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不在37

何だかんだ言って 10月まるきり更新していなかったんですよね、連載(^^;
予告破りで申し訳ないですm(_ _)m
落書きばっかりしていた気がしますね~
ここ2ヶ月間

ものすごく頻繁にTOP絵だけ変更しまっくったという(笑)
でも本来当家は 「イラストサイト」なんだからそれが正しい姿よね! うんっ(^▼^;
これが終わったら その姿に立ち戻ろう!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

というわけで漸く更新しました
書き始めて足掛け2年目になってしまい夏の話なのに二度目の冬を迎えてます(^^;
終わる気満々なのに話を纏める能力に欠けている為にそこになかなかたどりつかないという
今年中に終わる気がしないので(だって遅筆だから★)せめて来年の夏は迎えない様にしたいというユルイ目標を立てて頑張りたいと思います~(ああ なんて自分に甘いんだ!!)

こんないい加減な管理人の駄文ですが暇つぶしに覗いてあげてもいいわ、というお客様はこちらからどうぞ~♪

続き

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不在 37
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SIDE-A&N(16)

急いで着替えた野明が待ち合わせ場所に決めたラボ前に戻って来た時 そこには既に私服に戻った遊馬と坂口の姿が有った。
小走りに遊馬に駆け寄ると野明はきょろきょろとあたりを見回す。
「二人だけ?浅月さんは?」
「直に来るよ 事務所に寄ってから来るってさ」
さらりと答えた遊馬に「そっか」と軽く頷き興味深そうな目を向ける坂口を見て野明は小さく首を傾げた。
「あの…何か?」
「あ・・いや いつも作業着だから。私服は初めて見たからね 雰囲気が変わるもんだな、と」
彼女の服装を眺め遣る坂口の目に野明が困った様な顔を浮かべると遊馬は軽く眉を顰めた。
ここひと月で身に着ける様になったワンピース。
明るい色合いのそれは快活な雰囲気の彼女に良く似合っていたし就業中は匂いがコクピットに籠るのを厭い殆どする事が無い化粧もうっすらと施している。
それは確かに仕事中目にする事がない姿で新鮮であろうことは確かなのだが遊馬は聊か面白くない顔をしながら言外に『ジロジロ見てんじゃねぇよ』と坂口に半眼を向け彼女を軽く引き寄せた。
その視線に坂口が大仰に肩を竦めると遊馬の後ろから苦笑を含んだ声が掛った。
「やぁ お待たせ。・・・って何かあったのか?」
「いえ 何も。じゃあ行きましょうか」
何でも無い風を装いながらさり気なく野明を坂口から遠ざける遊馬に浅月は目を瞬き小さな笑いをかみ殺した。

八王子駅近くの居酒屋に腰を落ち着けるとビールとつまみをいくつか注文する。
運ばれてきたジョッキを手に浅月が「お疲れ様」と乾杯の音頭を取った。
小気味良い音を響かせジョッキを合わせると 渇いた喉を潤すように各々中身を呷り一息ついたところで浅月がまず野明に声を掛けた。
「今日は突然悪かったね。予定 あったんじゃなかったの?」
「予定・・・っていうか」
野明は頬杖を吐きながら微かに非難の色を含んだ瞳でちらりと遊馬を見遣った。
「貸しの回収をし損なっちゃっただけですから」
野明の態度にこめかみを軽くひくつかせた遊馬はバツの悪さを隠すように笑顔を顔に貼り付かせる。
「ちゃんと埋め合わせはするって」
小声で耳打ちする遊馬に「どーだか」と応じた野明はつんとそっぽを向いた。
「その話は後で聞くから取り敢えず今は機嫌直せよ」
困った顔で言う遊馬に野明は堪え切れずにくすくすと笑いくるりと彼を振り返った。
「仕様が無いなぁ、今回は証人が二人も居るんだから適当に誤魔化したりしないでよね」
「へいへい。約束するよ チョコパフェでも何でも必ず奢る。それでいいだろ?」
「言ったなぁ、絶対だからねっ」
言質を取り満足気な笑みを見せた彼女に成り行きを見守っていた浅月と坂口は一様にほっとした顔を見せた。

