;;
 
 と、しょーもない話は脇にいて、今回は、「マルチにとっての初めてのクリスマス」をテー
マにと話を書いたのですが、なんかいつもと変わらないな~~~(苦笑)三人の想いというの
をクリスマスにかこつけて改めて書き足した感じですが、まあ、それはそれで良し!!
 
 結局こういう展開が「マルチの話」の基本スタンスなんだなあ・・・と、今更ながら再認識
した次第です。
 
 
 
 
 
 



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