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不在28

昨夜から下の子が発熱!
下がるかなと思いきやなかなか下がらないので病院にいってきます~
でも本人は至ってげんきなんですよね(^^;
まったく子供っていうのは★
大人しく寝てればはやくなおりそうなのになぁ

先程病院に行ってきましたが その瞬間だけ熱が下がるミステリー・・・・
処方されたクスリを飲ませたものの元気なまま熱だけが上がってゆくので解熱剤の投与に二の足踏んじゃってます・・・(^^;

どうすっかなぁ・・・・

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ここからは連載のお話。
先日も書いたんですが・・・
今になって設定の勘違いに気付いて焦ってます(^^;
このまま無かった事にして逃げちゃおっかとも思ったんですが 『気にしないよ』とか 『よくあることだよ』という温かいお言葉を下さった方々に大感謝で・・・
今更書きなおす訳にいかないし。
そうなると出だしを秋にしないといけないので最初から・・・それは無理だなぁ
というわけで 公式資料に背を向けてこの話はこのまま 『ゼロ式導入は秋!』で(^^;
ああ なんて事でしょう。
『事前にしっかりチェック!』という某CMが身に染みました・・・・
というわけで 開き直って続けますので こんな物でも読んであげようかなという心の広いお客様は以下からどうぞ(笑)
次回からはきをつけます~

続き

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不在 28
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SIDE-A&N(12)

昼休みに彼女から送られたメール。
気がついたのは終業時間が過ぎた後だった。

『野明です 八王子に行ってから凄く忙しくて連絡も出来ずにごめんなさい。今日でこちらの作業が終了して明日は本庁、その後は3日のお休みが貰えました。予定が合えば会いませんか?遊馬も一緒に行けると思います 野明』

メールを見た墨勇は思わず『覚えてたのか』と目を瞬いた。
文面から気落ちした様子は感じられず寧ろ元気そうな雰囲気が漂う。
『結局 彼でないと駄目だったわけか』
安心すると同時に幾らか悔しい気持ちも湧いた。
「判っちゃいたけどね」
誰にともなく呟くと微苦笑を浮かべる。
東京にきてすぐ連絡を取ったあの時、目にも明らかな空元気で現れた彼女。
連絡がつかないというただそれだけで、あれ程までに野明を落ち込ませる事が出来た人物を相手に勝負する気はさらさらない。
大体 自分には大切な彼女がいる訳で二人の面倒を見れるほど器用でも無い。
それでも『一番近しいと思ってたんだけどな』という気持ちが無くは無いので『遊馬くん』に対して少々複雑な感情が見え隠れするのは致し方ない、と自分を納得させた。
本当は彼にメールの一つも入れて一言腐してやりたい所だが生憎メールアドレスまでは控えを取っていなかった。
かといって電話を掛けるほどのことでも無い。
携帯の充電が切れかけていた事もあり部屋に戻ってから少し考えて野明の携帯に返信メッセージを送った。

送信を終えるとナイトテーブルに置いた充電器に携帯を嵌めこみバスルームへ向かう。
ゆっくり湯を浴びて人心地つき珈琲を飲もうと茶器のある部屋の隅へと足を向けた。
珈琲片手にテレビを見ていると視界の端に携帯のフロントパネルが引っかかった。
メールの着信を示すイルミライトが明滅しているのを確認し携帯を手に取るとサブウィンドウに野明からのメールが着信している旨が表示されていた。
送信直後に返信されていたらしい着信時間を目にするとその反応の速さに苦笑しながらメールを開く。
時間を確認して『少し遅くなったな』と思いながらメールに目を通しその中身に思わず目を瞬いた。
一読して「ふーん」と呟き口の端に軽い笑みを浮かべる。
『一緒に居る』ことのアピールと態々彼女の携帯から自分の名前でメールを送信する彼の軽い牽制ともとれるそのメッセージに小さく吹きだした。
その事とは別にちゃんと自分の名前を呼んでくれた事に『妙な所で律義な奴だな』と感心しながらくすりと笑い野明の携帯に返信を送った。

『明日、了解しました。こちらは5時半に終業予定です。終わり次第連絡入れますのでよろしく。遊馬と会うのも楽しみにしてるよ。墨勇』

飲み会の帰り並んで歩きながら遊馬が送信したメッセージ履歴を目にした野明が小首を傾げ目を瞬いた。
「ね、墨勇と何の話したの?」
「何って?」
怪訝な顔をする彼女に遊馬はしれっと聞き返す。
正面から疑問に答える様子が無いことに野明は分かりやすい程の渋面を浮かべた。
「先週の夜中、二課に来る前に会ったんでしょ、墨勇と」
「ああ あの時か、別に大した話はしてないさ。お前が忘れた携帯を預かっただけだ。何勘繰ってんだよ」
愉し気な笑みを浮かべる遊馬に野明は拗ねた目を向けた。
「・・・墨勇はともかく遊馬が初対面の相手を名前で呼ぶなんてまず無いじゃない」
「名前なんて呼んでないだろ」
「だってっ・・・」と彼女が携帯の送信履歴を示し顔を顰める。
「だからさ、呼んでないだろ? 入力したけどさ」
「それは屁理屈!」
「まぁ・・・それも約束だからさ。向こうは直ってないけどな」
「だから 約束って何?」
「内緒。色々あんの」
「答えになってないっ」
抗議する野明に遊馬は「気にするほどのことじゃないさ」と嘯き彼女は腑に落ちない顔で彼を軽く睨めつけた。