「・・・泉さん パフェとかお好きなんですか?」
「好きですよ。坂口さんは苦手?」
「苦手って言うか・・・食べないですね」
苦笑いする坂口に野明は「ふーん」と言って思案顔を見せる。
「遊馬も食べないよね、パフェ」
「そうだな」
「美味しいのに。男の人って皆そういうの嫌いなのかなぁ?」
小首を傾げる野明に浅月が「うーん」と腕を組む。
「俺は好きでも嫌いでもないけど、人によるんじゃない?でもわざわざ注文して食べたりはしない・・・かな」
「注文しないで何時食べるんですか?」
「何時って・・・そりゃ・・・」
少し困った顔をした彼を見兼ね遊馬が横から口を挟んだ。
「食わされた事があるって事だろ。頼んでもいないのに『ほら 一口食べてみなよ』って勧めるやつがいるとさ」
声色まで使って言う遊馬に野明はムッとした顔を向けた。
「勧めても食べない癖に・・・」
「たりめーだ、馬鹿。あんな甘ったるいもんが食えるか」
「甘さ控えてる店だってあるんだよ?」
「却下。甘いことには変わりねぇよ」
「だから美味しいのに・・・」
「嗜好の違いだな」
にべもない口調で言う遊馬に口論で勝てるとは到底思えず野明は拗ねた様子を見せる。
「・・・意外だなぁ」という声に振り返ると坂口が野明に興味深気な目を向けていた。
きょとんとした顔で振り返った野明は『何かしたかな?』と軽く首を傾げた。
「泉さんのそういう顔初めて見たなと思って」
「もう、坂口さんまで小馬鹿にしてっ」
頬を膨らませてそっぽを向く彼女に坂口は笑いを噛み殺した。
「いや そうじゃなくて。可愛らしいなと・・・」
「はい?」
予想外の返答に野明の動きがぴたりと止まりぽんと顔が朱に染まると面白くなさそうな顔をした遊馬が彼女の額を軽く小突いた。
「んなお世辞に一々反応してんじゃねぇよっ」
「・・・だって言われ慣れてないんだもん」
小さな声で抗議する彼女に半眼を向けた遊馬はぼそぼそと反論する。
「・・・人前で言えると思うか?」
「珠には言ってくれてもいいじゃない」
「言って欲しけりゃ後で幾らでも言ってやるよ。とにかく人前でだけは却下っ」
「ケチ」
「・・・あのなぁ・・・照れくさいんだよ・・・馬鹿」
小さな声で言い訳する遊馬に野明はきょとんとしたあと目を瞬き次いで吹き出すように笑った。
「思ってくれてないわけじゃないんだ?」
「・・・聞くか?」
仏頂面を見せる遊馬に悪戯が成功した時のような笑みを向けた野明は「・・ったく」と小さく舌打ちした彼を擽ったそうな顔で見遣った。
「・・・ほんっとに仲良いんですね」
半ば呆れた様な声に二人が揃って振り返ると苦笑いした浅月と会話に置いて行かれた格好になって少し拗ねた顔ををした坂口の姿が目に入った。
「あちゃ」と小さく舌を出した野明に遊馬は「ほら見ろ」とばかりに頬杖をついて半眼を向ける。
「今更って気もするけどね、坂口。篠原は最初から泉さんにベッタリだったじゃないか」
「ベッタリって・・・」
しれっという浅月に遊馬はバツの悪そうな顔をすると頬を仄かに染めて俯く野明を見遣り『実際 そういわれても仕方がないか』と小さく肩を竦め話題を切り替えた。
「まぁ それは兎も角、本題に入りましょうか。俺たちは何を話せばいいんですか?」
「そうだな。デートの邪魔して挙句成果なし、その上後日持越しなんてことになって馬に蹴られるのもご免だしね?」
浅月がチラリと目線を向けると野明は引きつった笑みを浮かべ恥ずかしそうに少し目線を逸らした。

