25周年に向けて続々リリースされるパト関連商品にワクワクしつつどこから資金を捻りだそうかこそこそ画策しております(笑)
このまま盛り上がってくれるといいなぁ♪
いよいよ 8月も下旬に入りましたね~
夏休みもあと10日程だっ!
頑張って乗り切るぞぅ★
さて只今 青山にて絶賛開催中の高田明美さんの個展。
明日 22日はご本人もいらっしゃる予定とか!!
みた~い 会いたい~!!
子連れには辛いですけどね(^^;
行かれる方いらっしゃいましたら 愉しんで来てくださいね
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ではここからは連載のお話です
気付けはシッカリ 一カ月あいてしまいましたね(^^;
夏休みになると今まで以上に書く時間がぁぁ ってツイッタを控えればいいんですけどね、でも情報も沢山手に入るし何より愉しいので止められない意志の弱さ
だめ主婦ですね、本当に(T▼T)
今回はお持ち帰りのその後ですね~
あ でもやっぱり反転はしないですよ、ご期待に添えなくてすみません~ってそんな期待してる人はいないか(笑)
と言う感じではありますが読んであげようという心の広いお客様は畳んでありますので以下からどうぞ♪
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不在 34
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SIDE-A&N(15)
寮に駆け戻った野明は真っ直ぐに受付に向かうと来週いっぱいの外泊申請を出した。
行き先に『篠原重工八王子工場』と記載し必要事項を書きこんでいると手元を覗き込んだ寮母が同情的な溜息をついた。
「泉さん また出向なの?」
「ええ 一週間だけですけど」
書きあげた書類を差し出すと受け取った寮母が記入漏れの有無をチェックしながら小さく肩を竦めた。
「全く特車二課っていうのは大変ね、月の半分当直で他にも出向だなんて・・・そんな部署他にないわよ?」
「今は二個小隊しかないので仕方ないんですよ。小隊が増設でもされれば違ってくるんでしょうけど」
苦笑いする野明に寮母は「まぁ 立ち上げの時期って言うのはそんなものかも知れないわね」と笑うと申請書にぽんと承認印を押した。
「じゃ これは確かに」
そう言って彼女が書類を収めると「お願いします」と頭を下げた野明がクルリと踵を返した。
部屋に戻って大急ぎで荷物を纏め階段を駆け下りて来た彼女に寮母が軽く声を掛ける。
「もう行くの?随分急ぐのね」
「人を・・・待たせちゃってるので」
掛けられた声に靴を履きながら頭だけ振り返ると野明は少し困った様に笑った。
「・・・『人』ね。まぁ いいわ、行ってらっしゃい」
したり顔で頷く寮母に一瞬キョトンとした野明は次の瞬間ぽんっと顔に朱を上らせ、その様子に相好を崩した寮母は「まぁ上手くやんなさいよ、そう言う事には五月蠅い組織なんだから」と言ってひらひらと手を振り管理室の奥へと姿を消した。
寮を出ると予め部屋から電話を入れて置いた遊馬が先程別れた角で待っていて彼女の顔を見ると黙ってその腕から荷物を取り上げた。
ひょいとそれを肩に担ぎ、背中を軽く叩いて歩きだす彼の隣で野明は少し擽ったい気分を味わいながらそっとその横顔を見上げた。
期せず彼女を見下ろした遊馬と目が合うとはにかんだ笑顔を見せた彼女は目線を前に戻して軽く俯く様にして歩き始める。
二人揃って妙にそわそわした擽ったい気分で並んで歩き、ホームでモノレールを待っているとシャツの左袖口を軽く引かれ遊馬は軽く目を瞬いて隣に立つ小柄なパートナーに目を向けた。
