私立了承学園
「今時のメイドロボ」(作:阿黒)
※今回割と年齢制限加えるべきかなとか(15禁くらいで)思ったんですが、まあ、
MA-18ってことで。(分かる人だけわかれ~)
了承学園内オカルトグッズ専用集積倉庫。手にした者を必ず破滅させるという呪いの宝石や11世紀に製作された、当時未発見の南極大陸が、それもかなりの精度で記載された世界地図。そういった、解明不能のアイテムばかりを無造作に保管した、実はそれなりに危険度の高い場所である。 が、まあ、住めば都というもので、夜中に突然異臭がしたりとか、けたたましい、あるいは呪詛のような不気味な声、上空に泡立つ虹色の球体が目撃されたり、はたまた異次元の色彩が漏れ出すといったようなことも、慣れてしまえばどうということもない。 カタカタカタ… 「コレハ…?」 そんな、真昼でも何故か薄暗い不気味倉庫の一角に設けられたささやかな憩いの場で、マインは音の発生源を探して背後を振り向いた。12型の、人並みの解析度のCCDカメラと集音センサー程度で精密な探査など望むべくもないが、それでも至近距離内である。 ……だが、何もない。林立する整理棚が奥の薄闇に消えていく光景だけが、視界に確認できる全てだった。 「気ニシナイデクダサイ。タダノ、ラップ音デスカラ」 「タダノッテ…」 何処かから拾ってきたような古い応接セットのソファーに座ったマリナの説明に、マインはそのまま絶句してしまう。 「気にしないでください。正体はプラズマです」 ガダガタガタッ!! ノートパソコンと自分を接続して書類を作成していた雪音の一言に、まるで抗議するように正体不明の音が鳴る。 「アー、怒ッテル怒ッテル」 「プラズマって言うと怒るんですよ。おもしろいでしょう?」 マインの横に座っていた舞奈は、ちょっとだけ考えると、言った。 「実害無イナライイデス、別ニ」 「舞奈さん、それってつまり自分さえ良ければそれでいいってことですね?」 「ウン」 「あっさり肯定するし。…っと」 自分の内蔵モデムを使って報告書を理事長宛に送信すると、雪音はノートの電源を落とした。秋子はどちらかというと昔ながらの紙の書類の方が好きらしいのだが、最近は放っておくとどんどん理事長室に未決裁の書類の束がたまっていくので、遅まきながらも事務作業の全面的な電算処理化に務めている、らしい。一気にそうなってしまわないのは、秋子らしくもなく曖昧な決定だからであろうか。 雪音、マリナ、舞奈、マイン。この4人(?)は現在部署は異なるが、了承学園開校前の職員研修で一月ほど同じグループで行動を共にしていた、“同期”である。この中で雪音だけが13型だが、これは学園所属のHMシリーズの12型・13型の構成比が大体3:1であり、なんとなくそれに従ってグループ分けが成されていたためだった。 とにかくそういう経緯もあって、この4人は今でも時々このように集ってささやかな時間を共に過ごすことがある。まるで人間のように。 「………」 とりあえず実害は無いという言葉を信じて、マインは自分の膝の上で丸くなっている仔猫のノミ取りを再開した。テーブルの向い側では雪音と共にソファーに座ったマリナの足に、仔犬がじゃれついている。 「クンクンクン」 「アッ、駄目デス、ソンナニ暴レチャ」 そんなマリナと仔犬の戯れを1人手持ち無沙汰に見ていた舞奈は、少し視線を左にずらして雪音に問いかけた。 「…犬サン、大分元気ニナッタヨウデスネ」 「ええ。まだ足を引き摺りますけど…」 「名前ハ、モウツケラレタノデスカ?」 「名前…?」 まるで予想外のことを訊ねられたように言葉を詰まらせ、雪音とマリナは顔を見合わせた。 「名前…」 「名前ですか…名前…」 メイドロボは当たり前だがロボットである。ロボットとは命令を「受ける」側であり、基本的にその思考構造は受動的であり自発的な行動は得意ではない。ロボット同士での、業務上以外のコミュニケーションで「他者に指示を出す」ということは、馴染みの無い発想なのだ。 「犬さん・猫さんではだめでしょうか?」 