野明の誕生日とクリスマスが近づいてきましたね~♪
というわけで行事には乗っかろうということでSS★
誕生日からクリスマスまでをつなげたかたちで 3部作の予定です(^^)
まずは 最初の一本目です~
長いので畳みますね♪
ご興味を持って下さった方は続きをどうぞ!
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memorial days 1st
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誕生日とクリスマス。
おそらくはカップルといわれるような間柄の人間にとって二大イベントと言って差し支えのないものがきっかり一週間しか間を空けずに連続していることほど懐に痛いことはない。
とはいえ どちらも日付をずらすことなどできない類のものなのだからそれは仕方のないことで。
せめてもの救いはすでにボーナスの支給が終わっていること。
そこからある程度考えた額を工面することにして、寮をでて借りたマンションの一室で通帳を片手に頬杖をついて考える。
プレゼントを二つに分けるか 大きなものを一つ渡すか。
単純に考えると二回渡した方がちゃんと区別してもらえてる感があってうれしいのかもしれないがそうするとどうしても個々の予算は小さくなるので大したものは買えなくなる。
纏めるとそこそこいいものが用意できるだろうがそうなるといつ渡すかが問題になる。
クリスマスに渡すとなると誕生日にはなにも手渡すことができなくなるし、そうかと言って誕生日に渡すとクリスマスのときおそらくは何か用意してくるであろう彼女に返すものがない。
物憂げなため息をついた遊馬は誰にもとなく気弱な声で「どうすっかなぁ」と呟いた。
しばらく考えた後、勢いをつけて通帳を閉じるとそのまま立ちあがって部屋を出た。
結論としては・・・分けて用意しようということ落ち着いた。
自分の誕生日には彼女からそれなりのプレゼントを受け取っていた。
当然 礼は返した訳だがそういう問題でもないだろうと思って少々痛いとわかっていてもそれなりの出費を覚悟した。
とりあえず足を向けたのはデパートの集中する新宿。
何を選んだらいいのか皆目見当もつかないのでとりあえず大きな店舗でどんなものが人気なのかを軽くリサーチすることにした。
駅に隣接したデパートに入って目につくのはアクセサリーと化粧品の売り場。
どこも華やかにクリスマスのデコレーションを施して『この時期限定の商品』を用意してアピールに余念がない。
ざっと見て回ろうとすると素早く店員がすり寄ってきて「プレゼントをおさがしですか?」と声を掛けてくる。
面倒くさそうに「まあ そんなところです」と答えると店員はなんだかんだと商品についての説明を始めたが彼女の薦める商品に遊馬は全く興味が持てずに適当にあしらいつつ売場を歩き回った。
小一時間うろうろした結果、化粧品はこの時期限定のセットがたくさんあったものの善し悪しの判断がつかないのでやめた。
アクセサリーも職場にしてこれるものでもないのでそうすると出番がなく仕舞い込まれることになりそうで気が進まなかった。
第一 普段しているのを見かけることがないので好みがいま一つわからない。
結局決め手になるものが探せなかった遊馬はポケットから携帯電話を取り出すと一瞬だけ躊躇して思い切って発信釦を押した。
小一時間で呼び出しに応じた彼女が待ち合わせたコーヒーショップに姿を見せると少し休憩したあと再び街に足を向けた。
「もうすぐ誕生日だろ、なんか欲しいものあるか?」
まだるっこしいことをせずにストレートに聞くと彼女はびっくりしたような顔を向けた。
「え、何?」
「プレゼント なんか欲しいものないのか?」
「いいよ、そんなの」
そう言ってひらひらと顔の前で手を振る野明に遊馬は不貞腐れたような顔を見せた。
