ツイッターなんかでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが バレンタイン直前辺りからぱったりとネットから姿を消してましたさくらです(^^;
原因は毎年の事だからと甘く見ていた扁桃腺炎。
昔一度 エライ事になったのに6年経ったらなんとやら・・・
すっかり拗らせそこに まさかの溶連菌感染と(大人なのに・・・)口唇ヘルペスの再発まで重なってぐったりしてました。
それでも家事は減らないし 夜中に夜食は作らされるし。
小学校と幼稚園の説明会とか遠足がらみでお弁当は3日続くわ。
他にももろもろ忙しかったので休む間が無く悪化して医者に入院を勧められたのを拒否したら通院で対処してくれたんですが毎日 喉に炎症止めの注射と栄養点滴を打ちに通う始末(^^;
しかも唯でさえ血管が細くて深いのに 弱っているので更に見づらく毎回3度は打ち直され遂に撃つところが無くなって手の甲、指とどんどん細くなるんですわ・・・
旦那が「俺に移すな」と外泊決め込むしで病院に行く間 ママ友に子供を預かって貰って乗り切ってます。
持つべき物は ママ友!!!
まだ微熱が続いてますが 医者からはもう人には移らないと言われたし昨日 気道確保用の管みたいなのは取って貰えたので今日は幼稚園の個人面談に向かわねば・・・
明日は小学校の教材配布(一回目)だ・・・
纏めて下さい おねがいしますよぅ~ 教育委員会っ(><)
袋物も途中で投げ出しちゃってるからやらないとだし、この後幼稚園の卒園がらみと入園関連で呼び出しが一杯。
年度末は忙しいですねぇ・・・・
とこんな感じで2月 あり得ないほど更新してなかった訳ですがまだ本調子じゃないのでもう少しだらだらします(^^;
こんな管理人ですがどうぞ見捨てないでやってくださいね。
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ええと今更バレンタインネタと言うのもなんですが(^^;
書いたのに寝込んでUP出来た無かった体たらく
まぁ 2月中だから有りってことで・・・駄目っすか?!
見てみたいというお客様がいらしたのでちょっと晒してみますが・・・ 時期外しだしもしかしたらすぐ下げちゃうかも(笑)
余りちゃんと見直していないので誤字脱字はそのうちこっそり直すかも知れません☆
ではそんな物でもいいかな~という方は以下からどうぞご覧ください♪
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Valentine's Day 2012
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バレンタイン当日 整備班の面々がチョコレートの話で盛り上がっている中、「遊馬さんはいいよ 泉ちゃんからは確実に貰えるもんなぁ」という誰かの嘆きに彼は「俺 あいつに期待しなきゃいけない程不自由してねぇもん」と何食わぬ顔で答えた。
たまたまそこを通りかかった野明は偶然その会話を耳にして手にした包みを慌てて制服のポケットに仕舞い込んだ。
ゆっくり深呼吸をして大きく一歩踏み出した彼女は彼等の前に姿を見せる。
「それはそれは。不自由なくて何よりじゃない。あ これ整備の皆で」
そう言ってレジ袋一杯に詰め込まれた個別包装のチョコレートを彼等に差し出した野明は顔を引き攣らせて冷や汗を掻く遊馬に向かって冷めた一瞥を投げた後スタスタとその場から歩き去った。
「・・・・なんか拙いんじゃないの?」
「謝っといた方がいいって」
同じように冷や汗を掻いている整備員達が心配そうに言ったものの遊馬は「うーん」と顔を顰め「ま 平気だって」と笑いその場を離れた。
遊馬が隊員室に顔を出すと先に戻っていた野明は笑顔でひろみ、進士、太田の三人に先程の物よりは少し体裁のいい小箱を配って歩いていた。
遊馬と目が合うと大きく目を見開き、一瞬で笑みを収めた彼女はスタスタと自分の席に戻ると黙って椅子に腰を下ろした。
