連日 うだるような暑さが続いています
30度超えが当たり前になってきていて 梅雨開けた途端何だろう?!って感じです(^^;
4月半ばに雪降ったり 5月にも小雪がちらついたとは思えないこの落差!!
梅雨は一瞬で通り過ぎちゃった感じですがこの分だと今年の夏はゲリラ豪雨が怖いかな。
去年書いたけど出せなかったネタを投下するチャンスか?!(笑)
何しろ去年はまったくゲリラ豪雨が来なかったのでそのままお蔵入りさせちゃったのがあるんですよね
今度 発掘して見直してみようと思います♪
今日は長女がお泊まり保育。
1時に幼稚園に連れていくので先程家を出たのですが余りの暑さに2歳児が不憫(^^;
即行 帰ってきましたよ~
熱中症フラグ立つって良く分かる!!
部屋の外に置いた気温計が38度を指してます(T▼T)
気象庁の発表温度って百葉箱ではかるのでもっと低いんでしょうが普通の場所は暑いのよ~
クーラーと扇風機の併用は欠かせないですね
皆さんも水分とミネラルの補給をお忘れなく!
熱中症は室内でもなりますからね、油断禁物ですよっ
そして 明日は 朝8時半に長女を回収です。
早い、早すぎるよ・・・・ もう少しゆっくりでもいいんだけどなぁ???
夕方4時くらいとか(笑)
いやいや 贅沢言わないから昼まででも・・・
余り楽になった気がしないお泊まり保育ですが本人が愉しんでくるといいなと思います。
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さてここからは連載の話。
また3週間開きましたが どうにか書いてます(笑)
なんとか収拾に向かってます(^^;
もうだらだらな感じですが 誰かお話を短く纏める方法を教えてください~!!
季節的には なんか追い付いちゃったよ、夏に(笑)
よし、結果オーライっ! ってそんな訳あるかぁぁ! と自分で突っ込み入れときます(^^;
相変わらず纏まりの無い文章ですが 読んであげてもいいわという心やさしいお客様は畳んでおきますので以下からお越しくださいませ~(^^)
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不在 33
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SIDE-SV2(5)
通常勤務に戻って数日。
忙しくも充実した日々を過ごし身体に二課独特の生活リズムが戻ってくると 反対に『シノハラ』で勤務していた時の感覚は薄らいでいく。
一週間続く待機任務の中 かなりの大所帯でもある二課棟内ではそうそう二人になる機会もなく最初の頃は妙に擽ったい気分で顔を見合わせていた一号機コンビも週半ばに差掛かるころには出向以前と変わらぬ雰囲気で仕事をこなすようになっていた。
「野明、昨日の報告書ちょっと見せて」
「昨日の? ちょっと待って」
引き出しを開いた野明がクリアファイルに差し込まれた書面を抜き取り苦笑いと共に差し出すと記載事項にざっと目を通した遊馬は眉間の皺を深くした。
「何だ、まだ途中じゃないか」
「こういうの苦手でさ。つい後回しになっちゃうんだよね」
『あはは』と乾いた笑いを浮かべて頭を掻く彼女に遊馬は軽い溜息を吐くと書類を彼女に差し戻した。
頬杖をつきながらトンっと指を差し「ここ、書きなおしとけ」と指摘すると自分の机に広げてあった紙の束から数枚の書類を引っ張り出し『ほら』とばかりに彼女の机に滑らせた。
「お前 これ目通してないだろ?そのままだと差し戻されるぞ」
その書類には報告書作成時、事故の加害者に関する内容を詳述しないよう釘が刺されていた。
現場で事故処理にあたっていた野明は加害女性に対する事情聴取がなおざりになっていることに気付き交通課の担当に声を掛けに行ったのだが『この件に口を出すな』と一蹴されてしまったことを思い出し不満気な顔を見せた。
加害人物が所謂高級官僚の妻である事ことが判るとそのあからさまな対応に彼女は大きく顔を顰め「それはおかしい」と後藤に意見を述べたものの返ってきたのは「あとは交通課のお仕事」という素っ気ない返事だけだった。
そして回ってきたのがこの書類。
野明は昨日のあの不快感を思い出し嫌悪感を表情に滲ませた。
「・・・でもこれってさ 狡いと思わない?」
「狡かろうがそうで無かろうが、そういう指示がきてんだから仕方ないだろ?責任はこの通達出したおエライさんが取るんだから心配するな」
気にする風もなく応えるパートナーに野明はむぅっと拗ねた顔を見せた。
「・・・そう言う問題?」
不正が許せないと憤る正義感の強いパートナーに苦笑すると遊馬は冷めた口調で「そういう問題、というよりはそういう組織なの」と嘯いた。
『だから いろいろ付け入る隙もあるんだよ』
心中で呟いた言葉は彼の口に上る事はなかった。