じっと見上げるその瞳に強請る様な光を認め辺りに視線を走らせると聊か照れくささを感じながらすっと目を逸らしつつ軽く肘を浮かせた。
「んっ」
ぶっきら棒に差し出された腕に一瞬きょとんとした目を向けた野明は意図を察すると嬉しそうに仄かに頬を染めおずおずと両手を伸ばした。
そっと彼女がその腕を取ると大したことではない筈なのに妙に新鮮に感じる照れくささに遊馬は思わず目線を宙に泳がせた。
野明もまた心臓がトクトクと早鐘を打つ甘酸っぱさを感じて顔を伏せたまま彼の肩にそっと額を寄せた。
何とも言えない気恥かしさが漂う雰囲気のまま滑り込んできたモノレールに乗り込むと遊馬のマンションへと足を向ける。
新木場で乗り換える時、腕を組んだままでは改札をくぐれない事に気付いた野明が慌てて遊馬の腕を離し、くるりと彼の後ろに回った。
一度離してしまうと何となくもう一度腕を取るのが恥ずかしくてすぐ傍に並びながらチラチラと遊馬の顔を窺うと同じようにチラッと視線を向けた彼と目が合ってしまった。
慌てて目を逸らす彼女に遊馬はくすくす笑うと潮見の改札を出たところで彼女の髪をクシャリと掻きまわした。
序のように肩に手を滑らせその身体を軽く引き寄せると、一瞬驚いた顔をした野明が嬉しそうな笑みを浮かべて彼に寄り添う。
二人でコンビニに寄って買い物をすることすら久しぶりで妙に浮き立った気分になった。
幾らか買い物をして彼のマンションに着くと扉を前にして遊馬が彼女に声を掛けた。
「野明 鍵、あけて」
「あ、うん。ちょっと待って」
野明は慌てて鞄からキーケースを取り出すとそこに引っ掛けられた真新しい鍵を手にする。
慣れない仕草で鍵を差し込むその姿に遊馬の口の端に思わず笑みが零れた。
カチャリと軽い音を響せて鍵が開くと野明が彼を振り仰ぐ。
「手 塞がってるから開けて」
楽しげな笑みを向け彼女の荷物とコンビニ袋を掲げる遊馬にコクリと頷いた野明は少しドキドキしながらドアノブに手を掛けた。
ほぼ3週間ぶりに開くその扉。
彼女の後ろで遊馬がくすくす笑いながらその背を肘で軽く小突いた。
「早く入れって。俺が入れないだろ?」
「そっか・・・ごめんっ」
急いで中に入った野明はわたわたと靴を脱いで彼の顔をちらりと見遣ると照れくさそうな顔を見せた。
「えっと・・・その・・・お邪魔します・・・」
「おう。っていうか 『ただいま』でもいいんだけどな」
しれっと言いつつ遊馬はスタスタと先にリビングに向かうと熱気の籠る部屋に軽く顔を顰めた。
野明の荷物とコンビニ袋を置くと手早く窓を開け放ちエアコンのスイッチを入れる。
粗方空気が入れ替った所で改めて遊馬が窓を閉めて回る間に野明が買ってきた物を袋から取り出した。
冷蔵庫に飲み物を移してしまうと 一瞬手持無沙汰になった野明が部屋をくるりと見渡した。
その仕草に小さな笑みを浮かべた遊馬が彼女の頭にぽんと手を置きくしゃくしゃとその髪を掻きまわした。
「なーに心配してんだか」
「心配なんて・・・」
「してない?」
「・・・意地悪」
野明の目を覗き込む彼の瞳に揶うような光を見つけ野明は拗ねた顔でそっぽを向いた。
彼女の態度の判り易さに遊馬は笑いを噛み殺す。
「拗ねるなよ」
「拗ねてないってばっ」
「そっか?なら そういう事にしといてやってもいいけど。気になるなら奥の部屋と洗面所、それにトイレと風呂場も見て回るか?」
肩を震わせて笑う彼に野明は「遊馬の馬鹿っ」と少し怒った声音で言ってぷぅっと頬を膨らませた。
部屋から出ようと踵を返すその肩を遊馬は易々と捕まえひょいと自分の方に引き寄せる。
「悪かったって 怒るなよ」