「駄目デハナイスケド…デモ、自分ダケノ名前ヲ頂ク、トイウノハトテモ…嬉シイコトダト思ウノデスガ」 マインはそう応えて考え込んだ。 自分がそうだったから。自分のためだけに考えてくれた名前をもらうこと。自分という存在を認めてくれるということ。自分が自分であるという、もっとも基本的な証。 何も持たないロボットの自分にとって、確実に、自分だけのもの。 「皆様ダッテ、名前ヲ頂イタ時ハ、嬉シカッタデショウ?」 「私ハ…“うむ、あんたはマイナーキャラっぽいから舞奈にしよう!きゃははは”ト、酔ッ払ッタメイフィア様ガソノ場ノ勢イト、ノリダケデ」 「私たちは澤田編集長が掲示板で上がった名前をピックアップして、サイコロで決めたという」 「…雪音サン、一部ノンフィクションデス、ソレ」 「…エート…」 実は自分は、かなり幸福なのかもしれない。密かにそう思うマインだった。 「名前ですか…そうですね、やはりつけてあげた方がいいかもしれません」 「何ダカ…ワクワクシマスネ」 が、別に気にした風でもない雪音とマリナは「他の誰かに名前をつけてあげる」という初めての行為に戸惑いと、そして好奇心を覚えているようだった。 相変わらずマリナの足にじゃれている仔犬と、マインの膝の上でじっとしている仔猫を見つめながら、4人は考え込んだ。 「犬サンハ、マリナサンニ懐イテルンデスネ?」 「ソウ…デスカ?」 「そうですね。私よりは、どちらかというとマリナさんの方に…!?」 「キャッ…!?」 雪音の声が途中で不意に止まった。今までマリナにじゃれついていた仔犬の鼻先が、マリナのメイド服のややミニなスカートの奥に突っ込まれたのだ。 「クンクンクンクン」 「アッ、ヤン、駄目デスゥ、フザケチャ」 「クンクンクンクン」 「アッ、アッ?…アハハ、モウ、クスグッタイデスヨ~~~」 それは微笑ましい光景に思えた。仔犬は単に親愛からじゃれついているだけである。シッポを千切れんばかりに激しく振っているのは喜んでいる証拠だった。 変に邪推することなど、まったく無い。 「…アッ…モウ…息ガ…カカッテ…何ダカ、変…」 「クンクンクンクン」 「ひゃうっ…駄目デスぅ…ソンなトコ、舐めちゃ…」 舞奈が、ポソッと呟いた。 「ア、コノ子、男ノ子デスネ」 「マリナさんから離れなさい―――――――っ!!」 「ユ、雪音サン、落チ着イテ、落チ着イテ…!!」 血相変えて詰め寄ろうとする雪音を慌ててマインが背後から抱きとめた。はずみで膝の上の猫が慌てて飛び退く。 「ううっ、マリナさんの恥丘に舌を這わせていいのは私だけなのに…!」 「…普段…ソンナ事…ヤッテルンデスカ…?」 「ダカラッテ、犬サンヲ相手ニ対抗意識燃ヤスナッテ」 「アウウウ…」 相変わらず仔犬にじゃれつかれながら、情けなさそうな顔をしているマリナに雪音は唇を噛み締め。 「こうなったら…こうなったら…」 「エート…雪音サン?」 「こうなったら……………………私も一緒にマリナさんの股間に顔を埋めてっ!!」 ガスッ!! ……ポケットに12型専用チタンナックルをしまうと、舞奈は床の上でかすかな痙攣を繰り返している雪音を冷たく見下ろした。 「全ク…ワカリヤスイ反応ヲシテクレマスネ」 「アアッ…舞奈サン、嫌ニナルホド頼モシイ…」 「デモ素直ニ称賛デキナイノハ何故?」 ヴ―――――――ン… 微かな音を立てて、雪音が再起動してくる。 「…ハッ!?今、なんか、もの凄まじくトンデモないことが起こりませんでしたか?」 「気ノセイデショウ?」 「ソ、ソウソウ」「エート…」 しれっとした顔の舞奈と、妙にオドオドしている他の二人を雪音は見比べていたが。 「あああっ!?それよりマリナさんの下半身が大ピンチなことにっ!?」 「「「ナッテナイ、ナッテナイ」」」 声を揃えてキッパリと否定する三人である。さすが同型ともいうべき見事な呼吸であった。 「ハイハイ、犬サンハ向コウデ遊ンデテ下サイネ」 これ以上仔犬を傍に置いておくとロクでもないことになりそうなのは目に見えていたので、マリナは仔犬を抱きかかえて少し離れた床の上に降ろした。