態々遊馬の側に肘を立てて頬杖をつくと極力彼を視界から外し配布されていた書類を捲る。
どう見ても険悪な雰囲気に野明を除く全員の注目を浴びた遊馬は不貞腐れた顔で溜息を吐いた。
「・・・おい・・・」
声を掛けたもののピクリとも反応しない彼女の態度に周りの視線はますます冷たくなり遊馬は思わず大きく顔を顰めた。
「・・・野明」
もう一度声を掛けると彼女はチラリと彼を一瞥し小さく息を吐き出した。
「何?」
「何って・・・」
予想を上回る剣呑な声に遊馬が思わず絶句すると 野明は態とらしいほどにこやかな笑みを浮かべ席を立った。
「用が無いなら 私 ちょっと席外すね」
言うが早いか聊か手荒な仕草で足元の紙袋を掬い上げ野明はさっさと隊員室を出て行った。
「泉さん 怒ってましたよね・・・」
「遊馬さんまた何か言ったんですか?」
「全く お前と言う奴はデリカシーってもんがないのか?」
男性3人に口々に責められ思わずムッとした遊馬は「デリカシーなんて言葉をあんたから聞きたくないね」と太田に向かって毒づいた。
その様子を呆れたように見ていた熊耳がうんざりした顔で溜息を吐く。
「何を言ったのか知らないけど 落ち度があるならサッサと謝った方が身の為よ。その位の事は出来るでしょ、子供じゃないんだし」
「・・・大したことじゃないですよ」
「なら尚の事 早いとこと仲直りして来ないとあとで後悔しても知らないわよ?」
彼女の言葉に遊馬は面白くない気分で「問題無いです」と呟くとそのまま席について書類を書き始めた。
隊員室を出た野明は後藤隊長にチョコを手渡し次いでハンガーに降りると榊とシゲにもチョコを配る。
ハンガーを去ろうとした彼女にシゲが遠慮がちに声を掛けた。
「泉ちゃん・・・さっきの遊馬ちゃんのことなんだけどさ・・・」
「気にしてないから大丈夫だよ」
皆まで言わせずにっこり笑って言葉を遮った野明に『相当気にしてるなぁ』とシゲは少し顔を強張らせる。
敢えてその様子に気付かないふりをした野明は「じゃあね」と手を振ると足早にハンガーを後にした。
席に戻ると茶坊主の遊馬が席を外していて野明はポケットに突っこんだままだった小箱を無造作に机の引き出しに投げ込んだ。
手荒く扱った為少し歪んでしまった箱。
少しの間 野明は少し残念な気持ちでそれを見詰めていたものの一つ深呼吸すると思い切って引き出しを閉めた。
程なく遊馬がお茶を運んできて「ほら」と言ってカップを差し出すと「ありがと」とだけ言ってそれを受け取る。
それきり黙って黙々と資料に目を通す彼女の隣で遊馬は困った顔をしたものの会話の糸口を見つけられず落ち着かない気分のまま自分も同じように書面に目を通した。
程なく隊員室の扉が開くと整備員の一人が顔を出す。
「泉さーん ちょっといいですか」
「何?」
「一号機 足回り調整したんで見てもらえます?」
「了解 今行くね」
気軽に返事をしてさっと席を立つと彼女はスタスタと部屋を横切っていく。
自分の後ろを通り過ぎた時でさえ視線の一つも向けてこない彼女に遊馬はあからさまな仏頂面をして思い切り頬杖を吐いた。
苛ついた気分で書類を書けば自然 誤字も増える。
何度目かの書き損じに顔を顰め荒っぽい仕草で修正テープを手にした遊馬がいざ文字を消そうとするとカチッと音をさせてテープの回転が止まった。
中身を使い切り透明なフィルムがピンと張った状態のそれを見て彼は溜息を吐き引き出しを開ける。
ごそごそと中を探ってはみたもののこういう時に限って予備のリフィルが見当たらず遊馬は大きく肩を竦めた。
修正液では乾くのに時間がかかる。
かといってリフィルを取りに備品庫まで行くのも正直面倒臭い。
少し考えた末 隣の席を見遣った遊馬は主の居ない机に向かって「借りるぞー」と呟きつつ引き出しを開けた。
手前に並べられた文房具の中から目的の物を手にとり引き出しを閉めようとした遊馬はその奥にラッピングされた小箱を見つけた。
興味に勝てずぐっとキャビネを引っ張ると少し歪んだ小箱に掛けられたリボンの間に小さなカードが挟まっていた。
