了承学園 (痕サイド)4日目4時間目
この時間の担当のひかりが教室に入ってきた。
「この時間は、お茶を作ってもらいます。けど、ただのお茶じゃないのよ。」
「ひかりさん、それはどういうことですか?」
千鶴が尋ねると、
「昨日『トキタダレの実のお茶』を飲み損なったでしょ。だからこの時間は、そのお茶を作って飲んで下さいね。」
「トキタダレの実?ひかりさん、それはなんですか?」
料理が得意な梓にも解らない食材があるらしく、ひかりに尋ねる。
「トキタダレの実は、魔界の植物で、食べた人の時間を巻き戻す効果があるの。つまり、食べたら子供になるのよ。」
「「「「!!!」」」」
(耕一さんを、耕ちゃんと呼べるわ!)
(小さい頃の耕一は可愛かったな。)
(……幼い耕一さん♪)
(小さいお兄ちゃん……見てみたいな。)
と4人はそれぞれ微妙に違うことを考えていたが、やることは一つ!
「「「「耕一(さん・お兄ちゃん)、早く作ろうよ!」」」」
「はい!」
4人の迫力に負けて思わず返事をする耕一だった。
「じゃあ早速、この実を使ってお茶を作ってね。作り方はね、軽く焙煎してから、細かく砕いてドリップしてね。コーヒーの作り方とよく似たものよ。」
ひかりはそう言い、『トキタダレの実』を置いて教室より出ていった。
(千鶴さんにはまかせられないから……)
と考えていた耕一は、
「じゃあ、梓!入れるのは任せたぞ!」
お茶を入れる人を料理の上手な梓にした。
「まかせて。」
千鶴のお茶を飲みたくない梓も当然のように快諾したが、
しかし!
「耕一さん、どうぞ。私の入れたお茶です。」
いつの間にか千鶴は、『トキタダレの実のお茶』を人数分作り、みんなに勧めた。
「「「「!!!」」」」
4人の思考が一時的に停止した!
「みんな、どうしたんですか?」
事態の中心人物は何食わぬ顔で、4人の顔を見回し、尋ねる。
「千鶴さん、まさか、そのお茶は………」
「私が入れたお茶ですよ。」
耕一の疑問に、さらりと答える千鶴だった。
「千鶴姉!あたし達を殺すつもりか!」
「………」(コク)
千鶴に文句を言う梓に、千鶴製ジャムにより死線をさまよった楓が同意する。
「梓、姉に向かってなんてことを言うのよ。楓まで!確かに、あのジャムは失敗だったかもしれないけど、あれは難しかったからだわ。
そうよ、ジャム作りが難しくて失敗したのよ。だから、こんなに簡単なお茶で失敗するはずないわ!」
必死に反論する千鶴に対して、梓は追い打ちを加える!
「いいや!千鶴姉の料理ほど信用できないモノはない。今までどれだけ失敗して、あたし達が犠牲になってきたと思ってるんだよ!」
「…………」(コク)
「うっうっ……そこまで言わなくても……。」
目に涙をためる千鶴。それをみて初音が
「梓お姉ちゃん、そこまで言わなくても……。千鶴お姉ちゃんが可哀想だよ。」
というと、千鶴は喜々として
「初音、ありがとう。私の味方をしてくれるのね。本当にいい子だわ。じゃあ、これも飲んでくれるわね。」
といった。どうやらさっきのは嘘泣きだったらしい。
(この偽善者め!)
と、梓は思ったが、禁句なので口にできなかった。
「えっ!そ、それは、………え~~と……だから、その……」
口ごもる初音に対して、
「飲んでくれるわね。は・つ・ね!」
更に強く迫る千鶴。
「………うん。」
断りきれないと悟った初音は渋々うなずいた。
そして、
こくこく
初音は、千鶴の入れたお茶を飲んでしまった。
「………初音、どう?おいしい?」
「……あれ?すごくおいしいよ?なんでだろう?」
なんと!
千鶴の入れたお茶はすごくおいしかった。
「じゃあ、私も飲んでみましょう。」
といい、お茶を飲む千鶴。
「……本当にすごくおいしいわ。さあ、耕一さんもどうぞ。一緒に子供になりましょう。」
「初音ちゃんが言うならおいしいんだろう。俺も飲んでみるか。」
耕一がお茶を飲もうとしたときに、
「耕一さん、待って!」
楓が耕一を止めた。
「どうしたんだ、楓ちゃん?」
「千鶴姉さんの料理がおいしかった場合には、何かが起こるような気がするの。あのリゾットの時にも、リゾットはおいしかったから……。」
「つまり、もう少し様子を見てからにしようというわけか。」
「耕一、初音には悪いけど、あたしもそうした方がいいと思う。」
この3人は、しばらく様子を見ることで意見が一致した。
数分後、千鶴と初音の体に異変が現れた。
ひかりの説明通りなら、子供になるはずだったが、逆に体が成長してしまった。
初音が千鶴の年齢くらいまで成長し、千鶴はおば…
ストン!