復帰後最初の一週間。
平日は大きな事件も事故もなく比較的平穏に過ぎ去ったものの最終日だけは事故処理が長引いてそのまま月曜の昼近くまで現場に拘束された。
二課棟に戻り疲れきってそのまま仮眠室で休むと目が覚めた頃にはすっかり日が落ちてしまっていた。
結局、野明も遊馬も明けて火曜の朝になってから二課棟を後にして真っ直ぐに各々の部屋に帰り着くとどっと襲う疲労感に再び深い眠りに落ちた。
次に野明が目を覚ましたのは既に昼を大きく回った後で気だるい動作で目覚まし代わりの携帯を手元に引き寄せると時間と着信の有無を確認した。
「・・・うわ・・・もう1時回ってる」
誰にともなく呟くとメールも電話も着信していないことに聊か落胆しつつ布団の中で大きく伸びをした。
勢いをつけて身体を起こしたものの眠気の抜けない頭は思考力が鈍く野明は目覚ましも兼ねて風呂場へ向かった。
平日の日中は利用者が少なく誰とも出会う事無く浴室に入るとざっと身体を洗って湯船に身を沈める。
先だって遊馬の付けた紅い花は10日程の時間を経てかなり薄くなってはいたもののそれでも消えた訳ではない。
目に止まるそれに聊かの気恥かしさと少しの寂しさを感じて彼女は仄かに頬を染めつつ軽く眉間に皺を寄せた。
『あんまりほっとくと消えちゃうんだからね』
胸元に残る薄れた痣を指でなぞると野明は心の中でそっと毒づいた。
部屋に戻り髪を乾かしながらチラと携帯に目を走らせる。
やはり着信した様子はなく彼女は知らず大きな溜息を吐いた。
付かず離れずの距離を保ってきた彼との関係は『ハリネズミのジレンマ』を彷彿とさせる。
これまでずっと保ってきた『パートナー』という立場は微妙な位置関係でそれを崩すのには勇気が要った。
肌に残る痣はその壁を越えた証拠。
けれどもそれは警察と言う職場ではあまり大っぴらにし難い物であることも確かで、ましてコンビを組む者同士ともなれば尚の事。
場合によってはパートナーの解消、更には職場を隔てられる可能性が十分に有り得る。
口には出さなくてもその可能性を考えて職場では成るべく今迄と同じつかず離れずの距離を保とうとし続けた野明は結果として準待機に入っても彼とどう接したら良いのか戸惑ってしまうことになり聊か複雑な気持ちで鏡に向かって大きな溜息を吐いた。
出向から戻って3週間。
恙無く仕事をこなし休日には顔を合わせ、一緒に居る時間は長いのに二人の間には微妙な距離感が出来てしまった。
あれから何となく遊馬の部屋に足を向けることは無かったし彼もまた野明を寮の門限を厳守して送り届けることを徹底していて その様子は出向前よりもある意味健全で一線を越えた成人同士の付き合いとしてはかなりじれったいものだった。
最初の一週間、二課棟内で待機任務についた事から二人きりになる機会が見出せず一度もいちゃつく事が無かったことで翌週の準待機期間中は気恥かしさから互いにすこし素っ気ない態度になってしまった。
そしてまた待機に入ると当然何もない風を装うので更にすこし距離が開く。
その微妙な雰囲気は逆に他の隊員達の間に『何かあったのかな』という憶測を呼んでいたものの仕事に関しては恙無く、寧ろ無駄話が減った分出向前よりもテキパキとこなすのでこれと言って不都合もない。
問い詰める程の事でも無いから周囲の人間は多かれ少なかれヤキモキしたものを抱えながらも黙ってそれを見守っていた。
「遊馬 お昼 取りにいかない?」
「昼? もうそんな時間か。そうだな、もう届いてんのか?」
「さっき 整備の人がお皿持って歩いてたから来てると思うよ」
「そっか。序に持ってきましょうか?」
持っていたシャーペンを置くと大きく伸びをした遊馬が部屋に残っていた熊耳と進士に声を掛けた。
「じゃあ 悪いけどお願いできるかしら? 太田君と山崎君も行ってると思うから」
「了解です」
二人の注文を聞いて隊員室を後にする一号機コンビを見送って進士が遠慮がちに口を開いた。
「何か少し変ですよね、あの二人」
「・・・進士巡査もそう思う?」
「すこしぎこちないと言うか・・・喧嘩してる訳じゃ無さそうなんですけどね」
「変なとこで気真面目だから、二人共」
頬杖を吐いた熊耳が溜息交じりに言うと進士が軽く肩を竦めた。
「やっぱり 先日の話が気になってるんですかね?」
「それもなくは無いでしょうけど・・・本当 もどかしいのよね」
頬杖を吐く彼女に進士はおずおずと問い掛けた。
「・・・熊耳さんは あの二人って付き合ってると思います?」
「・・・思ってない人が居るとは思えないけど・・・まぁ 出向から帰ってきて様子が変わったのは確かよね」
「でも 妙に距離が出来た気がしませんか?」
「どうかしら?泉さんは兎も角 篠原君なんてここ数日すこしピリピリした感じがあるでしょう?彼女の一挙手一投足が気になって仕方ないのよね」
