了承学園 1限目 職員室 家政婦は見た!
まだ日も昇らず、静寂が支配する了承学園校舎。
昼間は騒がしすぎるほどだが、今はただひっそりとしている。
これは、そんな闇の中を荒らし回った、ある二人の泥棒の記録だ。
「どうもこんばんわ~!みんなのアイドル、日本の誇る絶世美女、世界の明星、
志保ちゃんでぇ~っす!!」(ひそひそ)
「ひそひそと!マークを両方使ってたら意味ないんじゃないですか?
その助手の計人です」(ひそひそ)
「今、志保ちゃんと助手其の一は職員室の前にきていまぁ~っすっ!」(ひそひそ)
「こんな朝っぱらから何をするんですか?あ、僕は眠ってたのに無理やり起こされたんです。
まったく、僕が一体なにをしたと……」(ひそひそ)
「……………ええぇ~い!五月蝿いわねっ!」(ひそひそ)←面倒なので以下略
ごす
「男が過ぎた事いちいちいちいちほじくり返すんじゃないわよ!いいかげんにしないと……」
「しないと?」
「埋めるわよ」
「………………」
「とまぁ、冗談はここまでにして……」
「先輩……。今目がマジだったんですけど」
「うるっさいわね!…さて、気を取り直してと。
今、志保ちゃんがここ職員室に来ているのは……センセ方の抜き打ち持ち物検査のためでぇ~っす!!」
どんどんぱふぱふ~
「……先輩。今の効果音は一体…………」
「こんな事もあろうかと、スカウトしておいた人達による演出よ(はぁと)」
「………まぁいいですけど。それより、いつから持ち物検査になったんです?
僕をたたき起こした時は、『寝起きちぇ~っく!!』とか言ってたのに」
「それは発想が安易だったし、大体やつらの夜の営みを見せつけられる……じゃなかった覗く趣味はあた
しには無いわ」
「素直じゃないですねぇ。先輩」
「五月蝿いわね!それになにより………」
「なにより?」
「生徒も教師もそうだけど、忍び込んだのがばれたらあたし達の命が無いからよ」
「それは言い過ぎ…………じゃないですね。なんせ男塾と互角に戦う連中ですからね…(三日目参照)」
「ま。そう言う訳で、仕方ないから職員室でセンセのお宝を漁る…じゃなかった。持ち物検査に変更よ!
大体おかしいじゃない。生徒の持ち物検査をやってセンセの持ち物検査が無いなんて」
「……なんとなく理屈は通っているような気もしますが………」
「とにかく!さっさとお邪魔するわよ」
がちゃっ がちゃがちゃ
「…鍵、かかってますね」
「ま、この位は計算のうちよ。まぁ、志保ちゃんに任せなさいって」
ごそごそ
「って、どこから取り出したんですかそのキーピック」
「気にしない気にしない」
かちゃかちゃかちゃ………
「しかも妙に手馴れてるしっ!」
「いやねぇ。いまどきの女の子なら鍵あけくらいたしなみよ」
「……絶対違う気がする…」
「…よっと」
かちっ
「ほんとにあいてるしっ!」
「トーゼンでしょ?なけなしの単位を削って覚えたスキルなんだから」
「先輩。ゲームがちがいます」
「そこ!男ならいちいち突っ込まない!ともかく、おっじゃまっしまぁ~す」
がちゃっ きぃぃぃぃ ばたん
「なんか、すっごく広くないですか?」
「センセの数が並じゃないからね~。ま、漁りがいがあるってもんでしょ?」
「先輩、やっぱりそれが目的なんじゃ……」
「や、やぁ~ねぇ~。言葉のあやよ、あ・や」
「……(じと~)」
「ほらほら、この机は誰のかな~。あ、澤田編集長の机ね」
「あ、ほんとうですね」
ぴっ ぶぅぅん
「せ、先輩。なにノートの電源入れてるんですか!?」
「ちょっと黙ってなさいって………。おっ。ビ・ン・ゴ♪早速良いもの見つけたわ♪」
「なんですか?そのデータは」
「コミックZの作家データ♪」
「ぶっ!」
「おお。住所とか細かいデータも一杯♪あら、この作家さんもう打ち切りなのね~。ご愁傷様♪」
「せ、先輩………。って、なにデータコピーしてるんですかぁ!」
「良いじゃない、減るもんじゃ無し」
「そう言う問題じゃないでしょぉ~!」
「はい、コピー完了っと」