(注 作者の後ろにある壁にどこからともなく飛んできた包丁の刺さる音)
……千鶴は、大人の魅力あふれる女性へと成長した。
成長した初音は、千鶴の髪の毛をウェーブヘアにしたような感じだった。
成長した千鶴の姿は、命が惜しいので描写不能。
「どうしてこんな風になるの………。」
呆然とする千鶴。
「……千鶴姉さんが、煎れたら逆の効果が出たみたいですね。」
冷静に分析する楓。
「あたし、飲まなくて良かった。これ以上胸が成長したら、今の服が着れなくなるから。」
飲まなくて安堵する梓。
「千鶴お姉ちゃん、お姉ちゃんの服を貸して、この服は小さいよ。」
とりあえず、着ている服が小さいので着替えようとする初音。
そして耕一は、
「千鶴さんによく似ているよ。」
素直な感想を漏らす。
そして、初音は千鶴の服に着替えた。
「どうお兄ちゃん?」
くるりと一周して、耕一に自分の姿を見せる初音。
「髪型が、違うだけで千鶴さんによく似ているよ。大人っぽくてすごく綺麗だよ。」
「お兄ちゃん、ありがとう。」
初音は、千鶴のそっくりで性格もよく(偽善者ではない)、料理もまともである。
これだけでも千鶴よりかなり優れているのに、さらに
「でも、この服少し胸のところが苦しいよ。」
千鶴より胸も大きかった。
「!!………は・つ・ね!」
ひゅう~~~~~
「な、なに?おねえちゃん?」
その場にいた4人の体感温度が絶対零度(マイナス273.15度)まで下がった。
「あなたを殺します。」
自分より優れた初音を見て、今の座に危機を覚えたのか、それとも胸の大きさで負けたのが悔しかったのか、
または、自分がおばさ…もとい大人の女性になってしまったためか(更年期障害か?)、とにかく千鶴はキレた
「「「「!!!!」」」」
「覚悟して下さい。」
「耕一、やばい!千鶴姉はマジでキレてるよ。」
「………このままでは、初音が狩られてしまいます。」
「お兄ちゃん!助けて!」
「みんな、千鶴さんを止めるんだ!」
こうして、千鶴VS耕一・梓・楓・初音の戦いが始まった。
この戦いは、トキダダレの実(?)の効果が切れ初音の体が元に戻った時点で、千鶴が正気を取り戻し終了した。
これ以降、柏木家で『初音の成長した姿』に関する話題はタブーとなった。
あとがき
懐かしいアイテムを使ってみました。ただし、千鶴さん特製で、効果を逆にしました。
けど、このアイテムはメ○モちゃんのキャンディーとかぶってますね。
それと、私の考えた千鶴さんに関する法則
「千鶴さんの料理が、おいしいときは、何か特殊効果が生まれる。」
いかがでしょうか?
千鶴さんの料理は絶対まずくなる、以外の設定があってもいいんじゃないでしょうか。
フランク疾風
☆ コメント ☆ 綾香 :「さ、さすがは千鶴さんの料理」(^ ^; セリオ:「これも一種の才能でしょうね」(;^_^A 綾香 :「イヤな才能」(^ ^; セリオ:「しかし、とんでもない物をあっさりと作りますよね、千鶴さんは。 凄いです」(;^_^A 綾香 :「確かに凄いわね。 しかも、本人が全く意図していないのがさらに凄いわ」(^ ^; セリオ:「まったくです」(;^_^A 綾香 :「それにしても、年老い……もとい、成長するお茶かぁ。 ちょっと、飲みたいとは思えないかな」(^ ^; セリオ:「そうですか? わたしは飲んでみたいですよ」 綾香 :「え? マジ?」(@◇@) セリオ:「はい。興味あります」 綾香 :「やめときなさい。というか、絶対にダメよ。千鶴さんの作った物を口にするなんて。 そんな危ない物を飲んで変な影響が出たらどうするの? もしもの事があったらどうするの? 絶対に絶対にダメだからね!!」 セリオ:「……綾香さん。わたしの事、そこまで心配してくれるんですね。 嬉しいです。……ジーン」(;;) 綾香 :「ただでさえボケてるのに、もし、これ以上ボケたりしたらどうするのよ!?」 セリオ:「……………………少しでも感動したわたしがバカでした」(ーーメ