「よかないの。俺の誕生日には貰ってるしさ」
「でもちゃんとお返ししてもらったし。気にしなくていいのに」
苦笑する彼女に遊馬は渋面を作った。
「いいから。なんか言えよ、そりゃまぁ予算に限りはあるけどな」
「ええ? う~ん、でもなぁ・・・」
真面目な顔で考え込んだ野明に『予想はしてたけどね』と心中で溜息を吐きながら様子を窺った。
結局即答できない彼女は遊馬の顔を見上げて申し訳なさそうに言った。
「すぐ思いつかないんだけど。少し見て回ってもいい?」
「どうぞ。まず どこからみる?」
そう言って何件か店舗を巡っていくとインテリアのコーナーで野明は足を止めた。
見上げる先には大きめのツリーがある。
高さは遊馬の背とさほど変わらないくらいの大きさで枝葉が割と沢山繁っていた。
「何、ツリー欲しいのか?」
何気なく聞くと少し困ったような顔を見せてツリーに目を戻す。
「大きいのってちょっと憧れるじゃない?でも寮の部屋には置けないもんね」
名残惜しそうな顔を見せていた野明が不意に何か思いついたように顔を上げ遊馬をくるりと振り返った。
「ね、遊馬の部屋に置いちゃダメ?」
「・・・は?」
予想外の提案に遊馬は思わず訊き返した。
一人暮らしを始めた遊馬の部屋は2DKの間取りがあった。
確かにダイニングに置く分には生活に支障はないのだが。
遊馬は聊か呆れたような顔をして野明の方を見遣る。
「お前が飾りたいんだろ? 俺の部屋に置いてたら見れないだろうが」
「だからさ、クリスマスは遊馬の部屋でケーキとか食べればいいじゃない?」
「俺の部屋で?」
明らかに意外そうにいう遊馬に野明の顔に不安気な色が広がる。
「あ・・・と・・・他にもう予定っていうか、約束、あるの?」
『無い』と勝手に思い込んでいたことに野明は軽く自己嫌悪に陥って思わず彼を見る目が上目遣いになる。
その様子に遊馬は軽く息を吐くと小さく笑った。
「そんなもんは無いけどね。どうせなら外でディナーとかでもいいんじゃないかと思ってたからさ、それともその後で家に来るか?」
ニッと口角を上げて見せる遊馬に野明は仄かに頬を染めると目線をすっと外した。
「あ・・えっと それは・・・」
「ばぁか 真剣に悩むなよ、それはともかく 誕生日プレゼント探しにきたんだけどまさかこれがいいとか言う心算じゃないよな?」
確認するだけ、といった口調でさらりと言った遊馬に野明はあからさまに表情を曇らせた。
「・・・・駄目?」
「『駄目?』って・・・まさか お前本気でこれがいいのか?」
呆れを含んだ顔で言われて野明はますますしゅんとした顔を見せた。
「誕生日にっていうのには随分毛色が変わったものだと思うけどさ、これがいいならそれでもいい。けどそうすると他のもの買えないぞ?予算には限りがあるんだからな」
そうって笑ってみせると野明は一気にふわぁっと表情を崩し嬉しそうな笑顔を見せた。
嬉々とした顔でツリー本体を物色し、決めたもののタグを手に幾つかオーナメントを選んで籠に入れていく。
個別に好きなものを買い込むとそれなりの値がかかるが遊馬は楽しそうに悩みながらとっかえひっかえ手に取ったオーナメントを真剣な顔で吟味していく野明を興味深げに眺めていた。
時折 遊馬に「どっちがいいかな?」と意見を求める姿は『傍から見たら普通にカップルに見えてるんだろうな』と思い軽く肩を竦める。
その様子に野明が遊馬を振り仰ぎ、目があった遊馬は何事もなかった顔をして「きまったのか?」と声を掛けた。
野明は籠入れられた数種類のオーナメントに目を落とす。
「多い?」
言われて遊馬も籠を覗き込んだ。
「いいんじゃないか? 本体もデカイし。あんまり少なくてもさみしい感じになるからさ」
そういうと籠をひょいと取り上げてレジに向かった。
買った品物が大きく嵩張るのでオーナメントも一緒に配送の手続きを済ませ遊馬が戻ってくると野明は嬉しそうに遊馬の腕を取った。