「って言うかどこに携帯してたんですか、そのハンディパソコン!」
「乙女の秘密」
「…………」
「えっと、この机は………おおっ。柳川センセね」
「そうみたいですね(もはや諦めている)」
「…なんか、えらく隣の机とペアの小物多くない?」
「隣の机は……………」
「あ、言わなくても良いわ。大体わかるから」
「そうですね」
「ん?あら、これは………」
「森川由綺の、WHITE ALBUMですね。意外だな~。あの人がアイドルのCD持ってるなんて」
「柳川センセは…………実はアイドル好きっと……」
「なんかメモとってるしっ!」
「気にしない気にしない♪んじゃ次はっと……」
「(こうやって先輩は情報を作ってるんだなぁ…)これは…………ルミラ先生みたいですね」
「なにか面白そうなものある?」
「いえ特に…あ、このノートはなんでしょう?」
「ちょっと貸して。え~っと、何々…………。はうぅっ」
「な、なに驚いてるんですか!?」
「見、見ないほうが良いわ………」
「だから、なんなんですか?あのノート」
「家計簿」
「…………」
「…………」
「すみません。聞いた僕がバカでした」
「いや、わかれば良いのよ……。さて、次、次!」
「これは、フランク長瀬先生の机ですね」
「へ?そんな先生いたっけ?」
「先輩…またそんな危ない事を…………」
「だぁって。今までその先生授業に出て来たっけ?」
「そう言えば…………」
「出てきてないでしょ?(2000年、十月三日現在)」
「でもですね………」
「ま、なんでも良いのよ。さて、面白そうなものはっと………」
ごそごそ
「あ、これなんてどうです先輩」
「なに?そのいかにもな感じの巻物?」
「えっと……長瀬家の家系図って書いてありますね」
「………見たいような見たくないような、すっごいビミョ~なセンね、それ」
「見ます?」
「………やめとくわ。大体、そんな長そ~なものと格闘してたら日が明けるわよ」
「そりゃそうですが」
「次は~っと。この大志センセに決めたっ!」
「………凄い荒れようですね。らしいといえばらしいですけど」
「こういうものの中にこそお宝は眠っているものなのよ。さぁって。漁るわよ~」
ごそごそ ごそごそ
「先輩、このファイルなんてどうでしょう?」
「ん?この極秘って書いてあるヤツ?どれどれ……」
パラ………
「……『夕日の屋上と電波の関係?』『不可視の力の会得に必要な心の痕』
『エルクゥのチカラの秘密は遺伝子か?』『えいえんの存在について』………」
「ど~やら、あの人が了承学園に来てからまとめたレポートみたいですね」
「ったく、普段一体なにしてんのよあのセンセは!」
「あれ?これだけは他と毛色が違うみたいですよ?」
「ん~何々?『究極のメイドロボ、近日完成予定?』」
「………他行きましょうか…」
「そうね……」
「ガチャピン先生の机がありますけど……」
「ん~。かたずいてて面白くないわね~。あ♪テスト用紙見っけ~」
「…一応言っときますけど、そのテスト用紙盗むとか言いませんよね」
「(ぎく)や、やぁ~ねぇ。そんなことするわけ無いじゃない♪」
「とかいいつつ、なに一枚だけきれいに折りたたんでるんですか?」
「(白々しく目をそらして)さぁっ!つぎいくわよっ!」
二時間経過………
「ふぅ。ここは大体漁ったわね」
「なんか、えらい疲れたんですけど………」
「(無視して時計を見る)げっ!もう時間が無いじゃない!」
「へ?まだ朝の四時ほどですよ?」
「それじゃだめなのよ!志保ちゃん情報によれば、なんでも最近用務員を雇ったらしいの。
初めはサボりまくってたらしいんだけど、秋子理事長の手によって更正されて、今では怖い顔とは裏腹に
真面目に働いてるらしわ…」
「それとなんの関係が?」
「なんでも、朝っぱらから校舎全体の掃除をするって話なの」
「んで?もう逃げるんですか?」
「じょ~だん!雑魚ばっかり漁って、まだ大物の机を漁ってないじゃない!行くわよっ!」
「……これだけ漁っておいて、今までの机の持ち主は雑魚なんですか?