背中から抱きしめる形で耳元に囁くと機嫌を損ねた彼女が彼の腕を解こうと回されたそれに手を掛けた。
「解けるもんなら解いてみろよ」
低められたトーンの声が耳朶を打つと野明の顔が一瞬で耳まで朱く染まる。
「ちょ・・・今 そう言う声出すの 狡いってばっ」
焦る彼女の肩を抱き竦める様に押さえた彼は素知らぬ顔で彼女の肩口に唇を寄せた。
「狡くはないだろ?先刻 後にするって言っといたし。『聞いてなかった』とか言うなよ?」
「・・・言わないけど・・・ちょっと遊馬、その声反則っ」
「人の声にケチつけんな」
愉し気な笑みを浮かべて態と耳元で話す彼の顔を野明が振り仰いだ。
「だってっ・・・遊馬の声って狡んだもん・・・」
「狡い、ねぇ・・・」
にっと笑った遊馬が軽く彼女の耳殻に唇を滑らせると「やぁんっ」と声を上げて野明が身を捩り彼はその声に小さな笑みを漏らした。
「・・・お前の声程じゃないけどね」
久しぶりに重ねた肌の感触に戸惑いを覚えたのは初めの数分。
肌を滑る彼の手に心地良さを感じるまでに然程時間は掛らなかった。
一月近い間を開けて触れる互いの肌を貪る様に求め合っては軽く眠ることを繰り返し何度目かに目が覚めると遊馬は枕元に置いたデジタル時計へ目を向けた。
この部屋にだけは窓が無く時間の感覚が少し狂う。
気だるげに軽く上体を持ち上げると表示された時間を読みとった。
『10時前か・・・』
少し寝過ごしたな、と思いながら胸元で寝息を立てる小柄なパートナーの顔を覗き込み小さく息を吐き出した。
傍にいる事を確認すると少さな安堵を覚える。
口の端に軽い笑みを浮かべ あまりに熟睡した彼女の横顔に起こすべきか起こさざるべきか考えあぐねていると彼が結論を出すより早く「んっ」と呻いた野明が色素の薄い青灰色の瞳をゆっくりと開いた。
寝起きで焦点の定まらない瞳を瞬き彼の顔をぼんやり見つめると邪気のない顔でふわりと笑う。
「んっ・・・おはよう 遊馬」
「おう。よく寝てたな」
混ぜっ返すように言うと漸く意識のはっきりしてきた彼女は少し目を逸らした。
「・・・だってっ・・・」
「疲れた?」
「・・・そう言う事 聞く?」
明らかに照れた様子を見せる彼女の顔に思わず笑みを浮かべるとその髪をクシャリと撫でた。
「久しぶりだな、そういう顔見るのも」
「・・・馬鹿」
軽く目を逸らす野明をみて遊馬は微苦笑を浮かべて問い掛けた。
「なぁお前 正直、どっちが楽だ?」
唐突な問いに野明は思わず首を傾げた。
「どっちって?」
「二課にいるのと出向してるの」
想定外の質問に野明が目を瞬くと遊馬は自分自身も考える様に軽く目を眇めた。
少し間を置いて野明は慎重に言葉を選びながら口を開く。
「あのね・・・二課は大好きなの。仕事も仲間も凄く恵まれてると思うし。シフトは変則的できついんだろうけどそう言う事が気にならないほど充実した職場だよ。念願叶ってレイバーにフォワードで搭乗も出来てるし遊馬がコンビ組んでくれてる。希望と就職が一致してるって言う点ではこれ以上にはない所だと思ってるよ。けど・・・」
「けど?」
言い淀む彼女に遊馬が優しい声音で先を促す。
逡巡した後、野明は少し困った顔で彼の顔を見上げた。
「・・・最近はちょっと複雑」
「理由は?」
「昨日言った」
「いいから言えよ、色んなこと少しづつ整理しようぜ。その上で身の振り方も考えるさ」
心地の良い声が胸元に触れた耳と触れるほど近くに唇が寄せられた耳、双方から響き諦めに似た軽い溜息をついた彼女はゆっくりと言葉を選んだ。
「うーん・・・出向してると人間関係に悩むの。でも二課に居ると立ち位置に悩む」
「成程、端的だな。で お前としてはどうしたい?」
