『(Ba)カップル Light ~浩之&綾香~ 第2話』
念願叶って、浩之くんと腕を組んで街中を歩けてご満悦の綾香ちゃん。
浩之くんも、多少は照れくさそうな顔をしてますが、満更でもなさそうです。
そんなわけで、見ているだけで暑苦しいほどにベッタリと身体を密着させて歩く二人でありました。
さて、その二人ですが、あてもなく歩きつつウインドウショッピングなんかを楽しんだりしていましたが、そうこうしているうちに少し小腹が空いてきました。
「ちょっと腹へったな。ヤックにでも行かないか?」
綾香ちゃんの方に顔を向けて、そう提案する浩之くん。
それを綾香ちゃんが断るはずもなく、二人は近くにあったヤクドナルドへと入っていきました。
店内は結構混み合っていましたが、たまたま空いていた席をゲットすることに成功。
綾香ちゃんが席を確保している間に、浩之くんが二人分のセットメニューを買ってきました。
「お待たせ。適当に選んじまったけど、テリヤキで良かったか?」
手渡しながら浩之くんが尋ねます。
「うん。サンキュ」
綾香ちゃんは笑顔でトレーを受け取ると、テーブルに置くと同時にポテトを一本口に含みました。
「ん、美味し♪」
満足そうに笑みを零す綾香ちゃん。
その様子を微笑ましそうに見つめながら、浩之くんも同じようにポテトを口に放り込みます。
「たまにはファーストフードもいいわね。最近はデートの時は喫茶店やファミレスばかりだったから」
「そうだな。毎回じゃ飽きるけど、たまにだったらヤックもいいよな」
言いながら、委員長が聞いたら『ヤックやなくてヤクドや!』ってツッコミを入れられるんだろうな、なんて事を思う浩之くん。
途端、綾香ちゃんの表情がムッとしたものに変わりました。
浩之くんのほっぺをギュッと引っ張って一言。
「あたしと二人でいる時に他の女の事を考えないの!」
恋する乙女の勘は鋭いです。
「いでででで。分かった、分かったってば。悪かったよ。俺が悪かった。だから、この手を放してくれ」
「ひょっとして、あたし以外にも好きな娘がいるんじゃないでしょうね? 浩之って女の子の知り合いが異様に多いみたいだし。もしかして、あたしの知らないところで浮気をしまくってるとか?」
浩之くんの懇願を綺麗にシカトして、綾香ちゃんが怖~いスマイルを浮かべて問いただします。
「そんなことは絶対にないです。私が好きなのは綾香さんだけです、はい」
必死に訴える浩之くん。何故か敬語になっているのがそこはかとなく哀れみを誘います。
「ホントにぃ?」
疑わしげな視線を投げかけて綾香ちゃんが尋ねます。
「ホントだって。そりゃ、友達として仲が良い娘は何人もいるけどさ。だけど、女として好きなのは……キスしたいとか抱き締めたいとか思うのは……綾香、お前だけだぜ」
真剣な表情で言う浩之くん。目の色が完璧にマジです。
ほっぺたを思い切り引っ張られているという状況故に、いまいちシリアスな雰囲気になりきれていないのが惜しまれるところ。
「そ、そう」
浩之くんの言葉に顔を朱に染め、照れたように目を泳がせる綾香ちゃん。
「信じられないっていうのなら何度だって言ってやるよ。俺は綾香が好きだ。誰よりも、な」
綾香ちゃんの頬に手を添えて、浩之くんが熱く語り掛けます。
「うん、ありがと。あたしも、浩之の事が誰よりも好きだよ」
瞳を微かに潤ませて綾香ちゃんが返しました。
辺りにピンク色の空気が漂っています。甘々です。ラブラブです。
もっとも……浩之くんのほっぺは未だに“みにょーん”と伸ばされているので、端から見るとかなりおマヌケな光景ではありますが。
バーガーも食べ終わり、ポテトとコーラを肴に会話を楽しんでいる浩之くんと綾香ちゃん。
「……ってな事があってさ」
「あはは」
浩之くんの頬がちょっぴり赤くなってるのはご愛敬。
会話の切れ目でポテトを一本手に取る綾香ちゃん。
それを見て何かを思い付いたのか、綾香ちゃんが不意にイタズラっぽい笑みを浮かべました。
「ねぇ、浩之」
「ん?」
「はい。あーんして」
コーラを啜っていた浩之くんに、綾香ちゃんが手にしたポテトを差し出しました。