別にマリナの言葉を理解しているわけではないだろうが、仔犬は少し足を引きながら素直に窓枠の方へ歩いていき、そこで日向ぼっこするように丸くなった。更にそれを追うように仔猫も傍で丸くなる。それを見ながら雪音がポツリと呟いた。 「…浩之さん、とでも名づけましょうか?犬さんのお名前」 「イヤ…ソレハチョット失礼ナノデハ…イクラ性欲魔人ッポイトハイエ」 「では愛称でヒロさん」 「イエ、デスカラ…」 「ならばローマ字でHir…」 「ソレハ絶対駄目デスッ!」(×3) なにやら鬼気迫る勢いで否定する三人に、目をパチクリさせながらも雪音は頷いた。まあ、別に早急に決めなければいけない事でもない。 「…まあいいです。それより舞奈さん?先日注文した品が届いていましたよ」 「ソレハドウモ」 「品物?」 「ネット通販デス」 怪訝そうにしているマインにマリナが説明してくれた。STS機能のある雪音は時折ネット通販を利用しており、この前舞奈に頼まれて代理で注文をとっておいたのである。 「何ヲ買ワレタノデスカ?」 その問いかけに、舞奈は現物を見せて答えた。開かれた包みから零れ出てきたのは色とりどりのランジェリー。 「…ハア…色々アルンデスネ…」 「…?」 ガーターベルトを片手に首を捻っているマリナに苦笑しながら、雪音は薔薇が刺繍された黒ストッキングを捻くりまわした。色も素材も様々なものが揃っているが、共通しているのはヤケにアダルトチックな品揃い、ということである。それと… 「でも、この手の品物で何故かAカップのブラって無かったんですよ」 「…フ、不思議デスネ…」 「ハハ…」 「…………」 何気にしこたま友人達を傷つけているとは露知らず、雪音は一枚のスキャンティーを取り上げた。シルクの白で、フリルで飾り付けられたかわいいものだ。質もデザインも申し分ない。だが… 「舞奈さん舞奈さん?」 「ナンデショウ?」 「これ…不良品じゃないんですか?」 「エ?」 「だって、大事な所に裂目が入ってますよ?」 ずがっしゃあああああああああああああああああああああああああん!!! 「アア、ソレハソウイウ仕様ナンデスヨ」 「はあ。そういうものなんですか」 ピコピコと、下着の股間に開いた裂目から指なんか出していた雪音はゆっくりと視線を転じた。盛大にずっこけて床に突っ伏しているマインとマリナに何やら含んだように、言う。 「…清純そうな顔をしていてもしっかりこの穴の意味は理解しているみたいですねぇ…」 「Hデスネ」 「…ソウイウ下着ヲ購入シテイル方ニ、言ワレタクハナイデス!」 「ウウッ…雪音サン…イケズ…」 「まあまあ。皆さんの分もサービスで購入しておきましたから」 「アウウウウウ…」 何やらうめいている二人を無視して、雪音はグッ!と舞奈に親指を立ててみせた。 「おお。嬉しくて声も出せないようですね!」 「イイコトヲシマシタ!」 舞奈も親指を立てて応える。そして二人はウンウンと二度頷いた。 「違いマス違いマス違いマス」 「雪音サン…私、コンナ下着、欲シクアリマセン…」 「ええっ!?」 ズバビシャパ―――――――ッ!!! どうやら驚愕を表しているらしい珍妙なポーズをとりながら、さも心外そうに、雪音は精一杯驚きの表情を作ってみせた。 「マリナさん…マリナさんはこの下着の有用性を知らないからそんなことが言えるのです!インナーは女の最後のお洒落!男を蕩かす最終兵器!この下着がどれだけ二人のいやらしい夜を演出してくれるか、わからないのですかっ!!?」 「ソレガ嫌ナンデス!」 「そんなっ!…いいですかマリナさん?仮にマリナさんがこの下着を着用した状況というものをシミュレートしてみましょうか」 「ハア…」 「そうなったら何時いかなる時でも速攻でマリナさんに好き勝手悪戯しほうだい!!」 「ダカラ嫌ナンデス!!!!」 「では、逆に私がこの下着を着用した場合はどうなると思いますか?」 「……ハ?」 「何時何処ででもマリナさんが望むなら、この身体奉げますわっ!!」 「気持チハ嬉シイケド結構デスッ!!!」 