やれやれと困った生徒を見る様な目で溜息を吐くと熊耳は小さく眉根を寄せた。
「周りに知れるのを警戒してるんですかね?」
「どっちを?」
「出向の件、ってことはないでしょう?そんなのは予定表でわかることなんですから」
肩を竦める進士に熊耳はこめかみを押さえて軽く頭を振った。
「今更?まるで高校生の恋愛だわ・・・」
「というか 今日び高校生の方がいくらも積極的ですよ」
「でしょうね・・・」
苦笑いする進士に熊耳も軽く頷いた。
「篠原君の場合知れて困る『周り』というのはここの面々と言うよりは『桜田門』の面々なんだろうけど・・・」
「まぁ そうでしょうね。職種が職種だけに交際が上に知れると面倒ですからね」
「本来ならそうでしょうけど 彼らの場合 他人より幾らか事情が複雑かもしれないわね・・・・」
同情を寄せる進士に熊耳は少し難しい顔を見せた。
「何れにしても、もう暫くは表向きだけでも大人しくしておくのが利口でしょう」
彼女の言葉に進士は曖昧に頷き小さく肩を落とした。
食事を持ってきた一号機コンビはそのまま自分の机で並んで食事を終えると昼休みが終わるまで 持参した本や雑誌を捲って時間を潰しそのまま午後の勤務に入った。
互いに気にはなる様で 時々目が合うものの何となく微妙な空気が漂ってしまいそのまま目を逸らす。
そのまま出動もなく時間が過ぎて間もなく定時間を終えようと言う頃になって後藤が隊員室に顔をのぞかせた
全員が後藤に注目すると「仕事続けて」と言うように軽く手を振った隊長が一号機コンビに目を向けた。
「篠原、泉ちょっと」そう言って手招きする隊長に一瞬顔を見合わせた二人は小さく頷きあって席を立ち、隊長の後をついて部屋を出た。
3人の姿を目で追った熊耳と進士は『あの話か』としたり顔で頷いた。
後藤に続いて隊長室に入ると応接セットに座るよう勧められ数枚の書類を手渡された。
「ちょっと目、通しといて」
そう言って渡された書面の右上には『部外秘』という赤いスタンプが押されていた。
ざっと目を通すと書類を野明に手渡し遊馬は小さく溜息を吐いた。
野明が目を通し終わるのを見計らって正面に座った後藤が声を掛ける。
「見て貰った通りなんだが、この前話した件のご依頼が来た」
「来週の月曜から金曜までの一週間、ですか」
顎に軽く手を当てた遊馬は諦めた顔で隊長を見返した。
「気持ちは判るけどさ、そんな顔しなさんなって」
苦笑いする上司に遊馬は少し恨みがましい目を向けた。
「判ってますよ、ちゃんと承諾書も書きましたしね、きっちり働いて来ますって。けど今週の準待機全部持ってかれるんだから不満な顔くらいはさせて下さいよ」
「まぁ 向こうでそう言う顔する位ならここでしといてもらった方がいいんだけどさ。で これ、一人一個ね」
そう言うと後藤は机の上に番号札のついた鍵を置く。
それを見た部下二人はきょとんとして顔を見合わせた。
「隊長、これは・・・」
「マンションの鍵だな。この前篠原が使ってたところと同じものだ。尤も部屋は違うだろうけどね。一応隣室を二部屋押さえてあるから使って頂戴」
「・・・贅沢ですねぇ・・・・」
吃驚した顔で鍵を眺める野明に後藤はしれっとした口調で「支払いはシノハラ持ちだからいいんじゃないの」と嘯き遊馬の方に含みのある目を向けた。
「ちゃんと部屋を確保しとかないと 勘繰られることも多いっしょ?」
「・・・隊長・・・・」
唸るような遊馬の声を上司たる彼はさらりと聞き流すと少し表情を引き締めた。
「まぁ これから毎月こう言う事がある訳だ、上手くやって頂戴よ」
ぽんと二人の肩を叩く後藤に「了解です」と答えた遊馬が小さく肩を竦めると彼は微かに寂し気な表情を浮かべた。
その表情はほんの一瞬で消えてしまい直ぐに飄々としたいつもの顔に戻ってしまったので野明は『自分の見間違えかなぁ』と軽く小首を傾げた。
二人が退室するとその遣り取りを黙って見守っていたしのぶがからかう様な笑みを向けた。
「随分寂しそうじゃい?」
「そうでもないよ、でもあいつらあれでかなりデリケートだからさ」
溜息交じりに言いながら椅子に深く腰掛けると頭の後ろに手を組んだ後藤は椅子の背が大きく撓るほど体重を掛けて天井を仰いだ。
「なんか妙な感じだと、思わない?ここ3週間ほどさ」
「さぁ・・・私は後藤さんほど彼らに近しくないもの。でも そうねすこしよそよそしい感じはするかもしれないわね 前と比べて。けど 本来ここは職場なんだから前が慣れ合いすぎてた、ってことじゃないの?一般の会社に出向して少しは姿勢が変わった、とかそういうことなんじゃなくて?」
大したことではなさそうにいう彼女に後藤は少し困った笑みを浮かべた。
「まぁ それもあるんだろうけど あいつらの場合はあの距離が一番居心地が良かったんだろうな、と思ってさ」
「慣れ合いすぎるのも職場としては問題なんだし、すこし距離が出来る位で丁度いいんじゃないの?」