「ありがとう」
「どういたしまして。けど誕生日プレゼントがあんなので本当にいいのか?」
「いいの。すごく欲しかったんだけど大きすぎて絶対寮の部屋には置けないでしょ。遊馬が寮でててよかったぁ」
楽しげに笑う野明の顔に遊馬の顔もつられて綻ぶ。
「ま いいけどさ。とリり合えず明後日の夜には届くからクリスマスまでには飾りつけに来いよ。俺一人でやるのは嫌だからな」
「うん。仕事終わったら寄るっていうのでどう?」
「それでもいいけどさ。で 誕生日はどうするんだ?仕事の後じゃ行けるところなんて限られちまうけど」
「そうだよねぇ・・・ね、飾り付けもあるし何か買ってきて部屋で食事しない?」
「俺はその方が楽だけどね。お前はいいのか? せっかく誕生日なのに普段の休日と過ごし方があんまり変わんねぇぞ」
遊馬が苦笑交じりに言うと野明ははにかむ様に笑った。
「そう?でも一緒にいてくれるだけで十分なんだけど」
呟くような小さな声にドキリとして野明を見遣ると目線を泳がせた彼女は少し頬を染めていた。
「ま 期待に添えるよう努力はするよ」
軽く応じると遊馬は彼女の髪をくしゃりと撫でた。
居酒屋で軽く食事をとってから帰宅すると遊馬は熱めのシャワーを浴びながら少し考える。
『誕生日にクリスマスツリーって 本当にそれでよかったのか?』
軽く首を捻り それでも『あれだけ嬉しそうだったんだからツリーそのものはあってもよかったんだろう』と思いなおし軽く頭を振った。
部屋に戻って見るともなしに雑誌をパラパラとめくると時期が時期だけにクリスマスのプレゼントに関する特集が多く組まれていて無意識にそのページを目で追った。
紹介されていいるものはアクセサリーやジュエリーが圧倒的に多くて遊馬は小さく溜息を吐く。
「なんか 違うんだよな」
そう呟くととりあえずベッドに横になった。
寝ながら考えてみても妙案が浮かぶわけでなし何時しか遊馬は軽い寝息をたてていた。
翌朝 二課に顔を出すとすでに自分以外の全員が出勤してきていていつものように太田が「たるんどるぞ!」とちょっかいを掛けてくるのを軽くあしらうと自分の席に腰を掛けた。
「おはよう」と屈託なく挨拶をする野明に「おう」と返事を返し放置したままになっていた報告書を仕上げるべくペンを手に取った。
午後にも大きな事件もなく定時には上がれそうだという時間になって二課に遊馬があまり歓迎しない客が来た。
その男は例によって野明の好きそうな洋菓子の手土産を携えて隊員室までやってくるとことさらさわやかに挨拶をして見せた。
「こんにちは 皆さん」
「あら 風杜さん。ということは今日は松井刑事もおいでなのかしら?」
素早くそつなく熊耳が応対すると こちらもまたそつのない態度で応じる。
「ええ 隊長室にいますよ。南雲さんには煙たがられてるようですけどね」
その答えに小さく笑うと熊耳は軽く同情するような目を向けた。
「泉さんなら今 席をはずしてるわよ?」
彼女の視線を追って 野明の席に目を向けると興味がなさそうな顔をしたパートナーの隣は空席だった。
「あれ どうしたんですか?」
目線を向けられていることに気づいても全く意に介そうとしない遊馬に代わって熊耳が答えた。
「さっき シゲさんに呼ばれていたからハンガーだとおもうんだけど?」
「そうですか、じゃ これ皆さんで」
言いながら箱を熊耳に手渡すとそそくさと部屋を出ていく。
その後ろ姿を見送って揶揄するような目で熊耳は遊馬を見遣る。
「いいの?」
「何がです?」
「風杜さん。ハンガーに向かったんじゃないかしら?」
「・・・・ 電算室に行ってきます・・・」
そう言って席を立つ遊馬を見送ると「本当、素直じゃないわねぇ」と呟いて熊耳はやれやれと肩を竦めた。
野明の姿を探すと案の定 風杜が彼女に声を掛けていた。
しかしその様子がいつもと少し違う。