「まず基本的なところから聞こうかな。今後の方針を決めたいってのもあるから気を使わないで率直な意見を頼むよ、二人とも」
「了解しました。けど そうすると結構辛口ですよ、俺」
遊馬はニッと笑い二人を見遣る。
「耳に痛いのは覚悟の上だよ、今後の為にはその方が助かるしね。泉さんもいい?」
「えっと・・・あの・・・はい」
返事をしながら遠慮がちに視線を向けた彼女に気づき坂口はバツの悪そうな顔で「反省しましたから 昼間のようなことはしませんよ」と苦笑した。
遊馬の方をそっと伺い『いいんじゃねぇの』と目だけで笑いかける姿にほっとすると野明はコクンと小さく頷き正面に向き直った。
「こっちから何か言うっていうのもやり辛いんで質問に答えるっていう感じでいいですか?」
「そうだね。そうしてもらおうかな。じゃあまず 二人から見て坂口のパイロットとしての腕をどう思う?」
いきなり直球で来た自分に関する質問に坂口の顔に緊張が走る。
少し考えてから遊馬が先に口を開いた。
「俺は・・・能力そのものを評価するなら悪くないと思いますよ。ただ斑っ気が大きい。これはテストパイロットをやるには大きな欠点だと思います。野明はどう思う?」
「えっと・・・基本的には遊馬と同じ・・・かな。パイロットとしての資質は問題ないと思うんです、けど・・・」
「けど?」
言い淀む彼女に浅月が先を促すと少し申し訳なさそうな顔をしながら先を続けた。
「テストということを考えるなら少し操作が大雑把というか・・・」
「なるほど。じゃあ 次は俺のことを聞こうかな。指示を出す側としてはどうだろう?」
彼の質問に遊馬は軽く腕組みをして難しい顔で同じように回答に困っている野明に首を巡らせた。
「お前は指示、受けてみてどうだった?」
「どうって・・・」
振られて少し悩んだ後 野明は聊か困った顔をして小さく首を傾げた。
「これといって悪いところはないよ、タイミングも合ってるし。・・・ただ 遊馬とは違うよね」
「そりゃそうだ。俺らには俺らの呼吸というかタイミングがあるからな、でもこればっかりは・・・」
「浅月さんが遊馬の真似をしてもきっと上手くはいかない・・・よね?」
顔を伺うような目線を送る野明に遊馬は『よくできました』と言う様に口角を上げにっと笑う。
「そういうことだな、俺の指示のタイミングはお前に合わせたものだから同じやり方では坂口には合わない。野明以外に指示を出すときには俺も相手に合わせて出し方を変えなくちゃならないって訳で。でもそれは受ける側だって同じことだろ?」
「そうだね。遊馬と浅月さんでは指示の出し方もタイミングも違うから・・・やっぱり少し受け方が変わってる・・・のかなぁ」
「当然だな、お前がそれを意識してるかどうかは兎も角としてさ」
「そう・・・だよね。でも これじゃ私たちから二人に教えられることって・・・何も無いじゃない?」
「それがそうでもないんだぜ?」
困った顔を見せる彼女へ遊馬が少し得意気な笑みを向けると彼の言わんとしている事を図りかねた野明は小さく首を傾げた。
「えっと・・・?」
「要するに俺達みたいにコンビを組む相手が固定されてる場合とそうでない場合ではまず対応に差があるって事だよ」
「例えば野明、お前が香貫花の指揮を受けたとして俺と組んでる時と同じように動けるか?」
「それは・・・」赴任当初の失態を思い出し思わず眉間に皺を寄せた野明は聊か不貞腐れた口調で「前よりはマシだと思うわよ・・・」と恨みがましい目を彼に向けた。
彼は苦笑いしながらその頭をクシャリと掻き回す。
「拗ねるなよ、そういう事言ってんじゃなくてさ、実際のところどう思う?」
「状況によるんじゃない?平常時とかこういう試験の時だったら打ち合わせ次第だと思うけど・・・」
「咄嗟の判断を要する場合はその限りじゃない、って事だよな。・・・何故だと思う?」
「それは・・・」
言い淀む彼女に遊馬は頬杖をつきながらにんまりと笑う。
「つまりさ そこが信頼関係な訳だろ?『俺はお前にできないことは言わない』、『俺の指示には根拠がある』、お前がそれを信じてくれてるから咄嗟の時でも瞬時に指揮に従えるんだ。その事を殊更意識することなく、な。けど 香貫花とお前の間にはそこまでの関係が出来上がってない。だから突発事項が起きた時や想定外の指示を出された時に疑問や反発が生じるんだ。それが反応の遅延にも繋がる」
「・・・そう・・・だね」
「じゃあ 次にお武さんだ。彼女の指揮下に入った場合ならどうだ?」
「それは・・・」少し申し訳なさそうな顔をしながら遊馬を見遣り彼女は小さく肩を竦めた。
「純粋に『作業効率』って話なら・・・寧ろ・・・」
「優秀になる位だろうな。ただし・・・お前自身に判断の自由は殆ど無い」
コクリと頷く彼女に遊馬は苦笑いして見せた。
「お武さん自身の持つ非の打ち所の無い有能さをお前自身が認めている上、相手から出されるのは至れり尽くせりの指示内容。否を唱える隙すら見つけられないだろう?或いは隊長よりも逆らい難いものを感じてるんじゃないのか、お前」
「否定はしないけどね。でも・・・それは私の熊耳さんの関係であって、私と遊馬がそうであるように太田さんと香貫花や熊耳さんの間にもそういう信頼関係があるってことだよね?」
「まぁ そうだろうけど。向こうとこっちじゃその在り方も随分違うんじゃないか。指揮を出す側として常に上に立ちたい香貫花に対して太田は彼女を同格に見ていた節があるだろ?だから上手く抑えが効かずに暴走しちまうことが少なくなかった。これに対してお武さん、太田は基本彼女に頭が上がらない。それは階級差も去ることながら太田自身がお武さんの能力を高く評価していてその指示に従うことを良しとしている部分があるからだ。・・・けどお武さんはそうじゃない。もちろん太田を評価してない訳ではないだろうけど、あいつの暴走を常に警戒しているし、それを未然に抑える事に注意を注いだ指示の出し方をしてる。となれば自然その指示内容は沈着冷静、理路整然でかつ至れり尽くせりなものになる。太田の言うところの『臨機応変な現場の判断』を差し挟む余地を極力無くす為にな」
「あ・・・だから・・・」
「そういうことだよ。けど咄嗟の時には合図一つで相手の意図を察して動けることもあるわけでそこはコンビ故のもんだろ?もっとも暴走した太田が服務規程違反起こしてリボルバーぶっ放す事の方が遥かに多いんだけどさ。・・・で ここで本題な。お前の身近でフォワードに指揮を出してる人間が3人いるわけだが、この中で普段通りのやり方を貫く事を前提とした場合誰の指示が一番汎用性が高いと思う?」
「えっと・・・」
少し混乱した様子を見せる野明に遊馬は苦笑して言い方を変えた。
「要するにさ、簡単に言えば初対面の人間に親切な指示の出し方ってどれだ、って事」
「それなら・・・熊耳さんじゃないかな」
「そうなるよな、指示も説明も至れり尽くせり、パイロットは取り敢えずその指示通りに動いていれば間違いなく作業が完了する。最初はそういう所から初めて段々互いの呼吸を掴んでいくってのが順番としては正しい。俺だって最初はそうだったろ?」
「え?そうだったっけ」
「そうだよ、お前 中身にゃ興味はねぇし、外装に疵がつくのを異常に嫌がるし・・・」
思い出し笑いをする遊馬に野明は拗ねた顔で「そういうこと蒸し返さないでよね」とつんとそっぽを向きその様子に吹き出すように笑いながら遊馬は目線を正面に向けた。
「さて 何かヒントになりました?」
興味深げな顔をしている浅月と坂口を等分に見遣り遊馬が小さく笑うと二人は一瞬顔を見合わせた。
「要するに・・・俺が篠原をそっくり真似たとしても同じ結果は得られないってことだよな」
「そうなりますね。基本的な事ですけどこの手の試験では指示を出す側は内容と目的を正確に把握してそれをキチンと乗り手に伝えて意識させる必要がある、と俺は思ってます。仮に乗り手に試験内容に関する予備知識が全く無かったとしても目的の動作を完遂させるに足るだけの指示が出せる用意はして置きたい、ともね」
「成程」
組んだ両手に顎を乗せ神妙な顔をする浅月を見遣り 昼間の様子を思い返した坂口も聊か思案深げな表情を見せた。
「泉さんは・・・試験仕様書だけじゃなくて評価仕様書にも目を通してるんですか?」
「えっと・・・それは今回からで。前回は試験仕様書にしか目を通してなかったです」
少し居心地が悪そうな彼女の様子に坂口が目を瞬くと野明は『困ったなぁ』という顔をして小さく肩を竦めた。
「正直 前回は試験仕様書も試験前に目を通してただけでその試験がどういうものなのか、何のための物なのかということまで意識が行ってなかったんです。普段の・・・二課での勤務と同じように考えていて。模擬戦の時ですら それが何を示し、何と繋がるのか、結果がどういう意味を持つのかなんてちっとも考えてなくて、遊馬の指揮に頼り切ってた。それが分かったのは全部終わった後で・・・その時すごく反省したんです。だから 折角またこういう機会を戴いたんだから今度は後悔しないように出来ることはちゃんとしようと思って」
「反省・・・ですか?」
怪訝な顔をした坂口に野明は微苦笑を向けた。
「ええ。何も分かってなかったんだなって身に染みちゃったから。今回はちゃんと勉強しようって決めたんです。その分 基本中の基本みたいなところから質問攻めにあった遊馬は大変だったでしょうけど?」
「んなもん 手間の内に入るか。そんなことより そういう方面にお前の意識が向いたって事の方が成果がデカイ。それに そういうのが分かると操作の仕方も変わるだろ?」
「そうだね。一つ一つの試験が持つ意味や繋がりが分かると・・・一連の試験動作の中で意識するポイントがどこなのかって事がハッキリするから精度も上げやすいし、遊馬の出す指示とかタイミングの必然性が分かる。そうするとただ漠然と指示に従ってた時より断然モチベーションも上がるしね」
「そういう意識は大事だよな」
満足そうな顔の遊馬に「偉そうなんだから」と笑みを返す彼女を見て坂口は肩を竦め大きく息を吐き出した。
「要するに・・・俺はそういう意識に欠けてる、ってことですよね」
「さぁな、それは自分が一番良く分かってることだろ? さっきも言ったけど技術的な事だけをいうならお前の腕は悪くないと思う。けど 気分による精度の斑が大き過ぎるんだ。まずはそれを直さないとこれから先辛いぜ?」
沈んだ表情を見せる彼に野明は言葉を選びつつ穏やかに声を掛けた。
「人なんだから感情があるのは当然ですよね。けど、自分の仕事に誇りを持つ事が出来たらきっと集中力の斑って減らせると思いますし、勉強するのも楽しくなりますよ。それから・・・周りの人 ハードやソフトにかかわってるスタッフや解析を担当する人たち、それと・・・指揮を執ってくれるパートナーを信じてください。こういう環境だと毎回同じ人とは限らないかも知れないけど。互いに不都合があれば提案したり相談したりしてちゃんと信頼関係を築くことが出来れば絶対上手くいきますよ」
「技術的なことには・・・自信を持っていた心算だったんですけどね、これでも」
苦笑いした彼に野明はにこっと笑う。
「いいんじゃないですか、それは。坂口さんのパイロットとしての資質は遊馬だってちゃんと評価してるもの。でもこういう仕事はフォワード一人じゃ出来ないし、チームみんなで協力しなくちゃいいいけない種類のものだって そういうことじゃないのかな」
「成程ね」
少ししゅんとした様子で頬杖をつく坂口に微苦笑を向けた野明は『こんな感じで良い?』と問いかけるように遊馬を振り仰ぐ。
『いいんじゃねぇの』と言外に告げながら好まし気な笑みを返す遊馬に彼女はほっとしたように小さな笑みを浮かべた。
「で・・・あとは浅月さんなんだけど。野明は何か気づいたことあるか?」
「気づいたことっていうか・・・昼間も言ったんだけど指示を出す時もっとビシッと言っちゃってもいいんじゃないかなって」
「成程、それは俺も感じたな。浅月さんの指示の出し方って口調が柔らかい所為もあるけど遠慮がちに聞こえるんだよな、周りの顔色見ながらおっかな吃驚指示を出してるような印象を受けるというか。・・・なんかさ、香貫花が帰国した直後に太田の指揮執ってた進士さんを思い出すっつーか・・・」
苦笑いする遊馬に野明は呆れた顔を向けた。
「・・・あそこまでテンパってはないんじゃない?」
「程度問題だろ?印象的には似たようなもんだって話。要するにさ 指示を出す側のスタンスがハッキリしてないと実働側は不安になるだろ、それがテストであれ災害現場であれ、さ。だからバックアップ側としてはハッタリでもいいから自信満々にしてた方がいいってこと。その方が安心感 あるだろ?」
「偉そうなのと自信有り気なのが同義かどうかは別として・・・ね?」
悪戯っぽい目で軽く舌を出す彼女の額を「生意気言ってんじゃないっ」と遊馬は軽く指で弾き浅月の方を振り返った。
「こっちの持った感想って大雑把にこんなところなんだけど。他に何か聞きたいことってありますか?」
「聞きたいこと・・・かぁ。坂口は何かあるか?」
「耳に痛い話を沢山戴きましたしね、まずは謙虚に反省するところから始めますよ」
苦笑した彼に野明は少し困ったような笑みを向け小さく肩を竦めた。
「偉そうな事言っても 私だって漸く真面目に勉強始めたばかりなんで大差ないんですけどね」
「それでも俺は・・・勉強だけじゃなくまずは人間関係の改善から始めないといけない分 分が悪い」
「それが判っただけでも上等じゃないか。あとは本人の努力次第だろ?技術的な面はさ 野明よりお前の方がシュミレータ搭乗経験は豊富なんだから寧ろ一日の長があるんだし、後は誠意見せるしかないだろうな。まぁ がんばってくれよ、俺ら今回は残業制限あるし、定時後の作業はそっちに掛かってるんだから」
しれっと言う遊馬に浅月と坂口は「肝に銘じとくよ」と苦笑いを返した。