さも当然のように言う彼女に後藤は「あの二人に関してはそうとも限らないけどね」と苦笑した。
呆れ顔をするしのぶに後藤は心中で『ああいう態度のときは必ずしも距離が出来たって訳でもないと思うがね』と呟いた。
「ところで 後藤さん、整備開発課長が電話掛けて来てたわよ」
思い出した、と言う風にしのぶが手元のメモを千切って寄越すと受け取った後藤は軽く眉を上げた。
「これ、いつ?」
「1時間くらい前かしら。後藤さん 課長室に行ってたでしょ、その時。忘れてたわ、ごめんなさい」
「いや いいよ、ありがとう。まだ定時まで10分あるし、いくら何でもまだ席にいるでしょ」
そう言うと後藤は受話器を手に取り電話をかけ始めた。
暫く話をして通話を終えた彼は頭の後ろで手を組み深く息を吐きながら天井を見上げた。
何とも言えないその雰囲気にしのぶは微苦笑を向けた。
「悪だくみは上手く行きそうなのかしら?」
「悪だくみねぇ・・・・そんな心算は無いんだけどさ。まぁ なんとかなりそう・・・かな? 今日は定時で帰るわ、俺」
「どうぞご自由に。元々シフト制なんだし大きな事件や事故でもない限り残業の必要なんて無いんだから」
気にする風もなく言う彼女にすこし残念そうな顔をした後藤は「はいはーい お先にー」と声を掛けると終業のサイレンを聞きながらゆっくりと椅子から腰を上げた。
新橋に足を向けた後藤は待ち合わせた店に先方より少し遅れて到着した。
入り口で店内を見回す彼に少し奥まったテーブル席から見覚えのある顔が片手を上げるのを認めてそちらに足を向ける。
彼の正面に腰を下ろすと後藤は苦笑いを見せた。
「待たせちゃったみたいで悪いね。埋め立て地は交通の便が悪くてさ」
「いや いいさ。こっちも早上がりの口実が出来て助かったしさ」
苦笑する彼に後藤は人の悪い笑みを向けた。
「本庁勤めのキャリアさんが何を言うかね」
「態とその道をドロップアウトした人間に言われたくないけどね、まあいいさ。今日は単に昔を懐かしんで誘ってくれたって訳じゃないんだろ? 電話で大凡察しはしたけどさ、第二小隊の隊長さんが整備開発課の課長にどんな御用かな?」
「察しが良くて助かるよ。ちょっと相談・・・というかお願い事をね したいと思ってさ」
からかう様な口調で探る目を向ける嘗ての同僚に後藤はにっと笑った。
粗方話を聞き終わると後藤の嘗ての同僚であり現装備開発課長の但馬は腕を組んで軽く頷いた。
「成程・・・大体のところは判った」
「・・・頼めるか?」
珍しく下手に出てくる後藤に但馬は意外そうに肩を竦めた。
「要するに人事が振り分けを決める前にこっちから手を上げればいい、って事だろ。獲得の保証はできんが出来る限りの根回しはしてみるよ」
「頼むわ。こう言う時だけ 会いに来て悪いね。俺も出来る範囲で手は回すからさ」
拝むように手を合わせる後藤に但馬は困った笑みを向け顔の前で両手を振った。
「やめろって。お前にそういう態度取られると気持ちが悪い」
自分の回答に聊かホッとした顔を見せる後藤に但馬は探る様な目を向けた。
「珍しいな、お前が他人に其処まで入れ込むってのは」
『あの件以来だ』という言葉を呑みこみ但馬は軽い笑みを浮かべた。
後藤が本庁にいて剃刀と呼ばれた時代を知っている但馬はパートナーを失って以来後藤が必要以上に他人に深入りしなくなった事について良く知る者の一人だ。
その彼が今自分の同僚、この場合は部下に当たる訳だが・・・の行く末を思って骨を折る姿に但馬は心底安堵を覚え柔らかい笑みを浮かべた。
「余程 いいチームに恵まれたんだな」
「手のかかる悪ガキばっかりでね、苦労するよ」
そう言うと後藤は少し照れ臭そうな笑みを見せた。
隊長室を辞した遊馬と野明は隊員室に戻ると行動予定表の前に立った。
一度顔を見合わせ 遊馬がペンを取ると全員の名前を括弧で括り『準待機』と大きく書かれてた文字を眺めて少し考えたあと自分達二人の名前にかかっている部分の括弧だけを消した。
ひろみとその下に名前のある太田と進士、熊耳の4人をくくり直すように端を丸めると 自分達二人の名前の横に大きく『八王子出向』と書き添えた。
本来なら熊耳はその立場上 表の一番上に名前が記載されて然るべきなのだが2号機組としての行動の方が巡査部長としての予定よりも遥に多い為 熊耳自身の提案で二号機組の筆頭にその名前が記されていた。
ペンに蓋をした遊馬が野明を促し席に戻ろうとすると訂正された予定表を見た太田が徐に口を開いた。
「なんだ お前らまた出向か」
「まぁね、今回は準待機期間中のみって話だからシフトの負担は少ないと思うけどさ」
事もなげに言う遊馬に太田はあからさまに顔を顰める。
「シフトの件はいい。仕事だからな、しかしお前ら出向中まともな時間に上がって無いって話じゃないか」