声を掛けられた野明が困った顔をするのは珍しいことではないのだがその困り方が困惑を含むいつもの顔ではなく、どちらかというとはにかむ様な表情を浮かべていた。
結局会話の内容を聞き取ることはできずにいたが野明が丁寧に風杜に頭を下げてほっとした笑顔を浮かべ奴が機嫌よく「じゃ あとで」と手を振る姿は確認できた。
なんとなく面白くない気分で その場を立ち去ると電算室でデータの解析を始めた。
しかしどういうわけか ちっとも集中できなくて作業が全く捗らない。
結局 今やっても時間の無駄だと判断して隊員室に戻ると席について書類にペンを走らせる野明の様子をちらりと窺う。
リラックスした表情からは何も窺うことができずに遊馬は彼女から視線を外すと自分もまた書きかけの書類を取り出してペンを握った。
あと30分で定時という時間になって二課棟内にサイレンの音が響いた。
『池袋で落盤発生』
そう告げる声に野明は あちゃっという顔をして軽く肩を竦めた。
その反応に思わず遊馬が食いつく。
「なんだよ、なんか予定あったのか?」
聞かれた野明はあからさまに動揺して「え? あの・・えっと・・・ううん 平気」と答えると「ごめん ちょっと先に行ってるね」と言い置いて隊員室を走り出ていった。
ハンガーの入り口で 風杜を見つけて走り寄りしきりに頭を下げている野明を見て無性に苛ついてキャリアの準備まであと少し掛るのにも関わらず指揮車のドアを開けながら大声で野明を怒鳴りつけた。
「なぁにやってんだよ! 出動かかってんの分かってるのか? さっさとキャリアに乗れよ!」
「あ うん。ごめん、すぐ行く!」
言いながら もう一度頭を下げる野明を前に風杜が苦笑交じりの笑顔を向け頭をぽんぽんと叩く姿に思わず苦虫を噛み潰したような顔になる。
その顔を認めて野明がびくっとして慌ててキャリアに駆けていった。
移動中こそ妙に気まずい雰囲気があったものの現場に着くと遊馬は頭をサクッと切り替えて現状を正確に把握して的確な指示をきびきびと飛ばし 二号機コンビも熊耳の完璧な状況判断と忠実な太田の対応で驚くほど速やかに事故処理を終えた。
老朽化した下水管の破損による陥没でここ最近都内では珍しいものではなかったが今回は場所が大きな繁華街に面していることからその影響は他の地域に比べると大きかった。
軽傷者が数人でる程度で済んだのが奇跡的といってよく、また連鎖崩落の恐れもあることから周辺一帯に規制線が張られることになった。
数日は下水管の交換工事でこの辺一帯は不便を強いられることは明らかで遊馬は軽い溜息を吐きつつ撤収の指示をだす後藤に復唱を返した。
野明がキャリアに駆け戻る姿を目にした遊馬は一瞬迷った末に声を掛けた。
「野明 こっち乗ってけよ」
キャリアの真横まで来ていた野明が戸惑って動きを止めると運転席からひろみちゃんが遊馬に向かって小さく頷き声を掛けた。
「泉さん 行ってください」
「えっと・・でも」
自分と遊馬の間で忙しなく視線を動かす野明にひろみは不思議そうな顔を見せた。
「なにか行きたくない理由があるんですか?」
「えっと・・・」
野明にしては珍しく歯切れの悪い様子にひろみは首を傾げ ふと遊馬を見遣ると少し苛ついた雰囲気で指揮車の扉に手を掛けている姿が目に入る。
なんとなく野明の心中を察したひろみが気遣わしげな顔を見せた。
「無理しなくても気が進まないなら僕から遊馬さんに伝えましょうか?」
その声に一瞬ハッとした様子を見せたものの、顔を上げると野明はふるふると首を振った。
「ううん。ありがとう ひろみちゃん。大丈夫だよ じゃ行ってくるね」
そう言ってくるりと踵を返すと遊馬の開けた扉にするりと吸い込まれていった。
中に入るとすでに補助シートはセットされていて野明は小さく深呼吸するとそこに腰をおろしベルトを装着した。
妙に気まずい沈黙が流れてなんだかいたたまれない気分になる。