『遊馬へ いつもありがとう』
手書きされたそれに思わず大きく顔を顰め今更ながら先の発言を後悔しつつ彼は黙ってそのまま引き出しを閉じた。
定時が過ぎ 帰り支度を始めると野明は少し迷った末 件の小箱をぽんと鞄に投げ込んだ。
そのまま「お先に失礼します」と頭を下げて隊員室をそそくさと立ち去る。
遊馬に声を掛けることなく出て行った彼女を見送り全員が『まだ謝って無かったのか』という目を彼に向けた。
バツの悪さと居心地の悪さに慌てて荷物を纏め急いでその場を後にした遊馬は少し考えた末野明を探して更衣室の方へと足を向けた。
一足早く隊員室をでた野明がキャットウォークを歩いているとハンガーから声が掛る。
「泉さん 今退勤?」
「ええ 風杜さんどうしたんですか、こんな時間に」
「松井さんの付き添いでね おたくの隊長と内緒話みたいだよ」
言いながらタラップを上がってきた彼の手には紙袋。
幾つかの可愛らしいラッピング包装の箱が覗き野明はくすくすと笑った。
「人気者だ、風杜さん」
「義理ばっかりだけどね。来月のお返しを考えると頭が痛いよ」
顔を顰めた彼に野明は「お返しかぁ」と笑う。
「ここの人たちはそういう習慣ないからなぁ あげたらあげっぱなし。でも皆に大袋のチョコ一個づつじゃしょうがないんですけどね」
「この人数なら仕方ないんじゃない?全員に渡そうとするだけ立派だよ」
「何時もお世話になってますからね」
照れたように笑う野明を見て風杜が小さく肩を竦める。
「そういう意味では本庁は人数が限られてるから逃げにくいんだよなぁ」
「そうかもしれないですね。来るって判ってたら私も一個取っておいてエビで鯛を釣ったのに」
溜息を吐く風杜の顔を見て野明は吹き出す様に笑うと ふと思いついて鞄を探る。
少し歪んだ例の小箱を目に留めて彼女は少し考えた後それを引っ張り出すとリボンに挟んだカードを引き抜いた。
「残ってるのってこれしかないんだけど・・・箱 歪んでちゃ嫌ですよね?」
差し出された箱に目を瞬き彼は軽く首を傾げた。
「そんなことはないよ。けどこれ本当は誰かに渡す予定だったんじゃないの?」
「その心算だったんですけど要らないみたいなんで。持って帰ろうと思ってたんです・・・ってこんなの渡すのは失礼ですね」
「いや そういうことは気にしないんだけど・・・いいの?」
「ええ これで鯛を狙いますから」
綺麗にラッピングされた聊か値の張りそうな小箱を受け取り風杜は目を瞬いた。
「・・・シッカリしてるなぁ、じゃあ有難く」
二人して一頻りクスクス笑うと野明は「私はこれで」と言ってぺこりと頭を下げた。
小走りに駆けていく彼女を見送り隊長室に向かおうとした風杜は足早に廊下を歩く遊馬と出くわした。
『また来てるのか』という顔をした彼の目が風杜の手元で止まる。
見覚えのある少し歪んだ小さな箱。
それが野明の机で見たものだと判った瞬間 遊馬の顔が強張った。
その様子にこの箱の本来の宛先に思い至った風杜は『成程ね』と一人心の中で頷いた。
「篠原君も退勤かい?」
意図的に『も』にアクセントを込めていうと彼はピクリと眉を跳ね上げた。
「今 そこで泉さんに会ったよ」
「・・・そうですか」
「喧嘩でもしたのかい?」
「してませんよ、そんなもの。あいつがそう言いましたか?」
明らかにいつもより機嫌が悪いにも関わらず切り返しに勢いのない彼に風杜は微妙に調子が狂う感じを覚え小さな溜息と共に苦笑いを浮かべた。
「いや。ただね・・・返すよ、これは・・・君宛だろう?」
そう言うと手にしていた小箱をぽんと彼に押し付けた。
思わずそれを受け取ってしまい遊馬は苦虫を噛み潰したような顔で風杜を見返す。
「知りませんよ。受け取ったのは貴方なんですから持って帰ればいいじゃないですか」
不貞腐れた顔で箱を返そうとする遊馬に『こういう顔もするんだな』と思わず微笑ましい気分になった風杜は小さく肩を竦めた。
「それはそうなんだけどね、僕に渡す前に引き抜いてたけどそのチョコにはさっきまでカードが付いていたんだよ」