話が仕事から離れて雑談に移行すると軽口を叩き合う野明と遊馬を興味深げに見ていた坂口が頬杖をつきつつ幾分酔いの回った口調で問いかけた。
「・・・俺 二課の編成って良く知りませんけど指揮担当ってどうやって決めるんです?」
「辞令。当然だろうが、好き勝手にコンビを入れ替えてたんじゃ仕事になんねぇだろう。二課の場合は各小隊長が決定権持ってんの。それがどうした?」
「さっきの話だと指揮担当者って他に何人もいるんでしょう?なのになんで篠原さんはずっと泉さんのパートナーのままなんです?」
坂口の質問に遊馬はフンと鳴らして半眼を向け、にやりと人の悪い笑みを浮かべると徐に野明の肩を引き寄せた。
「答える義務はないけどね、そんなの俺が一番上手くこいつの指揮執れるからに決まってんだろうが」
明らかに酔いの回った彼の様子に野明は小さく眉を顰める。
「ん、もうっ こーら、この酔っ払いっ」
「酔ってねぇよ」
「酔ってるってばっ」
「あ~ うっせ。第二小隊の配置にミスキャストはねぇって隊長も言ってただろうが。適材適所の結果だろ?最初にコンビを組んだときから俺らはベストパートナーだよ、ずっとな」
「・・っ ちょっと 遊馬 耳やめてよっ」
軽く耳に息を吹きかける遊馬に野明が身を捩って抵抗すると彼はクックッと愉しげに笑いながら手を離し、耳を押さえて恨みがましい目を向ける彼女を見て小さく吹き出した。
「外ではこれ以上やんねぇよ。いい顔見せてやんのも癪だしな」
「外では・・・って篠原、お前・・・」
野明以上に顔を赤く染めた坂口が思わず口籠もるとにやりと笑った遊馬が得意気な目で彼を見遣る。
「こいつは俺のパートナーだからな、お前にそんな顔される謂れはねぇよ、悔しかったら自分のパートナーとやってくれ」
「もう!遊馬っ そういうこと言わないでってばっ」
しれっと言って退けた遊馬に野明が慌てて抗議すると坂口と浅月は目を瞬き次いでがっくりと肩を落とした。
「自分のって・・・俺 坂口とそういう方向目指す心算ないし・・・」
「俺だってありませんよっ、そんなもん・・・」
「えっと・・・その必要はないと思います・・・」
こめかみを押さえて首を振る二人を見て野明は顔を真っ赤に染めたままそっと目線を外した。

