さて不在の第16弾です
やっと書きましたよ、続き~
ちょっと身の回りがゴタゴタで時間がぁぁ(^^;
ではでは 続きをどうぞ♪
合間合間にやってます~ 遅くてごめんね~
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不在 16
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SIDE-A&N(5)
部屋に差し込む朝日が顔の上を撫でる。
眩しさに顔を顰め、光を遮ろうと腕を上げようとして腕の中に抱え込んだ女性(ひと)の存在を思い出した。
腕を動かしたことで居心地が変わったのか軽く呻いて身を捩る。
その姿は思ったよりも艶があって思わずドキリと心臓が跳ねた。
貸してやったTシャツの襟首は野明には広くて、鎖骨が少し覗く。
長く見ていると 妙な気を起こしそうな気がして目線を外した。
結局、野明に乞われて一晩添い寝したことになるになるのだが狭いシングルに窮屈に身を収めた割には夢を見ることもなくよく眠れてしまった事に自分で呆れた。
野明がかなり小柄であることと自分から腕に収まってくれたことで横に並ばなくていい分、場所を広く使えたことはあるだろうが。
紛いなりにも思いを寄せている女性を腕に抱え込んで一晩爆睡できるとは思わなかった。
安心したことは認める。
この一か月 碌に連絡も取らずにいて他の男と出歩いているのをTV画面で見たり、その男とサシで話すことになったりと妙に神経がすり減ることが多かった。
ようやく昨日 野明も出向してくる形とはいえ一日一緒に行動できたものの一日の最後にナンパ野郎に狙われる始末。
そこへ持ってきて本人自ら腕の中に転がり込んでくれば『手元に返ってきた』と安堵しないわけがなかった。
とはいえ『俺、どういう風に見られてると思えばいいんだ?』という疑問も当然沸く。
『人畜無害』と思われているんだろうか?
首を捻って考えてみる。
『俺、前に一度こいつに「抱かせろ」って言ったことあったんだよなぁ・・・』
軽い溜息をつきなながら天井を見上げた。
あの時のことを野明はどう思っているんだろう。
あとから『気にしてるか?』と訊いた時、『お役に立てませんで』と照れ笑いをした顔を思い出し、今更ながら遣り切れない気持ちになった。
あの一件は自分の中で大きな蟠りになってしまっていた。
今更 野明に同じことを言う勇気はない。
自棄になって『自分に構うな』という拒絶を込めてあの時点で思いつく最も酷い言葉を叩きつけた。
しかし投げつけた言葉の内容(なかみ)が今になって枷になる。
大事に思い 手に入れたいと願っても 同じ字面の言葉を発することが怖くなってしまった。
もし野明があの時の荒れた気持ちを思い出して自分を拒絶することがあったら、と思うと怖い。
そんなことはない、彼女は謝罪を受けて入れてくれたと分かっていても反射的に思い出してしまうことがないとは言えない。
そしてそれは 自分の咎だ。
それは遊馬が自ら野明に向かって踏み出していけない要因の一つになっていた。
寝返りを打って 居心地のいい場所を見つけたのか再び腕の中で寝息を立てて眠る野明の髪をそっと梳くように撫でながら軽く息を吐く。
聞えよがしに呟いてみた。
「なぁ、俺のことどう思ってるんだ?」
返ってくるのは安心しきった寝顔と軽い寝息。遊馬は苦笑を浮かべて仰向けに転がった。
「本当はさ 起きてる時に聞かなくちゃいけないんだよな・・・」
自嘲気味に笑うと 時間を確認する。
起床時間まではあと一時間ほど余裕があった。
一度目を閉じて 二度寝を決め込むと再び深い眠りについた。
軽やかな目覚ましの音で目を覚ました野明は体を起こそうとして自分を抱き込む遊馬の腕に阻まれた。
一瞬考えて 昨夜『頼んだら、してくれる?』と自ら添い寝を頼んだ事を思い出し仄かに頬を染めた。
そっと遊馬の顔を窺うと よく眠っていて起こすのが気の毒なくらいだった。
腕の中から覗く遊馬の顔は 思いのほか近くて彼の寝息が前髪にかかって擽ったい。
その端正な顔を見つめて野明は顔を切な気に歪めた。