部屋に入ってひと息つこうと荷物を置いた途端野明の携帯がメールの着信を告げる。
慌てて手に取ると墨勇からの返信。
その内容は明らかに遊馬宛で野明は軽く肩を竦めると黙って彼に携帯を差しだした。
一瞬きょとんとした後、彼は納得したように笑い「サンキュ」と言って携帯を受け取り内容を確認する。
名前の呼称から『くん』が抜けたのを確認した遊馬は『律義な奴だな』と小さく笑った。
「何?」
怪訝な顔で問い掛ける彼女の頭をクシャリと掻きまわし「何でも無い」と遊馬が笑うと野明はむっとした顔でそっぽを向いた。
「遊馬のケチ。もういい、教えてくれないなら私にも考えがあるからね」
言うなり先日からこの部屋に置いていたミニボストンを肩に担ぐとくるりと踵を返した。
「墨勇に直接聞きに行く」
スタスタと大股で部屋を横切り玄関に向かおうとする彼女に苦笑しながら遊馬がその後を追った。
彼女の手がドアノブに手が掛る直前、後ろから抱きしめる様にしてその手首を掴み笑みを含んだハイバリトンを彼女の耳元に響かせた。
「ばぁか。こんな時間から電車なんてねぇよ」
「じゃ、タクシー使う」
「東京横断するんだぞ、幾らかかると思ってんだ?」
「・・・いいもん」
「良いわけあるか。それに・・・出してやる訳ないだろ?」
耳殻に唇が触れる位置で声を掛けると耳に掛る吐息に頬を染めた野明が首を振った。
「もう やめてよねっ」
「じゃ 部屋に戻れ」
「嫌」
半分笑いながら言う遊馬に野明はそっぽを向いた。
「拗ねるなって。話の内容なんて明日になれば自ずと判るさ。それに今から行っても向こうに着いた頃には日付も変わってる。そんな時間にあいつ叩き起こして話を聞いたらその後どうする気だ?」
「どう・・・って」
「寮に帰るには時間が遅すぎる。ここに戻る気なら始発を待てば登庁時間に間に合わなくなるから帰りもタクシーしかない。そうして戻ってきたところで3時間もしたら部屋を出ないといけないから満足に眠れやしない。数時間の為に部屋を取るとなれば『勿体ないから』と墨勇が止めるだろうし、かといってお前が奴の部屋に泊るのを容認できるほど俺は心が広くないの」
「・・・相手が彼女持ちの幼馴染でも?」
「ヤだね。大体そんなことしたら何も無くたって向こうの彼女だっていい気がするもんか。親友なんだろ、そんな心配掛けていいのか?」
にやりと笑う彼に野明は渋面を作った。
口論で遊馬に勝てる事など滅多にない。
その上今回はどう考えても彼の言う事の方が正論。
少々ムキにはなったものの実際 足を向ける気など無かった事もあり渋々納得した風を装って不貞腐れた顔で「いい訳ないじゃない」と呟くと大きく肩を落とした。
「・・・遊馬が墨勇に言いがかりつけると困るから、行くの止めてあげる」
どう見ても負け惜しみにしか聞こえない口調に遊馬は吹きだすのを堪えて肩を震わせ、その態度に不機嫌そのものと言う顔の野明が彼を下から睨めつけた。
「文句ある?」
「ないない、思い留まってくれて良かったよ。俺は妬きもちやきだから」
堪え切れす吹きだした遊馬に野明は完全に拗ねて彼の腕を振り払った。
「もう 馬鹿にしてっ」
「してないって。本当に出て行きそうなら力づくで引き止めたさ」
踵を返し部屋に戻る彼女の腕を手を伸ばして掴み直すと軽く手元に引き寄せ意図的に低めた声を耳元に響かせた。
「『俺の女』だからな」
顔を真っ赤にして固まった野明を見て彼は声を立てて笑いその小柄な身体をぎゅっと抱きしめた。
「遊馬の馬鹿・・・」
「馬鹿で結構。明日早いからさ今日は早めに休もう」
笑みを含んだ彼の声に野明はふぅっと息を吐くと諦めたように「はいはい」と返事を返した。

