藤田家 5日目 放課後
き~んこ~んか~んこ~ん♪
・・・さて、今日の授業も無事終わったし、後はこれから・・・
「浩之~~~、そろそろ行くわよ~~~」
「ああ、ま、その前に腹ごしらえだな」
「そうですね」
というわけで、俺、綾香、葵ちゃん、セリオの4人は部活(エクストリーム部)の前の腹ごしらえをするべく学食へと向かった。
「それにしても・・・、今日は随分人が多いな」
学食内は昨日までとは考えられないほどの客がきていた。俺達の着ている制服や寺女の制服、祐介達の制服を着た連中が多い。
「そりゃそうよ、今日から一般部の生徒が来てるんだから」
・・・そうだった。
今日からこの学園に一般部 ──多妻家族ではない普通の生徒の通う学部── が新設されたのだ。
何でも俺達以外にも見込みの有りそうなのをスカウトするのが目的らしいけど・・・。
ま、新設といっても実際には俺達の前の学校や寺女に祐介達の前の学校、他にも幾つかの学校をこの学園の敷地内に移設しただけなんだが。
「今日は土曜日で利用者は部活のある人たちだけのはずなんですけどね」
「それでも学校何個所分も集まれば相当の人数になりますよ」
一般部は了承学園の一部とはいえ実際には各学校毎に独立した存在だ。
ただ、学園内の施設は自由に使えるんで各学校からこの本館の学食に客が集まっているわけだ。
しかし・・・、これじゃあ厨房の人員を増やさないとあかり達だけじゃ対処しきれんぞ?
・・・そんなことを話していると、
「・・・相変わらず堕落しきった生活をしてるようね」
ん? この声は・・・。
「あら、好恵じゃない。久しぶりね」
そこには前の矢島とのゴタゴタから紆余曲折を経て、結局は一般部に落ち着いた坂下が立っていた。
まあ、本人にしてみれば元の学校に戻っただけなんだが・・・。
「『久しぶりね』じゃないわよまったく・・・」
「まあまあ、それより好恵、今なんか聞き捨てならない事言わなかった? 確か『堕落しきった』とか何とか・・・」
「実際そうでしょう?そんな風に四六時中男といちゃついてて、それで堕落してないなんて言うつもり?」
「おい坂下・・・、別に俺達は四六時中いちゃついてるわけじゃ・・・」
「あんたは黙ってて!! 」
こ、恐い・・・。こりゃ坂下のやつ、マジで腹立ててるな。
「大体あんたたちエクストリーム部とか言って放課後集まってるらしいけど、そんな様子じゃ実際何やってるか知れたもんじゃないわね」
「ほ、ほう~~~~~(怒)」
「とにかく、今の堕落しきったあなたじゃおそらく私の敵じゃあないわね。あなた達と違って毎日修練は欠かしたことないからね」
「・・・面白い冗談ね・・・。私が好恵の敵じゃないですって?」
げ・・・、綾香のやつ思いっきり青筋立ててるぜ。そりゃあそこまで言われりゃあ腹も立つわな。
実際俺自身今の坂下の台詞には結構カチンと来たからな。
「だってそうじゃない。エクストリームなんて遊びにうつつをぬかしてるだけならまだしも、男にかまけてろくに修練もしてない
ようなあなたにこの私が負けるわけないじゃないの」
「どうやら口で言っても納得しそうにないわね・・・。いいわ、だったら勝負しましょう?」
お、おい綾香?
「ちょうど私たちこれから部活だしね・・・。善は急げ、これから勝負ってことでいいかしら?」
「面白いわね、いいわ、あなたの今の実力ってものを思い知らせてあげる。減らず口をたたいてられるのもいまのうちよ」
「その台詞、そっくり好恵にお返しさせてもらうわ」
「お、おい綾香・・・。そんな大口たたいて大丈夫なのか?」
「そうですよ綾香さん・・・。いきなり勝負だなんて・・・」
「大丈夫だって! どうも好恵ってば根本的に誤解してるようだからね。この際分からせてやらなくっちゃ」
そして──────
バシイッッッ!!