起きないかとドキドキしながらも誘惑に勝てずそっと彼の頬に触れてみた。
予想外にヒヤリとしていて反射的に手を引きかけたが ぐっとこらえて掌を顔に添わせた。
ここ一月近く 音沙汰もなくてどれだけ心細かったか。
「心配、したじゃない」
極小さな声で遊馬に向かって抗議した。
反応がないことに拍子ぬけすると共に 安堵も覚えて更にひとこと言を継いだ。
「遊馬の馬鹿。寂しかったんだからね」
彼の寝まきを軽く掴んで額を胸に付ける。
「一人にしないでよ・・・」
口に出してしまうと 箍が外れた様に涙が溢れてきた。
暫く声を殺して泣いていると不意に頭を軽く撫でられた。
驚いて顔を上げると遊馬が困った顔で自分を覗き込んでいた。
「どうした、怖い夢でもみたか?」
野明は静かに首を振る。
「大丈夫、起しちゃった?」
努めて笑おうとする野明の頭をぐっと引き寄せる。
「泣きたいなら、ちゃんと泣け」
そう言われて野明はくすりと笑った。
「本当に大丈夫だよ。遊馬いてくれるし」
「それが声を殺して泣いてた人間の言うことか?」
苦笑する遊馬に拗ねたように答える
「だって・・・遊馬がいなかった時のこと思い出しただけだから」
正直に言うと顔を真っ赤にして遊馬が目をそらした。
「・・・っ・・・ っと・・ああ そう。まあ うん ならいいんだけどさ」
その反応に思わず自分も赤面する。
「やだ・・・そこでそういう反応しないでよ・・・」
顔を胸に埋めるようにして俯くと頭の上から遊馬の少し上ずった声が降ってきた。
「さてと・・・そろそろ起きないとな。俺らが出勤しないと試験すすまねぇし・・・。体、起すぞ?」
野明の背中を手で支えるようにして身を起こすと両手を組んで上に大きく伸びをした。
「先、着替えて顔洗って来いよ。お前の方が時間かかるだろ?」
言いながら欠伸を噛み殺しつつキッチンに向かう。
野明がそそくさとベッドを下り着替えを掴んで洗面所に消えるのを確認して自分もサクッと着替えを済ませてコーヒーメーカーをセットした。
野明がリビングに戻る頃には 芳しいコーヒーの香りが部屋に満ちていて昨晩買ったパンやサラダが無造作に机に並べられていた。
「ほら」と目の前に牛乳と砂糖を加えた甘めのカフェオレを差し出すと自分はブラックのコーヒーを手に席に着いた。
ほど良い甘さのカフェオレに思わず「おいしい」と呟くと遊馬は「ちゃんと淹れたからな」と得意げ笑った。
食事がひと段落して野明が片付ける間に遊馬が身支度を整えて最後に並んで歯を磨くとなんだか可笑しくて野明はくすくすと笑いだした。
「・・・なんだよ?」
怪訝な顔をして問う遊馬に野明はにこりと笑う。
「人数が少ないだけで二課の待機のときと変わらないなぁって」
その言葉に遊馬は鼻白み呆れたように言った。
「それでいいんじゃないか?それとも何か違うこと期待したんなら応えてやってもいいけど、なに?」
言われた野明は目を瞬いて少し考える。
「なんだろう・・・・?そうだね。うん、これでいいと思う・・・」
眉間に皺を寄せる野明に遊馬はやれやれと溜息をつきつつ頭をくしゃりと撫でた。
「ま、いいさ。あと15分で出ようぜ。今日はバス使うからな」
そう言うと荷物を手際よく纏め始めた。
「え?遊馬 自転車使わないの?」
ボストンに自分の荷物を纏めながら野明が意外そうに問うと遊馬は苦笑した。
「お前ね、自転車は一台しかないの。二人乗りが道交法違反だって指摘したのはどこのどいつだよ?」
「あ・・・私です・・・」
「なら バスで行くことになるにきまってるだろ、一度駅に出るからな。早く用意しろ」
「は~い」
返事をして荷物を二つに分けていく野明をみて遊馬は声をかけた。
「それ、また預けるのか、ロッカーに」
「うん 仕事で使うものじゃないしね。着替えと洗面用具くらいなんだけど持っていくには邪魔でしょ?」
「なら置いてけよ。どうせ 明日一緒に行くんだろ?」
「えっと・・・今日もここに泊るの?」
野明はl小首を傾げる。
「嫌なら無理にとは言わねぇよ」
「遊馬 迷惑じゃない?」
「迷惑なら提案しない、で どうする?」
「えっと・・・じゃ お願いします・・・・」
そう言うとボストンバッグを部屋の隅にぽんと置いた。
