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不在3

さて不在の第三弾

緩やかに流れる時間。
野明の心境はいかに?!
明るい話ではないですよ~ 今はまだ☆
それでも 良いわというかたは ぜひどうぞ♪

以下本文

続き

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不在 3
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SIDE-N(3)

翌日の夜、野明の携帯が着信を告げた。
無機質な電子音。
電話に出ると涼やかな墨勇の声が聞こえた。
「明日の昼の便で東京に着くんだ」
航空会社の名前と時間、便名を告げるとその日は到着後 ホテルにチェックインするだけなのでと食事に誘われた。
野明は空港に迎えに行くことにして食事を快諾する。
いくらかの雑談の後電話を切ると昨日から苛まれている後ろめたさに拍車が掛かる気がした。
ベッドの端にぽすんと座ると携帯を放り出して枕を抱き込んだ。
「どうして、こんなに・・・」
名前を口の端に上らせるに躊躇して『遊馬の事が気になるんだろう』という言葉は飲み込んだ。
携帯を眺めては見たものの結局この日も遊馬からの連絡は無かった。

あけて翌朝 野明はクローゼットの中身を物色して先日購入したワンピースを着ることに決めた。
明るいオレンジを基調としたオリエンタル系のプリントが入ったワンピース。
今年よく見かけたリゾートっぽいAラインのもので それにサンダルを引っ掛ける。
軽く化粧も施して部屋を出ると出勤前の緑と顔を合わせた。
ここ数日引きこもっていた野明が おめかしして出てきたのをみて「出かけるの?」と明るく声を掛ける。
「うん 友達がでてくるから空港まで。食事してくるから今日遅くなるよ」
努めて笑顔を作る野明に 緑は少し表情を曇らせた。
「・・・篠原君じゃないんだね」
めかしこんでいるので多分会うのは男性だろうと予想したが、この野明の顔を見る限り遊馬と仲直りできたようには見えなかった。
「幼馴染だよ」
野明は困ったように笑う。
「そっか。いってらっしゃい」
手を振ると野明は憂いの見える笑顔で手を振った。
その顔に思わず緑は野明の手を取った。
「野明。自棄起こしちゃ駄目だからね」
心配そうで真剣な目を向ける緑に少し驚いて、野明は反射的にこくんと頷いた。
「大丈夫だよ、行ってきます」
やんわりと緑の手を解くとひらひらと手を振り去っていく野明を緑は黙って見送った。
「・・・ったく何してんのよ 一体」
思わず呟く。
それは野明に対してなのか 遊馬に対してなのか。
いずれにしてもあまりにもどかしく焦れったい事だけは確かだった。

