「み,瑞佳!そ,その包丁は何だ!?俺を殺すつもりなのか!?俺は,浮気なんてしていないぞ!」
浩平は,瑞佳の持っている包丁をみてそう言い放つ!
「うっ,澪や茜まで!俺は何もやましいことはしてないぞ!」
澪や,茜も包丁を持っていた。
「違うもん!この時間は包丁を持ってくるように言われているんだもん!」
『そうなの』
「浩平,聞いてなかったんですか?」
「なに!そうなのか?まあ今までのは冗談だが・・・・・・・・第一,俺は包丁ぐらいでは死なん!」
「なら,あたしが試してあげましょうか?」
ギラッ
七瀬が,出刃包丁を持ち浩平に迫る。
「・・・・・・・遠慮しておく。おまえのは厳しそうだ。」
「何よ,それ?」
浩平の悪ふざけが一段落ついたところで今回の担当教師が入ってきた。
「みなさん。こんにちは。この時間は私が特別に授業することになりました。長瀬源之助です。よろしく。」
「長瀬先生。何をするんですか?」
一同を代表する形で瑞佳が質問する。
「はい,包丁を研いでもらいます。おいしい料理を作るためにはよく切れる包丁でないといけませんからね。」
「じゃあ,みさき先輩はどうするんだ?」
浩平がみさきに気を使って長瀬に聞くと,
「みさきさんには,包丁の切れ味で料理の味がどれだけ変わるか食べ較べてもらいます。」
「それは得意だよ。」
自信ありげに答えるみさきだった。
「あと,詩子さんにはこれを。」
長瀬は,詩子に救急箱を渡す。
「これは何ですか?」
詩子が訊ねると,長瀬は
「怪我をする人がいるかも知れませんので,手当をお願いします。」
「うん,まかせて。」
詩子は,救護班を快く引き受けた。
「じゃあ,包丁の研ぎ方を説明しますね。まず,目の粗い砥石を使いその後で細かい砥石を使って仕上げをします。
最初に,包丁と砥石に水を付けます。研いでいる最中にも適度に水を付けてください。
包丁を砥石に対して,斜めに付けます。そして,包丁に手を添えて前後させます。このときに,包丁全体をまんべんなく研いでください。
次に,包丁を裏返して同じようにして研ぎます。じゃあ,お手本をお見せします。」
長瀬はそう言い,包丁を研ぎ始める。
シュッシュッシュッシュッシュッ
ちゃぱ
シュッシュッシュッシュッシュッ
ちゃぱ
長瀬は,水を付けながら包丁を研いでいく。
「うまく研げたかどうかの判断は,刃を指で触って確かめます。刃が尖っていればOKです。」
長瀬は,おもむろに刃に親指を持っていき,軽く親指を動かす。ただし,動かしている方向は刃と直角なので指は切れない。
「では,みなさん。頑張ってください。私はこれで。」
長瀬はそう言い残し教室から出ていった。
そして,折原家は包丁を研ぎ始めた。
繭の場合
「みゅっ,みゅっ,みゅっ・・・・・・・」
しゅっ,しゅっ,しゅっ・・・・・・・・・・
繭は,一生懸命果物ナイフを研いでいた。
「おっ,頑張っているな。繭,切れ味はよくなったのか?」
「みゅ~?」
繭はナイフの刃に指を当て,刃と同じ方向に指を動かした。
「みゅーーーー!!」
当然のごとく指を切った。
「柚木,繭が指を切った。手当してやってくれ。」
「はいはい,まかせて。繭,こっちにおいで。」
柚木が繭を呼ぶ。
「みゅ~~~~~」
半泣きの繭は,詩子の方へ歩いていった。
「他のヤツは大丈夫かな。次行ってみよ。」
留美の場合
「七瀬,調子はどうだ?おまえの怪力で,砥石が割れていないか?もしかして,研ぎすぎて包丁がなくなったとか言わないだろうな?」
軽い冗談(?)を飛ばす浩平。
シュッ!
ストン!
