記事一覧

不在10

さて不在の第10弾

いよいよお仕事をはじめた野明と遊馬ですが・・・・
少し間があきましたがまだつづきますよ(^^)
宜しくお付き合いくださいませ♪

以下本文

続き

===================
不在 10
===================
AT LABO-(2)

ギアを装着してコクピットに深く腰掛ける。
眼を閉じて精神を集中しているとギアに内蔵されたスピーカーから聞きなれた遊馬の声が流れる。
「野明、そろそろ始めるぞ、準備いいか?」
耳に心地よい遊馬の声。
ほぼ一月ぶりにギアを通して耳に響くその声は野明に精神的な安心感と仕事するぞ、という軽い緊張感を程よく与えてくれた。
一つ大きく息を吐き出すと 眼を開いてつっと前を見つめる。
表示されるデータと計器類を確認して野明は気持ちを切り替えるように背筋を伸ばした。
「シュミレーションプログラム起動確認。パイロット、及び計器各種 オールグリーン。いつでもどうぞ」
「了解。手順確認するぞ」
遊馬が試験の内容とタイミングを確認して野明が復唱する。
「一発で決めろよ。 じゃ 始めるぞ、カウントダウン 3,2、1、スタート」
遊馬の的確で正確な指示のもと 野明はシュミレータを操作する。
最後に急制動を掛けて機体を停止させるとラボ内から大きなどよめきが起きた。
此処2週間 何度やっても設定範囲内に収まりきらなかった数値がほぼ理論値どおりに叩き出されたのを見てパイロットが女性、しかも小柄な少女のような人物であることに毒づいていた人間までが感嘆の声を上げた。
ただ 本人達2人を除いては。
「・・・遊馬 ごめん」
悔しそうな声が管制室に響く。
「アルフォンスじゃないんだから気持ち早くって言ったよな?解ってんなら次は合わせろよ」
溜息交じりの遊馬の声に野明は申し訳無さそうな声音で答えた。
「了解。もう一回、宜しくお願いします」
軽く額を押さえ遊馬が振り返ると管制室にいたメンバーが呆気にとられたような顔で彼を見つめていた。
遊馬は訝るような顔を向け「すいません もう一度お願いします」と声を掛ける。
「もう一度? ちゃんと設定範囲内に入ってたぞ」
「解ってますけど、まだ精度上げられますから」
キッパリと言い切る遊馬を驚いた顔で見つめて皆が立ち尽くす。
その様子に遊馬が困った顔をしながら再度、「あの・・・もう一度お願いします」というと 皆が一斉に我に返ってあたふたと準備に入った。

浅月が周りをチラリと伺いながら遊馬の横に立って小さく耳打ちする。
「厳しいな、昨日までならOK出してる値だろう?」
「そうですね、でも乗ってるのがあいつなら妥協しませんよ」
当然とばかりに言い切る遊馬に浅月は軽く笑みを浮かべる。
「それはお前の経験から?」
言外に『実力で信頼を勝ち取ったここ数週間の己自身に準えているのか?』と訊くと遊馬は真っ直ぐモニターを見ながら言葉を返した。
「それも無くは無いですが・・・あいつは出来ますから。出来ない奴に注文出したりしませんよ、俺は」
「なるほど、信頼してるわけだ」
「それは勿論。でも本人もできると思ってますよ。でなければ最初に『ごめん』って言いませんし、タイミングを外した自覚があったのにこのままスルーしたら この程度の期待しかされてなかったんだって思うでしょう?士気が下がりますよ、それは御免です」
互いに対する絶大な信頼感もさることながらあの『ごめん』という一言をそこまで掘り下げて捉える遊馬の深慮に浅月は舌を巻いた。
周りの準備が整ったのを確認すると遊馬はインカムで野明に声を掛ける。
「もっかい行くぞ。次は決めろよな」
「了解。宜しくお願いします」
「よし!」
遊馬は鷹揚に頷くと管制室のほかのメンバーに開始の合図を送り、再びカウントダウンを開始した。

遊馬の出す短い指示と合図に従い、全ての項目を流れるような動作と完璧なタイミングで行う。
最後に絶妙なタイミングで急制動を掛けると一連の動作が終了した。
限界まで沈み込んだダンパーが油圧でゆっくりと押し戻されるのを確認して遊馬が「OK」と短く告げるとインカムの向こうで野明が大きく息を吐くのが聞こえた。
先程と違って管制室内が水を打ったように静まり返っているのを見て遊馬が満足気に口の端に笑みを刷く。
「データとれてますか?」
その声で我に返り皆が各々自分の担当している部分のデータが収集されていることをチェックする。
特に不備が無かったことを確認すると遊馬は野明に声を掛けた。
「いいぞ、一度降りて来い。次の試験内容説明する」
「了解」
野明はホッとしてヘッドギアをはずすとコクピットの扉を開けた。