空港についた時間は飛行機到着時刻の15分ほど前だった。
野明は到着口の掲示板を見渡して便の遅延が無いことを確認する。
吐き出される人波を見るともなしに眺めながら小さく溜息をついた。
携帯電話が着信を告げ、墨勇が到着を知らせると野明は指定されたゲートの前に移動して彼を待った。
程なく大きな荷物を手にゲートをくぐった男性が屈託の無い笑顔を浮かべて歩み寄ってきた。
「久し振り」
落ち着いた声音で声を掛けたその人は記憶よりも少し大人びて見えた。
「すごい荷物だね」
野明が感心すると墨勇はうんざりしたように荷物を見遣り「俺もそう思う」と笑った。
一度ホテルに荷物を預けに向うことにして空港を後にする。
比較的軽いボストンバッグを野明が手に持って汐留に移動した。
チェックインまでは時間があるのでフロントに荷物を預けると身軽になった墨勇がやれやれを溜息をつきながら戻ってきた。
軽く身体を伸ばすと「やっと荷物から解放された」と笑顔を見せた。
「お疲れさま、それにしてもすごい量だったね」
大き目のキャリーバッグと大小二つのボストンバッグ。
それに今身につけているウエストポーチ。
「一月こっちに居ることになるから色々ね。あとパソコンとか諸々」
「一月も居るんだ?大変だね」
いいながら遊馬のことが頭を過る。彼もまた一月と言って出て行ってからもう2週間を過ぎていた。
表情を曇らせた野明に墨勇が首を傾げた。
「何か心配事?」
訊かれて野明は弾かれたように顔を上げた。
優しげな瞳が野明を見下ろしていて 『会っていきなり言われる様じゃ よっぽど酷い顔をしているんだな』と自己嫌悪に陥った。
墨勇には関係の無いことなのにいきなり心配させてしまったことに罪悪感を覚え、気分を切り替える様にこりと笑顔をつくる。
「そんなんじゃないよ、それよりお腹空かない? 食べてから少し東京案内するよ」
「野明が?できるのか?」
揶揄するように笑う墨勇のわき腹を小突き軽く抗議する。
「失礼だなぁ、こっちに来てもう3年だよ」
「もうそんなになるか・・・」
「うん あれからそれだけ経ったんだよ」
場の空気が沈みそうになるのを墨勇が救う。
「じゃ まずはなんか美味い物食べようか」
「そうだね、北海道と比べちゃうと生ものはちょっとだから・・・パスタとかピザでどう?」
「いいよ 野明のオススメで」
駅に隣接したTV局所有のビルの一角に入ると土産物屋も軽く覗きつつ店を捜す。
昼時であることもありサラリーマンでごった返した構内を連れ立って歩いていると 大階段の下で天気予報の中継をしている姿が目に入った。
「普通にやってるもんなんだな」
撮影しているのを横目に特に誰も立ち止まることなく足早にその場を通り過ぎて行くのを墨勇は感心した様子で眺める。
「毎日のことだからね、天気予報だし」
こともなげに言う野明に「そんなもんなんだ」と少し目を瞠る。
昔の野明なら興味津々で見に行ったかも知れないと思いつつ、隣を歩く小柄な女性を見遣る。
昔よりも少し大人びた顔をして化粧を施し、ワンピースにサンダルという高校の時にはまず想像しなかった格好をした野明。
彼女を変えたのは土地なのか時間なのか、或いは知らない誰かなのか。
そんなことを思った自分が可笑しくなって、野明の頭にぽんと手を置くと不思議そうな顔をした野明が顔を上げた。

石釜で焼くピザが自慢のイタリアンレストランに入ってオーダーを掛けた後、野明は思い出したように口を開いた。
「ね 佐保ってどうしてる?」
「ん? ああ 元気だよ。今大学に通ってる、連絡とって無いのか?」
「これでも結構忙しくてさ、地元の友達とは全然」
「そうか、たまには帰って来いよ。皆 待ってるし」
「う~ん どうかなぁ・・・墨勇くらいじゃないの? こうして気に掛けてくれるの。離れると意外に忘れちゃうのかも知れないよ」
随分とネガティブな発言をするな、と思い墨勇は首を傾げた。
「なんだよ、妙に弱気じゃないか。」
からかう様にいう墨勇に野明は笑顔を作って答えた。
「そうでもないよ、一般論」
元気一杯で屈託の無かった頃の野明のイメージが強く残っている墨勇には今の様子が不自然に映る。
それにしてもこの様子は少し似ていると、思う。
自分が佐保と付き合い始めた頃の野明の様子に。
墨勇は思い切って口を開いた。
「お前、失恋でもしたか?」
意外な言葉に野明は驚いて目を見開いた。

言われた言葉の意味を考えて野明は少し戸惑った。
付き合った覚えの無い遊馬。
でも離れて思うその存在の大きさにかなりのショックを受けた。
それは確かに似ているな、と思った。
近すぎて失った後で気づいた目の前にいる人に嘗て抱いた感情に。

複雑な顔をして見せる野明に墨勇は当たらずとも遠からず、という感触を得た。
こいつは人の感情の機微に極端に鈍い。
殊に自分とそれに関わる人間の色恋に関しては天然という以上に疎かった。
そのくせ余計なところでは妙に聡く鋭く人の感情を把握して無意識におせっかいを焼いてしまう。
その結果、かつて両思いであったはずの自分と付き合うことはなく佐保に勝ちを譲って身を引いた。
引かれた俺の感情をどう思ったのかと思わなくも無かったが一途に思いを寄せてくれる佐保を大事に思うことも確かで何時しか彼女は自分にかけがえの無い人になった。
そのころ 身の置き所に困った野明は気を抜くと沈みがちになる自分に殊更暗示を掛けるように空元気をだして笑っていた。
今はそれに近いかも知れないと嘗ての様子と準えて思う。
それでも今の様子はあの時以上に悪い気がした。
それは墨勇が今回の当事者ではないからなのかも知れなかったがその様子は酷く痛々しさを伴っていた。
「言いたいことがあるなら聞いてやるよ。案外 事情を知らない相手のほうが言いいやすいこともあるだろう?」
そう言って促すと、困った顔で笑っていた野明の瞳からぼろぼろと涙が零れた。
『声を上げて泣くことをしないのは今も昔も同じなんだな』と思いハンカチを差し出すと野明は「もってる」といって自分の鞄からハンカチを取り出した。

