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memorial days 2nd

野明の誕生日企画ですよ~
今回は誕生日当日編です(^^)

長いです~
そしてとある方のコールにお応えして功ちゃんも出しましたよ(笑)
何とか 17日中にUP頑張りましたぁぁぁ

例によって長いので畳みますね♪
ご興味を持って下さった方は続きをどうぞ!

続き

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memorial days 2nd
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野明の誕生日当日、午前中に高速道路の事故処理に出向いた後は出動もなく隊員室で事務系統の処理に追われていた。
昨日、定時間に仕事が終わると、各々互いへのクリスマスプレゼントを探しに出かけていた一号機コンビは時々目を合わせては仲良く仕事をこなす。
その様子に太田は何か言いた気な目を向けるものの これといった落ち度もなければ仕事の進捗に悪影響が出ているわけでない為文句を言う糸口が掴めずに悶々とした様子を見せていた。
寧ろ自分の書類を粗方片づけた遊馬が積極的に野明のフォローに回るため処理されていく書類は普段よりも多いくらいで熊耳の机には承認印を待つ書類が少しづつ溜まってきていた。
その状況に熊耳は苦笑して遊馬に一言声を掛けた。
「篠原君、フォローしてあげるのもいいけど泉さんにも少しはデータ解析の方法覚えてもらわないと後で困るわよ?」
「そうですね、時間ができたらもう一度教えますよ」
言いながら苦笑を返す遊馬に 野明はバツの悪そうな顔を見せて「ごめん 遊馬」と小さく謝った。
「気にするな」と軽く応じて遊馬が再び野明に向き直るとここぞとばかりに太田が噛みついた。
「言われたそばからなんだ、その態度は。泉も少しは自分で何とかせんか!」
「あのなぁ、俺は野明に『俺に謝る必要はない』と言っただけで 熊耳さんの言った事を『気にするな』と言った覚えはないぞ。あんたは日本語分かって発言してんのかよ?!」
「何だと貴様、先輩に向かってその態度は何だ?!」
「ここに配属されたのはみんな同時だろうが!敢えて言うなら一番後から来たのは熊耳さんって事になるけどな。そんな風に言うなら先輩風吹かせてみろよ 功ちゃん?」
「巡査部長殿にそんなことができるか!」
「大体 みんな階級も同じなんだしそんなに偉そうな態度取ってんじゃねぇよ」
実際には階級に何の意味も見出していない遊馬は面倒臭そうに手を振り、太田がさらにかみつこうとするとそれまで黙っていた熊耳が低めた声音で口を開いた。
「二人ともいい加減にしなさい。太田君はいちいち篠原君に絡まない。あなたの書類がまだ出てないわよ。人のことよりもまず自分の仕事を先に処理して頂戴。篠原君も太田君に絡む暇があるなら他にやることがいくらでもあるでしょう?」
熊耳の静かな一喝に静まり返った隊員室で太田と遊馬は互いに『お前が悪い!』と言わんばかりに非難を込めた目を相手に向けた。
その様子に熊耳と野明は小さく溜息を吐きひろみと進士は軽く肩を竦めた。

午後に入って書類がほとんど片付くと遊馬は野明を伴って電算室に向かい稼働データのチェックを始めた。
時折野明に操作の指示を出しながら遊馬は少し下がった位置からその様子を眺める。
「なぁ 野明、おまえ今日 家に来るよな?」
「え? あ・・・うん。そういう予定だよね?」
急に振られた話にどきりとしてキーを打つ手を止めてしまった野明に「実行してから」と言いながら遊馬が肩越しに手を伸ばし打ちかけのコマンドを素早く入力するとタンッと音をさせてエンターキーを叩いて解析計算を開始させた。
目まぐるしく数字とアルファベットが滑って行く画面をチラリとみて遊馬は野明の方に向き直った。
処理が終わるまで数分間かかる。
他に人のいないこの部屋は軽い内緒話をするには絶好の場所と言ってよかった。
「そうなんだけどさ、荷物って持ってきてるのか?」
「一応。出動掛かっちゃうと取りに戻る時間なくなっちゃうかなぁって思って」
仄かに頬を染める野明に遊馬がクスリと笑う。
「上等。じゃ 帰り少し買い物してから行こうぜ。ケーキ位あった方がいいだろ、二人だから大きなのは無理だけどな」
嬉しそうな顔で頷く野明の頭を軽く撫でる。
「これであとは出動が掛らない事を願うだけだな」
「そうだね」
小さく頷くと計算が終わった端末を見やって遊馬に声を掛けた。
「とりあえず これ終わらせないとね。で 次はどうするの?」
「ここまでできたら 次は・・・・」
遊馬が指示を出す様子を扉の小窓から覗き見ていた後藤は小さく肩を竦めると「若いもんはいいよなぁ」と呟きながらその場を離れて行った。