「どうって・・・」
野明が言葉に詰まると感情の読み取りにくい表情をした遊馬がさらりと質問を重ねた。
「暫くこのまま現状を維持したいのか、それとも何らかの変化を望むのか、ってこと」
「・・・遊馬はどうなの?」
探る様な目を向ける彼女に遊馬は「訊いてんのは俺なんだけどな」と苦笑いしながらしれっと返事を返した。
「現状 俺はどっちも窮屈だからさ、変えたいな。一番のネックでもありキーでも有ったお前との関係が変わっちまった以上現状を維持する事にメリットを感じないからな」
「メリット・・・無くはないんじゃない?」
少し困った様に言う彼女の頭を梳く様に撫でながら遊馬は細く長い息を吐いた。
「同じ職場に・・・もっと言うならコンビを組み続けるのに、か?その為に関係がギクシャクするのはあらゆる意味で逆効果だよ。お前が、まぁ俺もそうなんだけど その辺をキッパリ割り切って一切顔にも態度にも出さずに居られると言うなら話は別だけどそんな風に出来ないだろ?それに・・・もう手遅れだよ」
苦笑いした遊馬はすっと目線を外して小さく肩を竦めた。
「え?手遅れって 何それ?」
遊馬の発言に驚き顔を上げた彼女は目を丸くした。
その表情から恍けている訳では無い事を察すると聊か呆れた顔をした遊馬は軽い溜息を吐いた。
「お前 ここ3週間、自分のこと考えるのに手いっぱいで周り見て無かっただろう?」
黙り込む彼女に遊馬は抑揚のない声で告げた。
「バレてるよ。多分結構広範囲に」
「・・・・?! 嘘っ! っていうかバレてるって・・・何が?」
慌てる野明に遊馬はそのまま止めを刺す様な一言を告げた。
「何って・・・判ってるから慌ててんだろ?どの程度の仲を予想してるかは確認してないから判んねぇけど・・・付き合ってんのは確実にバレてるよ。二課棟に常駐してる連中で気付いてないのは太田とひろみのニワトリ位なもんだろ、多分な」
「・・・なっ?!」
「『なんで』とか言うなよ? お前顔に出やすいんだよ、本当に」
驚きと混乱と羞恥で言葉を失い口をパクパクさせる野明に遊馬はやれやれと大きな溜息を吐いた。
「『どうしよう』とか訊くだけ無駄だからな、今更取り繕ったって無駄だし寧ろこの状態で作業能率を落としたりしたらそれこそコンビ解消どころか秋の人事を前に別の部署に配置転換させられる可能性もないとは言えないんだからな。それもあって俺は立ち位置に迷ってたんだけど・・・お前の妙な態度が後悔じゃないって判ったからもういい」
「『もういい』って・・・遊馬?」
不安気な目を向ける彼女に遊馬はニッと笑って見せた。
「もっとさ、気楽に行こうぜ。どうせバレてんだ 今更距離を置こうとしても不自然に見えるだけだよ」
「でもっ・・・」
「気にしようがしまいが配置転換はある、秋の人事に引っかかってるんだしさ。このままの体制で居られる期間なんて黙ってたって数カ月が関の山だ。余程効率に影響を出したりしない限り付き合ってるのがばれたってその位なら放っておいてくれるさ」
「・・・でもその後は・・・確実に離されちゃうじゃない」
いっそサッパリした顔で言う遊馬を見遣り野明が眉間に皺を寄せると彼は「普通ならそうなるだろうな」と赤みの強い彼女の髪をくしゃりと撫でて得意げに鼻を鳴らした。
怪訝な顔を見せるパートナーに遊馬は少し優位に立ったような顔を向ける。
「けど 俺達には単純にそうできないだけの布石が打たれてある訳だ」
「・・・布石?」
「そう、最初からその心算だったのかは兎も角として今となってはいい取引材料にはなる」
小首を傾げる野明に遊馬がニヤリと笑った。
「判んないか?布石の正体はこの出向だ」
彼の答えに思わず目を瞬いた彼女は不思議そうな顔で問いかける。