翌朝 スーツを着用して霞が関に向かう。
庁舎の前まで来ると滅多に足を運ばない建物に敷居の高さを感じ得体の知れない威圧感に野明の足が僅かに鈍った。
彼女の様子に緊張を察した遊馬が安心させるように野明の肩をぽんと叩く。
「行くぞ」と声を掛け半歩前を歩いて建物に足を踏み入れた。
真っ直ぐに警備部を目指して歩き フロアに着くと部屋の中をぐるりと見渡す。
其処に部長、課長二人の姿が共に見当たらない事を確認すると遊馬は微かに首を傾げ取り敢えず手近にいた職員に声を掛けてみた。
「おはようございます。特車二課の篠原と申しますが海法部長と福島課長はどちらでしょうか?」
「おはようございます。部課長でしたら先程登庁されましたので 直に戻られると思います」
素っ気なく答える男性に軽く会釈して礼を言うと遊馬はフロアを見渡して少し考えた。
所属がここにあっても自分たちの席はここに無いので居場所に困る。
少し考えて野明を伴い壁際に行こうとすると少し離れた所にいた女性職員が顔を上げた。
「あれ、篠原君? 珍しいね」
声を掛けた女性が笑顔を向けて歩み寄ると彼の隣に立つ野明に目を止めた。
上から下までざっと眺める様に視線を動かすと「ふーん」と小さく呟き軽く頷いた。
「初めまして 近藤なつみです。篠原君とは警察学校時代の同期よ。こちらが 『泉巡査』ね?」
したり顔で頷く彼女に遊馬は怪訝な顔を見せ野明は首を傾げた。
「あの・・・初めまして」
「久しぶり。なんでこいつの名前しってるんだ?」
「だって有名だもの。それに今部課長がいないのだって・・・まぁ いいわ、それは直ぐ分る事だし。それより居場所が無いんでしょ、差し当たり其処の応接用のソファでも使ったら?珈琲くらい出すけど」
促されて応接セットの方に足を向けるとなつみは野明に顔を向けた。
「珈琲でいいですか?」
「あ・・・はい、でも お気づかいなく・・・」
「序だから気にしないで。篠原君はブラックでいいんでしょ?」
「ん? ああ」
返事を返しながらさり気無く周りを見ると何となく自分たちと言うより 野明が視線を集めている事に気付き遊馬は軽く眉を顰めた。
珈琲を載せたトレイを手にしたなつみに遊馬が声を掛ける。
「なんかこいつ注目集めてる感じがするんだけど、何かあったのか?」
落ち着かない様子を見せる野明の背中を安心させるように軽く叩きながら問い掛けるとなつみは「うーん」と難しい顔をした。
「何かって言うか・・・色んな意味で今話題の人だからね、彼女」
「話題?」
「まぁね 篠原君の場合は皆判ってるから今更話題にもならないんだけど 彼女の場合は勘繰ろうとおもえば色んな風に勘繰れちゃうから暇な人たちにとっては格好のネタなんじゃない?」
彼女の言う話題の中身に幾つかの候補を考えて遊馬はうんざりした顔をした。
「幾つかのうち 心当たりのある物もありそうだな。すくなくとも3つ位はネタの予想がつきそうだ」
「大雑把にはそんなものね、あとは尾鰭でしょうし」
「どこも彼処も鬱陶しい事だな」
「それは仕方ないでしょ?篠原君が関わってる限りそれは避けられないって。どうでもいい事もみんな勘繰られちゃうわよ」
「本当に俺に関わると苦労するんだろうなぁ・・・」
そう言うと苦り切った笑みを野明に向けた。
二人の会話を黙って聞いていた野明は遊馬となつみを等分に眺めきょとんとした顔を向けた。
「ね 話が見えないんだけど」
「うーん・・・まぁ 課長に会えばそのうちの幾つかは直ぐに判るさ」
「教えてはくれないの?」
「今ここで懇切丁寧に説明するのはちょっとな、場所が悪い」
彼の言葉になつみも苦笑し 野明は諦めたように肩を竦めた。
「つまりそういう内容なのね」
「それだけじゃないと思うけどさ 否定はしない」
歯切れの悪い物言いに複雑な顔をすると野明は小さく溜息をついた。
「事実なら甘んじて受けるわよ。それに最近は誤解でも名誉棄損にならない程度の物なら否定する気も起きやしないわ」
「悪いな、巻きこんで」
「どういたしまして。遊馬が気に病むことじゃないでしょ?パートナーだもの結構じゃない、一蓮托生」
「・・・言うようになったよな」
しれっと言う彼女の頭をぽんと叩き遊馬が苦笑する。
「そりゃね、少しは逞しくもなるわよ、怒涛の様な一週間だったんだからね。もっとも後半3日は久住さんに助けて貰って大分マシだったけど」
「俺じゃ助けにならなくて申し訳なかったよ」
不服そうな顔をする遊馬に野明は困った様に笑った。
「そんな事無いって、感謝してます。でも折角帰ってきたのにここでも同じような事繰り返すのはちょっと凹むなぁ」
「全くだ」
深く同意すると遊馬は軽く溜息を吐いた。

海法と福島がフロアに戻ってきたのは始業5分前だった。
彼らが席に着く前に野明を促し遊馬が素早く二人を呼び止めた。
「おはようございます。特車二課 第二小隊 篠原、泉両巡査 事業報告に参りました」
「うむ。朝礼の後で聞こう。取り敢えずそこで待っていたまえ」
鷹揚に頷く海法に遊馬は「はい」と返事を返し野明を伴って端に下がる。
程なく朝礼が終わると福島が二人に手招きしつつフロアを出た。
慌ててその後を追うと二人は福島の半歩後ろを歩く。
会議室の扉を開け室内に足を踏み入れると席に着くよう勧められ椅子に腰を下ろした。
シンプル極まりない室内をくるりと見渡していると福島が遊馬に声を掛けた。
「どうだったかね、八王子は」
「忙しい所ですね」
漠然とした質問に態と焦点をぼかして答えを返すと福島の顔があからさまに渋くなった。
相手の反応を見て遊馬は『ある意味分かりやすい人種だよな』と心中で呟き重ねられる幾つかの質問に自分は感情をおくびにも出さず淡々と答え続けた。
その言質を取らせない言葉運びに彼の上司たる自分の部下の姿が重なり福島は深い溜息を吐いた。
「何か?」
しれっと問う遊馬に「いや いい」と手を上げて会話を一度切り上げると一言付け加えた。
「もう間もなく 君達の上司もここに来るはずだ。後の報告は彼が来てから聞かせて貰う」

