まるくおおきな黄色い瞳。 今日はいつもより静かな家族たちを映している。 まだ幼かった僕がこの家に来てからずいぶん経つが、しっぽの無い家族たちはいつも泣いたり笑ったり忙しそうだった。 特に二人の女たちはちょっとしたことで大笑いしたり、大泣きしたり、抱きついてきたりと心が休む暇がないんじゃないかと思うくらいだった。 でも今日はいつもとなにかが違っていた。 ただ静かなんじゃなく、なにかへんな空気が流れている…と、揺れるヒゲが教えている。 とりあえず隅っこにいる大きい兄と姉にすり寄ってみることにしよう。 兄の膝にすりすりしてから、小さく鳴いてみる。 …難しい顔をしたまま動く気配はない。 少しさみしいので姉の膝に乗ってみる。 ちょっとだけこっちを見て、なでてくれた。 でもなにかぎこちない、心がこもってない感じのなで方だった。 なぜだかすごくさみしくなってきたので、机の上に紙を広げている父にかまってもらおう。 机の上の紙に乗ってゴロゴロ。こうするといつも遊んでくれるんだ。 「すみません。読み終わるまで待ってください」 そう言って机の上から優しく降ろされた。 小さい兄と後から来た兄は大事な話をしているようで、傍にいられそうにない。 仕方がないので、一匹でごろごろごろごろ… 遊んでくれる相手がいないときは、自分と遊ぶしかないなあ。 しばらくしたら母が来た。とても心配そうな顔をしているように見える。 部屋を見渡してまっすぐ父のところに行ったのは、なにかだいじなお話があるのかな。 おとなしくしておいた方がよさそうだ。 父が変な笑い方してると、母が大きい兄と姉を抱き連れてきた。 ちょっとうらやましい。 けど大きい兄はあんまり嬉しそうには見えない。 父にもほめられてて、嬉しいはずなのにな。 姉にもなでてもらえてるのにな。 僕ならのどがごろごろいいそうなくらいなのに。 お話が終わったのか母は小さい兄たちのいる方へ行ってしまった。 「にゃー」 姉がそっと抱き上げてなでてくれた。 「おとーさん。柘榴ちゃんどこにもいかないよね?」 「…少し様子を見てきますのでここで待っていてください」 父もそっとなでてくれた。 どうやら母たちの様子を見に行くようだ。 「柘榴ちゃん、大丈夫だよね?」 不安そうに父の背中を見ていたので、ぺしぺしと姉のほっぺたを前足でなで返してあげた。 「くすぐったいよっ」 「にゃ」 「いいぞ琥珀」 よくわからないけど、大きい兄がほめてくれた。 ピクピクひげを動かすと、なんとなく少しだけいつもと同じ家になっている気がした。 まるくおおきな黄色い瞳。 その澄んだ瞳の色から琥珀と名付けられた猫は、姉も兄たちもこの家族たちはみんな頑張り過ぎるから、僕が付いていないといけないな、とか最近思っている。