野明が管制室に入ると遊馬が振り返ってニッと笑った。
「どうだった?」
小首を傾げて訊く野明に「上出来だ」と答える。
野明が安堵の表情を見せると遊馬は黙って彼女の髪をくシャリと乱暴に撫でた。
「まず一個クリアだ。課題 山積みだからな、寮に帰りたきゃ一回で決めていけよ」
神妙な顔で頷き、次の指示を受けようとした野明に管制室内にいた連中が挙って群がった。
「流石だな。泉さん 警察辞めてうちにおいでよ」
「こんなにキレイな数値だせるなんてすごいな」
口々に野明を褒めつつ周りを囲む男連中に遊馬は軽い溜息つき、微かに眉根を寄せた。
「野明」
声を掛けると、徐に野明の手首を引っつかんでその輪の中から引っ張り出す。
驚いて眼を丸くする野明を自分隣に座らせると次の試験の説明を始めた。
「今日中に出来るとこまでやりましょう」と集まっていた連中に声を掛けると皆 遊馬と野明をまじまじとみつめてから慌てて持ち場に戻って行った。

午前中だけで10以上もの試験をクリアした野明が昼休みを告げるチャイムを合図にシュミレーターから降りてきた。
ギアをはずして大きく息を吐きながら軽く頭を振ると両手を頭の上に高く組んで 「んっ!」と大きく伸びをした。
「お疲れさま」
シュミレーターのそばにいた社員に話しかけられた野明はニコリと笑う。
「お疲れさまです」
手にしたギアをどうしたものかと小首を傾げる野明に その男性はすっと手を差し出した。
「それ預かります。保管場所ご存じないでしょう?」
「あ はい。宜しくお願いします」
慌ててギアを手渡すと野明は辺りをキョロキョロと見渡した。
保管ロッカーにギアを格納した先程の男性社員が野明の様子をみてクスリと笑う。
「どうかしましたか?」
「いえ・・・」
曖昧に笑う野明の顔を覗き込むようにして「お昼、良かったからご一緒しませんか?」と声を掛けた。
その仕草に吃驚した野明が思わずぴょこんと一歩後ろへ下がると背中が誰かにぶつかった。
「すみません」といいながら振り返ると仏頂面をした遊馬と目が合い、頭の上にぽんと手を置かれた。
遊馬を見つけて嬉しそうな顔をする野明に「わりぃ 待たせた」と告げると苦笑しながら正面の男性に向き直る。
「駄目ですよ 保田さん、こいつ免疫無いんですから。妙なちょっかい出さないでくださいよ」
言いながら野明をさり気なく自分から遠ざける。
その様子に保田と呼ばれたその男性は軽く頭を掻きながら悪戯が見つかった子供のような目を遊馬に向けた。
「篠原は昼休み いつも大勢の取り巻きに囲まれて大変そうだからさ、昼食くらいご一緒しようかと思っただけだよ」
「取り巻き?」
不思議そうな顔をする野明に遊馬はバツが悪そうな顔を向けた。
「勝手についてくんだよ。しらねー奴がさ、気にするな」
野明に耳打ちすると、遊馬は自らの額を軽く押さえる。
「ご心配なく、パートナーの面倒くらいちゃんとみれますから」
保田に向って半ば引き攣った笑顔を見せると、野明を促してその場を立ち去った。
「泉さん今度是非 ご一緒しましょうね」
声を掛ける保田を肩越しに振り返ると野明は曖昧な笑みを向けた。
遊馬はそれをムッとした顔で眺めてボソリと呟く。
「こんなとこにまで風杜のコピーがいるとはね」
「社交辞令でしょ?」
「そう願いたいね」
「気にしてくれるんだ?」
野明がクスクスと笑うと遊馬は軽く溜息をついて「一応な」と答えた。