結局 出動もなく定時間を迎えるとてきぱきと帰り支度を整え「お先に失礼します」と声を掛けて隊員室を後にした一号機コンビを見送り太田以外の全員が小さな含み笑いを漏らした。
「あれって 隠してるつもり・・・なんですよね?」
「・・・なんだ?」
「どうでしょうか?遊馬さんはともかく 泉さんは顔に出やすいですからね」
苦笑するひろみに進士と熊耳が曖昧な笑みを浮かべる。
「何の話をしとるんだ?」
「どちらにしても仕事に支障がないないならそれでいいわ。今日は本当に書類が沢山処理されたわねぇ。いつもこのくらい素早く提出してくれると助かるんだけど」
言いながら熊耳は二人から提出された書類の束をつまみ上げひらひらと振って見せた。
「だから何の事・・・」
一人腑に落ちずに疑問を投げかける太田に熊耳が同情の目を向けた。
「太田君、気づかない方がいいことってあるのよ」
「はい?」
「多分 貴方はその方がいいと思うわ」
そう言って軽く溜息を吐いた熊耳に進士とひろみも深い同情の目を向けた。
納得のいかない様子の太田をその場に残し熊耳が腰を上げる。
「さ、私たちも そろそろ帰りましょうか」
「そうですね」
「そうしましょう」
そうして三人もまた隊員室を後にする。
一人取り残された太田は腑に落ちない顔をしてその場で首を傾げた。

先に着替えを終えた遊馬が更衣室の前で野明を待っていると退勤してきた熊耳がやってきて声を掛けた。
「泉さん まだなの?」
曖昧に笑う遊馬に含みのある笑みを見せる。
「篠原君ってマメよね」
「は?」
意外な言葉に遊馬の声が裏返った。
「今日 誕生日だものね、泉さん」
「・・・知ってたんですか?」
バツが悪そうな顔をする遊馬にくすくすと笑う。
「太田君以外はみんな知ってるんじゃない?それこそ隊長から整備の人まで。気をつけなさいよ、彼女 整備の人からも人気あるわよ?」
「・・・知ってますよ」
軽く眉間を押さえるようにしながら小声で応じると小さく溜息を吐いた。
「それこそ気づいてないのは本人と太田くらいなもんでしょう?」
「否定はできないわね」
そういうと熊耳は小さく肩を竦めた。
「太田はともかく野明はあれでいいんですよ。下手に気づくと面倒ですからね」
嘯く遊馬に熊耳は呆れた様な顔を見せた。
「過保護ねぇ」
「まさか。危なっかしいだけですよ」
「そういうことにしといてもいいけど、ちゃんと捕まえとかないとトンビは一羽じゃないわよ?」
「分かってますけどね、捕まえるタイミングが難しいんで」
軽い溜息を吐く遊馬に熊耳は曖昧な笑みを覗かせた。
「そうかしら? さて わたしもそろそろ帰ろうかな、明日 遅刻しない様にね?」
「ご心配なく、公私の区別はつけてるつもりですよ」
「そう。じゃお疲れ様」
そう言って熊耳が更衣室の扉を開けると入れ替わりに野明が出てきた。