ムスッとした顔で腕を組む太田に遊馬はきょとんとした目を向けた。
「・・・なんで んなこと知ってるんだよ?」
「何でもよかろう」
部長達が来ていた時、廊下で話を盗み聞きしていたとは言えない太田がそっぽを向くと事情を知っているひろみが苦笑いした。
その様子に状況を察した遊馬が一瞬呆れた表情を浮かべた後、ふっと気の抜けた笑みを漏らす。
自分の席にどさっと腰を下ろす遊馬の隣で席で椅子を引いていた野明は太田の顔を見ると軽く小首を傾げた。
「・・・もしかして、太田さん心配してくれてる?」
彼女の問いに急に気恥かしさを覚えた太田が慌てて「同じ小隊に居る者としてだな・・・」と言い訳を始めると一瞬苦笑を浮かべた遊馬が敢えて素っ気ないくらいの声で「今回は前ほど無茶な勤務はしないと思うからさ」と返事を被せた。
言葉を遮られたことにホッとした様子を見せた太田がチラリと遊馬の顔を窺い彼自身の表情に苦いものはなさそうだと見て取ると幾分安堵し太田は態とらしく「フンっ」と大きく鼻を鳴らした。
「こちとら身体が資本なんだからな、辛い様なら俺たちが・・・」
「気持ちだけ貰っとくよ」
太田にみなまで言わせず遊馬が参ったなという笑みを浮かべると彼はバツの悪さを誤魔化すように肩を聳やかし「無理はするな」と言うとフイと遊馬から目を逸らした。
「太田さん ありがとね」
野明が笑みを向けたとき丁度終業を告げるサイレンが鳴り響いた。
今日の作業を終え出向中必要になりそうなものを机から取り出す野明の隣で遊馬は少し考えて熊耳に声を掛けた。
「経費と日報のフォーマット、もってっても問題無いですよね」
「その位なら問題無いけど、書面じゃ無くてデータで持って行くの?」
USBメモリーを取り出す遊馬に熊耳が声を掛けた。
「・・・まずいですか?」
「構わないけど 急ぐ物でも無いんだから帰って来てから書いても遅くはないわよ?」
「そうなんですけどね、ツールがあるのと無いのとでは気の持ちようが違いますし。データで持ってると必要があればメールで送ることもできるでしょう?」
「確かにね じゃ気をつけていってらっしゃい」
気遣う様な表情を浮かべる熊耳に「はい」と返事を返した一号機コンビは各々必要なものを纏めると「お先に失礼します」と声を掛けて隊員室を後にした。
野明が更衣室を出ると先に着替えを終えた遊馬が女子更衣室の扉のほぼ正面で壁に背を預け軽く腕を組んで立っていた。
彼女に気がつくと腕を解き顔を上げ『いくぞ』とばかりに顎をしゃくり先に立って歩き始め野明は慌ててその後を追った。
タラップを降りハンガーを抜けるとそのままグラウンドを抜けバス停に向かう彼の半歩後ろを野明は小走りでついて行き、時々確認するような目線を送る遊馬の背中を複雑な気持ちで追いかけた。
バス停に辿りつくと日勤上がりの整備員が数名バスを待っていて二人は黙ってその後ろに並んだ。
微妙な空気の中 程なくバスが到着すると一番後ろの席に並んで座ったものの何となく無言のままバスからモノレールへ乗り換え車両が東雲のホームに滑り込む。
減速して扉が開く少し前に席を立ちかけた野明の腕を遊馬は反射的に掴み取った。
『おつかれさま』と言おうとした彼女の声は息と共に飲み込まれてしまい僅かに驚いた顔をした野明は手を振りほどく事もなく少し困った顔をして見せた。
「扉、閉まっちゃう」
駅名をコールする放送が響く車内で彼女が小さく首を傾げると発車を告げるベルの音がホームから響いてきた。
腕を掴まれたまま扉に目を移した野明は閉じていく安全柵と車両の扉を眺めて小さく肩を竦めた。
「・・・降り損ねちゃった・・・」
差して困った様子も見せずに言う彼女の腕を軽く引いて自分の隣に座り直させると目線を自分の膝に向けたまま遊馬がぼそりと口を開いた。
「・・・飯くらい付き合えよ」
「そういうことは 引き止める前に言う事じゃない?」
「・・・色々あんだよ」
不貞腐れた様な顔をする遊馬にチラリと目を向け野明は天井に向かってふぅっと息を吐きだした。
「・・・奢り?」
「ファミレスでいいならね」
「・・・嘘。どうせなら飲まない?割り勘でいいから」
「飲みでお前と割り勘じゃ 割に合わねぇよ」
遊馬が苦笑いを見せると新木場のホームに入った車両の扉が滑らかに開いた。
改札をくぐり遊馬の後について駅にほど近いチェーン店の居酒屋に足を向けた。
二人掛けの席に向かい合って座り取り敢えずビールとつまみを幾つか注文する。
何となく話の糸口を見つけられず互いに相手の出方を窺う様な雰囲気が流れ、店員がビールを運んでくると各々ジョッキを手に取り少し躊躇した後 遊馬が軽く腕を上げた。
「その・・・お疲れさん」
「遊馬もね」
小さくジョッキを合わせると軽く口を付け遊馬がゆっくりと口を開いた
「なぁ・・・お前さ・・・後悔してるのか?」
「え?」
彼の問い掛けに野明は弾かれた様に顔を上げた。