バフェテリア形式でメニューを選ぶ食堂の入り口には既にそれなりの長さの列が出来ていて遊馬は野明を伴って列の最後につくと「ほら」といって社名の刷り込まれた半透明のプラスチックカードを差し出した。
「何?」
「食券」
「これで食事するの?」
「そ。それはいわゆるお客さん用なんだと。一枚で一回、好きなものとり放題」
「へえ・・」
受け取ったカードを光にすかしてしげしげと見つめる。
「何食ってもいいけどさ、食べすぎで試験に支障来たすなよ」
「分かってるよ、失礼だなぁ」
からかう様に笑う遊馬に野明は拗ねたような顔を見せた。
その頭をくしゃっと撫でて遊馬が機嫌よく笑っていると背後から声が掛かった。
「篠原さん、これからお昼ですかぁ?」
振り返るとバッチリメイクをした数名の女性社員が並んで立っていた。
野明に掛かる遊馬の手を冷たい目で一瞥すると 瞬間その顔を媚びる様な笑顔に変え不自然なほど甘い口調で遊馬に話しかけた。
「私達もこれからなんです~ 今日もご一緒していいですかぁ?」
敢えて『今日も』というところにアクセントを置き あからさまに野明を視界から外すそのチームプレイ。
野明は呆気にとられてその様子を眺めていた。
さり気なく自分と遊馬の間に入って野明に掛かる遊馬の手を解こうとしているのが分かって驚く。
『遊馬ってもてるんだ・・・』
そんな どうでもいいことを考えて気が抜けた瞬間、間に入った女性に軽く押された野明は2,3歩よろめいて遊馬と引き離されてしまった。
素早くクルリと取り囲まれてしまった遊馬を野明は輪の外から眺める格好になり「なるほど、これが 『大勢の取り巻き』かぁ」と妙なところで感心する。
列に並んでいるのでそこから離れるわけに行かず その集団の後ろをついていくことになった野明はうんざりした顔をしてその輪から出るべく努めて穏やかな口調で『取り巻き』を説得しようとする遊馬を感心したように眺めていた。
出向の身でしかも御曹司。
無茶な態度が取れないことが分かるので野明は『遊馬も大変だなぁ』と思わず同情して軽く息を吐いた。
全く説得に応じずに且つ野明を執拗なまでに視界から外すやり方に遊馬は苛つきを感じる。
昨日までならこのまま黙って放って置いたのだが野明がいる以上遊馬にとってそれは出来ない相談だった。
当の野明は取り乱すことも怒った様子もなく寧ろ同情の色を濃く宿す瞳で遊馬を眺めていた。
目が合うと曖昧に笑う、その他人事のような態度に遊馬の中で何かがブチッときれた。

不機嫌さを隠さない遊馬は何か話しかけながら執拗に纏わりつく女性達を力ずくで脇に押しのけると徐に野明の手首を掴んだ。
驚きに目を瞠る野明の手をそのまま勢い良く斜め上にぐっと引っぱり寄せると蹈鞴を踏んだ野明の身体が遊馬の方に倒れこんだ。
呆気にとられる女性社員に遊馬は一瞥をくれると、「ちゃんと並んだ方がいいですよ」と列の後ろを示す。
何時の間にか列は伸びていて自分達の後ろに15人ほどが並んでいた。
何か言おうとする彼女達からフイと視線を外し野明の手を離すとそっと立たせる。
「はぐれんなよ、ここ広いんだから」
言いながら頭を撫でると後ろを振り返り彼女達が渋々列の後ろにつくのを確認して大きな溜息をついた。
「大変だねぇ」
感心したように言う野明に遊馬は苦虫を噛み潰したような顔を向ける。
「苦手なんだよ、ああいうの」
「美人が沢山いたよ?」
「外見の問題じゃなくてさ、姦しいの嫌なんだよ」
「ふーん・・・」
「それにさ、ああいう態度は好きになれない」
眉根を寄せて嫌悪感を露わにする遊馬に野明は首を傾げる。
「あいつらお前のことあからさまに無視した上に俺から引き離しただろう?」
「ああ それね」と野明は曖昧に笑った。
「遊馬ってもてるんだねぇ」
感心したようにいう野明に遊馬は溜息をついた。
「もててるのは俺じゃなくて篠原の名前だろ。で、感想はそれだけか?」
野明は少し考えてから先程掴まれた手首に手を添え軽く頬を染めると遊馬の目を覗き込んだ。
「・・・ちょっと吃驚した・・・かな」                                                                                                                                                                         
「そりゃ悪かったな、他人事みたいな顔してるからだろ」
不満げな遊馬の顔に野明が呆れた顔を向ける。
「他人事みたいって・・・」
「お前も当事者なの。このあと覚悟しとけよ?」
「この後って・・・?」
「すぐわかるさ。悪いけど一蓮托生だからな」
「え~? 何なのよ それ」
「とにかくフォローして欲しければ俺から離れないこと。」
ビシッと野明の額に指をさして遊馬が言い放つ。
「はいはい、指揮担当者にしたがいますよ、フォワードですから」
野明は諦めたように大きく溜息をついた。