「ええっ!?セリオお姉様より15パーセント増(当社比)仕様のバストが気に入らないと!?」 ぐわしゃっ! 「…殴ッテイイカナ?」 「殴ッテカラ許可ヲ求メナイデ下サイ、舞奈サン」 また気絶した雪音をソファーに戻しながら、マインはげっそりと呟いた。 「大体、舞奈サンガコンナ下着ヲ注文スルカライケナインデス…」 と、そう言われた舞奈はいきなりデータロードを開始した。僅かなタイムラグを置いて、言う。 「だって、今夜はお兄ちゃんと一緒だもん☆」 「…ハイ?」 「だ・か・ら…勝負ぱんつ用意するのは乙女の嗜み☆」 「乙女…」 「タシナミ…」 何やら葛藤しているマインとマリナを斜に見て、舞奈は僅かにメガネを直した。 「お兄ちゃんの中華キャノンは、舞奈だけのものなんだから…」 「別ニ欲シクモ何トモナイデスッ!!」 「ソウデスッ!ソレニ、大キレバイイッテ物ジャナイデス!」 ……………。 「…マリナサン?今、何カ、不思議ナ事ヲオッシャイマシタ?」 「ハ?何カ?」 「イヤ…ソレナライイデス…」 なんとなく納得のいかないものを感じつつも、マインは深く追求することはやめた。 「そうですマリナさん!あんなハリボテ早○キャノンなんか無くたって、私がいくらでも気持ち良いことしてあげますとも!」 「イキナリ復活シタ上ニ意味不明ナ事言ワナイデ下サイ雪音サン!」 涙腺があったらとっくに泣き出したい気分でマインは頭を抑えた。この、CPUにかかる異常な負荷は、あるいは頭痛と呼べるものなのかもしれなかった。 「何よっ!実際に試したこともないくせにっ!確かにちょっと早いかもしれないけれど、メカ英二お兄ちゃんって逞しいんだから!早い分は回数で…」 「あんな下品な大筒、試すどころか見たくもないですっ!…ああっ…それに較べてマリナさんの、なんて美しくて可愛らしい…」 「ハワハワワワワ、ユ、雪音サ~~~~ン!!」 …………………………? 「アノ…皆サン?何ダカ、先程カラ、不思議ナ事ヲオッシャッテマセン?」 「ほわ?」(×3) 言葉は発せず目線だけを交えると、三人を代表するように雪音はマインに問い掛けた。 「不思議な事、といいますと何が?」 「エ?イエッ…アノ…」 少し口篭もって、しかしマインは恐る恐る、自分の疑問を口にした。 「アノ…先程カラノ会話カラ推測シテミマスト」 「はい」 「皆サン…アノ…ソノ…何ト申シ上ゲレバイイノカ…エット…」 適当な表現を見つけられず散々苦悩して、マインはようやくメモリーから最も無難と思われる表現を拾い上げた。 「ヒョットシテ…皆サン、既ニ“経験済”ナノデスカ?」 その問いに、今度は三人の方が揃って顔を見合わせた。 「…私は、人気のない境内で立たされたままお兄ちゃんに」 「そりゃあ、マリナさんの純潔はとっくに私が奪っちゃいましたけど」 「雪音サンヲ…ソコノ椅子ニ縛リツケテ…」 「何気ニマリナサンガ一番怖イデス―――――――――!!」 あっさり即答してきた三人の言葉に恐慌を来しているマインを、雪音は不思議そうに見つめた。 「あれ?だって…マインさん、おかしいじゃないですか。殿方二人にお仕えしているのでしょう?」 「シカモ、同居サレテマスシ…環境トシテハ、充分デスヨネ?」 「形式ダケ見レバ学園内デモ唯一ノ“多夫”デスヨ。コレハモウ、前後カラ…」 雪音が、信じ難そうな口調でもう一度マインに問いかけた。 「マインさんのユニット…まさか、まだ未使用なんですか?」 「エッ…」 試作機であるマルチとセリオと違い、「製品」である量産型メイドロボにはいわゆる“SEX-UNIT”は倫理的な観念から標準装備されてはいない。だが決して公にではないがこのオプションパーツの流通は存在し、また量産型もこのユニットを最初から後付できる仕様になっている。そして了承学園所有のメイドロボは全てこのユニットを装着済であった。 どのような理由をつけようともメイドロボにこのような機能をつけることは人間の性欲処理のための、態のいいダッチワイフ化以外の何物でもない。性の商品化だ。