ん? どした?
初っ端から登場してる……。
もしかして……俺が主役か?
うん、まあ、一応。
そうか。主役か。ふっふっふっ。
主役……。俺が主役……。
今回だけだけどね。
俺が主役。俺が……。
いや……だから……。
くっくっくっ。今回からこのシリーズは『矢島家のたさいシリーズ』になるのか。
そんなことは『絶対に』無い。
遂におれの時代の到来だぜ!!
ざまあみろ!! ざまあみろ藤田!!
くっくっくっ。どわーはっはっはっ!!
ひとの話を聞けよ、おい。
ジリリリリ!!
目覚まし時計が朝の到来を告げる。
……と同時に、俺はムクッと起きあがった。
俺は寝起きは非常に良いのだ。……きっと『高血圧』なのだろう。
うむ、今日も良い朝だ。ナイスな俺様に相応しい。
さて、それでは顔でも洗いに……。
おっと、いかんいかん。大切な日課を忘れるところだった。
「グッモーニン!! マイハニー!!」
親しき仲にも礼儀有り。やはり、朝の挨拶は怠ってはいけない。
……たとえ相手が『写真』であってもな。
その写真に写っているのは『神岸あかり』さんだ。
俺の『将来の伴侶』である。
俺たちは『運命の赤い糸』で結ばれているのだ。
きっと、神岸さんも、今頃は俺のことを考えてくれているに違いない。
何と言っても俺たちは『赤い糸』……否、『赤いチェーン』で堅く結ばれているのだからな。
ああっ、俺は世界一の果報者だぜ!!
―――その頃、件のあかりちゃんはと言うと……
「すー……すー……。むにゃむにゃ……」
あれ? 熟睡してますね、これは。
まあ、無理もありません。なにせ、まだ『朝の5時』なのですから。
それにしても、幸せそうな寝顔をしていますねぇ。
よっぽど楽しい夢でも見ているのでしょうか。
「……うにゅ……浩之ちゃ~んゥ……」
なるほど、浩之くんの夢ですか。
それはあかりちゃんにとっては最高の夢ですね。
ところで……。
誰が誰のことを考えているって?
先程の矢島の言葉通りならば、あかりちゃんが見ているのは『矢島の夢』ということになるのだろうけど……。
ぜんっぜん違うやん。
……ま、いいや。
それでは、視点を矢島に戻しましょう。
「やあ、みんな!! おはよう!!」
我がクラス、3年B組。
俺はこのクラスの『自他共に認めるヒーロー』だ。
従って、俺が教室に入ると、どうしても視線が集まってくる。
憧れ・羨望・尊敬といった熱い想いの込められた視線がな。
まあ、これはやむを得ないことだが。
それにしても、注目の的だな。
また、みんなの話題の中心になってしまう。
俺って『罪な男』だな。『人気者』は辛いぜ。
しかし、これだけみんなから愛されれば、普通の奴ならいい気になって調子に乗ったりするものだろう。
だが、俺は違う。
俺は何よりも友情を大切にする男だからな。友に対して尊大な態度など取ったりしない。
ふっ、俺って男はなんて『良い奴』なんだ。
『良い奴』って、あんた……。自分じゃ言わないだろ、ふつー。
お前、ホントにクラスのヒーローなのか? かなーり疑わしいぞ。
……おや? あそこの女子グループが矢島の方を見ながら何かを喋ってますね。なんでしょう?
ちょっと近付いてみますね。
「あ~ぁ、矢島くんもかわいそうよねぇ。また神岸さんと同じクラスだなんて」
「ホント。哀れよね」
「え? なんで?」
「あら? あなた、知らなかったの?」
「なにが?」
「矢島くんって、2年の時に神岸さんに告白したのよ」
「そうなの!? それで、どうなったの?」
「あっさりと振られたらしいわ」
「やっぱり」
「当然でしょ。神岸さんに告白したってオーケーをくれるわけないじゃない」
「神岸さんは藤田くん一筋だからねぇ」
「そうそう。それなのに矢島くんは……」
「無謀ね」
「って言うか、単なる『バカ』よ」
「そうね」
「異議なし」
……………………。
……確かに話題の中心ではあったな。それは正しい。
だけど……憧れ? 羨望? 尊敬?
そんなのあったか?
…………ま、これが現実か。
ではでは、再び視点を主人公に戻しましょう。……なんか凄くイヤだけど。
昼休み。
それは、非常に大切な休息の時間。
俺は、その時間を神岸さんと共に過ごそうと思ったのだが………………い、いない。
また藤田の大バカ野郎に『連れ去られて』しまったようだ。
ああっ、かわいそうな神岸さん。
『無理矢理』弁当を作らされた挙げ句、同席することまで『強要』されるなんて。
待っててくれ、神岸さん。いつの日か、この俺が必ず、その『生き地獄』から助け出してあげるからね。
しかし、藤田は非道い奴だ。
あいつの周りには大勢の女の子がいるが、きっと弱みでも握ってそばにいることを『強制』しているのだろう。
本当に『極悪人』だ。
俺のような『好青年』とは大違いだな。
藤田には、今に天罰が下ることだろう。
な、なんとっ!!