浩平の後ろの壁に出刃包丁が突き刺さる。そして
つぅーーーーーーー
浩平の頬に一筋の赤い線が浮き上がる。
「折原く~~ん,何か言いましたか?あたしの研いだ包丁の切れ味はどうかしら?」
異様なほど丁寧な口調で(普段との比較)にっこりと微笑みながら・・・・・しかし目はマジ・・・・・柳刃包丁を持ちふりかえる留美。
「・・・・・・・・・・い,いや!何も行っていない。なかなかいい切れ味だ。さすがだ。」
「それならいいけど。」
「じゃあ,俺は次のヤツをみてくるから。」(危ない,危ない,早くここから離れよう。)
澪の場合
くいくい
誰かが浩平の服を引っぱる。
「澪か?どうしたんだ。」
『あのね』
なぜか,今回に限りスケッチブックに書かれた文字の色は赤かった。
「どうして,字が赤いんだ?」
『指を切って血が出たの』
『痛いの』
澪はわざわざ赤いペンでスケッチブックに字を書いていた。
「そんなこと書いている場合じゃないだろ。柚木,澪も指を切った。手当頼む。」
「澪ちゃんもなの?じゃあ手当するね。まずは消毒しないとね。」
詩子はそう言いオキシドール(消毒液)を取り出す。
『痛いの嫌なの』
「我慢してね。すぐにすますから。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・!!」
そして,澪の声なき悲鳴があたりに響いた。
茜の場合
しゃ~~こ しゃ~~こ
「・・・・・・・(はぁと)」
しゃ~~こ しゃ~~こ
「・・・・・・・(はぁと)」
茜が包丁を研いでいる。
(怖い!なんだかすごく怖いぞ,茜!)
浩平はちょっと離れたところから茜をみていた。
しゃ~~こ しゃ~~こ
「・・・・・・・(はぁと)」
(話し難いし次に行こう。)
瑞佳の場合
「瑞佳,調子はどうだ。」
瑞佳は包丁を研ぐ手を止め,浩平に包丁を渡す。
「浩平,どうかな?」
「どれどれ。」
浩平は包丁を受け取り,刃を指で軽く触る。
「う~~~ん,まだまだだな。あと,10ドラクマ足りないな。」
「ギリシアの通貨の話しは関係ないよ!」
(あっさり返しやがった・・・・・・くそう!)
「じゃあ,20ルピア。」
「それは,インドネシアのお金だよ!」
(くそっ!負けるか!)
「・・・・・・1リア・・」
「リアルはブラジルのお金だよ。」
「・・・・・・・・・・・1リアンだ!」
「そんな単位知らないよ!」
「俺も知らん!」
「・・・・・・・はぁ~~。」
瑞佳はひときわ大きなため息をつくのだった。
その後,みんなが研いだ包丁で料理を作りみさきが試食した。
しかし,みさきの食べる量が多かったためすぐに包丁が切れなくなってしまった。
「私,まだまだ食べられるよ。」
折原家では,みさきの食欲に対抗するため電動の包丁研ぎ機を買ったらしい。
あとがき
久しぶりの投稿です。はっきり言ってスランプです。
おいしい料理を作るためには,いい道具を使う必要があります。今回はその道具の手入れを書きました。
長瀬を特別講師として出したのは,骨董品の手入れをしている以上,刃物も取り扱っているからです。
あと,刃物は研いでいくとだんだん小さくなってしまいます。皆様も刃物を取り扱うときには十分注意してください。
最近手を切った フランク疾風
☆ コメント ☆ 綾香 :「茜……怖い」(^ ^; あかり:「包丁を研いでいる時に、あの笑い方はやめて欲しいよね」(;^_^A 綾香 :「そう言えば、誠のとこのさくらも包丁を研いでいた時、 似たような笑いを浮かべてたわね」(^ ^; あかり:「そ、そうだったね(HtH本編参照)」(;^_^A 綾香 :「まさか……うちにはいないでしょうね。そんな怖いヤツ」(^ ^; あかり:「いないと思うよ。…………たぶん」(;^_^A 綾香 :「そ、そうよね」(^ ^; ・ ・ ・ ・ ・ しゃ~~~こ しゃ~~~こ セリオ:「うふふふふふふふふふふふふふふふゥ」( ̄ー ̄) ・ ・ ・ ・ ・ 綾香 :「……………………いるし」(--; あかり:「あ、あはは、あはははは」(;^_^A ・ ・ ・ ・ ・ しゃ~~~こ しゃ~~~こ 芹香 :「……うふふふふふふふふゥ」(´`)