「ごめん 時間かかっちゃって」
『いつまでかかるんだよ』と一言言ってやろうと思ったが妙にめかし込んだ野明にその気力を殺がれた。
「お前 朝もそんな格好で出てきたのか?」
素朴な疑問を口にすると野明はふるふると首を振った。
「そんなわけないじゃない。出動が掛ると化粧してると困るし、この格好にノーメイクはやっぱりおかしいでしょ?」
ふわりと裾の広がるサーモンピンクのワンピースにニットのロングベストを羽織り手に荷物の入った少し大きめのカバンと襟にファーのついたミドル丈のコートを持った野明が首を傾げる。
通勤の時とイメージの違う野明に遊馬は軽く頭を抱えた。
遊馬自身は休日に遊びに行くときに最近少し見慣れてきたものの ここにいる連中は恐らく野明のこんな恰好を見たことはないに違いなかった。
二課棟内でめかし込んだ野明を連れて歩くのは先程の熊耳との会話に出たようにリスクが大きい。
かといって着替えさせるわけにもいかず遊馬は「貸せ」と声を掛けると野明が手にしていた荷物とコートを受け取り自分の着てきたコートを野明に被せた。
「私 自分のコートあるよ?」
「あのな、野明。普段からそんなに真剣に化粧なんかしないやつがそんなめかし込んだ格好で二課棟内をうろつきまわったら如何にもこれからどこかに行きます、って感じがして目立って仕方ないだろう?」
「あ・・・」
「だから、バスに乗るまではそれ羽織ってろ。」
うっすらと化粧の施された顔は仕方ないとして服装だけは彼のコートで隠すと遊馬は野明を促してその場を後にした。
案の定 ハンガーを通り抜ける際に野明の化粧に気づいた何人かは彼女に声を掛けたが遊馬が彼女の手を引いて足早にそこを通り過ぎる為返事を返す暇がない。
野明は何度も早口で「お先に失礼します」とだけ応じて二課棟を後にした。
それでも野明の羽織っているコートは明らかに彼女には大きくてその事が逆に目を引いた。
二人が通り過ぎたハンガーでは残された整備員が遊馬に向かって毒づく姿が見られそこを通りかかった熊耳はやれやれと溜息を吐いた。
『殊 泉さんの事になると状況の判断が甘いわねぇ。篠原君のコートなんて羽織らせたら逆に注目を集めることぐらいすぐに分かるでしょうに』
めかし込んでいた野明を見せまいとした遊馬の浅知恵に軽く肩を竦めると熊耳もまた二課棟を後にした。

遊馬に手を引かれてつんのめりそうになりながら必死でついて歩いていた野明はバス停の手前まで来て漸く歩く速度を落とした遊馬に向かって軽く抗議した。
「遊馬 歩くの早いって」
「悪かったよ。でもゆっくり歩いてたらお前呼び止められる度に立ち止まるだろうが」
「・・・・それは」
「んなことしてたらバスにも乗れなくなるし第一お前色々詮索されてボロを出さない自信あったのか?」
「ない・・・です」
「じゃ これで正解だろ。なんか文句あるか?」
「・・・ありません」
偉そうに言う遊馬に野明は諦めたように肩を竦めた。
程なくやってきたバスに乗り込むと遊馬は野明から自分のコートを受け取った。
改めて野明の格好を見遣ると小さく笑い、その様子に野明が遊馬の顔を窺うように覗き込む。
「・・・・変?」
普段あまりしない格好だけに幾分落ち着かない様子でしきりに髪や洋服の裾を気にする野明に遊馬は好意的な笑みを向けた。
「いや、いいんじゃないか?けど あんまりそういう格好で職場に顔出すなよ?」
「それはないと思うけど。それにこんな恰好じゃカブに乗れないじゃない?」
「ならいいけどさ」
頬杖を吐きながら言う遊馬に野明は軽く首を傾げた。
「でも どうして駄目なの?仕事するときはどうせ制服に着替えるんだし通勤する服は本当はなんでもいい筈じゃない?」
「規定上はね」
「じゃ なにが問題なわけ?」
「色々」
頭をくしゃりと撫でる遊馬に野明が怪訝な目を向けた。
「なによ それ?」
「いいの。お前は気にしなくて」
「なんだかなぁ」
不満げな口調で言いながらも頭をなでる彼の手が心地よくて軽く目を閉じるとその肩に頭を預ける。
肩を貸してやりながら無防備な様子を見せる同僚に対して抱く複雑な感情に遊馬は心の中で大きな溜息を吐いた。