野明が自分でもよく分からないと前置きをしてポツリポツリと話し始めるのを墨勇は根気良く聞いた。
一通り聞き終えると 墨勇は腕組みをして少し考えてから口を開いた。
「要するに野明は『遊馬くん』が何も告げないで引越しした挙句、その日連絡がつかなかったことが不満なんだよな」
物凄く端的に指摘されると野明はあまりの単純さに考え込んでしまった。
『そんな単純なことだったっけ・・・・?』と首を捻り指摘に間違いは無いことに思い当たると思わず赤面する。
自分が駄々をこねる子供みたいだと思った。
「付き合ってるわけじゃなかったけど近しい相手だと思っていたからショックを受けたわけだ」
したり顔で頷く墨勇に野明は言葉を返せなかった。
押し黙る野明に墨勇は苦笑しつつ続ける。
「そして連絡をくれないことに不安と不満が募っていると。じゃあ 野明、お前はどうして自分から連絡しないんだ?」
野明は顔を上げて不満げな表情を作る。
「だって・・・最初 3回も電話したんだよ、でも繋がらなくて。特にこれと言って用事も無いのにそれ以上電話するのも変じゃない?」
「それでも 3回電話したくなるだけの用事はあったんだろ?」
「それは・・・」
野明は言葉に詰まった。引っ越したことを遊馬から訊きたかった。それだけだったのかもしれない。
でもそれはもう住所を含め緑に聞いてしまった。
電話を掛ける口実がなくなってしまったのだ。
「声が聞きたいだけならそれでもいいんじゃないの? 元気って聞くだけでもいいだろうし、掛けてみればいいじゃないか」
「でも・・・忙しいかもしれないし仕事中かもしれないし」
野明は躊躇する。その様子はやはり嘗てのことを髣髴とさせた。
「迷惑になるかもしれない、と思ってるんだ?」
「遊馬は 私のことなんて気にしてないかもしれないし」
墨勇は溜息をつくと野明の頭を撫でた。
「お前、馬鹿だなぁ。気にしてない相手にわざわざ『待ってろ』なんていわないさ」
「それは私が『待ってる』って言ったから・・・」
「それでも俺なら気に掛けてない奴をわざわざ呼び出して説明したりしないし『待ってろ』なんていわない。それにさ、野明は気にしてるんだろう?『遊馬くん』。 だったらどんな形でもちゃんと伝えたほうがいい。このままだとお前 高校の時の二の舞を踏むぞ」
ずきん・・と心が痛む。
『あの時 躊躇せずに伝えていたら私はこの人と一緒に居られただろうか?』
ふと考えて野明は軽く目を伏せた。
それは考えまいと思う。
今は佐保と墨勇が仲睦まじくあるべきでそう希望したのは自分なのだから。
俯く野明に墨勇が優しく声を掛けた。
「今すぐにとはいわないけどさ、何もせずに後悔だけはするなよ。するならできることをした後にしろ。その時はいくらだって話を聞いてやるし憂さ晴らしにも付き合ってやる。一月はこっちにいるからな」
墨勇の優しさはどこか遊馬に似ている。
遊馬の方がもっとぶっきら棒な感じがしなくも無いけれど。
それでも遊馬は自分にとって特別なのだと、いなくなってからの半月で痛感した。
今 彼を失うのはきっと何よりも辛い。
「うん、頑張ってみるね」
そういうと野明はにこりと笑った。
先程までとは違って少し憂いの晴れた笑顔だった。

多少の観光と夕飯を済ませると墨勇をホテルまで送り野明が帰路に着く頃時計を確認した墨勇が慌ててメールを打ち始めた。
きょとんとして見守る野明に恥かしそうに笑う。
「佐保と約束したからさ、毎日何かしらメールするって。今日は野明の顔見てくるって言ってあるから待ってると思うんだ」
「そっか」
羨ましそうに言う野明に墨勇は苦笑する。
「お前も送ってみればいいじゃないか『遊馬くん』に」
野明は少し考えて「今はやめとく」と笑った。
「そうか」
墨勇はそれ以上そのことに触れる事無くメールを送信すると野明に向き直った。
「今週仕事が無いんだったら時間のあるときに飯でもいかないか?」
「いいよ 予定ないし」
「じゃ また連絡するよ」
「うん またね」
手を振りその場を後にすると寮に向う。
少し気が晴れたような、後ろめたいような複雑な気持ちで野明は電車に乗り込んだ。