にもかかわらず臆面も無く、しかも学園という教育機関が大っぴらに改造機を所有するとは何事か! この件は了承学園に対する数々の批判の中でも特に根強いものの一つである。 それに対する学園側の見解はというと、 「性交もまた人間、それも男女間におけるコミュニケーションの一つで、しかも非常にデリケートでありそして様々な意味で重要かつ高位を占めるものです。なればこそ、安易な、偏った認識を持つ事が無いように健全かつ正確な知識と見識を持つべきであると考えています。 今後、社会の中にロボットはますます浸透していき、重要な位置を占めていくようになるでしょう。 人間とロボットは似て非なるものです。 ロボットは、人間とは本質的に異なるものです。到底相容れないものは確かに存在します。…生物ではなく、機械であるが故に。 しかし、その一方で人と通じ合えるものも確かに持っているのです。…私達人間が作り出したものなのですから。 ロボットは我々が創り出した、人間の子供であり、同時に友人でありパートナーなのです。 これは多夫多妻制度にも言える事ですが、今までに無い新しいものが私たちの一般常識の中に定着していくまでには様々な軋轢が生じていくものです。予測もできないようなアクシデントも当然予想されます。そして我々は、初めから完璧な形でこの新しい試みを成し遂げていけるとも思ってはおりませんし、そんなことは不可能なことです。 私たちは今黎明期、創生の時期を迎えています。だからこそ今後、10年先、20年先、あるいは50年、100年先までかかる事を前提に未来を見据え、様々な試みを成していきます。 実のところ、私共はメイドロボットにこのような機能を持たせても、おそらくはほとんどそれが活用されることは無いと考えています。しかし何事にも例外というものは起こり得るものです。 それが正しいか誤りであるかは…にわかには判断はできません。しかし、人は、社会は、コミュニケーションによって構成されるものです。その中で「性交」という方法が必要になる事態が発生しえるのなら…たとえ完璧ではなくとも考えうる限りのありとあらゆる事態に備えておきたいと思っております。 確かに、ご批判される通りの一面はありますし、それは到底看過し得ぬものではありません。このようなユニットは正しく人間のエゴと傲慢が形を成したものと言えましょう。 ですが、それは同時に己の中に存在するモノに対する問題提示ともなります。 このユニットの存在を完璧に抹消してしまえば、懸念される問題は目の前から消えてしまいます。ですが、このようなユニットが生み出される原因そのものは、決して消えはしません。 この件は、私たちが考える授業の、無数の課題の一つです。 私たちは…そういったことを見つめて、そして、一緒に考えていけることができるようになれば良いな、と…そう思っています。 教育理念なんて、それほど格式ばったものではないんですけどね」 (月刊レディジョイ4月号掲載・水瀬秋子理事長インタビュー記事より一部抜粋) …といったものである。 が、しかし、今、この場に置いてはそういったことはどーでもよく。 「マインさん。…まさかと思いますが、自分でいじってみたことも無いとか言いませんよね?」 「エ?エ?……自分デ!?」 「マタマタ。例エバ○○○○○ヲ弄ッタリトカ」 「机の角に擦りつけたりとか」 「エット…モップノ柄ニ跨ッテ…」 「…………ソウイウコト…・……ヤッテルンデスカ………?」 何とか搾り出すようにそう言って、黙り込んでしまったマインを見つめて三人は額を寄せて小声で相談を始めた。 「…ドウモ…本気デ知ラナイミタイデスヨ?」 「…何だか知識が偏っているみたいですね」 「ドコカオカシインジャナインデスカ?マインサン?」 この時、この場に「おかしいのはお前らのほうだっ!」というツッコミ役が一人も居なかったことが決定的に不幸な事ではあった。 「いいですかマインさん。…人間の女性だって…不可能では無いんですよ…(コショコショ)…に…(コショコショ)………して…」 「エッ…エ!