トレイをもって席に着くと後から例の女性達が遊馬を追いかけて相席を求めてきた。
その立場から相手を邪険に出来ない遊馬はだまって了承したが彼は机の端の席に座りその横に野明を置くことで彼女達と距離をとった。
遊馬と女性陣に挟まれる格好になった野明は落ち着かない気分で食事を終えると遊馬の様子を伺う。
姦しく話しかける女性達を適当にあしらいながら野明が食べ終わるのを待ち、食事が終わったのを確認すると野明の背中をぽんと叩いて立ちあがった。
「野明 食べ終わったならいくぞ。では お先に」
事務的に挨拶すると自分と野明のトレイをひょいと持ち上げた。
野明も慌てて立ち上がる。
「あの・・・失礼します」
取り敢えず挨拶を残し遊馬を追って立ち去る野明に女性陣は冷めた目で会釈を返した。
二人が去った後 食堂はちょっとしたざわめきに包まれる。
この短時間で野明もまた遊馬同様 ある種の有名人になってしまった。

go to next....
=====================================
追記

野明も一蓮托生で有名人になってしまいしたよ(^^;

ではでは 続きはのんびりおまちくださいね~(^^)

コメント一覧

そおた。 2009年09月15日(火)12時39分 編集・削除

野明…嫉妬とやっかみの嵐に巻き込まれる予感!?
あすま〜頑張って守ってやってくれい。

前回も思いましたが、テスト中の描写にすんごいリアリティありますね。
さくらさん、もしかして篠原重工に取材に行ったのかしら?(笑)っていうくらい。

サイト改造お疲れ様です〜!
根を詰めすぎずに進めてくださいね★
(携帯から見られるようになるのはありがたいですよ!

こんきち 2009年09月15日(火)20時29分 編集・削除

リアルでも台風が徐々に近づきつつありますが、なにやらこちらも台風が近づいているようですね。
2人とも頑張って乗り切って~。

サイト改造無理しないで下さいね。

さくら(そおた。様) 2009年09月15日(火)21時38分 編集・削除

>そおた。さま

巻き込まれそうですよね、というか遊馬が巻き込みましたね(^^;
責任とって貰わねば・・・(笑)

テスト中の描写褒めてくれて有難うございます~
取材はしてないんですが(当然ですね☆)
開発の現場ってどこも余り変わらない気が(^^)
ラボの雰囲気って独特ですよね☆

サイト改造始めると切りをつけるのが大変で時間が・・・(^^;
セーブしながら続けますね~
一部の画像は重くて携帯での表示が難しいかもしれないですがそれ以外は殆ど表示出来るようにしいて行く予定です(^^)
がんばるぞ~!!

さくら(こんきち様) 2009年09月15日(火)21時40分 編集・削除

>こんきちさま

そうですよね~ リアル台風~♪
台風情報を見るたびにP1を連想してしまいます
(笑)
作中の台風は如何に?(^^)
サイト改造ともども頑張りますね~!!

瞳子 2009年09月15日(火)23時34分 編集・削除

自分のSSに構っていたら、すっかりコメが遅くなってしまった…orz

嵐が来ましたね。一波乱も二波乱もありそうだ。

頑張れ、遊馬!!

MEME 2009年09月16日(水)00時43分 編集・削除

篠原重工内のテスト!
リアルな感じが、いいですねvv
とても楽しめました♪
遊馬、いろいろ大変ですね~(汗)
野明にとりまきからの攻撃が行かないといいけど…心配…!

さくら(瞳子様) 2009年09月16日(水)01時54分 編集・削除

>瞳子さま

もうもう素敵SSに思わずのたうちまわりましたよ(笑)
瞳子さまに感謝です~(^^)
嵐ですよ~♪
でも短期出向なのですぐ過ぎ去りますよ♪

さくら(MEME様) 2009年09月16日(水)01時56分 編集・削除

>MEMEさま

テスト リアルですか?(^^)
それは嬉しいです♪
遊馬は色々大変ですよ、一蓮托生言い渡された野明も大変です。
男より女の方が怖いんだからねっ 遊馬がんばれ~!!(笑)

って 自分が頑張んないとですよね(^^;

ツッジー 2009年09月16日(水)09時27分 編集・削除

再会はよかったんだけど・・・
波乱な展開にはならないよね・・・。

女は怖いもんね・・・。

遊馬!!野明を守ってちょーだい!!!!

さくら(ツッジー様) 2009年09月16日(水)19時52分 編集・削除

>ツッジーさま

波乱・・・昼ドラ展開で始まった話ですからね~(笑)
でもまぁ 遊馬至上主義ですから♪

遊馬がんばれ~!!(^^)

非公開 2019年06月07日(金)20時19分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

非公開 2019年06月19日(水)02時03分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

非公開 2019年06月30日(日)06時07分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

非公開 2019年07月13日(土)22時01分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。

非公開 2019年07月26日(金)15時13分 編集・削除

管理者にのみ公開されます。