「よ 元気だったか?」
部屋に入るなりにやりと笑いながら声を掛ける上司に遊馬は軽く肩を竦めた。
「おはようございます。最初の三週間よりは余程元気ですよ」
「そうなんだろうなぁ。顔色良くなったしな。で 泉はどうだった」
「え? あのどうって?」
聞かれた内容を取り損ねて動揺する彼女に後藤はにんまりと笑った。
「八王子」
「・・・あ・・・そう、八王子ですよね。あの 忙しかったです、ものすごく」
「だろうな、だから呼ばれたって事になってる訳だし」
「・・・事になってるって、隊長?」
含むところの有りそうな口調に野明は怪訝な顔をして遊馬に視線を移した。
彼もまた同じように苦い顔をしているのを見て取ると不安そうな顔で首を傾げる。
「あの それって・・・」
「それは追々ね。泉 お前さん八王子で何か言われてこなかったか?」
「何かって・・・いえ 特には」
答えながら遊馬の顔を窺うと複雑な顔をした彼が軽くこめかみを押さえた。
「つまりそういう話ですか?」
溜息が混ざる遊馬の声に一瞬視線を海法に向けた後藤が軽く肩を竦めて苦笑いした。
「じゃないの?まぁお偉いさん方にも色々と思うところがあるってことでしょ」
「思うところねぇ・・・」
含むところのある目を見交わして勝手に納得する二人を見比べ野明は困惑した顔を見せた。
「あのぅ・・・話が見えないんですけど・・・?」
遠慮がちに口を挟む野明に二人が同時に振り返り 後藤は顎に手を掛け「うーん」と考えると「あと頼むわ」と言って遊馬の肩をポンと叩いた。
部課長に挨拶する隊長を苦笑しながら見送り自分を見上げる野明の頭をクシャリと撫でた。
「お前さ 八王子の出向継続になったら行く気あるか?」
遊馬の問いに野明は吃驚して目を瞬いた。
「え、なんで・・・?」
「たとえばの話だよ、まぁ そう言う可能性も無くは無いってこと」
さらりという遊馬に野明は困惑した顔で首を傾げた。

海法、福島と共に二課の三人が会議室で顔を揃え 部長、課長が上座に当たるコの字型のテーブルの奥に並んで座り入口に近い側の机に奥から後藤、遊馬、野明の順で席に着く。
全員がそろったところで事務担当と思われる女性が珈琲を配り 一礼して退室すると 少しの沈黙の後福島が話の口火を切った。
「あ~。篠原 泉両巡査 出向御苦労さま。特に篠原巡査は一カ月という長期に亘り篠原重工での作業に従事して貰った訳だが、どうだったかね?」
『どうだったのか』という漠然としていてあまり意味の有るとは思えない質問に遊馬は心中溜息をつきながら「予想以上に忙しい部署でした」と先刻と大差のない返事を返した。
その回答に福島は微かに顔を顰め後藤は目の端に微かに人の悪い光を載せた。
その様子に肩を竦めた課長は質問の矛先を変える。
「泉巡査はどうかね?一週間出向して」
4人の視線を受けた野明は少し考えると「忙しかったです」と答え後藤と遊馬を苦笑いさせた。
海法と福島は渋い顔で溜息をつき後藤に恨みがましい目を向けたものの飄々としてまるで意に介す様子の無い彼の態度に諦めたように目線を逸らした。
自分の答えに何か問題が有ったのかと不安そうな目を向ける野明に遊馬が『大丈夫』と目でで頷いて見せると野明は幾分ほっとした様子で頷き返した。
部下二人の様子を横目に見ながら後藤が今一つ覇気に掛ける態度で上司二人に目を向けた。
視線を受けた海法が大きく咳払いして注意を促すと全員の視線が彼に集まる。
「あまり時間もない事だし話を始めよう。福島君、彼らに説明を」
横柄な態度の海法の声に一瞬不快感を表しかけたもののそこは長年の経験から得た渡世術で表情を切り替え福島は極めて事務的に話を始めた。
「特車二課第二小隊においては一号指揮担当篠原巡査を一カ月、同操縦担当泉巡査を一週間 警備部装備開発課からの依頼を受けて篠原重工八王子工場に出向させてもらった訳だが。後藤君 その間はご苦労だった。特にこれといった問題は無かったように思うが如何かね?」
「ここ一月に関しましては特に大きな災害も無く手の足りない時には私自ら一号機の指揮を担当、また火急の際には第一小隊からの支援を受ける形でどうにかやってきました。ですがオーバーワークを強いられる二号機担当者の負担は 緊急呼び出しの頻度が格段に上がってしまった第一小隊の事と併せて看過しがたいものがあります。この体制は長くはもたんでしょうなぁ」
しれっという後藤に一号機コンビが黙って顔を見合わせた。
それに関しては思うとことがあるのか福島が首肯すると海法が渋い顔を見せた。
「成程 では後藤君はどうするのがいいと思うのかね?」
「小隊そのものを増設して頂くのが一番かとは思いますが差し当たっては長期間にわたる実働人員の貸し出しに関してはご一考願いたい、というのが正直なところです」
『長期にわたる出向を拒否する』旨を暗に伝えると福島もそれに同意する様子を見せた。
海法は苦り切った顔のまま話だけは聞いたという態度で「成程」と頷き勿体ぶる様に間をおいて上から見下ろす感のある尊大な態度で口を開いた。
「それに関しては今後 考慮に入れる事にする。まずは篠原重工に於ける作業の報告を受けようか。それと今回新型機との模擬戦を行ったそうだがその件についても報告して貰いたい」
『今回のメインはそれだな』
高々作業報告ごときに普段現場に殆ど関心を示さない海法や散々後藤に煮え湯を飲まされた結果出来るなら可能な限り第二小隊と関わりたくないと思っているであろう福島までもが隊長を呼んだ上で同席している事に遊馬は合点がいくと同時に心中で軽い溜息を吐いた。
それに関しては後藤も同様で『なんだかなぁ』という顔をして部下二人に苦笑いしてみせた。

