実家にいる間にメモしたもの第二弾
風杜祭に微妙に参加(でも彼の扱いは・・・このサイトのやることですから・・・ね?)
というわけで 週末 お出かけ前に置いていきますね~(^^)
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記名
季節が秋から冬へと進み確実に日差しのある時間が短くなってきている。
まだ時間としては昼といっていい4時台に窓外の空は早くも夕闇のつま先を覗かせていて薄く平筆で刷いたような雲にはうっすら朱と茜を混ぜたような黄金色の光が映り夜が近いことを告げていた。
こんな時間に東京都内で在りながら陸の孤島同然の埋め立て地に足を運んだその男はお目当ての人物の姿を求めてそこに立つ唯一の建物の中を徘徊していた。
体裁上、「己が上司の運転手兼付添」という形を採っているものの、その目的が他にあることは今やもう万人周知の事実となっていることは ここにいる赤の他人のみならず自身でもよくわかっていることだった。
おそらくは もう一人の当事者である彼女を除いた全員がそのことを知っている。
何度となく声をかけても色よい返事を貰えたことなど一度もないというのに事あるごとに臆することなくここに足を運ぶ自分はある意味でいい根性をしていると思う。
最近オープンしたという女の子に人気のカフェで購入してきたケーキの入った箱を手に彼女がいるであろう隊員室に足を向けると ハンガーと隊員室を結ぶキャットウォークの曲がり角に彼女の後姿を見つけた。
声をかけようとすると「もうっ!」と言いながら彼女が軽く跳びあがって何かに手を伸ばすのが見えた。
宙を切る様にして着地すると拗ねたような顔をして小走りに角の向こうに消える。
程なく自分がその角に差し掛かると 隊員室の少し手前で彼女がパートナーである男性が差し上げた手に腕をのばし、むきになって跳ねる姿が目に入った。
「もう、遊馬ぁ 半分っていったでしょ?」
「だから 取れたら返してやるって」
楽しそうに彼女をからかい、手に菓子の入った袋を持った遊馬が身長差を巧みに使ってひょいひょいと彼女の手をかわす。
一頻、むきになって正攻法で手を伸ばしていた彼女は少し考えると「そういうつもりなら、いい」と小さく呟きフイと横を向いた。
その様子に流石にやりすぎたと思ったのか彼は上げていた手を僅かに下ろし、彼女に歩み寄る。
「おい・・・」と声を掛けた途端、くるりと振り返った野明は勢いよく彼に向って床を蹴り半ば胸に飛び込む勢いで大きく跳びあがった。
「うわっ」焦ってバランスを崩しかける遊馬の左肩を押えて蹴上がり、左手を伸ばすと掲げたれた右手から菓子の入った袋をひったくる。
彼の胸の前にトンと着地してみせると奪回したそれをしっかりと胸に抱え込んだ。
「取り返したっ!もう 遊馬にはぜ~ったい渡さないんだから」
軽く拗ねた顔をして宣言する野明に「あぶねーだろうがっ!」と遊馬が抗議する。
「大体 人のもの勝手に食べないでよねっ。ちゃんと名前書いてあるんだから」
「袋菓子の一つや二つでそんなに怒るなよ?」
「あ そーお?じゃ 今度遊馬のお菓子私が食べた時もそう言ってくれる?」
軽口の応酬は傍から見ていると子供の喧嘩か痴話喧嘩。
その様子に風杜は軽く肩を竦めた。
彼に気づいた遊馬が それまでの楽しげな表情を一変させていつもの冷めた御曹司の顔に戻る。
その変化に野明が彼の視線の先を追って 初めて来客に気がついた。
「あ 風杜さん、こんにちは。今日も松井さんの付添ですか?」
彼女もまた 先ほどまでとどこか違う朗らかな笑顔を返す。
「まあ そうなんだけどね。泉さん これ皆さんでどうぞ」
そう言ってケーキの入った箱を差し出すと彼女は興味深げに箱を眺めた。
「ありがとうございます、もうすぐ定時ですし風杜さんも一緒にいかがですか?」
言われて少し考えると彼女の後ろに立つパートナーの姿に目を留めた。
鼻頭に小さく皺を寄せ 今にも『けっ!』と呟きそうな顔を見せる彼に向って声を掛ける。
「お邪魔じゃなければ?」
意図を敏感に察した彼が半眼を寄こし「いいんじゃないですか?」と言葉と裏腹な雰囲気を醸し出しながら返事をする。
その雰囲気を敢えて黙殺して「じゃ よろこんで」と答えると彼はあからさまに渋面を作った。
箱を受け取った野明が「これ、冷蔵庫に入れてきますね」と二三歩歩きだし、ふと足を止めた。
くるりと振り返り遊馬を眺め「そー、そー 名前書いとかないと!」と大きな声で言い放つ。
「そんなもん 勝手に取るやついねーよ!」