目を瞬く彼女から僅かに目を逸らし遊馬はジョッキの中身を一気に呷った。
「俺と・・・関係持った事・・・」
「え・・・?」
訊かれた事の意外さにジョッキを持った野明の手が止まった。
「出向から戻ってこっち・・・お前、妙に俺と距離取ってないか?」
「・・・それは遊馬でしょ?必要以上に私と接するの避けてるよね」
すっと視線を外す彼女に遊馬が驚いた顔を向けた。
「俺が?そんなこと・・・」
「あるよっ」
思わず彼の言葉を遮る様に言うと野明は慌てて口を噤んだ。
「ごめん・・・続けて」
「いや・・・お前 そう思ってたのか?」
黙り込む彼女に遊馬は困惑した顔を向け眉間に深い皺を寄せた。
「そんな心算は無かった、少なくとも俺は。不安にさせる要素があったなら言ってくれ、謝るから」
「謝るって・・・ そんなこと言われても」
逡巡する自分の顔を覗き込む彼の目に野明の中でどうにか保たれていた緊張の糸がゆるりと解けた。
みるみる内に青灰色の瞳に溜まった涙がぼろぼろと溢れ出すと吃驚した遊馬が慌てて彼女の頬へ手を伸ばした。
「・・・野明?」
「ねぇ 私達 先月までどう言う風に二課で過ごしてたんだろう」
「え?」
「よくわかんなくなっちゃった・・・出向してた時は早く二課に帰りたいって思ったの。気の置けない仲間がいて安心できる場所に帰りたいって。でも帰ってきたら 今度は・・・遊馬とどう接していいか判らない」
俯く野明の顔を覗き込むと遊馬は顎に手を掛け少し考えるような仕草を見せた。
「周りに知れると・・・困るでしょ?職種が職種だもの。・・・遊馬も私と少し距離を取ってたし」
野明の言葉に遊馬は微かに眉根を寄せ彼女の頬からそっと手を離した。
「距離か・・・確かに帰って来てからこっちお互いの距離感がちょっとおかしくなってるよな」
難しい顔で考え込んだ彼は右手を顎に宛がい顔を顰めた。
「それは俺も感じてた。・・・互いに一線を越えない内はこの上なく居心地の良かった場所が いざ関係が前に進むと窮屈さを感じる、皮肉なもんだな。・・・これじゃ 俺達の関係だけを取るなら出向している時の方が寧ろ普通で居られる、ってことか・・・?」
「でも・・・向こうで私は遊馬のパートナーでは居られない」
「『仕事上では』って注釈忘れるなよ。プライベートでは公言して憚らないパートナーだからな」
言いながら彼はうーんと唸りながら腕を組んだ。
「確かに勤務中どう距離を取るのか図り兼ねてた所はあるんだ。でもそれがお前にそんな心理的負担を掛けてるとは思わなかった。というか 寧ろ俺 避けられてるのかと思ってたぞ。準待機中も素っ気ない感じだったからさ、お前」
「素っ気ないというか・・・どう接していいか判らなかったんだもん・・・」
「普通で良いと思うんだけどな」
苦笑いする遊馬に野明は拗ねた目を向けた。
「普通って・・・」
「そうだよな、俺がこんな感じなのにお前にそれを言うのは酷だな。悪かった」
ふるふると首を振る野明の顔を眺め彼は軽く息を整えた。
「なぁ、お前 二課を離れる事になるとしたら、どうする?」
「・・・それは 交際が知れてってこと? それとも・・・」
「二課の再編を含めて、だな。普通に考えたら全員がバラバラの部署に飛ばされることは想像に難くないだろ?そうなった時 レイバー関連の部署にいける保証はない。お武さんや五味丘さんクラスならまだしも俺たち程度じゃ全く畑違いの部署に飛ばされる確率の方が遥かに高いだろう。そうなったら どうする?」
「どうって・・・遊馬はどうするの?」
「俺は・・・やっぱ好きだからな、レイバー」
「そっか・・・」
その一言に含まれる諸々の事柄を察して野明は静かに頷いた。
秋の人事。
その時に配属される場所如何で彼は警官という職業を辞する覚悟がある。
暗にそう宣言した遊馬の言葉に『自分はどうなんだろう』と自問して野明は小さく肩を落とした。
『レイバーが好き』という気持ちと同列程度に『警官』という職業も好きだった。
しかしそれは誰憚ることなく正論を言える今の環境、もっと言うなら後藤の庇護があっての事だと最近彼女は気がついた。
『ここの連中は警察組織にあって異色の集団だ』というような事を以前松井が口にしたのをふと思い出す。
『警官と言うよりは「正義の味方」だな』
その一言は正鵠を射ているのかもしれない。
警察と言う組織は 悲しいかな必ずしも正論だけで動くものではないことを彼女はこの数年で身をもって知ってしまった。
組織内の派閥もあれば要職についている者に対する媚びやごますりも日常茶飯事でそう言うものの前では平気で正義が捻じ曲げられる現実。
そんな中に一人で残されることは考えるだに心細い。
けれどその環境に置かれれば何となくそれに順応していくのだろうか、と考えて彼女は小さく首を振った。
それはきっと『なりたい自分』からは程遠い。