途中少し寄り道してスパークリングワインを一本と酒、食事になりそうなものとつまみをいくらか買い込んで 小さなケーキを一つ購入する。
楽しそうに時折意見を求めて顔を上げる仕草に顔を綻ばせながら買い物を終えると予想外に嵩張る荷物を持って遊馬の部屋へと向かった。
部屋に入って荷物を置くと二人揃って「疲れたぁ」と言いながらダイニングの床に腰をおろし顔を見合わせて笑う。
「思ったより荷物多くなっちゃったね」
机に置かれた袋を眺めて野明が苦笑すると遊馬もまたそれを見やって肩を竦めた。
「縦にしたり詰め込んだりできないもんばっかだからな」
惣菜も好きなものをいろんな店で少しづつ購入したため入れ物の形も大きさも様々で重ねて運べなかったこともあって嵩が張っていた。
そこにケーキだの酒だのがあるので重さもあるし傾かないよう気も使う。
荷物を机に置いてしまうと二人はホッとして暫くそのまま座り込んでいた。
「ケーキ 冷蔵庫に入れた方がいいよね」
「そうだよな」
そう言いつつどちらも互いの顔を見るだけで動く気配がなくその事が可笑しくて野明が先にふきだした。
「駄目だね、ここに着いたら安心しちゃって動くのが億劫になっちゃった」
笑いながら漸く野明が立ち上がると酒類とケーキを冷蔵庫に移した。
惣菜のパックを袋から取り出しながら少し考える。
「どうしよう、お皿に移す?それともこのまま並べてつまむ?」
聞かれた遊馬も首を傾げつつ立ち上がり野明の隣に立った。
「一応誕生日だし綺麗に並べてみるか?」
「どっちでもいいよ。でもこのままの方が後片付けは楽だよね」
野明がクスクスと笑うと遊馬は軽く渋面を作った。
「そりゃそうなんだけどさ 味気ない気がしないか?それじゃ」
「そう? でも余計な手間はない方が楽でいいし第一このままの方が味が混ざらなくていい気がしない?」
そういう野明に遊馬は軽く肩を竦めた。
「お前の誕生日なんだしお前が納得してるならそれでいいよ」
結局、適当に惣菜を並べて取り皿にとって食べることに落ち着くと冷蔵庫から買ってきたばかりのスパークリングワインを取り出して遊馬に手渡した。
あまり冷えていないそれに遊馬は少し考えて大きめのボールに製氷機の氷をありったけ入れるとその中に瓶ごと放りこんだ。
「缶ビールとかなら氷の中で回しちまうんだけどそうもいかないだろ?冷えるまで少し掛るし。そうだ、野明ちょっと来いよ」
手招きする遊馬について隣の部屋に向かうとガランとした部屋に大きな箱が無造作に置かれていた。
「これ!」
「あとで運んでやるから向こうに飾ろう」
声を掛けると「ありがとう 遊馬っ」と言って野明が嬉しそうにぴょんと彼に飛びついた。
軽く抱きとめたつもりが一瞬腕に力を込めそうになって遊馬は慌てて腕を緩めた。
「どういたしまして。食事が終わったら飾り付けするからな」
嬉しそうに頷く野明を静かに下ろすとダイニングに戻るよう促してその背中を軽く押した。

遊馬が小気味良い音をさせてスパークリングワインの栓を抜くと溢れる泡を零さない様に野明が慌ててグラスを差し出した。
二人分のグラスを満たすと各々手に持って澄んだ音をさせてグラスを合わせた。
「じゃ 改めて。誕生日おめでとう」
「『おめでとう』って年でもなくなってきてる気がするんだけどね、でも嬉しい。ありがとう 遊馬」
満面の笑みを見せる野明に遊馬もまた満足そうに笑った。
「まぁ これだけ喜んでもらえると祝い甲斐もあるよな」
「そう? でも遊馬だから嬉しいんだよ?」
はにかむ様に笑う野明の顔に遊馬は一瞬どきりとした。
「そりゃ 光栄だね、俺としてもそれだけめかし込んで来てもらえるなら正直嬉しいけどね」
楽しそうな眼をして野明の格好を眺めると遊馬はにっと笑う。
「あ・・・えっと・・・」
野明は顔を真っ赤にして恥ずかしそうに俯いた。
「よく似合ってるし 俺はいいとおもうけどな」
「あの・・・ありがとう・・・」
「どういたしまして。食事終わったらツリー組み立てよう」
急に照れた様子を見せ始めた野明に遊馬がクスリと笑って提案すると野明はコクンと頷いた。

食事を終えてケーキは後から食べることに決めると遊馬がツリーをダイニングに運び込んできた。
ざっと梱包を解くと楽しそうにオーナメントを取り出す野明の隣でツリー本体を組みあげて枝葉を広げる。
その大きさに野明は改めて感嘆の声を上げた。
「お店で見るよりも大きく見えるねぇ」
「そりゃそうだろ?天井の高さも部屋自体の広さも違うんだから。それにしても本当にでかいな」
遊馬が聊か呆れた様な笑みを見せたので野明は少し申し訳ない気分になった。
「・・・・やっぱり 邪魔になる?」
「いや いいよ。その代わり飾り付けもそうだけどと後片付けにもちゃんと付き合えよ、お前のなんだから」
「もちろん。あと当日もね、だから・・・・他の約束とかいれないでね?」
上目づかいで遊馬の顔を見て野明は仄かに頬を染めた。
「そりゃ お互い様だな、あとは『押し切られて誰か加わる』ってのも無しにしてくれよ」
「うん。困ったら遊馬に相談するね」
「どうぞ。そんときゃ『予約済みです』って言ってやる」
「・・・予約って・・・」
楽しげに声を上げて笑う遊馬に野明は頬を染めて視線を泳がせた。