「それまで! 浩之さんの勝ちです!!」
審判役のセリオが俺の勝ちを宣言した。坂下は正に『信じられない』という表情で床にへたり込んでいる。
・・・あれから本当に俺達の部活場所にやってきた坂下は俺達全員と勝負したわけだが、まず綾香には惨敗、葵ちゃんにも歯が立たず、
半ば自棄になって俺にも勝負を挑んだが、おそらくこの部で一番弱い俺にまで負けてしまったのだ。もっとも実際にはかなりギリギリの
勝負だったのだが・・・。
「何で・・・何で勝てないわけ? 勝てないだけならまだしも前より遥かに強くなってるじゃない! 男にうつつをぬかしてるはずのあなた達が!」
「好恵・・・あんた、あたし達が浩之といちゃついてばかりで全然練習してないなんて・・・、本気で思ってたわけ?」
「私達だって練習は欠かしたことないですよ」
「部活の最中にまでいちゃつくような馬鹿な真似はしませんよ」
いや全く。一体人を何だと思ってるんだ。いくら俺だっていちゃついていい時とそうでない時の区別くらいつくぞ。
さすがの坂下も、自分が先入観だけで俺達を見ていたことに気づいたらしい。
「・・・どうやら私の偏見だったみたいね・・・。その事については謝るわ。ごめんなさいね」
「いえ、分かってもらえればそれでいいですから・・・」
「でも葵、たとえ練習を欠かさなかったとは言っても急に強くなりすぎじゃない?前に勝負した時にはあれだけ苦戦してたのに」
「答えは簡単よ。好恵、あんた自分より強い相手と戦ってないでしょ?」
言われて坂下も何か気づいたらしい。実際坂下は空手部の中では最強の実力の持ち主らしい。つまり周りには坂下より弱い相手しか
いないわけで・・・、そんなのを相手に組手したところで坂下自身のレベルアップにはあまり貢献しないわけだ。
言ってみればレベル40にも50にもなってスライム相手に経験値稼ぎしてるようなもんか・・・。
俺達の場合はセリオのおかげで常に自分より1ランク上の相手と練習できるわけだからな。今回はその差がもろに出たわけか・・・。
「・・・決めたわ」
坂下はしばらく考え込んでたが、突然何か決心したようにつぶやいた。
「私もこのクラブに入れさせてもらうわ!」
「よ、好恵さん!?」
「あ~ら好恵、エクストリームは子供の遊びなんじゃなかったかしら?」
「この際そんな事言ってられそうにないからね。これ以上差をつけられてたまるもんですか!」
「でも坂下、同じ了承学園とは言え一般部と多妻部は別の学校の扱いだし、多分無理だと・・・」
「了承!!」
「って・・・、あ、秋子さん!? 何時の間に!!」
「まあいいじゃないですか。この際細かいことは無しにしましょう」
「は、はあ・・・、秋子さんがそう言うならいいんでしょうけど・・・」
「ま、そんなわけでこれからよろしく頼むわね」
「はい! こちらこそ!!」
「でもこっちだってそう簡単には追いつかれるわけには行かないわよ?」
「望むところよ!」
・・・・・こうして、了承学園エクストリーム部に坂下が加わる事になった。
<追申>
その日学食では、何も知らない一般部の生徒が何人かあの殺人デザートセットに挑戦し、一人の例外もなく一口食べただけで
保険室に運ばれたらしい。全く無知とは恐ろしいものだ・・・。
<おしまい>
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<後書き>
どうも、久々登場のGX9900です。
今回は前々から何とかしなくてはと思っていた坂下の扱いについて書きました。
こう言う形なら坂下も無理なく了承に溶け込めると思いましたがどうでしょうか。
さて、今回坂下を了承にとどめるために考えた一般部ですが、基本的には元ゲームの学校がそっくりそのまま移設されてると
考えてください。まあさすがに痕やKANONのようにあまりに遠くにある場合は別ですが・・・。
また、たさいでない生徒という事で、志保や佐藤家が一般部に移る可能性もありますが、それについてはあえて決めないで置きます。
私ごときが軽々しく決めていい問題じゃないですからね。まあ、こいつらの場合結構了承に染まっているのでこのままでも問題無い
とは思いますが・・・。
それでは。
☆ コメント ☆
坂下 :「絶対に綾香よりも強くなってやるんだから。見てなさいよ」
綾香 :「あっま~い。そう簡単に追いつかせないわ」(^^)
坂下 :「ふん。そんな余裕な顔をしていられるのは今のうちだけよ」
綾香 :「へ~。そう」(^^)
坂下 :「色ボケ綾香なんかに、いつまでも負けていられないわ」
綾香 :「……い、色ボケ?」(^^メ
坂下 :「なによ。本当の事でしょ?」( ̄ー ̄)ニヤリ
綾香 :「……言ってくれるじゃないの」(^^メ
坂下 :「そうでもないわよ」( ̄ー ̄)ニヤリ
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葵 :「あわわ。火花がバチバチ飛んでます」
セリオ:「こ、こわい」
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綾香 :「ふっふっふ」(^^メ
坂下 :「ふっふっふ」(^^メ
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