『やっぱりそうか』と思いつつそれを口に出す事は出来なくて遊馬は顔を顰めバツが悪そうに目を逸らした。
その様子に風杜は『心当たりが有るんだな』と察し微苦笑を浮かべた。
「何があったか知らないけど兎に角それは返すから」
「困ります、野明が怒るじゃないですか」
そう言って遊馬が小箱を突き返すと風杜はにっと笑い彼の顔を覗き込んだ。
「おや、僕はそれを泉さんから貰ったなんて一言も言ってないよ?」
風杜の言葉に遊馬は『しまった』という顔でそっぽを向き耳まで朱く染めた顔面を片手で抑え返す言葉に詰まって絶句する。
何時になく余裕の無い彼の態度に思わず苦笑いした風杜は小箱を受け取る事無く隊長室に向かって歩き出した。
すれ違いざま「来月はちゃんとお返ししてあげてよ」と笑いを含んだ声を掛け遊馬の横を通り過ぎた。
何か言い返そうとして勢いよく振り返ったものの気の利いた文句の一つも浮かばず遊馬は大きく開いた口をへの字に引き結ぶ。
手の中の箱に目を落とし眉間に深く皺を寄せた遊馬は少し考えた後それをポケットに押し込み去りゆく背中に声を掛けた。
「・・・お人好しだな あんた」
「さぁ どうだろうね」
そう嘯き片手を上げつつ角を曲がった風杜は彼が駆け去る足音を背中に聞いて「余裕がないなぁ」と小さく笑い「さて鯛は送ったつもりだけど・・・ちゃんと釣れるかは本人次第ってとこかな」と嘯いた。
遊馬が更衣室に向かって駆けて行くと 既に着替えを終えた野明が正面から歩いてきた。
彼の顔を見ると少し表情を曇らせ僅かに視線を落とした野明は足早にその横を通り過ぎようとする。
「野明」
遊馬が慌てて声を掛けると彼女は一瞬顔を上げかけたもののそのまま黙って横をすり抜けようとした。
焦った遊馬は咄嗟に彼女の手を掴み取る。
驚いて立ち止まった野明は一瞬躊躇した後 彼と顔を合わせることなく「何?」と聞いた。
「いや・・・えっと・・・その・・・昼間は悪かった・・・っていうか」
予想以上に素っ気ない彼女の声に思わず遊馬が口籠ると野明は小さく溜息をつき「何の事?」と冷めた口調で問い掛けた。
「いや・・・だからさ・・・」
「別に・・・謝る様な事ないでしょ?」
遊馬の言葉を遮る様に口を開いた野明に驚き思わず彼女を掴んだ手に力が籠った。
「話くらい聞けって」
肩に手を掛け彼女を無理やり自分の方へ向き直らせたもののあからさまにそっぽを向く野明に遊馬はムッとした顔を見せた。
「・・・機嫌直せよ」
「別に機嫌悪くなんかないって」
「良くもないだろうが」
会話が段々売り言葉に買い言葉の様相を呈してくると野明が急に我に帰り瞬間的に声のトーンを落とした。
「・・・遊馬さ・・・早く帰った方がいいんじゃないの?」
どこか突き放す様な彼女の口調に遊馬は思わず顔を顰めた。
「なんだよ、それ」
「私の相手なんかしてる暇があるなら早く帰って彼女喜ばせてあげたら、って言ってんの。進士さんみたいにさ。じゃ 私も帰るから」
俯き加減で早口に捲し立て彼の手をすり抜けた野明は足早にその場を立ち去ろうとした。
その肩を再び掴み取った遊馬は少し怒った目で彼女の瞳を覗き込む。
「彼女って・・・お前ね。そういうお前こそ 何か急いでんのか?」
「別に。仕事が終わったから寮に帰るの。それだけよ」
「なら ちょっと待ってろ。すぐ着替えてくるから」
「なっ・・・何で・・・」
抗議の声を上げた彼女の返事を待つことなくその場を駆け去った遊馬の背中に野明は困惑した目を向け「本当に勝手なんだから」と軽く肩を竦めた。
ちゃんと返事をしなかったんだし帰ってしまってもいい様なものだが何となくその場に留まってしまった野明はハンガーの手すりに身体を預け深く重い溜息を吐いた。
「これで帰るとますます機嫌損ねそうだしなぁ・・・」
言い訳めいた事を呟いていると程なく遊馬が息を切らして駆け戻ってきた。
そのままの勢いで彼女の手をひっ掴み足早にハンガーを横切って行く遊馬に野明は吃驚して声を掛けた。
「ちょっと 私 バイク・・・」
「んなもん 一日くらい置いてったってどうって事ないだろう」
「勝手なんだからっ」