ツリーの飾りつけが終わると野明は満足そうに頷いた。
「ね やっぱり大きいツリーっていいよねぇ」
「まあ 見栄えはするよな」
「こういうのって憧れたんだぁ。そうだっ 遊馬ちょっとまってて」
そういうと野明は自分の鞄からプレゼント包装された箱を取り出して戻ってきた。
怪訝な顔を見せる遊馬に野明はにこにこと笑いながらそれをツリーの真下に置いた。
「何してるんだ?」
「香貫花がね アメリカでは何日も前から用意したプレゼントを贈る相手の名前を添えてツリーの下に置いておくって言ってたから、やってみたくて」
「ふ~ん。じゃ 俺も置いといてやろうか?」
そういうと隣の部屋から遊馬もプレゼント包装された箱を持って出てきた。
二つともそう大きなものでもなく、また置くものが二つしかないので床に置くと少し妙な感じがしたのでツリーの土台になっている偽物の植木鉢の中に入れておくことにした。
鉢の中におさまった二つの箱を覗き込んでいた野明が子供の様な顔をして遊馬を振り仰いだ。
「なんだか わくわくしない?」
「そうか?」
遊馬が首を傾げると野明は嬉しそうな顔で遊馬に言った。
「だって『この中に何がはいってるのかな』って考えながら数日過ごすんでしょ?当日が凄く待ち遠しく感じるよね」
「なるほど。野明はそう思う訳か」
「遊馬は違うの?」
「俺は・・・」
言い掛けた遊馬は野明の顔をみて困った顔を見せた。
「何?」
「いや、言ったら野明 夢がないって怒りそうだなとおもってさ」
「なによそれ?」
「答えてもいいけど、怒るなよ?」
「うん 怒らない、約束する」
遊馬は困った顔のまま口を開いた。
「俺だったら 多分考えるのが面倒になって当日まで箱のこと忘れて過ごしそうだなと思ってさ」
その答えに野明は呆気にとられ 遊馬の顔を覗き込んだ。
「・・・・そうなの?」
「実際 やってみたことがないから何とも言えないけどさ」
「じゃ 今年分かるじゃない? 遊馬もわくわくしてくれるといいなと思ったんだけど・・・」
「こればっかりは 『じゃ わくわくします』と言う訳にいかないもんな、気持ちの問題だからさ」
「そうよだねぇ」
野明もまた少し困った顔をして表情を曇らせた。
「そんな顔するなって、悪かったよ。でも 野明が何買ってきたのか興味はあるから今回は結構楽しめるんじゃないか?」
「だったらいいんだけどね」
野明は小さく肩を竦めた。

「な ケーキ そろそろ食べないとあんまり遅くなるとまずいんじゃないか?」
遊馬の提案に野明は壁の時計を振り返った。
時間は8時を回っていて遊馬がコーヒーを入れる間に野明は皿とフォークを取り出した。
直径10cmくらいの小ぶりなガトーショコラのホールケーキを取り出すと野明は少し考えてろうそくを一本だけ取り出すと真ん中に立てた。
不思議そうな顔をした遊馬が「一本でいいのか?」と訊くと野明はコクンと頷いた。
軽く照明を落としてろうそくに火を灯すと「誕生日おめでとう」と言う彼に「ありがとう」と笑みを返した野明は彼に声を掛けた。
「ね 遊馬、一緒に消してもらってもいい?」
「いいけど なんで?」
「いいから」
「はいはい」
腑に落ちない顔をしながらも遊馬は野明と一緒にろうそくの火を吹き消した。
照明を戻すと遊馬は改めて野明に問い掛けた。
「なぁ 理由きいてもいいか?」
「何?」
「一緒に消してほしかった訳と ろうそくの本数」
野明は少し考える仕草を見せてからにこりと笑った。
「今は 駄目」
「なんだそりゃ?」
「まだ秘密、かなぁ」
「ふ~ん。ま いいけどね。そのうち訊くからな?」
楽しそうな笑顔を見せる野明に遊馬は軽く首を傾げた。