野明と連れだって駅に向かうと時計を確認した。
平日ならこの時間10分置かずに走っているバスも土曜のため本数が少ない。
篠原が運営してる会社の送迎バスも土曜ということで本数が激減していたがあるだけましだった。
定時までなら30分に一往復はしているがそれを過ぎると運行しなくなる。
帰りは公共交通機関に頼ることになるのはほぼ必至だった。
バスの停車するあたりには社員と思しき人間が既に何人か列を作っていて遊馬は野明を伴ってその列の後ろに並んだ。
前の方にならんでいた数人の女子社員が遊馬に気づき一瞬目を輝かせたあと隣に立つ野明に気づいてひそひそと何か話し始めた。
遊馬は黙って野明を彼らの視界から外すように立ち位置を変えると眉間に軽く皺を寄せた。
「遊馬?」
不思議そうな顔をして見上げる野明に「なんでもない」と言って心中溜息をついた。
自分といることで否応なく野明が好奇の目に晒されることに罪悪感に似た感情を覚えそれでも手元から離すまいと思う自分に半ば呆れる。
徐に手を伸ばし野明の手首を掴むとその手にぐっと力を込めた。
一瞬驚いた顔をした野明が自分の手首と遊馬の顔を見比べて浅い笑みを浮かべると心中を察したように一言小さく囁いた。
「平気だよ。気にしてないから、ちゃんとそばにいる」
驚いたように眼を見開くと遊馬は軽く笑った。
来たバスに乗り込むとそれほど多く利用者がいるわけではなく、遊馬は野明の腕を引っ張って後部の二人掛けの席に向かった。
野明を奥に座らせ自分は通路側に腰かける。
他愛もない会話を時々交わしているとほどなくバスが正門をくぐり会社の敷地内に停車した。
バスを降りてからも彼女の腕を引っ張るようにして野明を伴いラボに向かって足早に歩く遊馬に声をかけるタイミングを完全に失った女性社員達は不満げな溜息をついてその後ろ姿を見送った。
野明がラボのある建物に併設された更衣室で着替えていると何人か事務方の女性が入室してきた。
「まったく休日返上だってさ~」
「仕方ないよ、もうすぐ決算だもんねぇ」
同じ建物内にある事務課の女性達がため息交じりに言葉を交わしながら着替え始めた。
先に着替えが終わって野明がロッカーの扉を閉めるとその音に気づいて皆がいっせいに野明のいる方を振り返った。
顔を上げた途端 大勢の視線が集まっていることに気づいた野明はびっくりしながら挨拶をした。
「あ・・えっと・・おはようございます」
「おはよう」
さらりと返事が返ってきたことにホッとしてロッカー室を出ようと歩き始めると、声がかかった。
「泉さん、でしたっけ?」
名前を呼ばれてくるりと振り返る。
「今日は朝から篠原さんといっしょだったんですね」
野明は少し考えてバス停にいた人の中にこの女性の顔があったことを思い出した。
「えっと・・・はい。あっ、さっきバスご一緒でしたよね」
言われた女性は軽く眼を見開くと「よく覚えてたわね」と口の端で笑った。
あまり好意的とは言えないその態度に戸惑い野明は思わず足を止めてしまった。
「篠原さんとどういう関係なんですか?」
穏やかに聞いているように見えて決して目が笑っていないその態度に野明はたじろいだ。
「どういうって・・・パートナーです。コンビ組んで仕事しますから・・・」
少し引き気味に答える野明に彼女たちは穏やかならざる目を向けた。
「そういうこと聞いてるわけじゃ無いってことくらい 察してるわよね?」
「それとも そうやって篠原さんを誑かすの?」
「昨日だって一緒にいたんじゃないの、案外。泊めてくれる?とか聞いてさ」
「あ、いいなぁ それで泊めてもらえるなら私も言ってみようかなぁ」
口ぐちに捲し立てる女性陣に野明はどうしていいのか分からず黙って部屋を出るタイミングを計っていると扉の向こうから 焦れた遊馬の声がした。
「野明っ いつまで掛かってんだよ、サッサと出て来い!試験始めるぞ」
その声に救われた思いで「ごめん!今いくね」と声を掛け返すと 彼女たちに「お先に失礼します」とぺこりと頭を下げてその場を逃げるように後にした。
扉から少しずれた廊下の壁に凭れ掛かるようにしていた遊馬に駆け寄る。
