不在の第六弾
殆ど短期集中連載と化してます(笑)
ニ課棟に向った遊馬は野明に会えたでしょうか?
以下本文
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不在 6
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SIDE-A&N(1)
ニ課棟の前に車を止めると遊馬は少し考えた。
こんな時間に野明が起きているとは思えなかったし、宿直室の扉を叩いて起こすのも忍びない。
顔を見たいのは山々だがノックして野明以外の喩えばお武さんなんかも一緒に居た場合そのフォローは大変だろうなと思った。
考えた末に隊員室の机に携帯を置くことに決めた。
3週間と少し離れていただけで懐かしさのこみ上げるオフィスに遊馬の頬が緩む。
あと少しでここに戻ってこられるはずだと自分に言い聞かせ隊員室に足を向けた。
灯りの落ちた真っ暗なオフィスを覗き込むとそこに意外な人影を見つけた。
野明の机の隣、きれいに片付けられた自分の机。
そこに座った野明が両腕を枕代わりにして眠っていた。
その光景に思わず立ち竦み自然と朱が上った顔を片手で覆う。
顔を覗けば目の端に涙の痕が見て取れて遊馬は胸が締め付けられるような思いをした。
静かに携帯を彼女の机に置き、そっと髪に触れると野明が身動ぎした。
自分が着てきたパーカーを野明の背に掛けてやると彼女はうっすらと目をあけた。
肩に掛かるそれを不思議そうにみてそれからゆっくりと顔を上げる。
目が合うと、驚きでゆっくりと見開かれていく大きな青灰色の瞳にみるみる涙が浮かんだ。
「そこ俺の机、何してんだよ そんなとこで」
笑みを湛えて声を掛けると野明は瞬きすら忘れたように遊馬を凝視した。
暗がりに浮ぶ遊馬の姿に吃驚して声が出ない。
困ったような笑顔を浮かべた遊馬は触れたら消えてしまいそうで伸ばしかけた手を引いた。
そのまま黙ってこちらを見つめる野明に遊馬は苦笑する。
「なんだよ、忘れちまったか? 俺の顔」
野明はふるふると首をふった。
「野明」
名前を呼んで頬に手を添え指で涙を拭う。
「あす・・・ま?」
触れた掌に自分の手を添えた野明がかすれるような声で名前を呼んだ。
「どうした?」
優しく笑う遊馬の声に野明の目から止め処なく涙が溢れた。
両手で顔を覆い泣き出した彼女の頭を軽く引き寄せる。
「連絡、しないで悪かったな」
野明は無言で首を振り、遊馬の胸に頬を寄せた。
しゃくり上げる様に声を殺して泣き続ける野明をこのまま抱き締めてしまって良いものかと少し考えて、遊馬は頭を撫でてやることに決めた。
ゆっくりとできるだけ優しく髪を梳くように頭を撫でていると次第に野明の呼吸が整ってきた。
少し落ち着いたところで野明は遊馬の胸元から頬を離し彼の顔を見上げた。
泣き腫らした瞳は赤味を帯びていて涙の痕がくっきりと残る。
遊馬はその顔を覗き込んだ。
「久し振り」
「うん 久し振り。どうしたの、こんな時間に」
「ちょっと顔見に来た」
「嘘」
「本当」
遊馬は敢えて携帯電話の件には触れなかった。
触れれば墨勇とあったことを説明しなければならないし、このあと八王子に戻って出社することを考えれば此処に居られる時間は短い。
そんなことに割く時間は勿体無い以外の何物でもなかった。
机の上に置いておいたのだから後で必ず気づく。
なら今そのことに触れることもない。
寧ろ互いの不安を解消するのに向き合って話をする方が大事だと思った。
大きく息を吸い込んで深呼吸すると遊馬は野明の顔を正面から覗き込んだ。
「八王子さ、思った以上に忙しくて。連絡しないで悪かった」
工場内での複雑な立場については触れなかった。
野明に余計な気を使わせたくなかったし、知らなくてもいいことだと思った。
正確には知られたくなかったのかも知れない。
野明はふるふると首を振り「もう気にしてない」と告げ、遊馬の頬に両手を添えて心配そうに彼の顔を見上げた。
「遊馬、随分痩せたね」
「そうか?あんまり寝てないからな。お前こそ少し痩せたんじゃないか?ちゃんと飯食ってるか?」
「食べてるよ、一応」
「お前の一応ってのはアテにならないんだよ。ちゃんと食え。俺の留守中に倒れたなんて言ったらただじゃおかないからな」
「怖いなぁ、『ただじゃおかない』ってどうする気?」
「ちゃんと食うまで毎食見張ってやる」
ニッと笑う遊馬に野明もクスリと笑う。
「じゃ 私は眠らない遊馬がちゃんと眠るまで見張ってようかな」
「いいけど、お前うちに泊まる気か?」
「あ・・・そうか。それは無理だね。」
「そうでもないけどな。寮出ちまったし」
その言葉に野明は少し顔を曇らせた。