切り分けたケーキを二人でゆっくり食べ終わると野明にシャワーを使うように言ってその間に布団を空き部屋に運び込んだ。
野明が出てくると入れ替わりに遊馬がシャワーを浴びに向かいその間に荷物を片づけた野明は改めてツリーを眺めて暫くそれに魅入っていると後ろから遊馬の声がした。
「どうした?」
「早いね もう出てきたの?」
「別に早くなんてないけどね。魅入るほど気にいってるのか。それ」
遊馬が首を傾げると野明は曖昧な笑みを浮かべてコクリと頷いた。
「ね 私ここで寝ちゃだめ?」
「ここってツリーの前か?」
「うん」
「俺 向こうの部屋に行くつもりだったからベッド貸してやるし隣の部屋で寝た方がいいって。ここ 寒くなるぞ」
大きな掃き出し窓のあるダイニングは気温が下がりやすい。
客用の布団があるわけではなかったので遊馬は寮の時に使っていた布団一式をあいている部屋に運んでいた。
「遊馬が向こうに行くの?遊馬の部屋なんだからベッド使えばいいのに。」
「いいんだよ。そっちの布団の方があったかいから使えって。」
「う~ん・・・」
名残惜しそうにツリーを見上げる野明に遊馬は呆れた顔をした。
「お前な 子供じゃあるまいしなんでそんなにそこがいいんだ?」
不思議そうな顔をする遊馬に野明は少し寂しそうに笑った。
「・・・私の家って 自営業じゃない? しかも酒屋でさ」
懐かしむ様な顔で話しだした野明をラグの上に座らせると遊馬もその横に腰を下ろす。
前に見た野明の実家の光景を思い出して遊馬は「そういやそうだったな」と頷くと話の続きを促す。
少し迷う様な顔をしてからツリーと遊馬を交互に見て小さく笑った。
「年末年始って掻き入れ時でさ。私の誕生日が近くなると年末に問屋さんが休みになるからお得意様回って年始の分までの注文まとめたり配達の量が増えたりして凄く忙しくなってくるの。店先にはクリスマス用の飾りとか一応置くんだけど家の中までは回りきらなくて誕生日とクリスマスってばたばたしてる間に過ぎちゃうことも多かったんだ。ツリーの飾りなんて落ち着いて見たことなんてあまりなくて25日過ぎたら次はお正月用の飾りださなくちゃいけないから飾りも外さないでそのまま袋をかぶせて倉庫に仕舞ったりするくらいで。だからね、遊馬が『誕生日はちゃんと祝ってくれる』っていってくれて凄く嬉しかった。それに・・・・」
ツリーを振り仰いで嬉しそうに笑う。
「『お店のツリー』じゃなくて『私たちの為の』ツリーでしょ、これ。それが嬉しい。だから ゆっくりみたいなぁって」
「なるほどね。分かった、じゃ こうしようぜ。俺もここで寝る、ツリーの照明もつけといてやる。あと2時間ちょっとしかないけど野明の誕生日をちゃんと一緒に祝う。ついでにクリスマス気分も満喫する。どうだ?」
「うれしいけど いいの? ここ寒くなるんでしょう?」
「なら尚のこと 一人より二人の方がいいだろ、ここにいるって決めたら他の部屋閉め切って暖房効かせればいいし、ベッドから布団だけ下ろしてきて二組み分並べれば寝れないことないだろ、ちょっと部屋が狭くなるけどさ。」
「本当に?」
「じゃ この辺り少し場所作って。布団運んでくるからさ」
遊馬が立ち上がると野明も慌てて机やラグを部屋の隅に寄せた。
程なく遊馬が布団を抱えて戻ってきた。
二人で床に並べて敷くと野明はクスクスと笑った。
「修学旅行みたいだね」
「そうか?」
「なんだかすごいわくわくする」
「そればっかりだな、今日」
機嫌良く遊馬が笑い返すと野明も笑みを返した。
「だって 楽しいんだもん。きっと今までで一番楽しいと思う」
「それはよかったな。じゃ序にこれもやる」
そう言ってポケットから小さな箱を取り出して野明の掌にポンとのせた。
「え?何、これ」
「誕生日プレゼント。大したもんじゃないけどな」
「ええ? だってツリー買ってもらったじゃない 悪いよ」
吃驚した顔をして箱と遊馬の顔を見比べる野明を楽しげに眺めて彼女の頭を軽く撫でる。
「返されても困るし気持ちの問題なんだからさ 受け取れって。もっとも気に入らないなら捨ててもいいけど?」
「それは絶対しない。ね これ今開けてもいいの?」
「どうぞ」
嬉しそうに巻かれたリボンを丁寧に解くと慎重に包装紙を開く。
出てきた小箱をゆっくり開けると中には細い鎖と雪の結晶を模して真ん中に青い小さな石が配されたネックレスが出てきた。
「わぁ かわいいっ、真ん中のってラピスラズリ?」
「そうらしいよ。店の人に魔よけになるって聞いた」
「うん。そうみたいだね、ありがとう 遊馬」
「後ろ向け、つけてやるから」
野明の手からネックレスを受け取ると擽ったそうに笑う野明の首にそれを掛ける。
「はい できた」
声を掛けると野明は遊馬の方に向かってクルリと振り返ってにこりと笑う。
青い石は野明の白い肌によく映えていて遊馬は「悪くないな」といって軽く頷いた。
野明は嬉しそうにネックレスに触れて遊馬に伺いを立てた。
「ね これつけたまま仕事しても平気だよね?」
「服の中に仕舞っちまえば問題ないんじゃないか?飾りも小さいし」
「じゃあ そうしよう。せっかく遊馬につけてもらったしこのまましてようかなぁ」
「いいけど、寝る時邪魔にならないか?つけてほしけりゃまた朝つけなおしてやるけど」
「邪魔にはならないけど、せっかくなら明日つけなおして貰っちゃおうかなぁ」
「分かった。じゃ一度はずしてやるからこっち来いよ」
遊馬に手招きされてちょこんと彼の前に座ると遊馬にネックレスを外してもらう。
「ほら」といって渡されたそれを箱に丁寧に仕舞うと大事そうに机に置いて遊馬の傍に戻ってきた。
「じゃ そろそろ寝ようぜ。二人して寝不足の顔して出勤したら何言われるかわかんねぇぞ」
「それもそうだね」
野明が神妙な顔で頷くと布団にころりと横になったのを確認して遊馬が部屋の電気を落とした。
ツリーに巻きつけたLEDが青い光を明滅させるのを眺めながら遊馬もまた横になると何気なくツリーを眺める。
「そういや俺も 落ち着いてツリーなんて見た記憶ないな」
「遊馬の家も忙しい家だもんね」
「お前の家ほどあったかいとこじゃないけどね」
その発言に野明は微妙な表情浮かべ遊馬の方に顔を向けた。
「じゃ 今年は楽しいクリスマスになるといいね」
「なるんじゃないか?少なくと今までよりは楽しみにしてるよ」
「そうだね、私も楽しみにしてる」
二人で顔を見合わせて笑うと野明の差し出した手を遊馬が掴んだ。
「野明、じゃそろそろ寝ようか?」
「うん。手は・・・繋いでてもいい?」
遊馬の掴んだ自分の手を見て野明がおずおずと問い掛けた。
「野明がいいならいいよ、俺は」
「じゃ お願いします、おやすみなさい」
「おやすみ」
あいさつをしたものの落ち着かない野明がちらりと遊馬を見遣るとおなじように目を開けた遊馬と目が合った。
「寝ないのか?」
問い掛ける遊馬に野明も小さく笑った。
「遊馬こそ寝ないの?」
「妙に目が冴えちゃってさ。お前はどうなんだ?」
「私も。なんだか眠るの勿体なくて」
「分かる気はするけどね、けど少しでも眠らないと後でつらいぞ」
「うん 分かってる。ね 遊馬、今日は本当にありがとう」
「何度も聞いたって」
遊馬が笑うと野明は首を振った。
「それでも。私 時期が時期だから誕生日とクリスマスと一緒って言うのが当たり前みたいになってたから。ちゃんと分けてもらえて嬉しかった」
「そっか。じゃ分けた甲斐があったな。来年もちゃんと分けて祝うって約束してやる。」
嬉しそうな顔を見せる野明の頭を軽く引き寄せると耳元に声を掛けた。
「とにかく俺もお前も少し眠った方がいい。ツリーの明かり落とすから、もう寝よう」
野明が頷いたのを確認して遊馬はツリーの明かりを落として横になった。
軽く髪を梳くように撫でてやると程なく規則正しい寝息が聞こえてきて遊馬もそのうちに眠ってしまった。