怒られるかと思いきや彼は不満げな顔をしたまま野明の頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でると更衣室の扉を睨みつけた。
「・・・聞こえてたの?」
「まぁな、嫌な思いさせたな」
ラボに向かって歩きながらばつが悪そうに言う遊馬に野明は小さく首を振った。
「しょうがないよ、遊馬の所為じゃないんだから。それより声掛けてくれて助かった」
そう言って笑う野明に遊馬は複雑な顔を向けた。
「「おはようございます」」
二人で挨拶をしながらラボに入ると浅月が二人を振り返って片手を上げた。
「早いですね、主任」
遊馬が驚いたように言うと浅月は肩を竦めて「結局帰り損ねたんだよ」と笑った。
「そうなんですか?」
驚いた遊馬がラボを見渡すと何人かが机や椅子を巧みに使って仮眠を取っているのがわかり苦笑した。
「やっぱり 俺残ればよかったですね」
「じゃ 誰が泉さん送っていけばよかったんだ?」
その問いに 思わず腕組みして考え込む遊馬に野明は申し訳なさそうな顔になる。
「すみません、ご迷惑おかけして」
「あ ごめん。そういう意味じゃなくてね、篠原が気に病むことじゃないって言いたかっただけなんだけど。引き合いに出すのは良くなかったね」
野明はそれでも少し考え込むような顔になってしまい、その仕草に浅月は思わず吹き出してしまった。
「あの・・・なんでしょう?」
驚いて聞き返す野明に彼は二人を見遣って楽しげに言った。
「いやぁ 考え込む仕草まで似るものなんだなと思ってね。伊達に長くコンビ組んでないってことなのかな?」
言われて二人で顔を見合せて互いに仄かに頬を染めるとついと視線を外した。
「ま それはともかく、何かわかりましたか?」
頭を仕事に切り替えると遊馬は端末の前に座る。
野明は遊馬から受け取った試験仕様書片手に次の試験内容を確認し始めた。
遊馬の問いに浅月は眉間に皺を寄せる。
「それがなぁ 結構根深いんだよ。」
この現象は今発現したわけではなく かなり前から出ていたことが判明した。
しかし試験そのものの精度が高くなかったため、誰も気にとめていなかっただけだったのだ。
そして個々にプログラムをチェックすると各々単体ではきちんと動作をしていることも確認できた。
「つまり・・・競合、ですか?」
遊馬は大きなため息をついた。
一つの動作に対して多くのプログラムが一気に走る。
その中のいくつかが特定の条件下でシステムのリソースを奪い合う形になり結果、動作を完了できなかったプログラムが自動的に再起動を図る。
結果としてその一瞬 関節駆動システムが解放され一時的に無制御状態になり指が浮くという現象として現れたということだった。
遊馬は浅月同様 眉間に皺を寄せた。
「それ すぐどうにかなるものなんですか?」
ためしに訊いてみたものの期待はしていなかった。
難しい顔をする浅月に答えを察して遊馬は大きく伸びをすると「まいったな・・・」と呟いた。
野明も状況を朧気ながら察して表情を曇らせた。
「あの・・・私なにかできることありますか?」
「正直 プログラムは各担当が独立して製作、それを統合しているんでね、担当部署の人間以外は手が出しづらいのが現状なんだ。リソースの計算は篠原に手伝ってもらえるところもあるだろうけど動かす機体がこの調子だから、休みを返上してせっかく来てもらったのに申し訳ないんだけどパイロットとしての仕事ができるようになるまで少し時間がかかるだろうね」
申し訳なさそうにいう浅月に野明は朗らかに笑うと軽く首を振った。
「お気になさらないでください。大丈夫ですよ、お茶くみでもコピーでも何でも言ってくださいね、お手伝いしますから」
結局 遊馬は解析に追われ、野明は雑務をこなしようやく作業のめどがついたのはもう日が傾きかけたころだった。
強行軍で作業をしていた面々はぐったりとしていて 浅月は今日はここまでにしようと決めて皆に撤収を呼び掛けた。
結局 翌日は一日休んで月曜に作業を再開することになり開発メンバーはほっと胸をなでおろした。
野明と遊馬もまた帰宅することになり帰り支度を始めた。
今日の作業分をディスクに落して資料と一緒に束ねる。
