8月に 切り番申告を下さった優菜様へ差し上げた小話です
UPしたつもりが公開設定を入れ忘れていたことにデータ整理していて気付きました(^^;
管理画面からは見えちゃうので気づくのが遅れたというお間抜けさんです☆
リク内容は追記でお知らせしますね♪
今回から試しにキリリクコーナー作ってみました(^^)
コーナーにするほど申告が無いんですが気分的な問題ですね~
ではでは本文は以下からどうぞ♪
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君の面影
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「犬、好きなのか?」
掛けられた声に振り返るとそこには自分より一つ二つ年上に見える黒髪の少年が立っていた。
ガラス張りのショーケース、その中に1,2匹づつ入れられた血統のよい子犬達。
それらを夢中で眺めていた彼女は声を掛けた少年の顔を色素の薄い青灰色の大きな瞳で見返した。
「うん、好き。ところで、あなた だぁれ?」
小首を傾げるその仕草は目の前の子犬そのもので少年は少しすれた目をして小さな溜息を吐いた。
「俺の名前何てどうでもいいけどさ、お前 一人か?」
「ちがうよ、ちゃんとお父ちゃんとおかあ・・・・」
言いながら辺りを見回した彼女は初めて両親の姿が近くに無い事に気付き話す声が途切れた。
不安そうに辺りを見渡す様子を見て少年は盛大な溜息を吐く。
「この店内に大人はいないぞ。尤もお前の両親がここの店員だ、とか言うんで無ければ だけどな」
少年が鳶色の瞳を眇めると今にも泣き出しそうな顔をした少女が踵を返して駆け出しかけた。
その腕を彼は素早く掴み「どこ行く気だ?」と少女に問うた。
「どこって・・・お父ちゃんたち探さないと」
不安を全面に押し出し泣きそうな顔で首を巡らせる彼女に彼は大きな溜息を吐いた。
「落ち着けって。要するに両親と逸れて迷子になった訳だな。で そうやって闇雲に走り出してこの広いショッピングモール内のどこをどうやって親を探すつもりなんだ?」
最近オープンしたばかりの首都圏臨海部に位置する巨大ショッピングモールの一角。
オープン直後の時間にペットショップに足を止める者は少なく閑散とした店内にいるのは店員と彼ら二人だけだった。
途方に暮れて俯く彼女の手を引き彼は「取り敢えずこっち来い」と店舗の外にある休憩用のベンチに足を向けた。
不安そうにしながらも物珍しそうにきょろきょろと首を巡らせる少女に彼は小さく肩を竦めその隣に無造作に腰を下ろす。
お世辞にも上機嫌とは言えない少年の隣でバツが悪そうに縮こまる彼女に彼は努めて普通に話しかけた。
「お前 両親と来たんだろう、何で逸れたんだ?」
「・・・犬・・・が見たくて・・・」
両親と一緒に店舗の前を通りかかった時 壁沿いに配置されたこの展示スペースが目に止まった。
可愛い子犬の姿に目を奪われ、両親の元を離れてショーケースに近づいた。
ほんの少し見て直ぐに戻る心算だったのについ、可愛いその姿に見入ってしまい、暫くそこに釘づけになってしまった。
両親は彼女が傍を離れた事に気付かず歩いて行ってしまったらしく今、目の届く範囲にその姿は見当たらない。
不安に襲われた少女が腰を浮かすと彼は黙ってその腕を掴んでベンチに引き戻した。
「こう言う時は下手に動かない方がいい」
「・・・どうして?」
「お前 ここに来たの初めてだろ?だったら お前が居なくなった事に気づけば十中八九両親が探しまわるさ。普通に考えたら自分たちが居る場所の周囲を探し終わったら、まず間違いなく通った道を逆に辿ってくる。土地勘の無いお前が下手に動きまわれば探しに来た両親と入れ違いになる確率の方が高くなるに決まってるからな。だから今はこの場から動かない方がいい」
極めて論理的に説明された内容に思わず圧倒された彼女が黙ってコクコクと頷くと少年はその頭をくしゃりと撫でた。
