ある日のよんた藩国政庁。 一日の仕事を終えた藩王よんたが執務室でお茶を飲んでいる。 お茶を淹れているのはなぜかメード姿のよんた藩国執政かくたである。 「ではよんた藩王、以前お願いしておりました通り、明日は一日暇をいただきます」 「ああ、この間言ってた件ですか。ゆっくりしてきてください。  確か、メノウちゃんに会いに行くんでしたっけ。どこに行くとか決めました?」 「いえ、特には決めておりません。メノウの行きたいところへ行ければと」 ずずずずず・・・ それからしばらくは、お茶をすする音だけが響いていた。 /*/ ―――次の日――― 「うーん、さすがにこの距離だと何言ってるか聞きとれんなぁ」 「ファインダー通してみると、かろうじて口の動きはわかる。問題は読唇術の心得がないんだよね」 「盗撮はさすがにアウトだと思いますよ」 物陰にひそむ4人の男たち。 彼らの視線の先では、親子と思しき男と少女が挨拶を交わしているところだった。 「なぜか片目閉じたままみたいなんですが、なんでだろ?」 「オッドアイとか?」 「奇眼出身じゃないんだから違う気が。奇眼以外にもいるかもだけど」 「癖じゃないですかねぇ。片目閉じるとなんか集中できますから」 明らかに怪しいが「ただ単に見守っているだけ(本人談)」…らしい。 「あ、なんか移動する気配が」 「つかず離れず、追跡者の極みを見せて追いかけるとしよう」 「なぜか犯罪者のような言い方ですね」 こそこそと物陰に隠れつつ、二人のあとを追う男たち。 「この方向ってことは…さてはうみでーとだな!」 「海か…ならあの手が使えるか」 「やる気になってるところ悪いんですが、あの手ってなんですか?」 「あの手と言えばあの手だよ」 とかいいつつどこかへ姿をくらます一行。 「……なるほど、これなら確かに邪魔されず見守れる」 「って、遠すぎるでしょう!」 近くの漁船を借りて一行は海に繰り出していた。 「ふっふっふ、こんなこともあろうかと用意しておいたんだ」 「て、偵察用双眼鏡…。なんか準備よすぎない?」 「細かいことは気にせずに」 それぞれ双眼鏡で海辺の二人を見守る。 「かくたさんがお父さんっぽい雰囲気を醸し出してますね…ステキだ」 「まぁ、かくたさんだし。そもそも養子だから戸籍上は親子なんだし」 それぞれ好き勝手なことをいいつつ、見守り(あくまで監視などではない)続けていた。 /*/ この物語はフィクションです。 実在の人物・団体などとは一切関係ありません。