あるところに一組のヤガミとヤガミ好きがおりました。 ヤガミ好きの名前は黒崎克耶。男同士で恋人になろうと思ったが折れて性転換した女性。 ヤガミの名前はソウイチロー・黒崎。何故かハイマイル区画という金持ち区画に家を構え、克耶のことを蹴り飛ばすトンでも系です。 雪の振る中、2人はマフラーを巻いて座っている。 そろそろ頭に雪が積もり始めるくらいは座っていただろうか。ソウイチローが口を開いた。 「寒いな」 「そうですか?」 私はソウイチローさんが一緒だから寒くないですけど、と言いつつ腕に抱きつく黒崎。 「いや雪が降ってるのに寒くないというのはないだろ。常識的に考えて」 「寒くなーいーんーでーすー」 腕に抱きついたまま、黒崎はにへらにへらと笑った。これよこれ、これこそが乙女の求める何か!という表情だ。 「どっか行くぞ。流石に冷えてきた」 「えー、せっかく誰もいないんですからここでいいじゃないですか」 よっこいしょ、と言って立ち上がろうとするソウイチローの腕にぶら下がるようにして、黒崎が押し留める。 「歯の根をガタガタ言わせながら出せる台詞なのかそれ」 「いいんです!二人きりがいいんです!」 ガチガチガチガチと口から音を発する黒崎を見て、ソウイチローはいい笑顔で猫耳をつまんだ。 「ぐにゃー」 「いや何だその声は」 「や、耳弱いんで…」 ふと、ソウイチローは片手で黒崎の猫耳両方をつまんだ。 もげる!もげる!と叫びながら黒崎はばたばたしている 「…4つもあるのが悪いだろう」 「うにゃーひどーいひどーいどえすー」 げしっ 「蹴りましたね!?不条理な理由で蹴りましたね!?陛下にも蹴られたことないのに!」 「心配するな。蹴られてたら俺が撃つ」 台詞があまりにも本気極まりない。 「やらないようにする、ってさっき言ってたのに!」 「全くやらないとは言ってないだろう。ほら立て」 「いじめっこードメスティックだー訴えてやるー」 「訴えられるならやってみろ」 ソウイチロー、抱きしめた。 そのまま― 雪の降る日に。想いをこめて。 私は心の中で叫ぶ。 このいじわるめがねが!