遊馬に関しては途中で一度 作業報告書を郵送している為前半二週間に関してはさらりと流す。
部課長にしてもその辺の事にはあまり興味が無いようで特に追及もされる事は無かった。
後半にしても最初の一週間は先の2週間と作業は何ら変わらないので作業時間と大まかな作業内容を極めて形式的に報告した。
野明が加わった最後の一週間に関する報告も遊馬が纏めて行い日程表と作業時間報告書を提出すると「以上です」と締め括る。
書類を受け取り記入漏れが無いか内容を検めながら福島がゆっくり口を開いた。
「確かに。篠原、泉両巡査 出向御苦労さまだった」
その言葉に二人が軽く頭を下げると海法が徐に口を開いた。
「所で先日行ったと言う模擬戦に関してだが・・・」
『来たな』と思いながらも表面上は素知らぬ風を装う後藤と遊馬に対し野明は自分がゼロを一機お釈迦にした事に対する叱責があるのかと冷や冷やして微妙に顔を強張らせた。
「今回は新プログラムの実装試験は行わなかった、ということだが」
「そうですね。作業報告書にも記載しました通り泉巡査が出向して直ぐに発見した動作不良の改修を優先させましたので。新プログラムの為の試験が期限内に完了しなかったことからこの状態で実装試験を行っても意味が無いということで。オーバーホール後の動作試験を兼ねて98式とゼロ式での模擬戦を行いました」
「成程。その件に関しては直前に連絡が有ったのだが何分急な事でこちらからは誰も見に行ってないのでね、少し話をきけるかね?」
「篠原側との間で交わした機密保持に触れない範囲であれば。当然 御承知かと思いますが契約上守秘義務を要求されている内容もありますので」
その返答に海法は一瞬遊馬とその上司たる男に険しい顔を見せ渋い顔で頷いた。
「よかろう、先ず模擬戦の内容と勝敗を聞こうか。この辺は機密には触れまい?」
「・・・そうですね」
内容に関してシゲから報告を受けている後藤は内心『意味のない質問だ』と肩を竦めた。
この模擬戦の場合勝敗そのものに大した意味は無い。
要するに機体双方の特性が出ただけの事でゼロに関してはニューロンネットワークとHOSの利点欠点を浮き彫りしただけだ。
どちらもその特徴に関しては遺憾なく発揮したものの状況設定が自由度の高い動作が可能なイングラムに有利だっただけの話。
あの対戦で見るべきところは『ゼロの動作限界がどの辺に設定されているか』であって勝敗は単なる結果でしかない。
それ自体はさして重要な事ではないのだがどうも海法にはそのあたりの認識が無い様でこれを理解させるのは骨が折れるだろうと思い遊馬がどう説明する気なのか少し様子を見る事に決めた。
「最初に申し上げておきますが今回の模擬戦の主旨は勝敗を争う事ではありません。新型機に採用されいるシステムの持つ動作限界の確認とニューロンネットワークによる動作最適化の効果を確認するものです」
前置きして3本の模擬戦の条件と結果を簡潔に説明すると海法は渋い顔みせ福島は複雑な表情を浮かべた。
「つまりは現行機種の方が性能が高いと言う事になるのか?」
という海法の言葉に後藤と遊馬は心中で軽い溜息をつき福島は双方を見て思案顔を見せた。
『現場に居ないものには判るまい』
という気分が漂う中、幾らか正確に内容を把握したらしい福島が後藤に目を向けた。
「あー、つまりそのシステムだと98式よりも簡便に操作が習得できる と考えていいのかね?」
「そういうことでしょうな。基本的な操作さえできれば『誰が使っても同じ動作』を機体が勝手にしてくれる、そう言う物だと考えていただいて結構でしょう」
言いながら遊馬に目を向けると彼が軽く頷き説明を補足する。
「現行の98式ですと個々に蓄積したデータの集積と言う形で機体を成長させていく事になりますがゼロに関してはそういう蓄積はされません。行った動作に関するデータは一度メディアに保存されそれを抽出、最適化を加えた上でアプリケーションに対し追加処理を行う事で機体を成長させます。この最適化の際にパイロット個人の癖の様なものをなるべく排除する形になりますので同じデータを載せた機体は同じ動作を学習する事になり機体による動きの特性は出にくくなります。その上で新型機に搭載されるOSはきっかけを与えると解析した周辺環境と状況に応じて最も効率の良い動作を蓄積されたパターンデータの中から選択して動く様に設計されていますので個人の力量の差に寄らず動作品質の均一化が図れます。誰かが勝手に変な癖をつける事もないので結果一つ機体を複数の人数で共用する事も簡便になりますし大規模運用に適したものであると思います」