「文句は後で纏めて訊く」
「もう!遊馬ぁっ」
困惑した顔のままぐいぐい引き摺られていく彼女の様子をキャットウォーク上から見下ろし風杜はふぅっと大きな溜息を吐いた。
「あらま 随分強引な鯛だなぁ・・・あれじゃ 釣ったんだか釣られたんだか判んないなぁ」
苦笑いする彼の隣から同じように下を覗き込んだ後藤がニヤニヤと笑う。
「そのままもらっときゃよかったのに、チョコ」
「・・・見てたんですか?」
「たまたまね」
しれっと言う後藤に疑いの眼差しを向けた風杜は大きな溜息をつきつつ肩を竦めた。
「明らかに彼の為に用意した物でしたからね。そうもいきませんって」
「律儀だねぇ」
「そうじゃないですよ・・・貰うなら本命であれ義理であれちゃんと『僕の為に』用意したものがいいってだけです」
「・・・案外プライド高いのね」
少し拗ねた顔をした風杜に後藤が同情の籠った目を向けると彼の向こうで同じように階下を見下ろしていた松井が「若い割に不器用なんですよ こいつは」と溜息交じりに呟いた。
野明の腕を掴み足早に二課棟を離れた遊馬は本数の少ない路線バスが扉を開くと半ば強引に彼女を車内に押し込んだ。
最早抵抗しても無駄だと判断した野明が大人しくそれに従うと遊馬は黙って彼女の隣に腰を下ろした。
居心地悪そうに身動ぎする野明へ何と話を切り出したものか悩んだ遊馬が軽く眉間に皺を刻む。
野明を見遣り 遊馬は一度大きく息を吸い込んだ。
「その・・・悪いと思ってるよ・・・」
不貞腐れた様子の遊馬に野明はチラリと視線を投げ軽く目を閉じると素っ気ない返事を返す。
「だから・・・謝られる様な事何てなにも・・・」
「ある」
彼女の言葉を遮った遊馬は思い切りバツの悪い顔で言葉を継いだ。
「それに・・・怒ってるだろ、お前」
「怒ってません」
「嘘つけ。その態度 明らかに不自然だろうが」
言われて返事に困った野明は顔を曇らせて彼から目を逸らした。
「そんなこと・・・でも例えそうだとしても、私の機嫌なんか損ねたところで仕事さえちゃんとこなせてれば何の問題もないじゃない」
「・・・いや だからさ・・・それは困るって言うか・・・」
口籠る遊馬に野明は大きな溜息をつき「もう いいってば」と大きく肩を落とした。
『この話は もうお終い』とばかりに野明がふいっとそっぽを向くとその態度に遊馬は思い切り苛つきを覚えた。
「よくないんだって!ああ もう まだるっこしいっ!いいから聞け お前とギクシャクすんのは『俺が』困るんだよっ」
「心配しなくても仕事での指揮はちゃんと受けます。単にプライベートへの干渉をしないってだけなんだからどうぞお構いなくっ」
「あのなぁっ」
「私なんかに構ってないで早く帰ればいいでしょっ」
「お前ね、そういう言い方を・・・」
遊馬が思わず腰を浮かせた途端バスが駅に滑り込み降車扉を大きく開いた。
降車を急ぐ他の乗客に混じり野明もまた同じようにサッサとバスを降りると乗り換えの駅に向かって足を速める。
少し遅れてバスを降りた遊馬は小走りで彼女に追いつくと改札をくぐりかけていた野明の上腕を慌てて引っ掴んだ。
「待てよ」
「もうっ ほっといてってば」
「そう言う訳にいかないだろうがっ」
「いいんだってばそれでっ。大体私がどうしようと私の勝手じゃない!私の事なんてほっといて遊馬は遊馬で愉しくやればいいでしょっ」
「愉しくって・・・おまっ・・・いいから聞けって!」
「嫌っ 聞きたくない。それに遊馬は女に不自由してないんでしょっ だったら私なんかに構ってないで・・・」
「やっぱ怒ってんじゃねぇか!大体な、してなかったら態々弁解しようなんて思うか、この馬鹿っ!いいから話を聞けっつってんだろうがっ」
自動改札の前で喧嘩をしている二人に周囲から注目が集まると先にクールダウンした遊馬が声のトーンを落とし改めて彼女の腕を引っ張った。
「兎に角 ここじゃ何だから移動するぞ」
明らかに拗ねた様子で遊馬から目を逸らした彼女は引き摺られる様にして改札を通り抜けた。
文句を言う気力を削がれ黙って彼に従い電車を乗り継ぐ。
