『例えたら』
自分や友人を動物に例えたら何になる?
このような話題は、益にも利にもならないが妙に盛り上がったりするものである。
俺・あかり・志保・雅史の4人で喋っていた時も例外ではなかった。
「あかりはイヌだよな、イヌ」
「うんうん、同感。あかりは絶対にイヌよね」
「えー? そうかなぁ? わたしってそんなにイヌっぽいかなぁ?」
俺と志保の断言にあかりが疑問の声を上げる。
「イヌっぽいっていうか、イヌそのもの。
それも番犬になるような獰猛なのじゃなくて、室内で飼えるようなちっこいやつ」
それに対して、俺はどキッパリと言い切った。
「う~ん。そうなのかなぁ?」
納得しきれない表情のあかり。
「そうなのよ。あかりの事を何年も見てきたヒロとあたしが言うんだから間違いないわ」
「ま、そういうこった。
……で、雅史は? お前は自分を動物に例えると何だと思う?」
いまいち釈然としていない様子のあかりをひとまず置いといて、俺は雅史に話を振った。
「僕? 何だろうね? よく分からないや」
「雅史は小動物よ」
笑みを浮かべたままで首を傾げる雅史に代わって志保が答を出してきた。
「ネズミとかリスとか。そんな感じだと思うわ」
「……そうかも」
俺は妙に納得してしまった。
確かに雅史には小動物のイメージがあると思う。
ひょっとして、雅史がハムスターを無性に可愛がるのは無意識のうちに己を投影しているから、もしくは自分と同類だと認識しているからなのかも。
我ながらバカな考えだとは思うが、雅史だったらありえそうでちょっとだけ怖かったり。
「じゃ、次は志保だな。お前は……何だろうな?」
「あたし? あたしは……そうねぇ……ウグイスかな」
「え? ウグイスなの?」
「なんで?」
志保の答えは完全に予想外だったらしく、あかりと雅史がキョトンとした顔で問い掛けた。
「だって、ウグイスといったら美声の代名詞でしょ。プリティーキュートボイスの持ち主である志保ちゃんにはピッタリじゃない」
シレッとした顔で言い切る志保。
こいつの場合、心の底からそう思っているから始末に負えない。
「なに言ってんだ。お前がウグイス? バカも休み休み言えよ。
どうせ鳥に例えるんだったらカラスにしておけ。それも、早朝の新宿とかに出没するやつ。
やかましいし迷惑だしで、そっちの方がよっぽどお前にピッタリだ。
もうちょっと自分の事を冷静に判断する目を養った方がいいぞ」
「なんですって。ヒロの分際で随分と失礼な事を言ってくれるじゃない。
だったら、あんたはどうなのよ? 人の事をそこまで言うんだから、さぞや的確に例えられるんでしょうねぇ?」
俺の辛辣なセリフを受けて、志保がムッとした顔になる。
そして、挑発的に言葉を投げかけてきた。
「俺か? 俺は……そうだなぁ……例えるなら、百獣の王ライオンってところだな。うんうん」
なんとなく真面目に返す気になれず、志保が文句を言ってくるのを承知でからかう様にそう答えてやった。
だが、
「ライオン? へぇ、あんたって結構自分の事を理解してるのね」
志保はそれをアッサリと受け入れた。
……あれ?
意外だった。
てっきり悪口雑言が返ってくると思っていた俺は拍子抜けしてしまった。
「うん、いいんでないの。ピッタリだと思うわ。だってさ……」
志保はそこで一拍間を空けると、イヤな笑みを顔に貼り付けて宣った。
「雄のライオンって、何頭もの雌をはべらせて群を作るじゃない。どっかの誰かさんみたいに」
……そうくるか。道理で素直に認めると思ったよ。
どうでもいいが『はべらす』って表現はやめれ。人聞きの悪い。
「それにさ、ライオンって普段は結構ダラダラしてるじゃない。この点もそっくりよねぇ」
……う゛っ。
「夜行性ってとこも似てるわよね。ライオンと同じように、ヒロも夜になると『元気』になるみたいだし」
…………。
「あはは。なるほど」
納得するな雅史。それもにこやかに笑いながら。
「そう言われると……浩之ちゃんって確かにライオンだね」
あかりよ、お前もか。
俺、今だったらシーザーの気持ちがよく分かるよ。
「てなわけで、ヒロはライオン。大決定♪」
「…………」
自分で言い出した以上、俺に文句が言えるわけがなく……
それでも、志保を勝ち誇らせてしまったのが非常に悔しくて……
だけど、やっぱり何も言えなくて……
後悔先に立たず……後悔役立たず。
自分や友人を動物に例えたら何になる?
このような話題は、益にも利にもならないが妙に盛り上がったりするものである。
しかし、気を付けねばならない。
少しでも迂闊な発言をすると、害や損になる事は多々あるのでくれぐれも注意されたし。
とりあえず…………心の閻魔帳に志保の罪状を1プラス。
< おわり >
☆ あとがき ☆
構想・執筆合わせて1時間未満の即興ネタだったり( ̄▽ ̄;
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