「担当部署に提出してくる」といって席を立つ遊馬を見送った野明は机の上のマグカップを手に取り給湯室に向かった。
洗い物を済ませて水気を拭き取り ラボに帰ろうと踵を返すとそこには解析室にいた男性が立っていた。
「すみません、おわりましたのでどうぞ」
そう言って流しの前をあけるとその横をすり抜けようとした。
「あ・・・あのっ 泉さん」
名前を呼ばれて野明は立ち止まり「はい?」とにこやかな笑顔を見せた。
「今日 早く終われましたし、その夕飯でもご一緒に・・・」
俯き加減でどもりながらもなんとか声をかける。
言葉の途中で聞こえた「あっ」という野明の声に顔を上げると眉間に皺をよせ少しイラついた顔をした遊馬が彼女の後ろに立っていた。
野明が何か言うより早く遊馬が口を開いた。
「悪いけど、俺と約束してるんだ。ついてくる気なら止めないけど、貸す気はないぞ?」
『貸す』という表現に面食らった男性が思わず口ごもる。
野明は申し訳なさそうな顔を見せるとぺこりと頭を下げた。
「すみません。えっと・・・」
名前が出てこなくて遊馬の顔を見上げると「三井」と遊馬が小さく助け船を出す。
「三井さん、せっかく声をかけてくださったんですけど・・・」
「いいえ、こちらこそ突然すみませんでした。名前を名乗るのも忘れるなんて失格ですね」
苦笑する三井に野明はにこりと笑った。
「とんでもないです。あの・・・本当にごめんなさい」
三井は少し拗ねたような顔で遊馬を見ると「やっぱり篠原さんの彼女だったんですかぁ」と残念そうに肩を落とした。
野明はびっくりして口をぱくぱくさせて遊馬を見遣るが、彼は余裕のある顔で「悪いね」と答えると野明の背中を押して戸口に向かった。
「じゃ お疲れ様」
一言残して給湯室を後にすると野明の腕を掴んで廊下をツカツカと歩きだした。
気持ち荒っぽい靴音に野明は思わず声をかけた。
「・・・遊馬?」
「だから 一人にするの嫌なんだよ」
小さく毒づく遊馬に野明は目を丸くして次いでくすくすと笑った。
「探しに来てくれたの?」
「戻ったらいなくてカップがなくなってたからな」
「心配してくれた?」
顔を覗くとふいと目をそらす遊馬に野明は「ありがとう」と付け加えて遊馬に引かれるまま廊下を歩いた。
黙って少し前を行く彼の耳はいつもより少し赤みが強くて野明はくすぐったいような感じを覚える。
彼の背中を見ながら妙に浮き立つような感覚に思わず顔が綻んだ。
連れだって建物を出ると 夕焼けが最後の残滓を空に残し濃い闇と鮮やかな朱が混在する微妙な色彩を放っていた。
「なんだかすごいね」
「夕焼け見れるような時間に帰ったのここにきて初めてかもしれない」
遊馬はしみじみと口にして野明を驚かせた。
「大変だったんだね。今日は 早く終わったし、ゆっくりできそうだね。」
笑顔を見せる野明と並んで歩く。
「荷物も置いてきたしさ、飲むなら何か買って部屋で飲まないか、帰りのこと考えずに済んで気が楽だし」
「わぁ いいね。じゃ 駅で買い物だね」
野明は嬉しそうに手を叩いた。
「あとは一度倉庫によって 布団代りになりそうなものとってこないとな」
悪戯ぽい笑顔をみせて遊馬が耳元で囁いた。
「今日も添い寝ってわけにもいかないだろ?」
瞬間的に真っ赤になった野明の顔を見て遊馬が笑う。
「今更照れるかね、自分から誘っといて」
「もうっ 遊馬のばかぁ。そんなこと言うなら帰る!」
頬をふくらませて歩く速度を上げる野明の手を掴んで引きよせるとその耳元で囁いた。
「帰さない」
その声音に野明はさらに顔を朱に染めた。
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追記
さて今日は遊馬の部屋で飲みますよ(^m^)
ちゃんと寝床は確保する気のようですね、今日は!
ではでは 続きはのんびりおまちくださいね~(^^)
ツッジー 2009年10月16日(金)11時30分 編集・削除
「帰さない」
やだーー(〃▽〃)テレテレ
野明と遊馬との間に入る隙間はないんだという事を
篠原の社員に知らしめないといけないな!!!
ともあれ、部屋では一体どうなるの??
進展するのかな??
続きが楽しみです!!