降車駅の改札を出たところで漸く野明が口を開いた。
「・・・どこまで行くの?」
「俺の部屋」
「・・・はい?」
吃驚して立ち止まった彼女に遊馬は眉間を軽く押さえ溜息を吐いた。
「そんなに驚くことじゃないだろう?初めて来る訳でもあるまいし」
「・・・それは そうなんだけど・・・」
「他に時間と人目を気にしないで落ち着いて話が出来る場所なんて思いつかなかったんだから仕方ないだろ。それともどっか提案あるか?」
そう言われて代替案を提示できない野明は少し困った顔のまま黙って首を横に振り大人しく彼に従った。
部屋に通された頃にはすっかり気力が萎えてしまっていて野明自身何にあんなに怒っていたのかもう判らなくなってしまって居た。
ラグの上に座りこんだ野明は差し出されたカフェオレを受け取りひとくち口をつける。
温かい飲み物が喉を降りて行くとそれと共に何かがストンと心に落ちた気がした。
黙り込んだままの野明を見遣り何と声を掛けようか遊馬が考えあぐねていると彼女が先にぽつんと口を開いた。
「えっと・・・ごめん」
手元のカップを見詰めたままの野明に遊馬は意外そうな顔を向け小さな溜息を吐いた。
「お前が謝る事なんてないだろう」
「・・・勝手に怒って嫌な態度取ってたし・・・」
「そりゃ そもそも俺が・・・」
彼の言葉の途中で野明はふるふると首を振りカップを脇に置くとそのまま膝を抱えて蹲った。
「私が悪い。遊馬がどう思おうとそれは遊馬の自由なんだからそれに文句を言うのは・・・おかしいんだよ。本当は」
それでも・・・甘いものが得意でない彼の為にと休みを一日費やしてデパートやショッピングモールを何軒も歩きまわり漸く選んだチョコだっただけに『期待しなきゃいけない程不自由してない』と言われたのは正直堪えた。
ちゃんとアテにしている相手が居ないと出てこないその言葉はただ『期待してない』と言われるのとは受ける衝撃の大きさが違った。
そしてそれにショックを受けたということは少なからず自分が遊馬にある種の期待をしていたという事で、思う様な反応を貰えなかったからと言って機嫌を損ねるのはお門違いも甚だしい。
自己嫌悪から顔を上げられなくなった彼女の隣に腰を下ろし遊馬は手にした珈琲を一口啜った。
「・・・感じ方が自由なのは認めるけどさ 人を傷つける様な言い方はやっぱ拙いだろう」
「うん・・・ごめん・・」
「お前じゃなくてさ・・・俺が最初に妙な事言ったから・・・」
シュンとした様子の野明に遊馬はバツが悪そうに頬杖をついた。
「・・・本当はアテにしてた。あんな言い方して悪かったよ」
「え? だって・・・」
「他にアテなんかねぇし・・・たださ ああいう言われ方したからちょっと見栄張りたくなったっつーか・・・」
不貞腐れた子供の様な目を向ける遊馬に野明はかなり複雑な顔を向けた。
勝手に拗ねていじけていた事に対する恥ずかしさと 本当はアテにして貰えてたという嬉しさ。
それに加えて・・・心臓がぎゅっと縮む様な感覚を伴う後悔。
感謝や親愛の気持ちを伝える物ならば相手に想う人が居ようが居まいが関係無く『ありがとう』という言葉を添えて手渡せば良かったのだしそれ以外の感情があるのなら遊馬の気持ちがこちらにあろうが無かろうが伝える事に意義がある そう言うものの筈だ。
勝手に期待してその通りでなかったからと拗ねた挙句 散々探して用意していたチョコレートを他の人に渡してしまった。
挙句受け取った風杜には『他の人に上げる心算で買った物』だと話してしまった。
失礼千万であったにも関わらず笑顔で箱を受け取った彼に対しても申し訳ない気持ちで一杯になり野明は激しい後悔の念と共に大きな溜息をついた。
鞄の中には遊馬に渡せるチョコレートは一つも残っていなくてあの時引き抜いたカードだけが残されている。
少し悩んだ末 野明は鞄を引き寄せ顔を上げた。
「・・・遊馬」
呼ぶ声が少し緊張して震えているのが自分でも分かったものの勢いを殺さないよう思い切って彼に両手を差し出した。
「チョコは・・・その・・・色々あって今手元に無くなっちゃって・・・それで・・・あの・・・」