「・・・どうしてそうなるの?」
「簡単に言えば俺らを出向させる事で生じるメリットをアピールする事で人事にプレッシャーを掛けられるという点が一つ。もうひとつは、前にも言った通り先方、この場合シノハラ側って事になる訳だが・・・そっちの事情だな。貴重な実戦経験者、気にはなるが無条件で引き抜くという所までは周りを説得し切れるだけの根拠に乏しい。そういう相手が居たとしてそいつが自分たちの欲しい人材たるか、ということを見極めるお試し期間を得ららればこれに勝るものは無い、そう思わないか?これで『メリットあり』と判断できれば獲得に走ればいいし、そうでなければ切り捨てればいい。それを直接雇用せずに試せる手段として出向ってのは都合がいい。時間単価は正規雇用より高くつくかもしれないけど それ以外の面倒は警視庁が見てくれる、気に入らなかったら返品してしまえば後腐れもない。相手が応じてさえくれればこれ以上効果的なお試し方法は無い、違うか?」
「それは確かにそうかもしれないけど。出向に出してる間、こっちにとってはデメリットも大きいじゃない?それなのによく警視庁側が条件を呑んだよね」
腑に落ちない顔をする彼女に遊馬は小さく肩を竦めると少し苦い顔を見せる。
「そりゃまぁ 実際デメリットを被るのは実働部隊である二課の面々だしお偉いさん方に労務負担はないからな。それに 『次世代機種に現場の声を反映させてより良い機体を作る為』という大義名分を掲げたメーカーから依頼が来て、尚且つ関係部署であり実働部隊でもある二課から直接正式に上申が上がれば表向き無碍に断る理由は無いだろ」
『あとはお偉いさん同士の利権問題だけだ』という言葉を遊馬は敢えて飲み込んだ。
そういう面を態々教えることもないと思ったのも事実だが、実際は遊馬自身が彼女にそう言った事を教えたくないだけかもしれなかった。
過保護と言われようと何と言われようと気性が真っ直ぐで素直な彼女に利権と保身、自身の地位と財に固執した連中の薄汚い駆け引き、ましてそれがシノハラ絡みとなれば尚の事そんな実態など知らせたいとは到底思えなかった。
しかしながらそう言う人間には多かれ少なかれ突かれて困る事情があり、また同じ程度に掛り易い甘言というものが存在する。
そういう情報をどこから掴んでくるのかは判らないが彼らの隊長がそう言う物を大量に握っており、且つそれを効果的に使って思い通りに事を運ぶことに非常に長けているという一面を遊馬は重々承知していた。
どの辺りからかは判らないがこの出向に関して彼が動いている事は二週間程前に二課棟に福島だけでなく海法や実山が顔を揃えた事からも想像に難くない。
だとすればその事で自分たちが不利な立場になる事はまず無いだろう、と遊馬は踏んだ。
嘗て『剃刀』と呼ばれた彼等の上司は殊身内と判断した相手に対して最終的に不利益になる様な行動は取らない、そう信じられるだけのものはここ3年でシッカリ示して貰った。
だからそういう部分を彼女に伏せておいてもおそらく問題はない、という確信を持って遊馬は穏やかに笑った。
「大丈夫だ、悪い様にはなんねぇよ。隊長と俺を信じろ。それに・・・俺はちゃんとお前の傍に居るから」
そう言った彼の顔にどきんと心臓が跳ねるのを感じた野明は照れ隠し半分で徐に両腕を伸ばし彼の首へとそれを絡めた。
すっと近づいてきた彼女の顔に一瞬遊馬が面食らうとふわりと甘く柔らかい唇が自分のそれと重なった。
啄ばむ様な軽い口づけのあと「信じてるよ」という野明の囁く様な甘え声が耳に届く。
「・・・まかせとけ」
一拍置いて答えた遊馬の声は発した彼自身が驚くほど優しい声音をしていた。