野明の準備ができたのを横目で確認すると遊馬は殊更に事務的な口調で「出すぞ」とだけ言ってゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
高速の入り口を潜ったころになってようやく遊馬が口を開く。
「無口だな」
黙って座っていた野明はその声に肩をピクリと跳ねあげて遊馬を振り返った。その様子に気づかぬふりをして遊馬は淡々と言葉を継いだ。
「出動掛って残念だったな。」
「・・・え?」
吃驚した顔をして遊馬を見ると不機嫌そのものといった顔をした彼の顔が目に入り野明はますますいたたまれない気分になる。
「なんか約束してたんだろ、あいつと」
「遊馬・・・?」
彼の言葉の途中で思わず遮るように名前を呼んだ。
その声は不安そうに震えていていつもの遊馬ならその心細そうな声音に気づくところだが今の彼にはその心の余裕が欠けていた。
「連絡しなくていいのか、まだ8時前だし時間ならまだ・・・」
「遊馬 まって」
今にも泣きそうな野明の声に遊馬は漸く一瞬顔を向けた。
困惑して目にうっすらと涙まで浮かべる野明の様子に思わず怯みかける。
膝の上で組んだ自分の手を見詰めながら震える声を精一杯安定させて声を絞り出した。
「・・・連絡はしない。もう 間に合わないもの、それに・・・」
一呼吸置くと野明は口元を覆ってゆっくりと息を吐きだすと頭を軽く振った。
「こんな風になるならもう、いい。」
その様子に遊馬は渋面を作る。
「なんだよ、それ?」
野明はただふるふると首を振る。
「本当にもういいの、そもそも風杜さんにも悪いし」
奴の名前が出たことで遊馬の機嫌はまた少し傾く。
軽い渋滞に巻き込まれて速度が落ちたところで遊馬が意地の悪い顔を見せた。
「俺の所為みたいで気に入らねぇな 門限までなら時間あるだろ、なんならこの辺で下ろしてやろうか?報告書位俺が・・・」
「・・・遊馬は 私に風杜さんと出かけてほしいの・・・・?」
明らかにテンションの下がった声で問われた内容に遊馬はムッとして声を低めた。
「んなこと 言ってねぇよ、お前こそ奴と嬉しそうに約束してたじゃないか?なんなら 誕生日とかクリスマスも奴と・・・」
「遊馬の馬鹿っ、なんでそんなこと言うの?私 楽しみにしてたのに・・・」
「だったら何で奴と出歩く約束なんてするんだよっ?!」
言ってしまってから遊馬はバツが悪そうに顔を顰めた。
「・・・わりぃ。俺が干渉する話じゃないよな、うん。」
「遊馬・・・?」
先ほどよりも濃い不安を湛えた声音と瞳で野明は遊馬を見詰める。
「付き合ってるわけじゃないんだしお前が誰と出歩いたとしてもそれはお前の自由だ、悪かった」
そう言ってその話はもうお終いと言わんばかりに一人頷く遊馬に野明は本気で動揺した。
「やだ・・・遊馬。お願い そんな風に言わないで?」
「もういいって」
「嫌っ、良くないの。本当に。私 軽率だったなって反省してるから」
「だからいいって。今日は残念だったけど明日だって早く終われるかも知れないし、連絡とればいいだろ?」
「もういいの、本当に。遊馬とこんな風になるんだったら 頼まなきゃよかった・・・」
ぽろぽろと涙を零し始めた野明に遊馬は聊か戸惑って態度を改める。
「頼むって・・・何頼んだんだよ?」
先ほどよりは落ちついた遊馬の声に野明は少し考えるような仕草を見せ諦めたように口を開いた。
「・・・買い物。クリスマスに遊馬に何か渡したかったの。でも男の人にプレゼントなんて何を買っていいのかわからなくて・・・」
「・・・それで同行を頼んだのか?」
野明は顔を朱に染めて小さく頷いた。
自分にしか見せないと思っていたあのはにかむ様な顔を奴の前でみせた理由に漸く得心が行った遊馬は盛大な溜息を吐いた。
安堵と自分と野明に対する呆れ、それに若干、奴への同情も加わった複雑な溜息。
「あのな、野明。いろいろ考えてくれたことは嬉しい。でもな お前その発想はちょっと間違ってるぞ」