翌朝 出勤前に首にネックレスを掛けなおしてやると野明は嬉しそうに笑い遊馬もまた妙にくすぐったい気分を味わった。
出がけに遊馬が洗面所でひげを剃っている間に準備を終えた野明が彼がまだ出てこないのを確認して鞄から紙袋を取り出し中から透明な緑の実が沢山ついた細い葉の植物で編まれた直径15cmほどのリースを取り出すとツリーの枝を器用に曲げて正面の少し高い位置にくくりつけた。
緑のツリーの中にあって薄黄緑のそれは何んとなく馴染んでそれほどの違和感はなく野明は満足そうに頷いてその場を離れると遊馬に「準備できた?」と声を掛けた。
「今行く」と答えた遊馬を玄関で待ちながら野明は少しドキドキした気分を味わう。
二人で玄関の戸を潜ると野明は遊馬の顔をちらりとみてくるりと踵を返し少し前を歩きだした。
マウンテンバイクを置いて野明と一緒に行くことにした遊馬は野明の肩から大きめの鞄をひょいと取り上げると手に持った。
野明が吃驚して振り返ると遊馬は軽く笑って「ま このくらいはしてやるよ」と言い野明は嬉しそうに笑うと少し考えて遊馬の腕に自分の腕を絡めた。
軽く目を見開いた遊馬に「バス停までね」と楽しそうに告げて仲良く並んで歩き始めた。