「そのうち探しに来るさ、大抵はね。判ったら大人しく座ってろ、付き合ってやるから」
ぶっきら棒に言う少年に彼女はきょとんとした目を向けコクンと大きく頷いた。
並んで待つ事暫し、程なく彼女は何かを思い出したようにポケットを探り個別包装された飴を2つ取り出した。
「はい」と言って差し出されたそれに彼が目を瞬くと彼女は「一緒に食べよう」と言って嬉しそうに笑った。
掌にのっかった『バター飴』をきょとんと眺める彼に少し不安そうな顔をして彼女が遠慮がち声を掛ける。
「・・・飴、嫌い?」
「いや・・・そう言う訳じゃ無くて。貰うよ、・・・ありがとう」
そう言って彼女の手から飴を受け取る。
期待に満ち満ちた少女の瞳に心中肩を竦めつつその封を切ると彼は思い切って飴玉をぽんと口に放り込んだ。
正直 甘いものがあまり得意でなかったものの嬉しそうに「おいしい?」と訊く彼女にとても『苦手』とは言えなくて「美味いよ」と答えると少年は目線を宙に泳がせた。
これと言って話す事もなく飴を舐め、暫く沈黙が続くとそれに耐えきれなくなった彼女が思い切って口を開いた。
「ねぇ どうして私がここに来たの初めてって判ったの?」
「・・・あんだけきょろきょろ忙しなく辺りを見回してりゃ 誰にでもわかるって」
問われた彼は呆れたように溜息をつき盛大に肩を落とした。
黙ったままでいると落ち込みそうになる少女に時折声を掛けながら暫くそこに座っていると 通路の奥から子供を探す声が聞こえて来た。
弾かれた様に顔を上げ辺りを見回し始めた少女に『お迎え』が来た事を察し 少年は少し考えてウエストポーチの中を漁ったものの気の利いたものは何も出てこなくて軽く顔を顰めた彼はズボンのポケットを両手で探った。
メインストリートを心配そうに名前を呼びながら歩きまわる夫婦を見つけぱぁっと明るい顔をした彼女に「親か?」と訊くと少女は大きく頷いた。
「ありがとう」と言って彼女が駆け出そうとすると 少年は「おい」と声を掛けてポケットから一枚の紙片を取り出した。
きょとんとした顔で足を止め首を傾げる彼女に「飴 貰ったからな。これやる」と言って彼が差し出したのは上端に細いリボンのついた少し厚手の紙。
一瞬考える仕草をした少女は満面の笑みを浮かべてそれを受け取った。
元気に手を振りながら親の元へ駆け戻る姿を見送ると少年はすっとその場を離れた。
「野明 ダメじゃないか、よそ見しないでちゃんと付いてこないと」
心配した様子で小言を言う両親に神妙に謝りながら後ろを振り返った野明は「あ」と小さな声を上げた。
今し方まで一緒にいた少年の姿はもうそこには無く辺りをきょろきょろと見回したものの彼女には彼の姿を見つけることは出来なかった。
寂しそうな顔をした娘の手に握られている紙片を目にした父が怪訝な顔で問いかける。
「それ どうしたんだ?」
「えっと・・・貰ったの。ここで一緒にお父ちゃんたちを待っててくれた子が居たんだけど・・・」
彼の姿を探して首を巡らせる我が子に「ふーん」と言いながら辺りを見渡し父は腑に落ちない顔を見せ「まぁ 見つかってよかったよ」と小さく肩を竦めた。
野明が黙って手の中の紙片に目を移すとそこには柔らかな色彩と特徴のあるタッチで描かれた綺麗な女性の姿が印刷されていた。
呆けたように手元の紙を見つめる娘を見た母は彼女の手元を覗き込み柔らかに笑った。
「それ、ミュシャの絵ね」
「ミュシャ?」
「そう 『アルフォンス=ミュシャ』って言う人の絵」
「へぇ・・・『アルフォンス』・・・カッコいい名前だね」
そういうと彼女はその紙を大切に自分のポケットに仕舞いこんだ。
後日近所で拾った雑種の子犬を『アルフォンス』と命名した彼女に父は「そんな面倒な名前じゃなくて『コロ』とか『ポチ』とか簡単なのにすりゃいいのに」とぼやいたりもしたが彼女は頑としてその名前を譲らなかった。
初代『アルフォンス』と死別した後 新しく家族に迎えた猫にも彼女はやはり同じ名を付けた。
『なにも同じ名前にしなくても』と両親は思ったものだが野明にとってその名前は少しトクベツで 忘れたりしない為にも大事なものにはその名を与える事に決めていた。
