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トランキライザー

去年 拍手返礼用に書きかけて頓挫していたんですがオールナイト見に行った余韻で書き足してみました。
ちょっと暗いので苦手な人は回れ右で!

今日はこの後PCを開けないかもしれないので各種返信はちょっと遅れるかとおもいます。
暫しお待ちを!

ではでは 暇つぶしに見てあげようかなという方はこちらからどうぞ~★

続き

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トランキライザー
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「雨の日は嫌い」
そう言ったら彼は一瞬目を瞬いて「そうか」と言った。
雨の降る日が皆そうではないけれど嫌な事の有った日は大概雨が降っていた。
強い雨の降る晩に一人で部屋に籠っていると色んな事を思い出して眠れなくなる事がある。
今日もまたそんな一日だった。

昨夜から降りだした雨は段々と強さを増し今日になっても止む気配を見せなかった。
日中一杯降り続いた雨は今なお降り続きもうすぐ日付が変わろうと言う時間になって更に風の強さも増してきた。
『ただの低気圧』で『台風ではない』と天気予報は言うけれどその風雨の強さは昨年末にやってきた台風のそれよりも余程激しく 昼間は視界不良に起因すると思われる交通事故が頻発し帰棟する暇もない程忙しかった。
慌しく過ぎたデイタイムとは対照的に夜に入ると外出する人が減った為か事故の連絡がまばらになり人心地ついたのは深夜2時を回った頃。
宿直室で横になっても一度気になってしまった雨音が耳を打ち忘れかけていた不安を呼び醒ます。
意図的に忘れようとしてもそう簡単にきえてはくれない雨の日の苦い記憶。
その数々がフラッシュバックする様に脳裏に浮かび、何かの音に弾かれる様に身を起こすと一瞬で噴き出した汗で全身がぐっしょりと濡れていた。
荒い息を吐いて呼吸を整えようとすると部屋の扉が激しく叩かれた。
半身を起したまま何度も叩かれる扉に目を向けたものの湧き上がる得体の知れない不安と恐怖で身が竦み戸口に向かう事が出来なかった。
あの扉を開けたら何か怖い事が報じられる気がして身体が小刻みに震え小さく首を振ると一気に恐怖が増大した。
「やだ・・・」と呟いた自分の声が震えていてその事がますます混乱に拍車をかけパニックを起こす。
「嫌だ、嫌なのっ・・・」
口を吐いて出る自分の声に半ば錯乱し「いやあぁ!」と叫んで頭を抱えて蹲ると部屋の扉がバンっと激しい音を立てて開いた。
廊下の明かりを背に顔の見えない人物が何かを叫びながら部屋に駆け込んでくるのが見えると 先日二課棟に押し入った賊の姿とそれが重なり半狂乱になって悲鳴を上げた。
恐怖の余り無茶苦茶に振り廻していた自分の手が侵入者にあっさり掴み取られると狂乱状態に陥った彼女が金切り声をあげた。

侵入者に無理やり腕の中に引っ張り込まれて激しく取り乱した彼女の耳元に「野明っ!」と半ば怒鳴るような声が届く。
何度も叫ばれていたらしい自分の名前に漸く気が付くと「落ち着け」という低い声が耳元に響き自分を抱き込んでいるのが見知らぬ侵入者などでは無く唯一無二のパートナーであることにやっと気がついた。
「あ・・・すま・・・?」
一気に緊張が解け全身から力が抜けると呆けたように彼の名前を呼んだ。
ゆっくりと頷いて腕を解くとその場に崩れ落ちそうになる彼女に手を貸して布団に戻す。
気遣わし気な目を向ける彼に心苦しさを感じて俯くと優しく伸ばされた手が自分の掌を掴んだ。
そうされて初めて自分の指先が小刻みに震えているのに気がつく。
「あ・・・」
声を発そうとして手だけでなく自分の全身が見た目に判るほどに震えている事に激しく動揺し再びパニックになりかけると遊馬が黙って彼女を引き寄せた。
「傍にいてやるから 少し落ち着け」
背中を叩く大きく温かい掌の感覚に張りつめていた気が緩みそのまま引き込まれる様に意識を失った。
気を失う様に眠りについたパートナーを腕に抱いて彼は溜息と共に目頭を押さえギリッと奥歯を鳴らした。
胸の奥に去来するのは一番大変な時に傍に居てやれなかった後悔と無力な自分への悔恨。
出来る事と言えばこうして傍に居る事位しかなく、そうする事で少しでも不安が拭えるならと心が安らぐ様にと気持ちを込めて夜毎彼女を抱きしめる。
込める思いの半分は謝罪。残る半分は・・・まだ言えない。

fin
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追記

去年途中まで書いて放置していたんですよね
暗いネタだな~と思いつつ。
オールナイト見た後なのでちょっと纏める気になりました。
トランキライザーっていうのは 抗不安薬のことですね。
そうなりたいという気持ちを込めた心算でタイトル付けたんだけど本文に一切その単語が出てこないという(^^;
流石 無計画大王 さくらの駄文ですねぇ
次回はもう少し明るいネタを・・・努力します(笑)

コメント一覧

こんきち 2010年11月20日(土)23時16分 編集・削除

パトは雨の日に悪い事が起こる作品ですね、雨が嫌いになるのも分かります。
賊に入られた時の恐怖・自分の大事な人の傍に居られなかったときの気持ちいかほどの物だったんだろう
それを考えるだけで、読んでるほうも苦しくなります。

単語は出てこないけれど、雰囲気で分かりますから安心してください。
私なんてしょっちゅうです(自慢しない!)

非公開 2010年11月20日(土)23時21分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

さくら(こんきち様) 2010年11月21日(日)21時22分 編集・削除

>こんきちさま

そうなんですよね
雨の日にそういうネタが多いと言うか。
雰囲気を察していただけて嬉しいです~
暗い話になっちゃったのでUPしようかどうしようかちょっと悩んじゃったんですよね
コメントありがとう~!!

さくら(内緒様) 2010年11月21日(日)21時36分 編集・削除

>内緒さま

こういう面があってもいいかなと言って頂けて良かったです
遊馬って結構自分もメンタル面がそんなに強くない気がするんですよね、実は。
でも人に弱みを見せるのが嫌いなタイプなんじゃないかと。
だから意外と凹んでいる人間の気持ちは良く分かるんじゃないかと。
割と何でも背負い込むタイプだからこういう時ってものすごく自分を責めるんだろうなって思います。
でもそれを野明には黙って居たくて彼女の前では出来るだけ普通にしていいるみたいな。
希望が持てると言って頂けて安心しました~
次回はもう少し 明るい方向で頑張りたいと思います(^^)
いつもコメントをありがとうっ!