「成程、現行の98式では一号は泉巡査、二号は太田巡査の専用機と言って過言でない状態だ。それは今後の配備に関して朗報と言う事になるだろうな。で 模擬戦の結果に関しての見解はどうかね?」
「上出来だと思います。治安出動に関してなら申し分ないかと」
「イングラムと比べても、ということかね?」
「比較は難しいですね。どちらもレイバーですが設計の基本方針がまるで違いますから。ただ 操作の習得に時間が掛るイングラムでは小隊の増設や人員の強化が困難で有る事は確かです。それにニューロンネットワークを起動している限りにおいては例え新人隊員であったとしても機体の破損と周辺被害を最小限に抑える効果が期待できる事は確実ですね」
「成程。それでも模擬戦でイングラムが勝てた理由は何だね?」
「熟練者の力量をダイレクトに反映する機体だから、ですね。今回は泉巡査の一号機が相手をしましたのでこの結果ですが太田巡査の二号機が相手をした場合同じ結果が得られるという保証は有りません。イングラムは最大限の能力と引き換えに機体の動作に関するリミッターが殆どありませんから、使い方次第では自滅もすれば周辺被害を拡大する事もあります。そのかわり 突発的な事象に対する対処は搭乗者の反応速度次第ですがかなりの速さが出せます。ニューロンネットワークを起動した状態のゼロは環境を認識してから動作を選択するので熟練者に比べると初動が遅い。駆動系にもリミッターが入るので機体を壊す様な無理な動作はソフトが警告を発して抑制しますからハードスペックに勝るレイバーを相手にした格闘戦では不利でしょう」
「それはイングラムの方がハードスペック的に勝るということかね?」
「そうは申しません。この場合 リミッターが無い分ハードの限界まで負荷を掛ける事ができることと マニュアル操作による自由度の高さ、それに泉巡査個人の技量の問題です」
「彼女の技量が最新のシステムによるオペレーションを凌駕した、と?」
「純粋な格闘戦ではないのでその判断には難を感じますが。模擬戦後の解析結果を見る限り泉巡査のイングラムが負荷限界ぎりぎりで出した動作速度がリミッター制御を掛けたゼロの最大速度を15%程上回っていました。駆動系に関してはイングラムとゼロは然程仕様が変わっていませんから安全係数を20%前後で取っている事を考えると彼女はマニュアルで機体に対しギリギリの負荷を掛けた事になります。こういう操作はマニュアル機種にしかできない特性ですが 同時に不慣れな者が同じ事をしようとすれば少し加減を間違えるだけで機体を自損しかねない危険行為になります。ゼロ同士で対戦した場合、双方にリミッターが働くので同機種同士で対戦してもその差異が分からない。今回の模擬戦はそういった限界値の見極めが主旨ですのでハードスペックの優劣をきめるものではありません。3戦目がそのいい例です。壁に向かって勢いよく跳ね飛せばイングラムでしたらそのまま激突していますが ゼロは出来得る限り周辺被害を押さえる為にモータ全てが急制動を掛け負荷限界を超えて自壊しました。しかしその為、壁には一切被害を出さなかったんです」
「一切?」
「はい。機体そのものが宙を舞っている場合には対処の仕様がないでしょうがそうでない場合には優先順位に従って出来る限りの制動をかける、結果として機体は大破しましたが周辺被害は皆無だった。仕様通りのスペックを再現したわけでこれはこれで上出来です。飛ばされたのがイングラムだった場合、機体の損傷は外装程度でしょうが周辺被害は免れなかった、そう言う事です」
「成程、君としては『新型機を評価する』と言う事かな」
「治安出動に用途を絞るなら『評価に値する』と思います」
「どういうことかね?」
「軍用レイバー相手に取っ組み合いを演じる様な場面はそんなにないでしょうから」
苦笑いする遊馬に福島と海法が訝る目を向けた。
「要するに何時ぞやの御殿場の様な状況は手に余る、ということですな。まぁ ああいう事は滅多にないことでしょうが」
後藤が口を挟むと海法が顔を顰め、福島は目を瞠った。
あれが自衛隊の試作機である事は彼らに告げていない。
にもかかわらず部下たちがその事実を知っていたことに海法は福島を見遣り彼は『自分は教えていない』と首を左右に振った。
「後藤君 あれの事をどこで?」
「どこも何も。作業中に機体に描かれたコードを見ただけですよ。Xから始まるのは自衛隊の実験機に付けられる記号でしょう?」
しれっという彼に海法は大きく肩を落とし「その件に関してはそちらの二人共々他言無用とする」と言うと席を立った。
「報告 ご苦労だった。篠原、泉両巡査は必要書類を提出後後藤君の指示に従ってくれたまえ。後藤君にはまだ少し話があるので場所を変えよう」

