20000HIT記念贈呈SS To Heart マルチ 緑色の墓標 くのうなおき 生きている方々にとって「死」とは宿命です。その宿命に逆らう事のできるわたしは 「生」と「死」が織り成す「人生」という流れの中にぽつんと立っている一本のくいのよう です。一緒に流れていきたい、でもわたしが行ってしまえば悲しむ方々がいると思うと それはできません。 わたしは人間の皆様の幸せの為に生まれたのですから。 でもわたしの「死」を止めてしまう方々もやがては流れの彼方へ去って行ってしまう、 結局わたしだけが取り残され、その悲しみ、苦しみを何度も何度も繰り返していく。 浩之さんがもうすぐ死んでしまう。それを知ったときからわたしの中に芽生えたこの思い は日に日にわたしを苛んでゆきました。 そんなこと最初からわかっていたはずなのに、日々の楽しかった生活がその事から目を そらさせていました。永遠に続くものと思っていました。 ご家族の皆様は、あかりさんに、わたしに色々気を使ってくださいましたが、二人にとって は有難い筈の気遣いも何の役にも立ちませんでした。 そんな事を知られるわけにはいかず、わたしは気丈なふりをしてごまかしていましたが、それ がさらにわたしに苦しみを与えていました。 わたしは、自分がロボットであることをうらみました。 浩之さんとの別れの時がきました。 浩之さんは最後の力を振り絞って、あかりさんとわたしに語りかけていました。 「ごめんな・・あかり・・先にいっちまうことに・・なっちまって・・・・」 「マルチ・・・あかりをよろしく・・・頼む・・・あかりとお前と・・・暮らせて・・・・俺・・は・・・幸せ・・・ だった・・」 あかりさんもわたしも、ただ力なく頷くだけでした。それでも浩之さんはわたし達に笑顔を見せて言いました。 「俺達・・・は・・・ずっと・・・一緒・・・・だ・・」 浩之さんは、息を引き取りました。 すすり泣きの声が周りから聞こえました。でもあかりさんとわたしはただ、茫然としているだけでした。 あまりにも深い悲しみの前では泣く事すらできない事を知りました。 それから1週間が過ぎました。 浩之さんの夢をみても、朝がくれば浩之さんの居ない現実が待っている、そんなつらい思いはしたくないから 浩之さんの夢をみないようにしていました。でもその日、浩之さんは現れました。 夢に出てきた浩之さんに違和感を感じました。 夢はどこまでいっても夢で「存在」はしていません。しかし、そこに居る浩之さんは確かに「存在」していたのです。 浩之さんの優しい「こころ」を一杯感じました。 「浩之さん・・・・?」 「言っただろ、ずっと一緒だって」 初めて出会ったときの姿で、浩之さんは微笑みながら言いました。 「本当に、本当に浩之さんなんですね!? ”夢”ではないんですね!?」 自分でも変な言い方とは思いつつも、そう聞かずにはいられませんでした。 「体は死んでも、”こころ”は生きている。ただ・・・・・・」 浩之さんはつらそうに続けました。 「もう、お前の夢の中でしか語り掛けることができない、お前の頭を撫でてやることもできない・・・」 「そんな・・・! わたしは一緒にいられるだけでいいんです!! 浩之さんが居てくれる・・・・それだけでうれしいん です!!」 「そう言ってくれるか、サンキュな・・・。俺はおまえの中でずっと生き続ける、お前が生き続ける限り」 「とすると、わたしは浩之さんのお墓代わりと云う事になりますね」 「お前なあ」 苦笑いして、すぐに真面目な顔になって言いました。 「あかりを元気付けてやってくれ、俺はいつも傍にいるからって、辛気くさい顔でここにきやがったらデコピン、 耳ひっぱり、頬つねの3点セット百連発だって」 「はいっ、わかりました!」 目が覚めてからしばらく涙が止まりませんでした。 ”まったく泣き虫なんだからなあ・・・”と浩之さんが苦笑い しているようでした。 浩之さんとの死別からずっと、あかりさんはベッドの上で茫然と天井を見つめる日々を過ごしていました。 わたしはあかりさんの傍によると、あかりさんの手をそっと握りました。 「あかりさん、浩之さんを感じませんか?」 語り掛けることもできない、抱きしめてあげることもできない、それでもあかりさんは感じ取ることができると思い ました。小さい頃からいつも一緒にいた、最愛の人の「こころ」を。 やがてあかりさんは涙をぽろぽろとこぼし、わたしの手を両手で握り「浩之ちゃん、浩之ちゃんなんだね」と言いました。 「浩之ちゃんは、マルチちゃんの中で生きているんだね」 微笑みながら話すあかりさんに先程までの憔悴しきっていた表情はありませんでした。 「はいっ、だから元気を出してください。浩之さんが言ってました、俺はいつも傍にいる、辛気くさい顔して来やがったらデコピン、耳ひっぱり、頬つねの3点セット百連発だって」 「3点セット百連発は困るよおー」 しばらくお互いにクスクスと笑い会っていました。 「マルチちゃん、ありがとうね・・・・・・・、浩之ちゃん、浩之ちゃんの所に行くのはまだ先になりそうだから、気長に 待っててね。3点セットはいやだから・・・ね」 その時のあかりさんの笑顔はとっても若やいでいました。 「さてと・・・マルチちゃん、みんなにたくさん心配かけちゃった事、謝りにいかなくっちゃね」 「あわわっ、そ、そうですねっ」 既にわたしを苛んでいた苦しい思いはすっかり消えていました。 それから幾歳月が流れてゆきました・・・・・・・。 「マルチちゃんがいて・・・くれて・・とっても幸せだった・・・よ・・、これからも・・・わたし達・・・・3人、い・・つ・・も いっ・・・しょ・・・だ・・・・よ・・・・・・・」 「はいっ!!」 ひとつの人生が幸せな結末を迎えました。 わたしは、二人の人生の幸せのお手伝いができたこと、二人がわたしの中で生きていることがうれしくて 涙しました。 これからもわたしは、ご家族の方々のの人生を見届けていくでしょう。そして皆様の人生が幸せであるよう お手伝いしてゆくでしょう。 人間の皆様の幸せがわたしの幸せですから。 わたしは孤独な”くい”ではありません、いつもわたしの中で二人が見守ってくれているんです。わたしも 人生という流れのなかにいるんです。 わたしはもう自分がロボットである事をうらみません。わたしは生き続けます、大好きな人達の幸せの為に。 また、新しい一日が始まります。 「マルチ」 「マルチちゃん」 「「今日も頑張れ」」 「はいっ、がんばりますっ!!」 終 後書き Hiroさん20000HITおめでとうございます。 ハッピーエンドのつもりで書いたのですが・・・・判断はお任せ致します。 浩之が死んだらマルチはどうなるか?私なりの答えを書いたつもりです。 色々とご意見を頂くかもしれませんが私のこたえは、 「そう考えた方が楽しいから。」です(笑) それではHiroさんのHPのますますの盛況を祈って今回は失礼いたします。 これ自分の初SSだったんです(汗)本来同人漫画の人ですから。
どもども、Hiroです(^ ^ゞ 良かったですぅ~~~。 ああっ、感動(T-T) それにしても、難しいテーマを選びましたねぇ(^ ^;; それを見事に書ききるとは……凄いです。 ―――って、なにーーーーーーっ!! 初SSですと!? ……………………(--;; モットモットガンバラセテイタダキマス(T-T) それはさておき…… 本当にありがとうございました\(^▽^)/ でも、初SS(--;; ……………………凄すぎ(T-T)戻る