もうじき日付が変わろうと言う時間になって店をでる。
ほろ酔いを遥かに通り過ぎ呂律の怪しくなっている遊馬を気にしながら素面に近い雰囲気で少し困った顔をした野明が歩調を合わせて彼の隣を歩いていた。
その脇には同じく酔いのまわった坂口とそれよりは幾分マシなもののやはり酒の回った浅月。
男性3人の酔っ払いを従えた野明は溜息と共に小さく肩を竦めた。
「お二人とも大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、泉さんは・・・平気そうだね」
乾いた笑いを見せる浅月に苦笑いを向けた彼女の首へ手を回し遊馬が半眼でクダを巻く。
「こいつはね、ザルなんですよ、ザル。つられて同じペースで飲むと後悔しますよ」
「もう、遊馬ぁ、またそういう事言って。・・・本っ当に酔っ払うと性質が悪いんだから・・・」
「・・・何か言ったか?」
「いーえ 何にもっ。それよりちゃんと歩いてったら。支えるの大変なんだからねっ」
呆れた顔で溜息を吐いた野明は「ほらほら」と首からやんわり腕を解き手伝おうとする男性二人を邪険に振り払う遊馬の身体を脇から支えた。
駅まで辿り着くと「お気をつけて」と挨拶をする彼女に浅月と坂口は戸惑う様な目を向ける。
「えっと 泉さんたちは?」
「出向期間中はシノハラの方でこのそばに部屋を借りていただいてるのでそちらに戻ります」
屈託なく答えた彼女に浅月は「そうだったね」と得心し困った様に首を傾げた。
「それはいいんだけど その状態の篠原連れてって・・・平気かい?なんならマンションまで・・・」
『送ろうか』と言う言葉を遮り野明は苦笑した。
「近いので平気ですよ。それに・・・送ってもらった後二人がちゃんと電車に乗れたか今度は私が気になっちゃいますから。それより 早く行かないと電車行っちゃいますよ?」
「ああ・・・うん」
渋々頷く二人に遊馬はにんまりと笑って見せた。
「こっちのことはご心配なく。俺もついてますから」
「その篠原がこの状態だから心配なんじゃないか」
「妬きもちなら聞きませんよ。こいつは俺のですから。ほら もう電車きますよ、行ってください」
苦笑いした浅月に遊馬はしれっというとひらひら手を振り後ろ髪引かれる思いでチラチラと振り返る二人を改札の向こうへ追いやった。