強要ですか!? 強制ですか!?
もし、事実だとしたらとんでもないことですね。絶対に許されないことです。
それでは、早速確かめに行きましょう!!
「ねぇねぇ、浩之ちゃん。これ、食べてみて」
「ん? おっ、新メニューか」
「うん」
「そうかそうか。では……」
差し出されたおかずを口に放り込み、真剣な顔で味わう浩之くん。
あかりちゃんは、その様子を緊張の面もちで見ています。
「ど、どうかな?」
不安げに訊ねるあかりちゃん。
そんなあかりちゃんに対して、浩之くんは親指をビッと立てて答えました。
「合格!!」
「え?」
「美味いぜ。すっげー美味い」
「本当?」
「ホントホント。さすがはあかりだな」
「えへへ~。やったね♪」
浩之くんに褒められて、得意満面のあかりちゃん。
しかし……
「やっぱり、人間誰しもひとつくらいは取り柄があるものだなぁ」
そこは浩之くん。オチをつけることも忘れません。
「う~、ひどいよ浩之ちゃん。それじゃあ、わたしには他に取り柄が無いみたいじゃない」
「そんなことはないぞ。あかりには他にもたくさんの取り柄が……」
「他にも? 例えば?」
「そうだなぁ。『犬チック』なところかな」
「……それって取り柄なのかなぁ~?」
「んなわけねーだろ」
「う~~~」
「唸るなよ。ひとの冗談に素で返すお前が悪い」
「うぅ~~~~~~っ」
不満そうなあかりちゃん。
ですが、怒っているわけではなさそうですね。
それどころか、浩之くんとのやり取りを楽しんでいるようにも見えます。
その証拠に、目が笑っていますからね。
それにしても、このようなじゃれ合いは見ていて微笑ましいですね。心が和みます。
しかし、この光景のどこをどう見たら強要とか強制とかいう言葉が出てくるのだろう。
矢島……お前って奴は……。
ま、いっか、矢島だし。
それでは、またまた視点を戻しましょう。
とは言え、このままダラダラと矢島の生活を見続けるのも苦痛なので、いきなり夜まで飛ばしてしまいましょう。
ふぅ、今日も良い日だった。
やはり、俺のような『日頃の行いの良い』人間は素晴らしい一日を過ごすことが出来るようだ。
さすがだぜ、『俺様』。
……おっと、もう10時か。そろそろ寝なくては。
寝不足は『美容の大敵』だからな。気を付けないと。
それでは、今日も神岸さんのことを想いながら寝ることにしよう。
きっと彼女も俺のことを想ってくれているはずだからな。
あんな可愛い女性に慕われて……俺は……俺は……世界一の果報者だぜーーーっ!!
神岸さん、グッナイ!!
……………………なんか。朝にも似たようなこと言ってたような。
幸せな奴。
仕方ない。結果は見えてるけど……取り敢えず、あかりちゃんの様子を見てみますか。
さてさて……あかりちゃんはっと……。
あれ? 部屋にいません。こんな夜遅くにどこへ行ったのでしょうか?
……も、もしかして……。
…………………………。
……………………。
………………。
…………。
やっぱり、浩之くんの部屋にいるみたいです。中からなにやら声が聞こえてきますね。
「…………ゥ…………ゥゥ…………ゥゥゥ」
え、えっと……。
なにやら『凄いこと』になってるみたいです。
それでは、あまり聞き耳を立てたりするのも無粋ですので、この辺で退散するとしましょう。
あかりちゃん、お幸せに。
そんじゃ、最後に何か言っておくことはあるか、矢島?
「神岸さ~~~ん。愛してるよ~~~っ!!」
あっそ。
報われないのに。
まあ、本人が幸せだったらいっか。
『ひとは妄想することを許された唯一の生物である』
どもども、Hiroです(^ ^ゞ
今回のSSですが……。
祝!! 『たさい』20作目!!
このシリーズもとうとう20作となりました。
これも全て皆様のおかげでございます\(^▽^)/
……て、あれ? あれ?
こ、こんなのが20作目か~!!
せっかくの節目に矢島。あうーっ(T-T)
ちょっと後悔。
閑話休題
今回は矢島の一人称&三人称口語体という文体で書いてみました。
どうでしたか? 違和感無く読めたでしょうか?
今後もたま~にこのような文体で書いてみようかなと思っています。
苦情が多かったら今回限りでやめますけどね(^ ^;
ではでは、また次の作品でお会いしましょう\(>w<)/