差し出された手に載せられたカードは紛れもなく机の中にあったチョコに挟み込まれていた物で一瞬目を見開いた遊馬はくすりと笑ってそれを受け取った。
改めて手書きされた文字を読み直し口の端に笑みを刷いた彼は「サンキュ」と言って野明の髪を掻き回しその場から立ち上がった。
彼女の視線を背中に感じつつ先程床に放置したディバッグを開き少し顔を顰めて例の小箱を引っ張り出す。
受け取ったメッセージカードを野明の机で見た時と同じ位置に挟み込みチラリと彼女を振り返った。
不安そうな瞳を向ける彼女に苦笑した遊馬は「ほら」と言ってその小箱を野明に放った。
慌ててそれを受け止めた彼女は手の中の物に目を瞬いた。
見覚えのあるラッピングと箱の歪み。
メッセージカードが挟み込まれたその小箱は正に自分が彼の為に用意して、先程風杜に手渡してしまった筈のもので困惑した野明は遊馬に不安気な瞳を向けた。
「どうして・・・」
『遊馬が持ってるの?』と聞きかけて言葉に詰まると難しい顔をした遊馬が「うーん」と唸って眉間を押さえた。
「説明・・・いる・・・よなぁ・・・やっぱ」
「えっと・・・できれば。だってこれは・・・」
「『風杜に渡した筈の物』だろ?」
「・・・うん」
少し迷ったものの野明がコクンと頷くのを見て風杜との遣り取りを思いだした遊馬は不満そうに顔を顰めた。
「あいつがさ・・・『俺宛だろうから返す』ってさ」
その言葉に野明はものすごく困った顔を見せ不安に駆られた遊馬は思わず彼女の瞳を覗き込んだ。
「・・・やっぱ 拙かったか?」
「あ・・・ううん、そうじゃなくて・・・悪いことしちゃったなぁって」
風杜にこの箱を渡した時の遣り取りを思い出し表情を曇らせた野明に遊馬もまた小さく肩を竦めた。
「俺もあからさまに顔顰めちゃったしなぁ・・・」
「・・・そうなの?」
「そうだよ」
不貞腐れた遊馬の顔を今度は野明が覗き込んだ。
「ねぇ、どうして遊馬は顔を顰めたの?」
「どうしてって・・・そりゃだって 俺宛てだった包みをあいつが手にもってりゃ・・・」
「だからね、どうしてこの箱が遊馬宛だったって判ったの?」
野明の質問に遊馬は『あちゃ』と呟くとバツが悪そうに片手で顔を覆った。
じぃっと見つめる彼女の瞳にここで誤魔化しても仕様が無いと開き直った遊馬は口元に手を宛がったままぼそりと答えた。
「見たからだよ」
「え?」
「机ん中。修正テープ借りようとして・・・」
「引き出し・・・開けたの?」
「すまん」
バツが悪そうな顔をした遊馬のとなりで真っ赤になって俯いた野明は手元に戻ってきた小さな箱をじっと見つめた。
「遊馬」
「ん?」
「あの・・・ね。これ・・・受け取ってもらえる?色々有った物だし・・・嫌だったら無理にとは言わないんだけど・・・」
反応を窺う様な上目遣いに遊馬は微苦笑を浮かべて彼女の掌から件の箱を持ち上げた。
「元はと言えば俺の発言が原因なんだし・・・それに・・・そもそも俺の為に用意してくれたもんなんだろ?」
黙ってこくんと頷いた野明にクスリと笑うと「有難く頂戴するよ」と言って彼女の髪をくしゃっと掻き回した。
その瞬間とくんと心臓が音を立てキュンとした感覚を味わった野明は彼の洋服を軽く引っ張り穏やかな顔を向ける遊馬から目を逸らし小さな声で「いつもありがとう」と囁いた。
「おう」
返事を返した遊馬が照れ隠しの様に彼女を勢いよく引き寄せると真っ赤になった彼女が声にならない声を上げて全身を硬直させ、その様子につられて真っ赤になった遊馬は「誰も取って食いやしねぇよ」とぱっと手を離した。
微妙な沈黙が下りその雰囲気に耐えきれなくなった遊馬が手元の箱を見遣る。
「これさ・・・開けていいか?」
「あ・・・うん」
ラッピングを解くと正方形のチョコレートが綺麗に並びカカオ含有量の高い物ばかりが産地別に数種類収められていて遊馬は軽く目を瞠った。
「おもしれぇな」
言いながら一枚摘みあげると包装紙を開きポンと口に放り込んだ。
甘みの少ないビターな味に目を瞬き心配そうに様子を見守る野明に「美味いな」と笑って見せた。
