私立了承学園 四日目放課後 HtHサイド
これは誰も知らない、小さな小さな物語。
「うふ、うふ、うふふふふ♪。幸せ~」
「ふにゃ~ん、まーく~ん☆」
「お前らいつまでやってんだ。帰るぞ」
「待って~、もうちょっと~」
「そうだよ~、もう少し」
「ったく・・・」
誠達は「まーくんの間」の前にいた。
帰る前にこの部屋にさくらとあかねが寄ったのが運のツキ。
まーくんぬいぐるみに埋もれ、壊れていく二人に付き合う羽目となったのだ。
「いい加減にしろ!あとは明日。もう帰るぞ」
「うー。分かりました」
「さよなら~」
ぬいぐるみに挨拶をして去って行く二人。
そして今回の物語はここから始まる。
誠達が去ったあと、まーくんの間で何やら物音が・・・
「(行ったか?)」
「(ああ、行ったみたいだぞ)」
「そうか。ふわ~、やっと自由に動けるぜ」
いままで何も動くものが無かったこの部屋に声が聞こえ
次々と立ちあがるまーくんぬいぐるみ達。
「うう、疲れたな、オイ」
「ああ。可愛がってくれるのはありがたいんだけどあの二人の
テンションにはかなわねえな」
「それだけ誠を愛してるんだろうけどよ。・・・さすがにここまで増えるとなあ・・・」
辺りを見まわすとそこには1500以上のぬいぐるみの群れである。
「しかもどれがいつ作ったものか、覚えてるもんな。俺達でも
区別がつかんというのに」
「まったく。積み上げたらやがて月に到達するんじゃねえか」
「ははは、そうだな」
こんな風にまーくんぬいぐるみ達が他愛も無い話をしていた。
「そういや昨日新入りが入ってきたよな?」
「ああ、おれたちだ」
「お前らか。なんか作り手が俺達の主と違うみたいだな」
「俺達の主はエリアちゃんだよ」
「そうかそうか。まあ同じまーくんぬいぐるみ同士仲良くしよう」
「ああ、よろしく」
そう言って握手するふたり(ニ体?)。すると・・・
タッタッタッタ
誰かが走ってくる音がする。
「やべっ、誰か来たぞ。みんな、散れ!」
誰かがそう言うとぬいぐるみ達は散らばり、また元の動かぬぬいぐるみに戻った。
カチリ
ドアを開けて入ってきたのは・・・
「ふんふんふーん、ふんふんふんふーん」
鼻歌を歌いながら楽しそうな顔をしているエリアの姿だった。
何をしに来たかと言うと
「ふふふふふふふ、まことさーん♪」
なんのことは無い。じゃれつきに来ただけである。
ひとしきり(と言っても一時間以上)じゃれつくとエリアは帰っていった。
「ぷはっ、あーびっくりした。いきなりだもんな」
「それに昨日よりテンション高かったですね」
「多分誤解が解けたからだろ。まったく誠のやつも鈍感だからな」
「まあ、あれも一種の才能ってやつか?」
「嫌な才能だな」
「って俺達がそれを言ってどうする」
「ははは、確かに」
くすくすと笑うまーくんのぬいぐるみ達。
「どうなるかな、あの子」
「さあ?すべては神のみぞ知るってとこじゃないか」
「そうだね。そう言えばフランちゃんも誠家のメイドになったらしいし」
「この部屋の常連になるのも時間の問題かな?」
「また俺達を作る人が増えるな」
「月に届くのも夢じゃないかも・・・」
「ふふふ、楽しみだな」
困ったような、うれしそうな顔をするまーくんのぬいぐるみ達。
「さて、そろそろ夜もふけてきたことだし、目一杯遊ぶぞー」
「おーーー」×1527+α
ぬいぐるみ達は部屋に散らばり、ドッジボールや鬼ごっこやその他色々
なことをして遊んだ。その幻想的な光景は夜が明けるまで続いた・・・
チュン チュン チュン
鳥の泣き声とともに朝日が舞いこんだ。夜は明けようとしていた。
「ん?もうこんな時間か・・・みんなそろそろ夜が空ける。遊びの時間は終わりだ」
「おーい」
天井から声がする。
「お前・・・何やってんだ?」
「動けなくなった」
「馬ー鹿。しかたねえな。あとからさくらちゃんたちにとってもらえ」
「おう、そうする」
「よーし、じゃあみんな解散」
そうして再びまーくんの間は静けさを取り戻した。
そしてその日の朝・・・
「あれ?なんで・・・」
「どうした?さくら」
「あっ、まーくん。なぜかまーくんぬいぐるみが一つ蛍光灯の間に
挟まってるの」
「昨日じゃれたときじゃねえの?」
「それなら気付くと思うんですけど・・・」
「まあいいさ。ほら授業が始まるぞ」
「あー、待ってよまーくん」
「うにゃー、待ってよー・・・とその前に、はいとってあげるね」
あかねはその引っかかっていたぬいぐるみを外してあげた。
「じゃあまた放課後ね」
駆け出して行くあかねとさくら。そのときそのぬいぐるみが手を振ったように
見えたが彼女達はそれに気付かなかった・・・。
すべてはこの部屋だけが知っている・・・
了
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ども、まおんです。
はじめてHtH編を書いてみましたがいかがだったでしょうか。
これは「おもちゃは箱ーを飛び出した~」とかいう歌(名前忘れた)
を聞いて思いつきました。彼女達の思いのこもった人形なら
こんなこともあるんじゃないかと。
それでは。
☆ コメント ☆
芹香 :「自分の意思で動くお人形。…………素敵」(´`)
綾香 :「す、素敵……かなぁ?」(^ ^;
セリオ:「確かに、メルヘンではありますけど」(;^_^A
芹香 :「素敵です。……ぽっ」(´`)
綾香 :「はいはい。
でもさ、姉さんだったら、
『まーくんぬいぐるみ』みたいなのを作れるんじゃないの?」(^ ^;
セリオ:「そうですね。芹香さんなら作れそうですけど?」
芹香 :「たぶん……無理です」(´`)
綾香 :「そうなの?」
芹香 :「……(こく)」(´`)
セリオ:「そうですか」
芹香 :「でも……別のお人形なら作れますよ」(´`)
綾香 :「は? 別の?」
セリオ:「どの様な物ですか?」
芹香 :「髪の毛が伸びるお人形とか……」(´`)
綾香 :「うわ」(^ ^;
セリオ:「それは、ちょっと」(;^_^A
芹香 :「『アイム、チャッキー』と言いながら襲いかかってくるお人形とか……」(´`)
綾香 :「うっわ~。まずいって、それは」(^ ^;;;
セリオ:「……別の意味で、自分の意思を持っていそうですね」(;^_^A
芹香 :「他には呪いの人形とか……それから……それから……」(´`)
綾香 :「本気でやばいってば。
えっと……取り敢えず、姉さんは人形を作るの禁止ね」(^ ^;;;
セリオ:「うんうん」(;^_^A
芹香 :「??? そうなんですか? 残念です。……可愛いのに」(´`)
綾香 :「………………姉さんって……」(^ ^;
セリオ:「………………芹香さんって……」(;^_^A
芹香 :「???」(´`)
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