ホームへと向かう階段に二人の姿が消えると野明がほぅと小さな溜息を吐いてチラリと遊馬の横顔を盗み見る。
思いがけずこちらを見下ろした彼と目線がぶつかり彼女が目を瞬くと小さな笑みを漏らした遊馬はゆっくりと身体を起こして背筋を伸ばした。
緩く首を振りこめかみを軽く押さえると彼の身体を担ぐ様に支えていた野明の肩を抜き 改めて細いその肩を抱き直す。
「行こうか」と声をかけるとゆっくり歩き始めた。
「・・・まったく 歩けるなら最初からちゃんと歩いてくれればいいのに」
少し足元が覚束ないとは言え危なげなく自力で歩く遊馬を横目に野明が恨みがましい目を向けると彼は悪びれた様子もなく口の端に笑みを浮かべた。
「ばぁか。俺が真っ当に歩いてたらお前 坂口支えて歩いてただろ?」
「え?」
きょとんとした顔をする彼女を見遣り遊馬は不満気に顰めた顔を彼女へずいっと近づけた。
「お前はそういう奴なんだよ。心配するこっちの身にもなれ」
「・・・はいはい。まぁったく 妬きもち妬きなんだから」
『しょうがないなぁ』という顔で肩を竦める彼女に半眼を向け遊馬は呆れたように溜息を吐く。
「当然の反応だと思うけどね。じゃあ お前 俺が目の前で酔っ払った女に肩に貸して歩くの見て平気か?」
「・・・それは 相手に寄るんじゃない?」
少し不貞腐れた顔で目を逸らす彼女に遊馬はニヤニヤしながらしれっと嘯いた。
「嘘つけ。仮にそれが南雲隊長やお武さんであっても『我慢できる』だけで『平気』だとは思えんがね。まして篠原の女性職員とか学生時代の知り合いだったりしたら後で派手に落ち込むクセに」
「・・・そんな事・・・」
「あるさ。先月だって食堂で女連中に絡まれただけで凹んでたもんな?判ったら少しは行動に気をつけてくれよ。まして あいつは・・・」
言いかけて言葉を止めた遊馬はチラリと彼女の顔を伺い目を瞬くその様子に『やれやれ』という気分で天を仰いだ。
「あいつは何よ?」
「・・・何でもねぇよ」
「何でも無くはないでしょ、気になるじゃないっ」
「いいんだよ、お前は気にしなくて」
頬を膨らませて不満気な口調で問う彼女に遊馬は『少しは察しろ、馬鹿っ』と内心悪態を吐きながら赤みの強いショートヘアをくしゃくしゃに掻き回し盛大に肩を落とした。