「へっ!?」
「あーん」
「お、おい」
「あーん」
狼狽える浩之くんに構わずに、綾香ちゃんはポテトを差し出し続けます。
「ち、ちょっと待てよ」
「あーん」
綾香ちゃん、食べるまでは許さないといった感じです。目が『ほらほら、早く食べなさいよね』と如実に語っています。
「……ったく、しょーがねーなぁ」
苦笑を顔に貼り付けて言う浩之くん。
観念したように口を開け、ポテトをくわえました。
「えへへ」
その様子を見て綾香ちゃんは満面の笑み。
そして、
「はい、あーん」
再度ポテトを差し出しました。
やれやれといった表情になる浩之くん。
しかし、今度は一切抵抗せずに素直に口を開けました。
そこにポテトを入れようと綾香ちゃんが手を伸ばします。
すると、浩之くんの顔にニヤリとした笑みが浮かびました。
差し出された綾香ちゃんの手を掴むと、ポテトと一緒に綾香ちゃんの綺麗な指も口に含んでしまいました。
「え!?」
予想外の事態に綾香ちゃんビックリ仰天。
浩之くんは一向に気にした素振りも見せず、綾香ちゃんの指に舌を絡めます。
「ひ、浩之。な、なにを……」
綾香ちゃんは慌てて手を引きますが、浩之くんにしっかりと掴まれている為全く動かせません。
その間も、浩之くんは綾香ちゃんの指を舐め続けます。
さすがは浩之くんです。いつまでもやられっぱなしではいません。
ちょっと反撃の仕方に問題があるような気がしなくもありませんが。
「あ……浩之……ち、ちょっと……」
暫くは手を引っ張るなどしていた綾香ちゃんですが、次第に抵抗が弱くなっていきました。
「だ、ダメだってばぁ……っ……んっ……」
それどころか、ペチャペチャとしゃぶられているうちに目には恍惚の色が現れ、口からは甘い吐息が漏れ出し始めました。
そこから更に数分後。
ようやく浩之くんの口撃から解放された時には、綾香ちゃんの顔は完全に真っ赤になっていました。
「も、もう! なんてことするのよ、ばかぁ」
上目遣いで睨んでくる綾香ちゃん。
「やられたらやり返すのが俺の流儀だからな」
綾香ちゃんの文句をサラッと受け流して浩之くんが宣いました。
……ここで浩之くんは一つ大きなミスを犯しました。
もしも他の女の子だったら、これで良くも悪くも話は終わったでしょう。
しかし、相手は綾香ちゃんです。
「ふーん、そう。だったら……」
やられたらやり返すのが流儀なのは彼女も同じ。
従って、こうなります。
「んっ!」
既に冷めきってしまったポテトを一つ口に含んで、綾香ちゃんが浩之くんに差し出してきました。
「……お、おい……マジかよ」
さすがに躊躇する浩之くん。
さて、ここでおさらいです。
今、二人がいるのはヤックです。
しかも、先に述べたように、店内は結構混み合っています。いい具合に賑わいを見せています。
そんな中で先程の様な応酬を繰り広げれば視線を集めて当然。
加えて、超が幾つも付くような美少女である綾香ちゃんと、十二分に人目を引く容姿をしている浩之くんです。
この二人、既に注目の的。
その状況で綾香ちゃんの要求に応えることは、いくら浩之くんでも躊躇われました。
しかし、
「んっ」
「いや、だから……」
「んーっ」
愛する女の子にこんなことをされて、抗いきることの出来る男の子がいるでしょうか。
少なくとも、浩之くんには無理でした。
「……ったく、しょーがねーなぁ」
肩を竦めて観念したように零す浩之くん。
そして、二人の顔が徐々に近付いていき……
その後、二人の間に何が起こったのかは明言を避けます。
ただ、
この日のヤックはとても暑かった。とにかく暑苦しかった。普段よりも、体感温度が5度は高かった。
―――とだけ記しておきます。
「ねぇ、ひろゆきぃ。もう一回しよっゥ」
「やれやれ、しょーがねーなぁ」
< つづく >
☆ あとがき ☆
前回とは違い、今回はちょっとはっちゃけてみました。
少しは(Ba)カップルっぽさが出たかと思います。
それが良いことかどうかは別として(^ ^;
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