エエッ!?ソンナ事ガッ!?」 「更には…(コショコショ)…こぶし、とか」 ふうっ。 「アアッ!?雪音サン、駄目デス!マインサン、気絶シチャイマシタ!」 「イヤ…今ノハチョット生々シスギタト、流石ニ思ワナクモ…」 「これくらいで引いちゃったら、とてもあの御主人様には仕えられないと思うのですが…」 「デスネ。ヤハリ同期トシテ、元同僚トシテ、マインサンニモ一人前ノメイドロボトシテノ心構エヲ持ッテモラワナクテハ…」 未だ気絶から覚めないマインを優しく抱きかかえながら、三人は至極真面目な表情で頷いた。 ******************************************************* 「あれ?マインさーん。………マインさん?」 了承学園本校舎。廊下を一人でとぼとぼ歩いている妹の姿を見かけて呼びかけたマルチの声に、マインの反応はやや遅れた。呼びかけられて三歩過ぎてから、ピタリと停まる。そして、妙にゆっくりとこちらを向いてくるマインに、マルチとセリオは不審に思いながらも笑みを浮べて歩み寄った。 この時、どういう巡りあわせか他の藤田家の面々は一緒ではなく、周囲にも彼女等以外の人影は無かった。 「…どうしました?何か不調でも?」 「!…イ、イエ…ナンデモアリマセン、セリオ御姉様」 一瞬、逃げ出しそうな素振りを見せたマインに不審を募らせながら、しかしセリオは沈黙を保って、ただ問い掛けるようにマインの顔を見つめた。その心配そうな視線に、マインは少し項垂れてしまう。 「…なんだか元気ありませんね?頼りないかもしれませんけど、私でよかったら相談くらい乗りますよ?」 「マルチ御姉様…」 少し背伸びしてお姉さんぶるマルチの笑顔に、やや気を取り直したようにマインは姿勢を正した。少し躊躇ってから、ゆっくりと口を開く。 「アノ…実ハ、御二人ニ、少々オ尋ネシタイコトガアルノデスケド…」 「なんでしょう?」 「私で良かったらどうぞ遠慮なさらずに」 二人の姉の優しさに励まされたように、マインは真正面から二人を見つけた。やや声に力を入れて言う。 「オ二人ヲ見込ンデ、相談シタイ事ガ。…メイドロボトシテ」 無機質なりに真剣な口調に、自ずとマルチとセリオの顔に緊張が加わった。何時の間にか三人で額を寄せて、密談染みた態勢になっている。 「アノ…」 「はい?」 「一人前ノ…メイドロボ、トイウノハ…」 「はい、なんですか?」 …………。 僅かに躊躇い、しかしそれを振り切って、マインは気合入れにデータロードして一気に言った。目を瞑って。 「マルチ御姉様はアソコに肘まで入るって本当ですかっ!?」 どっかあああああああああああああああああああああああああああんんんん!! 「セリオ御姉様にいたっては1.5リットルのペットボトルが入るってしかも後ろにっ!!」 ずがっしゃあああああああああああああああああああああああああんんんん!! 「あ、あの、せめて350ml缶が入らないとメイドロボとしては一人前とは言えないって!で、でも、私、とてもじゃないけどそんなこと…せ、せめて、250ml缶くらいなら、何とか努力してみますが!」 …………。 そおっと目を開けて、マインは廊下の両側の壁にそれぞれ頭をぶつけてずっこけている二人の姉の姿を発見した。おずおずと、尋ねる。 「そ、それで…綾香様は日頃鍛えてらっしゃるから、大根を切断することも可能というのは…?」 「何処から誰からそんなタワゴト吹き込まれたんですかマインさんは―――!?」 「わ、わたしそんなことされたら壊れちゃいます~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」 「エエッ!?」 「……でも綾香さんはちょっと本当っぽい気がしないでもないですよね?」 「そうですね。大根というのは誇張としても、ニンジンくらいなら」 「ス…スゴイデスー」 あははははははははは。 などと一瞬和やかな雰囲気に落ち着いてしまいそうになって、慌ててマルチとセリオはその空気を振り払った。 