そうして猫とも別れ、上京した時自分の愛機となったレイバーにも彼女はまた同じ名を与えた。
暑い夏の昼下がり、昼食を終えた隊員室で野明が文庫本に目を通していると背後からポンと肩を叩かれた。
余りに集中していた為その気配を全く感じていなかった彼女は「ひゃあっ!」と大きな声を上げ、その声に驚いた遊馬は慌てて手をひっこめ面食らった顔で目を瞬いた。
「なんだよ、でかい声だして」
ムッとした顔のまま遊馬が彼女の手から落ちて床に散らばった文庫本に手を伸ばす。
外れたカバーと文庫本、そして抜け落ちた栞を纏めて拾い上げると「ほら」と言って野明に差しだす。
礼を言って受け取る彼女に遊馬は何気なく声を掛けた。
「その栞 随分年季入ってんのな」
すっかり色が褪せてしまったイラストと色が抜けて白っぽく変色した細いリボン。
一目で使い込まれてきたと判るそれに遊馬は微苦笑を浮かべた。
「ああ これ?もう15年位前のものだからね」
そう言うと野明は両手でそれを大切に包み込んだ。
「ミュシャか。好きなのか?」
「そうだね、ミュシャは好き。でもこの栞はちょっと・・・というか凄くトクベツなの」
「へぇ?」
少し厚手の紙でできた何の変哲もない栞を愛しむ様な目で見つめる彼女に遊馬は興味深げな目を向けた。
その顔をチラリと見上げ野明は遊馬に悪戯っぽい笑みを見せる。
「初恋の人から貰ったの」
「初恋って・・・15年ってことはお前そん時4つか5つって事だろ?幼稚園児のプレゼントか、それが。また随分・・・」
呆れた顔をする彼に野明は少しムッとした顔をしてツンとそっぽを向いた。
「何とでも。言っときますけど、これくれたのは1つか2つ位年上の男の子よ」
「一つか二つって・・・なんだそりゃ」
目を瞬く遊馬に彼女は顔に軽く朱を上らせ目を逸らすと小さな声でボソッと呟いた。
「・・・だって 一度しか会った事ないし。名前も知らない子なんだもん・・・」
「名前も知らないって・・・地元の知り合いじゃないのか?」
首を捻る遊馬に野明は懐かしむ目をして笑った。
「違うよ。迷子になった時にお父ちゃんたちが迎えに来るまで一緒にいてくれたお兄ちゃん。待ってる間 飴をあげたらお礼にってこれをくれたの」
「お前の1つ2つ上って事は そいつも幼稚園か小学1年かってトコだろ?その年でミュシャの栞とは随分マセたガキだな」
苦笑いして彼女の手から栞を抜き取ると目を眇めてその表裏をざっと眺めた。
経年劣化で色が相当に褪せてはいたものの栞の下方に書かれた文字は判別に困る事は無くそれが上野の美術館で行われた展覧会のチケットを兼ねたものである事に気付くと彼は軽く目を瞠った。
「この展覧会・・・俺 行ったな、多分」
ぼそりと呟いた彼の言葉に野明はきょとんとした目を向けた。
「そうなの?」
「ああ・・・それで・・・」
チケットを兼ねた栞。
美術館に行った時チケットを紛失した、と言った自分に祖父が大きな溜息を吐いた姿を思い出し少し考え込む。
手の中の栞は本来入館した際に切り取られる筈の捥ぎりの痕が無く右下に赤銅色に塗られた小さな三角形がそのまま残っていた。
「これ、上野のチケットだぞ。何だって・・・」
「だってこれ貰ったの 東京だもん」
「え?」
「だから 家族旅行で来た時、東京のショッピングモールで迷子になったの・・・って言わなかった?」
「・・・聞いてねぇよ、東京だなんて・・・」
言いながら眉間に軽く皺を寄せ考え込む彼に野明は小さく首を傾げた。
「・・・どうかした?」
「・・・いや、別に。どうせペットショップかなんかにフラフラ近寄って親と逸れたんだろ?」
「!・・・なんで知ってるの?!」
驚いた顔で目を見開く彼女に遊馬はチラリと天井を見上げたあと目線を戻してニヤリと笑った。
「ばぁか、判るんだよ、お前単純だから。今とやってる事変わんねぇじゃん」
「ひっどーいっ。そういう事言う?もうっ 返してよ、それ」