悩む様子を見せる彼女に遊馬は殊更淡々と言葉を継いだ。
「移る先が、レイバーに関われない部署になるようなら俺は退官すると思う」
不安そうな瞳で顔を上げた野明に遊馬は少し困った笑みを向けた。
「飛び出して来といて今更・・・とは思うけどさ。今回 開発に関わってみてやっぱ、好きなんだなって思った。スケジュールはタイトだったし、最初の頃 色々あって結構キツかったんだけどさ あの遣り甲斐と達成感は・・・正直クセになるな。それに、あの仕事をするなら今現場を離れたくないというのもある」
ジョッキに残ったビールを一気に呷り少し遠くを見る目をした遊馬は微妙で複雑な顔を見せた。
「今あそこに戻るのは正直気持ちの上で抵抗があるんだ。けど、革新目覚ましい開発分野は短期間で飛躍的に技術が向上する。今は特車二課、それも第二小隊に配属された事で幸か不幸か警官でありながらも最新の技術と機体に直に接する事が出来てる。けど、この先警官である事を選んで技術分野を離れたら多分 俺はもう開発関係には戻れない。その位、今の技術開発はペースが速いんだ。だから・・・」
「・・・もう決めたんだね」
寂し気な雰囲気をもつ瞳で笑みを浮かべる彼女に遊馬はゆっくりと頷いた。
「開発に関わってみたい、と思ってる」
「いいんじゃない?向いてると思うよ 遊馬に」
納得した顔で頷く彼女に遊馬はゆっくり問い掛けた。
「野明は・・・どうする?」
「私は・・・」
レイバーに乗りたくて上京してきた。
念願の新型レイバーに乗れてパートナーと仲間と職場と上司に恵まれて過ごした特車二課。
そこから出なければならないとなったら 自分はどうしたいんだろう。
考え込む彼女に組んだ両手に顎を載せた遊馬が探る様な眼差しを向けた。
軽く目を閉じて呼吸を整えるとゆっくり言葉を吐きだす。
「・・・一緒に、来ないか?」
弾かれた様に顔を上げた彼女は目を瞬いた。
「来ないかって・・・シノハラに?」
「そう。・・いや・・・違うな、『来ないか』じゃなくて、『一緒に行かないか』が正解か」
「そんなこと言っても・・・遊馬はともかく私は・・・」
野明が困った顔を見せると遊馬は微苦笑を浮かべた。
「・・・野明自身が思ってる以上にお前の評価は高い。欲しがるのは何もシノハラだけじゃないさ。・・・俺はお前を手放したくないんだ だから・・・」
徐に伸ばされた彼の手が野明の手首を掴むとテーブル越しに強く引いた。
「傍にいてくれ、頼むから」
「・・・でも・・・」
『真剣に仕事に取り組もうと言うのなら慣れ合いはマイナスになりこそすれプラスにはならない』
言葉を飲み込み戸惑う野明を見て遊馬は彼女の細い手首を掴む手に一際力を込めた。
「警察に残りたい、と言うならお前の意志を尊重したいと思う。けど・・・実家に帰るとか、他社に行くのは・・・絶対ダメだ」
「え・・・?」
「俺と同じように開発、お前の場合はテストパイロットってことになると思うんだけど そこを目指すならブランクをあけない方がいい、感覚は取り戻すのに時間が掛るからな。けど 俺と慣れ合うのを警戒して他社に行く、なんて事になったら・・・今より互いへの風当たりがきつくなるぞ。どこへ行くにしてもお前がレイバー関連で就職先を探せば開発につながる事は目に見えてる。そうなったら・・・互いに情報漏洩を疑われながら共に居ようとするのは色んな意味で負担が大きい。意図するしないに関わらず妙な壁が出来ることは判り切ってるし、そんな状態で長く一緒に居る事の難しさなんて態々口に出すまでもないだろう?」
遊馬の言う事は一々正論で野明はただ黙って頷いた。
「だから お前がレイバーに関わっていたいなら一緒に行こうシノハラに。職場での慣れ合い云々に関しては俺達の心がけ次第だし、実際先月だって仕事にそういうのは持ち込まなかっただろう?」
「そりゃ・・・作業中はね」
言葉を濁す彼女に遊馬はチラリと半眼を向けた。
「それ以外のとこに関してはプライベートに突っ込んでくる輩が居たんだから已む無しだろ。俺は嘘ついて誤魔化す気なんか無かったし、んなことしてお前と距離を作るなんざご免だったんだから」
「それはそうなんだけど・・・」
『文句あるか』と言う顔をする彼に野明は小さく肩を竦め、歯切れの悪い彼女の物言いに遊馬はそっと溜息をついた。
「・・・無理強いしたくは無いけどさ、『実家に帰る』とか言うなよ」
「遊馬・・・?」
「『離れてても大丈夫』って言ってやりたいんだけどさ、やっぱ苫小牧は遠いんだよ。今回、出向絡みの一件で懲りたからさ 顔の見えないところに行くな、頼むから。・・・俺が持たねぇわ」
彼女の白く小さな手を手繰り寄せ額に押し当てる遊馬に 腕を引かれ中腰になった野明が困惑した目を向けた。
傍に居たい意志はあっても即答できない野明に遊馬は深くて長い息を吐き意図的に自身の心を落ち着かせると、聊か乱暴な仕草で彼女の頭をクシャリと撫でた。