「だ――か――ら――!問題はそうじゃなくて!何があーしてこーすると私のお尻がそんな規格外なことになるんですっ!?」 「そうですっ!い…いくら浩之さんでもそんな痛くてマニアックなことはしないですぅ!」 「デ…デモ、雪音サント舞奈サンガ、『藤田家は旦那は性欲魔人で妻は1人残らず吸引ブラックホール星人』ダト…」 「…うふふ…柳川先生が保健室壊したくなる理由がおぼろげにわかるよーな気がしますわ…」 「セリオさん怖いです…」 …………。 物騒なデータを検索しているセリオをしげしげと見つめると、マインはそっとマルチに囁いた。 「アノ…モシカシテ私、マタ間違ッテマス?」 「…うん。それもかなりものすごく」 「トイウコトハ…質ヨリ量トイウコトデ、ゴルフボールヲ10個…」 「だからそういうことじゃないんですぅ!…いいですかマインさん、ちょっとそこに座ってください」 そういうと、マルチは自分も廊下の端に座り込んだ。促され、その隣にマインもスカートを抑えながら体育館座りで腰を下ろす。 「いいですか?まず、何を教えられたか知りませんけど、多分それ全部ウソですから忘れてください」 「ウソ?…………ジャア、3リットル…」 「忘れてくださいっ!…こほん。 いいですかマインさん?そういうことは、その、あまり、大きな声じゃ恥ずかしいから言えないですけど…今、マインさんがおっしゃったようなことっていうのは、目先のことしか考えてないって思うんですよ?」 「目先…」 「そうです。…マインさんだって、なでなでしてもらったことはあるでしょう?」 「……エット、…ホンノ、少シダケ…」 「そうなんですか…あ、でも、嬉しかったでしょう?」 「……………………………………ハイ」 「いいですかー?その…夜のことって、私にとってはナデナデしてくれるのと一緒なんです。もっともっとすごい、ナデナデなんです。すごすぎて、ちょっと、困ることもあるんですけど…」 「ハア…オ噂ハ常々…」 「エット…ですから。 浩之さんは、あんまり、口でマルチ大好きだよ、って言ってくれる人じゃないんです。でも、でもですね、その代わりに、頭を撫でてくれるんですよ。だから、ナデナデしてくれるのは、好きだよ、大好きだよ~、って言ってくれる事と同じで、つまり…浩之さんの気持ちを伝えるカタチ、なんです。わかりますか?」 「ハイ」 「私は、だから、まず浩之さんが私をナデナデしよう、とする気持ちが嬉しいんです。その気持ちを私がカタチになって、伝えられるから、ますます嬉しくなるんです。つまり、えっと…」 「…カタチは、付随してくるもの…従であり、主ではない。そういうことです」 座った二人の前に屈みこんで顔を覗き込みながら、セリオは簡潔にマルチの言いたいことをまとめてみせた。 「まあ、そのナデナデというカタチそのものが、非常に私やマルチさんにはフィットしたものではあるのですが。 マインさん。そんな…太いものがどうとかいうのは主を置き去りにして形にばかりこだわるようなものです。大事なことを忘れて、目先のものばかりに目を奪われていては、ロクなことにはなりませんよ?」 「御姉様方…」 面目なさそうに自分の立てた膝に視線を落とすマインの頭に、セリオはそっと手を乗せた。 「自分は、誰に。細かいことは、それから考えればいいんです。ね?マルチさん」 「そうです。私たちは、まず、浩之さんだから…嬉しいんですよ?」 「誰ノ…誰ニ…デスカ…」 考え込む妹の髪を撫でながら、セリオはゆったりと笑った。 「まあ、カタチに凝るのは後からでいいんですよ。例えば…ぱふぱふとか」 「パ…パフパフ?」 「胸の谷間にですね。顔を埋めてですね。両脇からこう…ぱふぱふっ、と」 「……うっ…」 微かに、マルチが上げた呻き声はあまりに小さすぎて、特に注意していなかったセリオはそれに気づかなかった。 「後は…胸の間に…その…まあ、お約束ということで、レミィさんや智子さんや綾香さんや芹香さんや私は、その、浩之さんを…挟んで…だって、浩之さん、一度はこれをやらなきゃ気がすまないですから」 「ウウウ…」 マインが、何とも表現し難い声を洩らすが、やはりそれは可聴領域スレスレで聞き取れなかった。 