部屋のツリーに残してきた飾りのことを思ってと野明がクスリと笑う。
気づいた時の遊馬の反応を思うと少し緊張して彼の腕に頬をぴたりと寄せた。
腕を取られた遊馬はぴたりと頬を寄せる野明を見やって軽く首を傾げたものの敢えて何も言わず彼女を伴って駅に向かう。
いまままで そんなに興味がなかったクリスマスというイベントが妙に楽しみに感じて遊馬もまた小さく笑うと埋め立て地に向かうべく歩を進めた。

memorial days finalへ

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誕生日編です~
結局何か進展したのかって言うとあまりしてないという(笑)
野明がくくりつけてきた飾り何だかわかる方は分かると思いますが 遊馬はそれに気づくでしょうか?
でも生のものは手に入れるの結構大変なんですよね、最近は人気が出てきたので扱う店が増えてるのかも知れませんが★

次回はクリスマス編です!
目指せ 当日中UP で行きたいと思います!
(で 本気で連載はどうした?!)

コメント一覧

ツッジー 2009年12月17日(木)18時23分 編集・削除

進展しなかったぁーーーーーーー( ; _ q ))クスン

誕生日なのにぃーーー(*⌒∇⌒*)テヘ♪

クリスマスバージョン楽しみにしてまーす(≧∇≦)

さくら(ツッジー様) 2009年12月17日(木)21時09分 編集・削除

>ツッジーさま

だって3部作だもん(笑)
ここで進展したらクリスマスにいきなり反転からって困るやん~(おい!)
あとはクリスマスまでまってね~♪(こら!)

瞳子 2009年12月17日(木)21時19分 編集・削除

やっぱり進展しなかったぁ〜。(笑)

見事に被ってますね。(★≧〇≦★)!?

そして、続くトコも…

もしかして、一身同体?←迷惑だって…(^_^;)

さくら(瞳子様) 2009年12月17日(木)21時35分 編集・削除

>瞳子さま

でしょ?!
見て びっくりしました(笑)
そして続くし(^m^)
一心同体歓迎ですよ、瞳子さんさえよろしければ~(こら!)

こんきち 2009年12月17日(木)21時39分 編集・削除

あまり進展しなかったみたいですが、2人らしい展開ですね。

太田さんは相変わらず鈍感だし(^^;)

クリスマスにいきなり反転でもよかった・・・ですよ。

さくら(こんきち様) 2009年12月17日(木)21時42分 編集・削除

>こんきちさま

進展してないですよ、自分から仕掛けていけないコンビなんで(笑)
功ちゃんは あんな感じですし~

それといきなり反転ってもう無理!!!
2本で一杯一杯ですよ~(^^;
師匠に魔道書貸してもらわないと(おい!)

非公開 2009年12月17日(木)21時53分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

さくら(内緒様) 2009年12月17日(木)22時35分 編集・削除

>内緒さま

さてどっちでしょうね~
今のところ魔性優勢?(笑)
それにしてもあれは逆に目立ちますよね(^m^)
冷静に判断ができてないあたりに策士の劣勢が垣間見えるというか(こら!)

実際 そうなったらみんな気づくでしょうね~!!
だって隠し事できない人がいますから(笑)
続きはクリスマスにUP予定です
お互い大掃除(やる気はあるんだよね、やるきは・・・)しながら頑張りましょう~!!(笑)

たまき Eメール 2009年12月18日(金)01時15分 編集・削除

あああぁぁっ!私も遊馬のコートを羽織って遊馬の香りにつつまれたい!ネックレスつけてもらいたい!そして何もしなくていいから?手をつないで眠りたい!と暴走しておりますε=ヾ(*~▽~)ノそれにしても功ちゃん良いキャラしてますね( ´艸`)次回楽しみにしてますね!裏もありだと思います!だって遊馬も健康な青年男子ですもの(*≧m≦*)

さくら(たまき様) 2009年12月18日(金)01時29分 編集・削除

>たまきさま

暴走していただけて本望ですよ~(^m^)
そして功ちゃんは鈍感なのね~
次回は 3部作の最後 24日UPを目指してます♪
裏ですか?
遊馬は確かに健康な成年男子ですもんね(^m^)
でももう私が過去2本で引き出し使い切りましたよ~、どうしましょう?!(笑)

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