不貞腐れたように言う遊馬に野明は これまた嫌みたっぷりな口調で言い返した。
「分かんないじゃない? 名前書いといたって勝手に食べちゃう人がいるんだから?」
言いながら制服の胸ポケットから取り出した油性ペンを風杜に手渡した。
「はいっ 名前書いといてくださいね、なくなっちゃうとこまるから」
「僕の?泉さんの名前でいいんじゃない?」
「ダメなんです。私の名前だと食べちゃう人がいるから」
ちらりと目線を遊馬に向けると仏頂面の遊馬がそっぽを向いた。
その態度に思わずくすりと笑うと名前を書き終わった風杜からペンを受け取る。
『刑事課 風杜』と几帳面な字で書かれた名前を見て満足そうに頷くと彼女は小さく肩を竦めた。
「ここ 不便なところだから。食べ物とか個人のものには一々名前書いとかないとすぐとられちゃうんですよ」
そう言って彼女は笑い「これおいてきますね」とその場を離れた。
記名するだけで所有権が主張できるなら・・・とふと思い彼女が消えた角を振り返ると、後ろから声がかかった。
「何考えてるか 当ててやろうか?」
不機嫌そのものという顔をした彼が唸る様な声音を発する。いつもの敬語ではない口調に思わずこちらの口の端も微かに上がる。
「わかるのかい?」
興味を持って揶揄するような眼を向けると剣呑な光を宿した眼でこちらを見返した。
「気づいてないのはあいつ位でしょ?」
「なるほど」
「あんたの名前は書かせない」
にやりと笑う彼の顔にはある種の自信があってそのことが興味を誘った。
「自信ありげだね、その根拠は?」
「教えてやるほど親切じゃないさ。けど、誕生日もクリスマスももう空いちゃいないよ」
軽く眼を見開いて肩を竦めると「それは分が悪いなぁ」と呟いた。
「それに・・・」
言い差したところに野明がもどって来たのを目にとめて遊馬が軽く手招きすると彼女は小走りで彼のもとに舞い戻る。
「隊長達と松井さんもくるって」
さっきの諍いなどなかったように笑う彼女の頭を「そうか」と言って軽く撫でると当然のことのように声を掛けた。
「帰り 飯食ってかえるぞ」
「いいけど 奢ってくれるの?」
「ばぁか 給料日前だろ」
「しょうがないなぁ」
軽口を叩き あっさりと約束を取り付ける様を目の前で見せつけられた風杜は一人深いため息をついた。
何度となく声を掛けているが一度なりといい返事を貰ったことがない。
『待遇条件の違い』というのは無関係だと遊馬に目の前で宣言されたも同然で分の悪さに思わず肩が落ちた。
それでも やっぱりあっさり諦めるのは癪なので今一度声を掛けてみる。
「泉さん、今度は僕ともお茶飲まない?」
きょとんとした顔で振り返った彼女は となりを歩く彼の顔を見てそれからやわらかな笑みを浮かべた。
「そうですね、機会があれば」
その『機会』がいつなのか、と聞くことは野暮なので止めた。
余裕綽綽とした顔で振り返る遊馬が「あと15分で定時ですから」と後ろ手を振り 彼女を伴って隊員室に帰るのを見送る。
『本当に名前を書きたいのは君なんだけどね』、と彼女に言えたらどんな顔をするだろうか。
「冗談ばっかり!」と笑い飛ばされるのかもしれない。
けれども それを彼が言ったら彼女は何と答えるのか、気になるけれど知りたくないそんな気がして窓外を見やるともうあたりはすっかり日が落ちて夜の帳が下り始めていた。
分がない勝負なのはわかっているのに手を引かないのは彼女に対する未練と彼への意地。
『彼女の心に名前を刻む』
未だその権利は自分の手の内にはないけれどいつか彼から奪うべく、彼女がきっぱりと自分を拒絶しないうちは 当分このまま様子を見ようと思い口の端に自嘲気味な笑みを載せる
機会が巡るのを期待して軽く肩を回すとひとつ大きく伸をした。
fin
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風杜氏 不幸話(おい!)その2ですね(笑)
うん 不憫だ、でもごめん・・・・このサイトにいる限りあて馬の運命(^^;
というわけで いじめてごめん。風杜スキーのみなさま~(でも 改善する見込みはなし!)
ゆぴまま Eメール 2009年11月28日(土)17時25分 編集・削除
遊馬スキー(ってか のあすまスキー)の私ですから、風杜さんが痛いのは全然OKですよー(笑)というか、風杜さんって少し痛い位のほうがカッコいいなぁと思っちゃうんですけど、いかがでしょう?あのやせ我慢が健気でね~キュンときちゃうんですけどダメですか?(笑)