「なんていうか…浩之さんだけってわけでもなさそうですけど…男の人って、やっぱり胸に思い入れのある方が多いみたいで…千堂家の方々、瑞希さんもおっしゃってましたけど、何かの拍子に手を伸ばしてくるんですよね…何だか子供みたいに甘えてきて…タプタプだ~、とか言って」 「ううっ…」 「ヒウッ…」 「昨夜なんか浩之さん、和樹さんから教えてもらったとかいって、乳まくらーとかおっしゃって…もう、本当に冗談がお好きなんですから…」 「うううううっ…」 「ウウウウウウ…」 「でもまあ…これで喜んで頂けるなら、女冥利に尽きるというものですが」 ………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………。 ………………………………………………………………………………ぴちっ。 「「うわああああああああああああああああああああああああんんん!!セリオ(さん・御姉様)なんか、大っ嫌いですううううううううううううううううううううううううっっっっっ!!」」 「ああっマルチさん!?マインさんまでっ!!?」 いきなり泣き叫びながら走り去る2人の行動が理解できず、セリオは追いかけるのも忘れてただ呆然とその場に立ち尽くすのみだった。 「なんで?どうして?私、何かヒドいこと言いましたか!!?」 <どうしようもなく終わる> |
【後書き】
ボクモHナ話ニ挑戦ダイ!
…と意気込んでみたのですが、なんつーかこう。
餅は餅屋、って感じですか?到底K氏やS氏、H氏には及ばないですねぇ。
メイドロボの倫理問題に関しては割とマジに書き込んでいるようですが、マジなように見せてその後こかす、
というパターンですのであまり真剣に考え込んで書いてるわけでもありません。一応念のためあしからず。
実際のところ、所謂「セクサロイド」的みたいなものは古典的なアイデアですし、遠い未来においてはそう
いったものは作られるかも、と思います。
俺みたいな人間いるしな(涙)
☆ コメント ☆ 綾香 :「マイン以外の娘って……濃いわねぇ」(^ ^; セリオ:「まったくですね。姉としては恥ずかしい限りです」(--; 綾香 :「そっか。あの娘たちってセリオの妹だもんね。そりゃ濃いわけだわ」(-o-)ナットク セリオ:「……どういう意味です?」(^^メ 綾香 :「まんまの意味よ。浩之にあーんな事やこーんな事をしてるあなたが 濃くないわけないでしょ」(-o-) セリオ:「う゛っ」(--; 綾香 :「ふぅ、やれやれ。セリオったら本当にコアなんだから。 さらにはエッチだしディープだし」ヽ( ´ー`)ノ セリオ:「う゛う゛~っ」(--; 綾香 :「全く困ったちゃんよねぇ」(^~^) セリオ:「そ、そこまで言いますか。綾香さんだってエッチッチーのくせに~」(;;) 綾香 :「失礼ねー。あたしはエッチなんかじゃないわよ」(--) セリオ:「……ほう。本当ですか?」(¬_¬) 綾香 :「当たり前じゃない。あたしはコアでもエッチでもディープでもないの。 自他共に認める清純派なんだから」(^0^) セリオ:「ふ~ん、そうですか。 でしたら……今後、浩之さんに○○○な事をするのは禁止です」(-o-) 綾香 :「……………………え?」(^ ^; セリオ:「当然、×××や△△△、◇◇◇な事もダメです」(-o-) 綾香 :「ちょ、ちょっと待って! そ、それは……」(@@; セリオ:「絶対に絶対にダメです。全面的に禁止です。 ちゃんと、あとで浩之さんにも言っておきますから」(^^メ 綾香 :「うーっ」(;;) セリオ:「ねっ。清純派のあ・や・か・さ・ん」(^^メ 綾香 :「あーーーーん。ごめんなさーい。 あたしはセリオ以上にコアでエッチでディープで濃いです~~~っ」(T△T) セリオ:「……………………ふっ」(^-^)v 綾香 :「ううううぅぅぅぅぅーーーーーーーっ」(T-T)