会議室をでて警備部のフロアに向かい、申請書その他の用紙を受け取ったものの自分たちの机というものが無いため食堂にでも向かおうとその場を離れかけるとなつみが遊馬に声を掛けた。
「篠原君たちどこに行くの?」
「食堂。俺らここに机ないからさ」
遊馬が手にした紙の束をひらひらと振って見せると少し考えてなつみが自分の傍の机を指差した。
「こっちの机使えばいいのに」
「誰かの席だろ」
「まぁそうだけど。今いないからいいんじゃない?」
「遠慮しとくよ、それにこっち二人だし」
「他にも今いない人の机あるじゃない」
「帰って来た時 気不味いの嫌だしさ。それにこいつと話しながらでないと書けないものもあるから」
聊か乱暴な仕草で野明の頭をクシャリと撫でる。
「ちょっと遊馬 やめてよね」
軽く下から睨むようにすると彼は「今更なんだよ」と軽く笑い、ぽんと彼女の背中を押した。
「ほら 行くぞ。隊長が戻る前にサッサと書いて提出しちまおうぜ」
野明を伴ってフロアを後にする遊馬を見送りなつみは『あの二人やっぱりつきあってるのかなぁ』と軽い溜息を吐いた。

時間外なので人気の殆どない食堂。
そこで何となく二課の机配置と同じように並んで座り書類にペンを走らせる。
書きだして暫くすると野明がぽつりと遊馬に声を掛けた。
「ねぇ さっきのさ、良かったの?」
「何が?」
書類から目を離さずに問う遊馬に野明は少し言い淀んだ。
「その・・・近藤さん だっけ」
「彼女がどうかしたか?」
「・・・遊馬の事好きなのかなぁって思ったから」
小さな声で言う野明は少し困った顔をしていて遊馬は書類から目を離すと呆れたように笑った。
「ばぁか。妬いてんのか?まったく 俺の時にはまるで気付かなかった癖に、こう言うのは気付くんだな」
「気付くんだなって・・・じゃあ 遊馬・・・」
「判ってたさ、予備校の頃からだしな。だから出て来たんだろ。先に言っとくが近藤とは何もなかったし 今も何もない。心配するな」
「心配って・・・」
「してただろ?お前はさ 感情が顔に出易いんだよ。安心しろ、他の女に興味はない」
しれっという彼に野明は目を瞬いた。
「安心しろって・・・自信家だなぁ」
「殊 これに関してはな。今なら自信持ってられるさ。お前は不安か?」
「あ・・・えっと・・・」
「ま 不安が残るって言うなら、帰ってからゆっくり判らせようか?」
「・・・なっ!」
野明の顔が一瞬で朱に染まると遊馬は吹きだすように笑った。
「何考えてんだよ、ゆっくり話しようってだけだろ。それとも何か別の事期待した?」
「・・・!!遊馬の馬鹿ぁ もういいっ。私書き終わったから先行くね!」
羞恥で真っ赤になった顔の野明が書類を束ねてその場から逃げだすように勢いよく立ち上がると肩を震わせて笑う遊馬が彼女の腕を掴んだ。
「悪りぃ 悪りぃ、謝るから怒るなって。俺 もうちょっとだから少し待てよ」
隣に座り直させると書面に向かう。
出向期間が長かった分だけ書類の枚数が多い彼は手帳のメモを片手に経費精算書等にすらすらとペンを走らせ程なく記入を終えると野明を促して提出に向かった。

フロアに戻ると後藤が既に応接セットのソファでくつろいで居り書類を出し終えた二人を手招いた。
座るよう促されて後藤の正面に並んで腰を下ろす。
後藤が差しだした缶コーヒーを受け取り礼を言って二人はそれに口をつけた。
ひと息つくのを待って後藤が声を掛ける。
「改めて何だが出向御苦労さん。特に篠原は長期間だったし、大変だったみたいだな」
実山の失言以降、彼の様子が気になって勤務表を目にしていた後藤は苦笑した。
「想定以上でしたよ。・・・半分は自分で背負い込んだんですけどね」
肩を竦める遊馬に後藤は軽い同情を載せた笑みを見せた。
「適当に聞き流しちゃえばよかったのに・・・って訳にもいかんか。お前の性格じゃ」
「一瞬考えたんですけどね、親父の七光り見たいに言われるのは癪なんで」
その物言いに困ったものだと笑みを向け「爪は隠しておいた方がいい事もあるんだがなぁ」と呟いた。
「判ってはいるんですけどね、『最初が肝心』ってこともあるじゃないですか」
「それも一理あるか。まぁ 今回に関してはしてやられた感もあるしな、無事終わったことで良しとするか。ところで 泉の方はどうだった?」
「野明に関しては仕事以外の方が」
苦笑いする遊馬に『そうだろうなぁ』と視線を宙に浮かべた。
一号機コンビが互いを特別扱いしている事を二課棟内で知らないものはまずいない。
もう3年そんな感じなのだから進展しない関係にじれったさを感じる者はいても今更それを論う者はいないのだが一歩あの場所をでるとそうはいかない。
殊 『シノハラ』の連中から見れば遊馬は『一号指揮担当者』では無く 『現社長唯一の息子』であり『御曹司』なのだ。
色眼鏡で見る者もあれば彼自身が若い独身者である事も手伝って『玉の輿』狙いの女性達からの格好のターゲットにもなる。
その彼と一緒に居れば自ずと耳目を集め場合によってはやっかみを受けるのは自明の理。
「泉も大変だったなぁ」
後藤は微苦笑を浮かべて野明を見遣った。
曖昧に笑う彼女に苦労の程が垣間見え「もてるってのも大変だね」と後藤が嘯くと遊馬はためいきを吐いた。
「俺じゃなくて『シノハラ』って名前ですけどね もててるのは」
「この場合どっちでも結果は同じだろうがね」
「でしょうね 不本意ながら」
渋面を作る彼に困った顔を向けた野明は黙って珈琲を口に運んだ。
その仕草に後藤は『ほぅ』と目を見張り次いでにんまりと笑う。
何がどう変わったと言う訳ではない。
しかし彼女の態度に余裕が伺える気がして二人の間に何かしらの進展が有ったらしい事を察すると遊馬にだけ分かる人の悪い笑みを微かに浮かべ丸めた書類でぽんと彼の肩を叩いた。
「それなりに実のある出向だっただろ、篠原」
彼の意図する所を敏感に察した遊馬が一瞬野明に『この馬鹿っ』という目を向けた後溜息交じりに「・・・否定はしませんけどね」と答え軽くこめかみを押さえた。
状況が飲み込めず首を傾げる野明に後藤は気の抜けた笑みを向ける。
「ま 来週からは通常勤務だからさ 仲良くやって頂戴な」
「え?あ はい」
慌てて頷く彼女に遊馬は『こいつ 絶対判ってねぇ』と額を押さえて思わずがっくりと項垂れた。
後藤は頬杖をついてその様子を眺めつつ『どっちも苦労するんだろうな』と心中密かにほくそ笑んだ。

3人揃って外に出ると「ご苦労様ってことで」と後藤が会計を持ち昼食をとる。
遊馬は自分たちが席を外された後の話について尋ねてみたものの後藤は『今は内緒』と言い切り口を割る事は無かった。
食事を終え店を出たところで後藤がポケットから車のキーを取り出した。
「じゃ 俺はこのまま二課棟にもどるから」
「ご馳走様です、あの俺たちは・・・」
「いいんじゃない、このまま直帰で。シフト上第二小隊は準待機だしさ 埋め立て地に行ってもすることないよ」
「なら隊長は何しに戻るんです?」
首を傾げた野明に後藤は「お留守番」と嘯き遊馬は『南雲の様子を見にいくのだろう』と思い苦笑いした。
「なら お言葉に甘えますか。野明 買い物付き合えよ」
「はいはい、どちらへでも」
仲良く会話する二人を見遣り後藤はひらひらと手を振りくるりを背を向けた。
「じゃ また来週~。二人とも遅刻しないでね」