照れた様な笑みを浮かべ「良かった」と笑う彼女の口にもチョコを一枚放り込んだ遊馬は何の気なしに窓の外を見遣った。
目を見開く遊馬の視線を追って窓外に目を向けた野明は思わず目を瞬く。
「・・・雪」
都内では滅多に見かけない大粒の雪が視界を奪う程強く降っていてアスファルトには既にうっすらと積もり始めている。
慌ててTVをつけて交通情報を確認すると積雪に弱い首都圏の交通機関は既に麻痺しかかっていた。
どちらからともなく顔を見合わせ再びTVに目を戻し明け方まで止みそうにない雪の予報に肩を竦めた遊馬は顔を顰めて腕時計を確認した。
21時少し前。
普段なら余裕で門限に間に合う時間なのにこの交通機関の運行状況ではまず東雲に帰せない。
車で送ろうにもマイカーなんて所持していないし第一レンタカーを借りるにも雪道の運転は危険も大きい。
どうしたものかと考え込む彼を見て野明はくすくすと笑った。
「ここからならタクシー使ってもそんなにかからないし。取り敢えず駅に行こうかな」
「まぁ 妥当な選択だよな・・・」
重い腰を上げる遊馬に野明が「一人で平気」と笑うと彼はムッとした顔で「いいからいくぞ」と言って彼女の額を軽く小突いた。
既に3センチ程度雪が積もった歩道を歩いて駅まで来ると案の定 電車の止まった駅前では振り替え輸送のバスが運行を始めていた。
乗車を待つ人の列が臨時バス乗り場から延々と延び、タクシー乗り場に目を移すとそこにも長蛇の列が出来ていた。
対して車両は全て出払っており帰ってきた車にはすぐさま次の客が乗り込むと言う状態で駅前の混乱振りに辟易した遊馬が野明を見遣った。
「こりゃ当分乗れそうにないぞ」
「だねぇ・・・」
「ここで並んでても何時になるかわかんねぇし、飯食って部屋に戻んないか?」
さらりと提案した遊馬に野明は目を瞬き少し考え込んだ。
その様子に遊馬は一瞬で顔を朱に染め「言っとくけど これは善意の提案であってだな・・・」と言い訳を始めると野明は顔どころか耳まで朱に染めながら彼の上着の袖を引いた。
「・・・・いいよ」
「え?」
チラリと彼の顔を見上げる野明に遊馬は思わず目を瞬く。
「泊めてくれるなら・・・いいよ。部屋に戻っても」
「そりゃ 勿論・・・って・・・いいのか それで?」
どもる遊馬の胸元に顔を押し付けた野明がこくんと頷く。
「遊馬なら いい」
「了解・・・お前なら泊めてやるよ」
照れの交じる声の返事に野明がはにかむ様に笑うと「んじゃ 先ず飯」と言って遊馬が彼女の手を引っ張った。
「雪に慣れてない人がそんなに早く歩くと転んじゃうよ」
声を上げる野明に「んなドジはしねぇよ」と嘯いた遊馬は手近なファミレスに向かう。
「本当は酒入れたいとこだけど・・・雪だしな。いつ招集掛るかわかんねぇから。悪ぃな」
「そうなんだよねぇ」と同意しながら遊馬に続くと野明は妙に華やいだ気分で彼の腕を引き下ろした。
身体の傾いだ遊馬の耳元に唇を寄せた彼女は「遊馬の分だけはトクベツだったんだよ」と笑い少し考えた彼が今度は野明の耳に唇を寄せる。
「チョコ以外にもくれるもんあるか?」
「え?・・・えっと・・・遊馬が望んでくれるなら・・・」
語尾が消えそうな程小さな声で言った彼女は頭から湯気が立ちそうなほど真っ赤になって俯いた。
その様子に遊馬は目を瞬き「じゃ 貰う。今更撤回は無しだからな」と言うと朗らかに笑いながら野明の肩を引き寄せた。
fin
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追記
いや 本当にね。
正に今更かよ、というネタですが(^^;
今回 当て馬さんは自ら戦線離脱ですね☆
相手にやる気が無いと気合が乗らない物なのかもしれません(笑)
比呂 2011年02月24日(木)19時40分 編集・削除
こちらでは初めてですね。こんばんは。
うわあ。いちゃらぶしてますね! 憎いです。
仕事中に何してるのかしらvv
F氏の声で「お前なら泊めてやるよ」
と私も言われたいです。野明、いいな。
いつも聞けて。