「遊馬 ・・・二課に帰ってこないの?」
「なんで?」
不安な顔を見せる野明に遊馬は首を傾げた。
「だって遊馬 引っ越したんでしょう?寮引き払って。八王子から此処には通えないよね」
「そのことか。あの日 電話出れなくてごめんな。モード切り替えるの忘れてたんだ」
野明は「そのことはいいよ」と首を振った。
「忙しくなるのがわかってたから、近場から通おうと思ったのがまず一点。それから 寮からは出たかったんだ、少し前から。だからいい機会だと思った」
「一言いってくれてもよかったのに」
拗ねたような野明の物言いに、遊馬は苦笑した。
「急に決まったからさ。引越し先も含めて手続きその他、隊長が結構手を回してくれて土曜の昼過ぎに確定したんだ」
野明は驚いて顔を上げた。
「じゃ 隊長は知ってたの?!」
「そりゃそうだろう。手配掛けたの隊長だし」
「隊長って人が悪い・・・」
野明は不満げに呟いた。きっと全部わかった上で私の反応をみてたんだ。
そう思うと沸々と理不尽な怒りがわいてくる。
その様子を遊馬は呆れたような顔で眺めた。
「そんなの今に始まったことじゃないだろうが」
「そうだけど・・・でも・・・」
「わかった、心配掛けて悪かった」
いいながら後藤は引越しのことも含め八王子の一件について一切誰にも話していないらしいことに安堵する。
「でさ、俺 まだ暫く忙しそうなんだ。連絡とかマメにはできないと思う」
「うん、解ってる」
「でもさ お前が心配するようなことは何もないから」
野明はきょとんとした顔をして遊馬をまじまじと見つめた。
遊馬はふいっと顔を逸らすとぶっきら棒な口調で続ける。
「だからさ、さっきみたいな泣き方すんなよな」
「さっき?」
野明が小首を傾げると遊馬は自分の机を指差した。
「そんなとこで泣きながら寝られたら妙な気起こしそうになるだろうが」
「・・・あ・・・」
野明は頬を染めて目を逸らした。
「お前はそういうところが危なっかしいんだよ。こんな時間にあんなの見たら思わず構いたくなるだろうが。気をつけろよ?仮にも年頃の女なんだし此処には24時間独身男がウロウロしてんだからな」
保護者のように捲くし立てる遊馬に野明は目を丸くした。
「えっと・・・気をつけます」
「そうしてくれ、俺の気がもたないから」
言ってしまってから遊馬は『しまった!』という顔をして目を逸らした。
野明は頬を微かに朱に染めて遊馬を上目遣いに見つめた。
「あの・・・それって・・・」
何か言いかける野明の声に被せるように「とにかく、気をつけろよなっ」というと遊馬は徐に腕時計を確認した。
既に午前3時半を過ぎていてそろそろ戻らないと出社に差し障りそうな時間になっていた。
野明に向き直ると、一度頭をくしゃっと撫でる。
「そろそろ行くわ。遅刻するとまずいからさ」
「うん 大丈夫? 寝てないんでしょう?」
心配そうな顔を見せる野明に「一日くらいならどうってことない」と軽く笑って見せた。
隊員室を出て車に向う間も野明の頭を軽く撫でる。
心地よさそう目を伏せる野明を横目で見ながらともすれば引き寄せてしまいたくなるのを大きく息を吐いて誤魔化すと彼女から手を離し車に乗り込んだ。
「気をつけてね」
「わかってる。お前も留守中しっかりやれよ。予定では来週の半ばには戻れることになってるから」
「うん。・・・待ってるね」
「了解。じゃ おやすみ」
「うん、えっと・・いってらっしゃい・・・」
野明の言葉に遊馬は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに意図を察した。
「いってきます」と返事を返して車を出す。
遠ざかる車を見送って野明も宿直室に戻ることにした。
遊馬の机に縋らなくても直に本人が戻ってくる、そう思うだけで気が晴れる。
夜は白々と明け始めていて野明は久し振りにすがすがしい気持ちで棟屋に入ると軽やかな足取りで宿直室を目指した。
go to next....
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追記
野明登場。
やっと顔をみて話ができました(笑)
でも 遊馬は時間のズレたシンデレラ状態で八王子に帰ってしまいました☆
焦れ焦れな感じですみません~
いちゃちゃな割りに先に進まない二人です(^m^)
お願い、石は投げないでね~!!
ではでは 続きはのんびりおまちくださいね~(^^)
ゆぴまま Eメール 2009年09月05日(土)22時43分 編集・削除
やれやれ、一安心。会えてよかったね、お二人さん♪
隊長もなにげに意地悪だなぁ、それとも隊長なりの愛のムチもとい後押しなんだろうか…