あからさまに拗ねた顔をして彼の手から栞を引っ手繰り、それを丁寧に文庫本の間に挟み込むと野明は遊馬に向かって思いっきり舌を出した。
一瞬きょとんとした顔をした遊馬は吹きだすように笑い、次いである事に思い当たりふと笑いを収めた。
「なぁ、もしかして『アルフォンス』って名前 そっから付けたのか?」
聞かれた瞬間、顔を真っ赤に染めた野明は「いいでしょ、別に」と言ってそっぽを向く。
「ふーん」と小さく呟いた遊馬は彼女の後ろ頭に小さな笑みを向けた。
「ミュシャなら・・・」
「え?」
「ミュシャなら来月 日本橋の百貨店でも展覧会やるみたいだし、見に行ってみるか?」
眺めていたタウン情報誌を指し示す遊馬に野明が不思議そうな顔で振り返った。
「遊馬 そういうのにあんまり興味が無いと思ってた」
「たまにはいいんじゃねぇの?何なら新しい栞、買ってやろうか?」
雑誌に目を落したまましれっという遊馬に野明は意外そうな目を向けた。
「何それ、妬きもち?」
「阿呆か、誰がんなもんに妬くか。馬鹿馬鹿しい」
ぐっと上体を逸らし椅子の背をギシッと鳴らすと遊馬は頭の後ろで両手を組んで大きく伸びをしながら彼女の方へ顔を向けた。
「で、行くのか 行かんのかどっちだ?」
「遊馬の奢り?」
「・・・入場料位ならな」
「けちーっ デートに誘うなら男性の奢りでしょ?」
悪戯っぽい目で拗ねた口調を作る彼女の頭を遊馬は呆れた顔で軽く叩いた。
「そりゃ付き合ってる相手の場合。行きたくないなら無理強いせんぞ」
「ごめん ごめん、行きます 行かせていただきますっ」
おどける彼女に半眼を向け、再び本を開いて栞を眺める野明へ遊馬は軽く頬杖をついた。
「へいへい じゃ そういう事で。ところでそれ、そんなに大事なのか?」
呆れ半分の目を向ける彼に野明は照れくさそうな笑顔を浮かべた。
「なんか大事に持ってるとまたあの子に会えそうな気がするじゃない?」
「15年も経ちゃ今逢っても判んないんじゃないのか」
苦笑いする彼に小さく肩を竦めた彼女はほぅと小さな溜息をついた。
「どうだろう?でももし逢えてもあの子が私を覚えてるとは限らないんだよねぇ・・・」
「さぁ それはどうだろうな?」
しれっと言う彼に野明は弾かれた様に顔を上げた。
朧気に覚えている黒髪と鳶色の瞳、そしてどこか偉そうで勝気な口調・・・今更ながらその全てがどこか彼に似てる気がして野明は目を瞬いた。
「ねぇ 遊馬・・・」
戸惑いながら掛けた声は始業5分前を告げるサイレンの音に紛れて消えた。
「取り敢えず仕事すっぞ」と声を掛け野明の髪をクシャリと撫でる彼の横顔。
そっと覗くとその顔はどこか愉しげで野明は言いかけた言葉を収め、その代わりに別のことを口にした。
「『栞』はいらないけど・・・折角だから何か記念になる物 買ってもらおうかなぁ」
「高価いもんは無理だからな」
間髪いれずに釘を刺す遊馬に野明はクスリと笑った。
「お礼に飴玉あげるから」
「・・・バター飴は勘弁しろよ、甘いの苦手なんだから」
ぼそっと呟かれた彼の言葉に野明は驚いて目を見開いた。
唖然とする彼女を横目に席を立った遊馬は「電算室行ってくる」と軽く後ろ手を振りながら隊員室を出て行く。
その背中を見送りながら野明は改めて色褪せたリボンのついた栞を眺める。
『赤い糸って・・・あるのかなぁ』
そんな事を考えて野明は眉間に軽い皺を寄せた。
fin
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追記
優菜様から頂いたリク内容は「小さい頃の のあすまが顔を合わせていたら。イチャラブで」でした(^^)
イチャラブかと言われると微妙ではあるんですが 心やさしいリク主さまがこれでOKをくださいましたのでこんな感じで♪
申告本当に有難うございましたっ!
これからも どうぞよろしくお願いいたします~
非公開 2010年09月15日(水)22時44分 編集・削除
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