なんか、えらい荷物が増えてるんですけど…(パンパンに膨れたスポルディングのバックを見る)」
「やっかましいわね~。ロープレでもボスの前には雑魚を倒さなきゃなんないでしょ?」
「なんか違うような気が………」
「あ~も~ほら!時間ないからとっとと行くわよ!」
校内を移動中
「…………ここは、ちょっと洒落にならなんじゃないですか!?先輩!!」
「なにいってんのよ!ここにこそ、この学園最大のお宝が眠ってるに違いないわ!!」
「そりゃそうでしょうけど、ここ、理事長室ですよ!!(泣き声)」
「虎穴に入らずんば虎子を得ず!!さぁ、さくさくいくわよ~」
「ああっ、先輩がなんか燃えてるっ!?」
「まずは鍵を開けてっと………ってあれ?」
「先輩、これ、指紋が合わないと開かないってヤツじゃないですか?」
「くぅっ。無駄な所でハイテクを使ってくれるわね~」
「いや、全然無駄じゃないです先輩。僕達みたいなのがいる限り」
「五月蝿いっての!仕方ない、ここはひとつ、私の奥義を吐き出すしかないわね……」
「また、ギャグキャラ系の奥義なんだろうな……」
「そこ!遠い目をしない!そんな事はこの技を見てから言いなさいよぉ…………。
いくわよっ!!必殺!真・決裂拳!!!(ゲージ三本消費)」
ばっ きゃぁぁぁっ!!!
「げ。本気でドアが吹っ飛んだ………」
「ふっ。あたしが本気を出せば、ざっとこんなもんよ」
「でも、音が………」
「…………漁るだけ漁ったらとっとと逃げるわよ」
「…………先輩。それも無理っぽいです」
「なんで?」
「部屋の中に誰かいます…」
「え……(目を凝らす)げ、HM-12とHM-13じゃない」
「なんか二人とも、男物の黒服着てますね……」
ヴン
「あ、なんかこっち見てますね………」
こつ……… こつ………
「なんか、こっちに歩いてきますね………」
「……計人」
「はい?」
「今まで楽しかったわ……。ありがと」
「へ?それってどう言う………」
「あたしのために死んでっ!」
げしっ!
「どぇぇぇぇぇぇっ!!なぜか僕がメイドロボの目の前にィィィィィ!!!」
「ありがとう計人!貴方の事は三日間忘れないわっ!!!とゆ~訳であたしは逃げるんで後よろしく」
「そんなぁっぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっ!!!!!」
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この後、二人の泥棒は黒服のHM-12とHM-13相手に、一時間にも及ぶ逃走劇を繰り広げた。
その間、監視カメラはことごとく破損したため、この後の記録は残っていない。
しかし、泥棒を捕縛したこの二人は後にこう語った。
「…はい、とても人間とは思えない反応速度でした。なんて言うか、捕まえた…って思ってもこうするっ
とぬけていっちゃうんですよね。あそこまで動ける人は、セリオ姉の記録にある数人ぐらいです。
本当に、凄い人達でした」
「…そうなんです。ものすごいスピードで走っていました。私達の体は、マルチ姉さん達とは違って、
身体能力を大幅に底上げしてあるのに、なかなか追いつけない位にですよ。
私達は警備員で、あちらは侵入者なので、こう言うのはなんなんですけど………なんて言うか、憧れち
ゃいましたね、女として」
追記:捕縛された二人はその奮闘ぶりからそれほど重い罪も適応されず、某旅館経営者の女性と理事長の、
開発中の合作料理の実験だ…じゃなく、試食係に任命されるだけに終わった。
それにしても、この事件はギャグキャラの底力を証明する、非常に興味深い事件だった。
調書作成者 長瀬
~あとがき、というか独白~
どうも、キヅキです。………いつも私のSSに言える事ですが、今回は際立ってますね、私のアホさが。
ほとんどノリだけで書いてしまいましたので、なにかと荒いですがお許し下さい。
しかし……また志保の扱いをおなざりにしてしまった……志保ファンの方、すみません。
会話だけのSSなので、わかりにくかったかもしれません。すみません。(なんか謝ってばかりですね私)
本当は、黒服の二人の変わりにランサー(ぱすチャの)を警備に就ける筈だったのですが……。
マイナーっぽかったので、急遽マルチとセリオの姉妹達に登場してもらいました。
新キャラなので、名前はないです。
皆さんがよろしければ、また登場させたいし、できれば名前もつけて頂きたいです。
(厚かましいとは思いますが)
それでは。
☆ コメント ☆
綾香 :「……………………あほ」(--)
セリオ:「うあ。そんな吐き捨てるように」(;^_^A
綾香 :「だって、ホントの事でしょ。それに、弁護の余地なんてないでしょうが」(--)
セリオ:「それは……そうですけどぉ」(;^_^A
綾香 :「まったく、なにをやってるんだか。
本当にバカなんだから」(--;;;
セリオ:「……………………」(;^_^A
綾香 :「やるならもっと手際よくやりなさいよね!!」凸(--メ
セリオ:「……………………は?」(--;
綾香 :「しかも、最後の最後で捕まるなんてダサ過ぎ!!」凸(--メ
セリオ:「……あの~。もしもし?」(--;;;
綾香 :「まったくもう!! ぷんぷん」(ーーメ
セリオ:「……ち、違う。なにかが間違ってる」(--;;;
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