マンションまで後少しと言うところまで来て野明はチラリと遊馬の顔を振り仰ぎ「ねぇ」と声を掛ける。
暫く黙っていた彼女の呼びかけに遊馬は軽く目を瞬いて肩越しに彼女を振り返った。
「ん?」
「約束」
じっと上目づかいで見詰める彼女に『なんか 約束したっけか』と一瞬考え直ぐに内容を思い出すとクスリと笑って彼女の頭をクシャリと撫でた。
「・・・ああ 夕飯とパフェだっけ。忘れてねぇよ、心配すんな」
「ならいいけど」
軽く目を閉じ少し不満の有りそうな声で応じた彼女は両手を遊馬の身体に回すときゅっと抱きつく。
その胸元にそっと頬を寄せ彼女はふぅと大きく息を吐いた。
「今日 遊馬の部屋に泊ろうっと」
拗ねた声音で言う彼女へ遊馬はきょとんとした顔を向け不思議そうに野明を見遣った。
「・・・今更何言ってんだ?こっちに来てからずっとそうしてただろ」
「そうだけど。でも 特に今日はそういう気分なのっ デートふいにされちゃった分一杯甘えてやるんだからっ」
声音に反して嬉しそうにじゃれつく彼女に遊馬は一瞬瞠目したものの直ぐに表情を緩めた。
「そうしたいならすればいいけどさ、デートの件は土日で穴埋めしてやるから機嫌直せよ?」
「本当に?」
「本当だよ、約束する」
「なら しょーがないから機嫌直してあげる。遊馬の奢りだって事も忘れないでよ?」
「へいへい。今回は借りが嵩んじまったしそれなりの覚悟はしとくよ。・・・とはいえ常識の範囲内だからな?」
「判ってますって。じゃ 急いで帰って髪と服に着いたお酒やたばこの臭いサッパリ落として早く寝ちゃおう」
身体に抱きついたまま歩速を上げようとする彼女に遊馬は軽く目を瞬き「現金な奴だなぁ」と苦笑しつつも細い肩に軽く手をまわし彼女に合わせて少しだけ歩みを速めた。

