『ナースVSナース! 宰相府夢の頂上決戦!』 作:1100230:玄霧弦耶 /*/ 熱砂の匂いがする砂漠の国、宰相府。 だが、今は熱砂の匂いよりも強烈な香りが立ち込めていた・・・ ……… …… … 「さすが、メイドイン・ジャパンなだけあるわね」 「そちらも、なかなかのクオリティですよ」 忠孝と空麟眼が顔の高さで手を組みあい、対峙している。 顔が、近い。 すでに二人のナース姿の名残はナースキャップとスカートを残すのみである。 二人の背中に、鬼の顔が浮かび、しっとりと汗ばむ。 そんな(一般的には)地獄絵図を、きらきらした瞳で眺める女が一人。 蒼のあおひとであった。 気分的にはそもそも前だけスーツの時点で最高だったが、そこに久方ぶりの高機動善行発動。 その上、相手の空麟眼まで脛毛完備ということもあり、もう極楽であった。 ちなみに、子供たちは柘榴先導の元、かなり離れて昼食をとっている。 他人の振りを決め込む事にしたようだ。 「ブランクがあるという話だったけど、やるじゃない」 楽しそうに、空麟眼が言う。 「久方ぶりでしたけど、やっぱり、今でもいけますね」 ノリノリで、忠孝が答える。 相変わらず手を組み合いつつ、そんなやり取りをして二人してニヤリと笑う。 やはりどうみても、地獄絵図である。 /*/ そんな時間が10分近く過ぎた頃、場が、動いた。 二人のナースが、がっしりと組み合っていた両手を同じタイミングではずしたのだ。 距離をとって対峙する。その距離、10m。両者の間合いが触れ合う距離である。 (注記:何の間合いかは二人にしか分からない) 「力比べは同等、といったところね」と、空麟眼。 「ええ・・・癪ですが、認めざるをえませんね」と、忠孝。 次の瞬間、二人は飛んだ。 壁を蹴り、屋根をかけ、宙を舞う。 力比べから、機動戦へ。平面の戦いから、三次元戦闘へ。 そして、被害の拡大へ。 学校中で巻き起こる悲鳴、逃げ惑う足音、倒れる人々。 そんな中、ナースの二人は 「ついてこれるとは驚きね」 「いえいえ、まだまだこれからですよ」 と、やっぱりノリノリであった。 /*/ そして更に数分後。 すでにナースキャップを被っただけの二人が、あおひとの前に佇んでいた。 カットされた間の出来事を、語るものはいない。 あえてここに書くとすれば。気を失っていた人々がもう一度気を失ったとだけ、書こう。 閑話休題。 佇む二人の間は、相変わらず10m。間合いである。 フッ、と空麟眼が笑う。 忠孝が、崩れ落ちた。 「私の勝ちね。高機動善行」 膝を突きながら、忠孝がニヤリと笑う。 「いいえ、私の勝ちですよ」 空麟眼のナースキャップが、弾けた。 「ナースの魂というべきナースキャップを失った貴方に、勝利はありません」 「そうね・・・私の負けよ。流石だわ」 どこかから『えっ、これそういう勝負だったの?』という声があがったが、二人は盛大に無視した。 背を向けて去ってゆく空麟眼に、忠孝が声をかける。 「行くのですか」 「ええ。また、会うこともあるかも知れないわね」 「金輪際勘弁願いたいですね」 その言葉に楽しそうに笑いながら、空麟眼は振り向き、言った。 「私は高機動クーリンの中でも一番の小物。必ずや第二第三の私が」 「そういうのは、番長だけでいいですから」 こうして、戦いは終った。 /*/ すがすがしい顔で、高機動善行もとい蒼の忠孝があおひとの元に戻る。 ほぼ全裸だった姿はいつの間にか、ナース服をピシッと着こなしている。 「いやぁ、なかなかの強敵でした」 「凄かったです!もうほんと、最高でした!」 既に回りは気絶した人か家族しかいないため、人目を憚らずキャッキャするあおひと。 そして、両親の姿を見て、(いつの間にか戻ってきた翡翠も含め)微笑む子供たち。 柘榴あたりはぶつぶつと「僕はならないぞ。ならないんだ・・・」と言っていたが、ほかはおおむね、楽しんだ(?)ようだ。 本当に楽しんだかは疑問だが。 ふいに、何かを思い出したコーラルが声を上げた。 「ところで、おとうさん、おかあさん。これ、どうするんですか?」 あたりを指差す。もちろん、泡を吹いて倒れていたりしている人々をさしている。 時間がたったからか、ざわざわと人だかりが出来てきた。 「忠孝さん」 「ええ、みんな、いきますよ」 言うが早いか、あおひととひなぎくを抱えて忠孝が飛ぶ。 翡翠に至ってはとっくの昔にテレポートしている。 「絶対、絶対だからね!」 「そうですよ、絶対ですからね!」 「じゃあ、そういうことで」 順に、ひなぎく、あおひと、忠孝が柘榴とコーラルに叫び、飛び去る。 後には、阿鼻叫喚の図と、柘榴・コーラルだけが残った。 「僕は、あんなふうにはならないからな!」 と、叫ぶ柘榴を眺めながら、コーラルはこの状況をどう説明するかを考えていた。 とりあえず、『敵襲を柘榴が撃退した』という事に決めたコーラルは、一言つぶやいた。 「ともかく、指揮官をなだめるところから、かな」 なんとも微妙な顔をしていたが、どこか楽しそうなコーラルであった。 /*/ おまけ。 「ナース空麟眼がやられたそうよ」 「ふっ、やはりね。やつは我らの中で一番の小物」 「次は私に行かせて貰うわよ」 「貴方は・・・バニー空燐願!」 「そうね、貴方なら・・・」 「期待しているわよ」 「そう、我ら・・・」 『高機動クーリンガンの名の下に!』 次回、ナースVSバニー 高機動頂上決戦にご期待下さい! なお、この番組予告は嘘が99%であり、実現の可能性は極めて低いことをご了承下さい。 って言うか実現したら恐ろしいと思います、まる