遊馬からの連絡は結局今週も無かった。
そのまま何度か墨勇と食事に出たりしている間に準待機が終わり待機任務に入る。
とうとう連絡をつける勇気が出ないまま、遊馬不在の4週間目に入ろうとしていた。

go to next....
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追記

さぁ 墨勇君と野明が語ってます。
遊馬は一体何をしているのでしょうか???
それはまた追々・・・(笑)

ではでは 続きはのんびりおまちくださいね~(^^)

コメント一覧

瞳子 2009年09月02日(水)21時37分 編集・削除

さくらさ〜ん。
のんびり〜と言いつつ、本日2本アップですが…
墨勇クンはやさしいねぇ。背中を押してるし。
野明チャン、頑張れ!!


野明チャン、遊馬クンはうに様のトコに居るよ。(笑)
洋モノの無修正のヤツ見てるから…
って、教えてあげたら、「どーして、そんなトコに行く羽目になったのよぉ」
と、問い詰められました。(笑)
で、逆にシメられました。( p_q)エ-ン

うに様・遊馬クンへ

近々、野明チャン、そちらにお邪魔するようです。


精神的ダメージを強いので、今夜はこの辺りで…
日常シリーズを見たら元気になるかも……

こんきち 2009年09月02日(水)21時57分 編集・削除

すごーい、本日2本UPですね。
私はただ今詰まってますよ(^^;)
墨勇くん、懐かしいし優しいなぁ・・・
頑張ってね野明

昼ドラは、こんきちの地元TV局がよく作ってます。
今後とも昼ドラをよろしくです。(TV局の回し者ではないですよ)

さくら(瞳子様) 2009年09月02日(水)21時59分 編集・削除

>瞳子さま

あははダメージ強いですか☆
すみません~ でも遊馬まだ出てきてないですね~
日常シリーズで浮上します?!
じゃ 一枚何か選んで色塗りしてきますね。
モノクロですが(笑)

さくら(こんきち様) 2009年09月02日(水)22時25分 編集・削除

>こんきちさま

そうそう東○TVの作品はどろどろ感が秀逸ですよね~!
真珠○人とか凄く見てましたよ(笑)
墨勇って私の中では凄くいい人なんですよ~
野明 勿体無いことしたなぁなんて☆
でも遊馬が一番なんですけどねっ!!(^m^)
二本目というか加筆訂正のみなので・・・
軽井沢と同時にUPしなかっただけなんですよ☆
ここからは少し修正しないと辻褄が合わなくなるので・・修正次第かなぁ☆

MEME 2009年09月03日(木)00時05分 編集・削除

なんで遊馬、連絡くれないのかな~?
気になります!

墨勇と佐保ちゃんが上手くいっていて、ホッとしましたvv

さくら(MEME様) 2009年09月03日(木)00時15分 編集・削除

>MEMEさん

遊馬が連絡をくれない訳はこの後わかりますよ(笑)
墨勇と佐保ちゃんは上手くいってると私は信じてますから~♪
略奪されても遊馬至上主義の私が困っちゃうもんね(^m^)

ツッジー 2009年09月03日(木)09時28分 編集・削除

ううううううううううううう・・・。

遊馬よ・・・何故に連絡ないのだ??
放置プレイ???

野明が・・・。かわいそうだ・・・。


墨勇くんはいい男だね!!!
遊馬の次に野明の理解者だ・・・。

さくら(ツッジー様) 2009年09月03日(木)15時58分 編集・削除

>ツッジーさん

その秘密は次回の更新で♪
墨勇はいい人なのです! 少なくとも私の中ではそうなんですよ(笑)

非公開 2019年06月05日(水)03時44分 編集・削除

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非公開 2019年06月16日(日)10時30分 編集・削除

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非公開 2019年06月27日(木)14時51分 編集・削除

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非公開 2019年07月23日(火)11時53分 編集・削除

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