取り敢えず地下鉄の駅に向かって歩き出すと野明は遊馬の顔を覗き込んだ。
「ね 買い物ってどこ行くの?」
「時間できたし部屋もの少し見にいかないか?」
「部屋の?」
彼は機嫌よく笑いながら野明の肩にぽんと手を置く。
「そ カーテンも何もないからな、あの部屋。幾つか選ばせてやろうか?」
「私が選んでいいの?」
「いいよ、どうせ出入りするのはお前くらいなもんだし。あんまりファンシーなのは嫌だけどさ 許容の範囲内なら選ばせてやる。序に食器とかも揃えるか」
「うわぁ 楽しみっ どんなのにしようかなぁ」
嬉しそうに笑う野明に「常識の範囲内だからな」と釘を刺し行き先を考えていると地下鉄の出口から見覚えのある人影が姿を現した。
相手は遊馬を認めると軽く手を上げる。
「やぁ 篠原君か。出向じゃなかったのかい?」
「昨日で終わりましたよ、松井さんは外回りですか」
「『捜査は足で』がポリシーでね。今日は彼女も一緒か、そう言えば泉さんも出向してたんだって?」
額に浮かんだ汗をハンカチで拭いながら声を掛ける。
「はい。私も昨日でおわったんですよ」
にこりと笑う彼女に松井は「そうか それは御苦労さまだったね」と頷くと遊馬に目線を戻した。
「今日は報告かい?」
「ええ もう終わりましたが」
「それはご苦労さん。ところで 後藤さんは一緒じゃない?」
「隊長ですか?さっきまでいましたけど・・・」
「今は?」
聞き返す松井に遊馬は気の毒そうな笑みを向けた。
「埋め立て地に帰りましたよ。5分ほど前に別れたばかりです」
『5分前までここにいた』と聞いて「なんだかなぁ」と松井は大きく肩を落とした。
「また何か?」
興味半分で問い掛けると松井は「君は敏いからな」と苦笑いする。
「喋ったのばれて後藤さんに責められたくないからね、訊かないで貰えると助かるんだが」
「そういう内緒話ですか?」
興味深気に軽く目を瞬く遊馬を見て松井は「これ以上は言わないよ」と肩を竦めた。
「何だ残念だなぁ」と笑う彼に松井が苦笑した。
「そういえば 今日は風杜さん一緒じゃないんですね」
「彼は別件でね。庁舎内にいた筈なんだが会わなかったかい?」
「見かけませんしでしたよ」
「それは残念がるだろうな。何か用事なら伝言しようか?」
「いえ 結構です。じゃ 俺たちはこれで」
会釈して歩き出した遊馬を小さく手を上げて見送るとごく自然に隣を歩く彼のパートナーに目が止まる。
『あの間に割り込むのは容易じゃさなさそうだな』
彼女にちょっかいを出している自分の部下の顔を思い浮かべ軽い同情と共に小さく肩を竦め、アスファルトに降り注ぐ強い日差しに溜息をつく。
松井は気合を入れ直して日陰から出ると本庁舎に向かって歩き始めた。

go to next....
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追記

なんとか開き直ったので当初の予定通り話を進めようと思います。
公式資料と齟齬出てますが・・・石投げないでくださいね~
反省してます~!!

次回はもう少し早くUPするようにしないとなぁぁ
色んな意味でがんばります~

コメント一覧

こんきち 2010年04月10日(土)00時09分 編集・削除

お帰りなさい「不在シリーズ」、ずっと読みたかったよぉ。
設定云々は気にしないのでこのまま走りきってください。応援してますよー。
読み始めて「えと墨男っていつ出てきたっけ?」などと思ったたわけ者です、スミマセンまだ帰ってなかったのね。
タヌキ(部課長とたいちょ)の腹の探りあいというか頭脳戦面白かったです。
思い通りの答えを貰えなかった苦やし顔見たかったなぁ。

さくら(こんきち様) 2010年04月10日(土)00時50分 編集・削除

>こんきちさま

ただいまです~
そう言っていただけるとがんばろうという気力が湧いてまいります(^^)
とりあえず完結させないとね(笑)
あはは 墨勇の存在忘れてました?
そうだよねぇぇぇ どんだけ引っ張ってるんだって☆
野明が出向してたのは一週間、遊馬は一月、墨勇は遊馬が出向した2週間程後にに上京してきて約一カ月滞在という設定なんですよ
なのでまだいたんです(^^)
そろそろ帰る予定ですが(笑)
対タヌキの会話は腹の探り合いと手の内を出したくない双方の思惑がありますからね☆
悔しがる顔私もみたいです(^m^)

ツッジー 2010年04月12日(月)10時21分 編集・削除

設定なんて気にしないよ!
むしろ気付かなかったから( *´艸`)クスッ♪

いよいよ墨勇くんとの再会だねー(≧∇≦)
どんな話しになるのかな?

さくら(ツッジー様) 2010年04月12日(月)16時51分 編集・削除

>ツッジーさま

うわぁぁん ありがとう~
もう 気づいた瞬間ものすごい凹みましたよ(^^;
本当 「事前にチェック」ですよねぇ・・・

墨勇との再会もうすぐですね~
やっと終わりが見えてきたぁ 長いよって。。。
誰か簡潔にさくっとまとめる能力を伝授してください~(切実)

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