荷物を持って電車に乗るのを厭った遊馬がレンタカーを借り必要な荷物を運びこむと野明と共に八王子に向かう。
割り当てられた双方の部屋を覗いて作りがまるきり鏡対象であることを確認すると遊馬は自分が鍵を持っている方の部屋に彼女の物を含めた荷物を全て運び込んだ。
ドギマギする野明に「一緒に居た方が都合がいい」と言い切り一方の部屋を閉めさせると彼女自身も自分の部屋に引っ張り込んだ。
寝泊まりする部屋をこっちにすることを決めてしまうとさっさと荷を解く遊馬に野明は少し戸惑った顔を見せた。
「え・・・っと・・・・遊馬?」
遠慮がちに声を掛けると、遊馬が肩越しに振り返った。
「何だ?」
「私も・・・こっちに泊るの・・・?」
「何か文句あるか?」
何を今更、と言う目をする遊馬に野明はしどろもどろになりながらチラチラと彼の方を窺った。
「文句は・・・無いんだけどね。そのぅ・・・・」
「なら問題ないだろ、それとも俺と一緒じゃ嫌か?」
怪訝な顔をする遊馬に野明は慌ててぶんぶんと首を振った。
「嫌って・・・それは無い、絶対」
「・・・なら、いいだろ?3週間ギクシャクしてたんだ、ここから一週間、就業時間外にいちゃついたところで罰なんてあたんねぇよ」
しれっと言う遊馬に野明は一瞬で頬を染めた。
荷を解き終わると 遊馬は珈琲を淹れて持ってきた資料をダイニングテーブルに広げた。
並んで座り各々それらに一通り目を通す。
隊長が裏で手を回してくれているとはいえ自分たちが出向でそれなりの結果を出してこなければその苦労ごと無駄にする事になりかねない。
出勤する前に必要な事は出来るだけ頭に叩き込んでおくに越したことはない。
黙々と書面に目を通す遊馬の隣で野明もまた自分用に渡された書類に目を通し始めた。
『模擬戦の後で味わった様な後悔だけはしたくない』
その思いが今まで以上に真剣に彼女の目を資料へと向けさせた。
『指示通りの作業だけをしてるんじゃ駄目なんだ、それがどういう意図を持って出された指示で何に繋がるのか、そう言う事を出来るだけ理解して臨まないとこの先、仕事についていけなくなる』
そんな焦燥感が彼女の背をチクチクと刺す。
知らず真剣になった目は何時もより少し鋭く、現場で集中する時のそれに近い。
そっと彼女の顔を覗き見た遊馬は口の端に小さく誇らしげな笑みを浮かべた。
考えている事が手に取る様に判るその豊かで良く変わる表情、そこに今まで以上の意識の高さを感じて遊馬自身も今一度背筋を伸ばすと集中して資料の読み込みを再開した。
時折紙を捲るパラパラという音がする以外は殆ど音もしない状態で真剣に資料に目を通していてると気がつけば日が少し傾き始めていた。
一口飲もうと手を伸ばした珈琲はすっかり冷めきりカップの内側に焦げ茶の環が付いていて遊馬は微かに顔を顰め、次いで野明のカップに目を向けた。
中を覗けば半分ほどに減ったカフェオレはすっかり冷め切りミルクが僅かに分離していて彼のそれと同じく幾つかの環をその内側に刻んでいた。
集中すると周りが見えなくなる彼女の瞳は真剣に試験仕様書を追い、前後の試験との関連性を必死で考えているのを察して遊馬が軽く助け船を出した。
「ここ。この試験は これじゃ無くてこっちの試験の高負荷バージョンになるんだ。同じ系統の試験が必ずしも連続してる訳じゃないから気をつけろよ、ここでは見たいパラメータが違うから接続する測定器が変わる。だから同じパラメータを取る物同士を固めて試験してるんだ。測定器の付け外しは手間が掛るからな。データは見る時に順番変えればいいだろ?」
パラリと仕様書を繰り戻し数頁前の試験を示す遊馬に野明は驚いて顔を上げた。