「即答を求める心算は無いから ヴァリアントの納入時期が正式に決まるまでを目安に考えてみてくれ」
遊馬はそう告げると掴んでいた彼女の手首をそっと離した。
肘をつき、ひっこめた手を自身の顔の前で組み直すと遊馬は両手の親指でこめかみを強く押さえ軽く目を閉じた。
離された手首を戸惑った様子で見遣った野明は改めて椅子に座り直し、考えるべき事の多さと重さに知らず深い溜息をついた。
沈んでしまった場の雰囲気もまた微妙に居た堪れず所在無げな様子でビールジョッキの持ち手に指を滑らせていると 軽く頭を振った遊馬がすいっと顔を上げた。
「悪ぃ、なんか妙な雰囲気になったな。その事はまた追々考えて貰うとして当面はさ、飲まないか?折角 来たんだし」
苦笑する遊馬に野明もまた微苦笑を浮かべてコクリと頷いた。
二時間ほど飲んで店を出ると時間的にはここ一月遊馬が徹底してきた『東雲寮の門限』を厳守して送るに十分な時刻で二人は互いに顔を見合わせてクスリと笑った。
「送るよ」
いつもと同じようにそう言うと遊馬は先に立って歩き出す。
街路灯が落とす少し前を行く遊馬の影を無意識に踏むようにして歩を進めていた野明は胸に刺さるチクンとした小さな痛みを感じてそっと俯いた。
顔を見られたく無くてそのまま影踏みに集中するように下を向いているとあと一つ角を曲がれば寮の前に出るという所まで来て遊馬の足がピタリと止まった。
下ばかり見ていて反応の遅れた野明が危うく彼の背中にぶつかりそうなると不意に振り返った遊馬の腕が小柄な彼女の身体をぐっと引き寄せた。
小さな身体がすっぽりと彼の腕の中に収まってしまうと彼女の肩口に額をつける様にした遊馬のくぐもった声が野明の耳に届いた。
「帰るなよ・・・」
「・・・え?」
彼の言葉に驚いて野明の肩がピクリと跳ね上がるとそれを抑える様に身体に回された遊馬の腕に力が籠った。
「寮に・・・戻るな・・・」
「あの・・・でも・・・」
「帰したくない」
静かで決して強い口調ではないのにその声には彼女を縛る力がある。
とくん・・・と一度 大きく脈を打った心臓はそのまま早鐘を打ち始めた。
ここ一月聞く事のなかった遊馬の声音にキュンとする感覚が走り彼の腕の中から彼女の小さな溜息が零れた。
「今 そういう声、出さないでよ・・・」
「なら 後にする」
「・・・後って・・・」
肩口から聞こえる声に野明が溜息交じりで応じると遊馬は口の端に小さな笑みを浮かべそっと腕を解いた。
久しぶりに感じた彼特有の香りと温もりがすっと遠退くのを感じ野明の顔に名残惜し気な表情が浮かぶと それを見た遊馬が柔らかな笑みを浮かべた。
「ここで待ってる」
その言葉に一瞬目を見開いた後、仄かに頬を染めた野明はチラリと遊馬の顔を見上げフイッと目を逸らした。
「・・・狡いんだから」
「今に始まった事じゃねぇだろ?」
くるりと踵を返した野明にしれっと言ってのけると遊馬はそのまま壁に背中を預けて軽く腕を組んだ。
チラリと彼を振り返った野明はその姿に軽く肩を竦め諦めた様にふぅっと大きく息を吐きだした。
「・・・30分」
少し考えてから野明が提案した待ち時間はチラリと半眼を見せた遊馬によってあっさりと短縮されてしまった。
「20分だな」
「無理。20分じゃいくら何でも荷物が纏まらないってば・・・女の準備を甘く見ないでよねっ」
頬を膨らませ抗議する彼女に遊馬は吹きだすように笑った。
「へいへい。じゃ 『女らしい』荷物が纏まるのを大人しく待ちますよ。ここでぼーっと立ってるってのも不審者みたいだから駅前で珈琲でも飲んでる。用意が出来たら連絡寄越せ」
そう言ってヒラヒラと携帯を振って見せた遊馬がひょいと壁から背を離し、野明に向かって軽く手を振ると小さく頷いた野明が小走りで角を曲がっていった。
寮に駆け戻る彼女の後姿を見送ってから 来た方向に足を向け直すと遊馬はゆっくりと駅へ向かって歩き始めた。
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追記
はい グダグダな展開でごめんなさい~
どうにか纏めに入ろうと努力はしてますので見捨てないでやってくださいね(^^;
投げちゃおっかしら・・・と思う事も時々ありますが 頂ける感想やコメントを糧に気力を絞り出してます~
夏の暑さと子供の夏休みに負けない様に頑張りますので お時間があれば是非コメントに限らずメールでも拍手でも内緒コメントでも送っていただけますと小躍りした私が夜な夜な更新に勤しみます(笑)
では皆さまも 夏バテなどなさいませんよう・・・・
ここまでお付き合いくださってありがとうございました!
非公開 2010年07月21日(水)18時34分 編集・削除
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