ハンカチを差し出しながら呆れた眼差しを向けると ぽろぽろと涙を零しながら野明が訊き返した。
「間違ってる?」
「そ。俺はさ 野明の選んだものなら何でも嬉しいと思うよ。でもあいつが選んだと思うと面白くない。まして『一緒に買い物に行きました』とか言うのは・・・本気で嫌だぞ」
借りたハンカチで涙を抑えながら野明が遊馬の顔をきょとんとした顔で覗き込む。
「たとえばそうだなぁ・・・・俺がお前にやるプレゼントを買いに行くとして、俺にちょっかい掛けるような学生時代の同級生の女に相談して『二人で選んできました』とか言ったら嬉しいか?」
「・・・ごめん」
「まぁ いいさ。結局未遂に終わったわけだし。奴には悪いけど見立てに同行は勘弁してくれ。素直に喜べん」
不貞腐れたような顔をした遊馬にこくんと一つ頷いてにこりと笑う野明に遊馬もまた軽く笑みを返す。
「それはともかく 明後日は家に来いよ、例え仕事で遅くなっても誕生日はちゃんと祝ってやる」
「うん」
「出動掛ると遅くなるかもしれないし、寮に外出の許可取っとけよ?そんときゃ泊ってっていいから」
さらりという遊馬に野明はうっかり頷きかけて動きを止めた。
「えっと・・・?」
「緊張するようなことかね、普段だって宿直で月の半分は二課に泊まり込んでるし雑魚寝した回数なんて数えてらんないくらいあるだろうが。部屋はあるんだから一つ貸してやる。それでも不安なら遅くなっても送ってやるけど?」
「あ ううん。そうだね、部屋貸してもらおうかな、うん」
にっと笑う遊馬に思わずドギマギして声が上ずった。
その様子を見ながら遊馬は小さく笑う。
「一人が寂しけりゃ一緒でもいいけどな」
クスクス笑う遊馬に野明は「それは・・・平気・・・だと思う」と目を逸らして俯いた。
「とりあえずそういう約束な。後は臨機応変。誰かさんと違って俺は予定の変更に振り回されることはないってのは強みだな」
遊馬は機嫌よく笑うと野明の頭を軽く撫でた。
野明は心地よさそうに目を閉じると「あとで電話しとかないとね」と笑う。
「電話?」
「そ。『プレゼントはやっぱり自分で探します』って。言っとかないと風杜さん気を使って何度も二課に連絡くれそうでしょう?」
「あ~ そうだな・・・」
『そうでなくても何かにつけて連絡は取ってくるだろうけどね』と思いつつ『それでも絶対阻止してやる』と心の中で舌を出す。
「だから遊馬、明日は仕事のあと時間頂戴。頑張って探してくるから」
楽しそうに笑う野明に「はいはい どうぞ。楽しみにしてるよ」と応じつつ遊馬は微妙にくすぐったい気分を味わう。
『仕事以外の時間』は互いに何をしていてもいい筈なのに『時間を頂戴』と自分に断りを入れる野明が可笑しくて堪らなかった。
軽い優越感を味わいながら遊馬は野明に声を掛けた。
「じゃあ 俺も見てこようかな」
「え?」
「クリスマスプレゼント。当日までお互い中身は内緒にしとこうぜ、その方が楽しみがあっていい」
「分かった、約束ね」
楽しげに声を立てて笑う野明に遊馬は少しホッとして 同時に『自分がこんなに嫉妬深かったとは思わなかった』と小さく肩を竦めた。
memorial days 2ndへ
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というわけで 誕生日前のお約束編ですね(笑)
さくらが書くと長くなる~(^^;
そして今回も風杜氏が幸せになることはなかったです。
一瞬持ち上げて さっくり突き落した感じですかね~
風杜ファンの皆様 すみません(笑)
次回は誕生日編です!
目指せ 当日中UP で行きたいと思います!
(で 連載どうした?!)
ツッジー 2009年12月15日(火)09時29分 編集・削除
今後の展開が気になる( *´艸`)♪
遊馬ってば、ヤキモチ焼きだなぁー(≧∇≦)