「え? あ・・・ そっか、ありがと。ねぇ遊馬、もしかしてこれ全部に目を通したの?」
自分の資料だけで手一杯だった野明は遊馬が彼女用の試験仕様書の内容を把握していた事に目を丸くした。
「ざっとだけどな。試験内容把握してないと現場で困るだろ?」
「・・・頭が下がるわ」
机の上に広げられた資料の束を改めて眺め、野明は頬杖と共に大きな溜息を吐いた。
その様子に遊馬は「こういうのは読み方にコツがあんだよ」と笑い幾つかその読み方のポイントを示してやった。
「な、こうやって見ると個々の試験が仕様書単位でちゃんと繋がってるって判るだろ?試験ってのは最終的にその結果を纏められないと意味が無いんだ。だから試験仕様書はその目的単位でカテゴリを分けて置くのが普通だ。でも その順番通りに試験が出来るとは限らない。あとで扱いやすいようにカテゴリ毎に並べて置いて試験の順番を入れ替える方法も勿論ある訳だけど この場合はパイロットと作業員に判りやすいように試験する順番に並べてあるから 一見やってる事の統一性に欠ける印象がある訳だ」
「でも そうすると後でデータを解析する人が困るんじゃない?」
首を傾げる野明に遊馬は小さく肩を竦め苦笑いした。
「紙の上だけで作業するならそうだけど、解析にはパソコン使うんだから問題ねぇよ。その為に試験番号の頭に識別符号をつけてあるんだから」
言われてその項目を良く見れば試験順とは別にアルファベットと数字を組み合わせた記番号が記されていた。
「この記号が同じものが同じカテゴリになってるんだ。後ろの番号はカテゴリ内での整理番号だな。で このアルファベットは・・・」
噛み砕いて説明する遊馬に野明は神妙に頷くと少しでも多くの事を覚えようと気持ちを引き締めた。
遊馬がざっくり説明をしている間、仕様書に直接書き込む訳にはいかないので野明は手帳に一生懸命与えられる情報を書きこんだ。
これまでイングラムを溺愛しながらその中身について殆どと言っていいほど興味を示さなかった野明が真剣に仕様書やスペックの読み込み方を習得しようとする姿はかなり微笑ましく思えて遊馬は口の端に小さな笑みを浮かべた。
結局かなりの時間 遊馬は野明に付き合って根気よく大まかな仕様書類の見方を説明した。
彼にとっては然程のことでなくても予備知識が殆ど無に等しかった野明にとってはほぼ全てが新しい知識で一気に覚えようとすると彼女の頭の中が飽和状態になってしまう。
これ以上詰め込んでも知識が混乱するだけだと判断して遊馬は「今日はここまでにしよう」と説明を一度切り上げた。
戸惑う彼女に「一気に詰め込んでもすぐ忘れちまうぞ」と遊馬が笑うと野明は大きく溜息をついた。
「本当 基礎が無いって痛感したわ・・・」
「そう思える様になっただけでも一週間出向した甲斐が有ったじゃないか」
「上から目線が不満なんだけど 反論できないのが悔しいなぁ・・・」
「まぁ そう言うなよ。興味が持てれば覚える効率も上がる、知識なんて物はその気になりさえすれば後から幾らでも身につくものだからな。焦らず順序立ててきちんと覚えていけばいいさ」
「・・・頑張ります」
「お前の講師は案外優秀なんだぜ?懇切丁寧に教えてやるから心配すんな」
神妙な顔を見せる彼女に遊馬は朗らかな笑顔を向けた。
土曜から日曜に掛けて遊馬が必要最低限と判断した基礎知識を詰め込まれた野明は聊かぐったりした様子でダイニングテーブルに上体を投げだしていた。
「駄目、これ以上覚えられない・・・」
上目づかいで遊馬を見上げると『仕方ないなぁ』という顔をした彼が微苦笑を漏らした。
「まぁ先ずはこんなとこだろうな。後は追々 覚えていけばいいから」