go to next....
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追記

期間あけまくった割に ちっとも話が進んでいなくてごめんなさい(^^;
次回はもう少し話を進めたいと・・・

今年も残すところ一ヶ月半ですよ
早いものですね~
最近急に冷え込んできましたが皆さまお身体に気をつけて!

ではでは すっかり亀もびっくりのノロノロペースの更新になってしまっていますが頂きますコメントや感想に支えられて頑張ってます~
ぜひぜひ お時間有りましたら一言頂けますと次書く気力に変えますので どうぞよろしくお願いします(^^)
続きをなるべく早くUPできるように頑張りますね!

コメント一覧

日咲 2010年11月16日(火)09時49分 編集・削除

メールに感想を書くのを忘れましたぁ~
なので足跡だけこちらに。
また定期便にていろいろ書かせてもらいますね♪

さくら(内緒様) 2010年11月16日(火)14時33分 編集・削除

>内緒さま

おお 久々にこちらへと思ったら(笑)
了解で御座います~
では後のほど 楽しみに(^m^)

瞳子 2010年11月16日(火)20時38分 編集・削除

はい。そこの二人。のあすまを見て自分たちも当てはめてヘンな想像しない!(≧m≦)
オオカミくん、ウサギちゃんのお願いは聞いてあげないと大変だぞ。ヤキモチ妬きのウサギちゃん、拗ねちゃうぞ。食べられないぞ(←オイッ)
さくらさん、時間は気にせず、のんびり行きましょうね。自分が納得できないものをUPしても後悔するだけですから。

こんきち 2010年11月16日(火)22時04分 編集・削除

野明ちゃん、デートは横やり入ってダメになっちゃったけどその分きっちり遊馬に払って貰いましょう。
って今夜はお泊りですか、どうぞお気をつけて。
本職の作家さんじゃないんですから、時間は気にしないで書ける時に書いたほうが良いと思います。
私も夏の間と言っておきながら、終わったの今ですし。

別件
西行楼、最終話送りました。
またお時間時にでもお読みくださいませ。

非公開 2010年11月17日(水)00時00分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

さくら(瞳子様) 2010年11月17日(水)01時05分 編集・削除

>瞳子さま

あはは そうそう 変な想像しちゃいけませんね(笑)
ウサギは寂しがりな生き物なので愛情を持って飼わないと寂しさで死んじゃうんだぞ~(^m^)
オオカミさん 気をつけてねって♪

うん ありがとう~ マイペースにのんびり行きますね(^^)

さくら(こんきち様) 2010年11月17日(水)01時09分 編集・削除

>こんきちさま

ですね~ シッカリ払って頂かないと!
今夜はというか 今夜も、ですね(笑)
出向すると一緒にいる不良警官達です(おい!)

そうだよね~ のんびり行きたいと思います ありがとう!
例の物 受け取りました~

読んだら感想をメールしますね(^^)
いつもありがとう!!

さくら(11/17 00:00の内緒様) 2010年11月17日(水)01時23分 編集・削除

>11/17 00:00にコメント下さった内緒さま

おお きっちり00:00ですよww
なんか嬉しい!(何故?!)

遊馬開き直ってますね。
でも仕事はちゃんとしてるんですよ、真面目に(笑)
あ そこに反応して頂いて嬉しいです♪
絶対照れくさいですよね、遊馬は人前ではなかなか言えまい(^m^)

「外では・・・」って野明は恥ずかしいと思いますが遊馬は態とですよね、絶対。
坂口さんは折角 ちょっと良いなと思ったのにボディガードに一瞬で蹴り飛ばされた感じですよね(^^;
そしてガード対象はその事に気付いてないという・・・不憫だ(笑)

信頼関係は一日にしてならずって事ですよね(^m^)
何だかんだで遊馬は野明に甘いんですが野明だって遊馬に対する精神的依存度は高いんですよね。
少々 条件が厳しい状況でも遊馬が「お前ならいける!」って言いきってくれちゃえば気合が入り直すみたいな(笑)

お言葉に甘えてゆっくりでも何とか頑張りますね!
ありがとう~♪