「感謝してます・・・けど、ちゃんと覚えてられるかなぁ・・・」
「一度に全部は無理だろうな。最初の内は確認しながら行けばいいさ、そのうちちゃんと身に着いて行くから。質問は時間が許す限り受ける、だから安心なさいって」
愉し気に言うと遊馬は「さて」と言いながら机の上に広けた参考書や手書きのメモ、試験仕様書等々を片づけると野明の頭をクシャリと撫でた。
「頑張ったからな、ご褒美として夕飯くらい奢ってやろうか?」
「本当に?」
嬉しそうに顔を上げた彼女に「明日から出勤だからな酒はなし!」と釘を刺すと彼女は盛大に不満気な声を上げた。
翌朝 連れ立ってマンションを出ると久しぶりに八王子の駅に向かって歩いた。
定時出勤時間より30分ほど早く出たものの篠原重工八王子工場に向かう専用シャトルバスの停留所にはそこそこの人数が列を作っていた。
遊馬の姿を見つけて色めき立つ女性社員に聊かうんざりした顔をして見せると彼は目立たない様にそっと深い溜息をついた。
一カ月前にも味わった好奇の目。
前回の出向が終わるころには幾らか落ち着いていた筈のそれがひと月の間を置いた事で再燃しかねない雰囲気に知らず彼の眉間に皺が寄る。
前回垣間見た一部女子社員の野明に対する風当たりを思い遊馬が気遣う様な目を向けると彼女は予想外に落ち着いた笑みを返して来た。
軽く目を瞠る遊馬の瞳を野明は真っ直ぐに覗き込む。
「先月とは違うもの、だから平気だよ」
「・・・野明?」
飲み込んだ思いを察した様な彼女の言葉にきょとんとした顔をみせる彼に野明は悪戯っぽい笑みを向け、彼の腕を軽く引いた。
他の人に聞こえない様に彼の耳元でそっと囁く。
「何言われても平気。だって今度は胸張って『彼女です』って言えるでしょ?」
にこりと笑う彼女に遊馬は軽く目を瞬いた。
「・・・成程。でも無理はするなよ、辛くなる前にちゃんとこっちに振るように」
「過保護」
「否定する気は無いけどね。俺だって『彼氏』らしいことしたいだろ?」
そう言って遊馬がにっと笑うと野明は仄かに頬を染めてくすくすと笑った。
「じゃ 困った時は遠慮なく。でも差し当たりは・・・仕事、完っ璧にこなして見せようね」
「当たり前だ。その為に頑張って勉強も始めたんだしな、先ずは今週 気合入れるぞ」
「りょーかいっ、宜しくね」
「任せとけって。自分のパートナーを信じなさい」
軽口を叩いて笑みを交わし滑り込んできたシャトルバスに乗り込むと二人掛けになっている後部座席に並んで腰を下ろし自然に繋いだ互いの手を握る掌に各々少し力を込めた。
go to next....
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追記
さて またまた亀さんの速度で時間が進んでおります(^^;
サクッと行けよ、サクッと!というお叱りの声が聞こえてきそうですがごめんなさい
簡潔に文章を纏める能力皆無なんですよ(T▼T)
誰か恵んでください そういう力~!!
というわけで 八王子再びです♪
9月中には続きを上げる予定ですので遂に一年越しになってしまったこの連載ですがもう暫くお付き合いくださるとうれしいです(^^;
こんな感じのノロノロ更新ですがなんとか続けております~
これも一重にコメントを下さる皆様のおかげ!!
何かしらの感想 コメント 拍手等頂けますと私が小躍りして続きを書く気力に変えます♪
お時間がありましたら 是非是非よろしくお願いしますねっ(^^)
暑い日がづづきますが皆さま 体調管理には気をつけて!
此処までご覧下さってありがとございましたっ
非公開 2010年08月21日(土)23時08分 編集・削除
管理者にのみ公開されます。