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出張・あんだ〜ば〜EX 〜らん様へ part.1〜


※注意......
 この作品は著者・猫斗犬の作品『あんだ〜ば〜EX』のキャラクタたちが、
いろいろなかたがたの作品に出張してくるという設定を元に書いた作品です。
 ですので、元となる作品を読まないとその作品の面白さは半減すると思います。
 という訳で…みなさん…その作品を読みに行きましょう。
 いいえ!是非、行くべきです!!!!!

 元となった作品:らん様の[ハプニング・ディ・バイ・ディ:1回目]





 出張【前哨戦】

 セイルーン学園・校門──
 さらりとした黒と金色の二色の長髪が風に流される。
『おおっ!』
 そこで、一人の美少女と美女のその姿に男子生徒からため息とも歓声とも
いえる声が一斉に巻き起こる。
「………………」
 ──何でオレがこんな目にいぃぃぃぃぃぃ──
 そんなことを考えながら、彼はゆっくりとその隣を歩く美女の歩調にあわ
せ、自分たちに向けられてくる視線を無視して歩き続けた。
 注目のマトとなっている彼の、情けないやら、悲しいやら、恥ずかしやら
といろんな葛藤を胸に秘めたその表情も何かしら神秘的であり、いつもより
もやけに長くなってしまった髪の毛が、清楚な雰囲気を醸し出す。
 ──く…くそお…あれだけじゃ殴り足りん…帰ったら火炎球ぐらい連発し
ちゃる──
 さて…一帯何がどういうことなのか解らないでしょうから…少し時間をさ
かのぼってみましょうか…


 ここはセイルーン学園がある世界とは別次元に存在している場所──
 『正心流拳法道場』と書かれた道場につながる家屋の一角でのこと──
「…なあ…あいつ、何してると思う…」
 自分の家の台所入口で、ぐつぐつと煮込まれている鍋をにこにこ顔で見つ
める少女を、遠巻きに隠れて様子をうかがう三つの影。
「…いや…何してるって…やっぱし…」
「あれだよにゃあ…」
 台所にいる少女とそっくりな顔を持つ少年の言葉に、一緒に隠れて様子を
うかがっていた少女と少年がそれぞれと答え、ブルリと一つ身震いした。
 そして、
『…料理…』
 こめかみに汗を流しつつ、三人の声が見事にハモる。
 別段、少女が料理を作っているだけでこの三人がこそこそと隠れる必要は
ないのだが、彼女に関してはある意味、別格であった。
 15才の少女は誰が見てもうなずけるだけの美少女。スタイルもなかなか。
性格は明るく、成績は…まあ…普通。笑顔がとても似合う女の子。
 ただ…ただ、難点を言うとすれば、料理の腕は壊滅的だと言うところだろ
うか。
 そしていつもその被害に合うのが、影に紛れる同年代の若者三人だったり
する──
 一人は美少女と一卵双生である兄の達也。
 もう一人はここの家の隣に住む双子の幼なじみの少年、秀一。
 もう一人はここの家の裏側で経営している喫茶店の娘、茜。
 三人は憶えている。彼女の料理の味を。
 最後に口にしたのは、二ヶ月ほど前だろう。その時も三人は彼女が鼻歌混
じりで料理をしている姿を確認している。
 そん時の姿が童話に出てくる魔女が、毒薬を作りだしている姿と、何とな
くだぶって見えたとか…
 そして、口の中に放り込んだ料理に三人は四、五日間寝込んだと言う記憶
が鮮明に残っていたりしている。
「ねぇ…たっくん。おばさんは?おばさんはどうしたのよ」
 喫茶店の娘である彼女と台所に立つ妹には”たっくん”と呼ばれる彼、達
也は、小声での問いかけにふっと表情を変え真っ白な目で彼女を見つめる。
「だいたい、あの子がご飯を作ってるなんて珍しい事じゃない。このままじゃ
あ、せっかくの平和な日々が未知なるウィルスでこの辺一帯、崩壊しちゃう
わよ」
 達也、一つため息。
「…同窓会に出かけてる…今日は遅くなるらしい…」
「うげっマジ?」
「…うん…」
 ちなみに双子の母親は娘の料理の腕を知らない。知っていたら今頃は出前
でも取らせていたはずである。
「じゃあ…おじさんは?」
 今度は幼なじみの少年が、むろん小声で聞いてくる。
「舞が料理の準備を始めたのを確認した矢先、オレは修行の旅に出るとか何
とか言って”浮遊の術”で速攻、飛んで逃げた。今頃は東京湾を泳ぎながら
中国をめざしてんじゃねぇかな?」
 遠い目をして、彼は天井を見上げる。
「まあ、どうせ1週間もたてば中国土産と一緒に戻ってくんだろうけど…」
「いいのか?父親がそんな無責任で…だいたい道場は、弟子達の稽古はどう
するつもりなんじゃい…」
 少女が愚痴る。
「…一様、門の入口に張り紙はしといたけどさ…」
「なんて?」
「警告!!父母留守。<料理>事件発生。即刻帰られたし。本日の稽古は各
自で。”達也”…」
「にゃるほど」
「懸命な処置ね」
 道場に通う者達も二ヶ月ほど前の料理を口にしているので、その張り紙だ
けで十分に理解できる。そう思ったのか二人は納得顔でうんうんと頷いた。
「あ…でも…雪菜と有希姉は?」
 秀一がふと、気付く。
 その二人は達也の4つ下の妹と、9つ上の刑事を職業としている姉のこと
である。
「姉ちゃんなら30分ほど前に電話してきた…」
「何て?」
「宿直だから今日は向こうに泊まるってよ…」
「あれ?今日、当番だったっけ?」
「本当の当番だった人にしがみついて泣き頼んだんじゃねぇのか…家の中で
1番被害をこうむってんの姉ちゃんだし…寝込むことがが解ってて、あえて
そんなことに挑めるような楽天的な仕事してるわけじゃないんだし…」
「…確かに…」
「雪菜は?」
「舞の料理を食べてみたいって言ってたけど無理矢理、友達のところに泊まっ
てこいと追い出しといた。とりあえず…2、3日は帰ってこねぇだろ」
「そういや…雪菜だけ…舞の料理、食べたことないのよねぇ…っと…いうわ
けで…」
「何がというわけなんだ…」
「…無視!あたしはこれで消えるわ…店を手伝わなきゃならないし…」
「あ!オレ、急用思い出した!!」
 逃げる双子の幼なじみ。それが懸命であろうことは達也にも重々わかって
いることであるから何も言わない。そして、どんな事があろうともこの家の
住人である彼は、あの料理を必ず口にしなければならないと言うことも彼は
理解している。
 そして、彼は祈った──明日の命が無事であることを──


 ──夕刻──
 ごぽ。ごぽごぽごぽごぽ。
 そんな、かすかな音を出す皿が彼の前に差し出される。
 一時無言──
「…なんだ?これ?」
「カレーライス(はーと)」
 目を点にしながらぼつりと問いかける兄に妹は即答で答える。
「…は?」
「だから、カレーライスだってば!」
「………………」
 兄貴、再び無言──
 これが?これがカレーライスだと?
 カレーライスって言うけど、どうやってこんな物が出来るんだろうか。確
かにご飯らしき物があるし、ちゃんとそれにはカレーらしき物がかかってる
し、ちゃんと具も見えとる…
 視覚が白黒テレビみたいに鮮やかな色が見えなければ、たわいないカレー
ライスに見えなくもない…
 兄はもう一度、思う。
 何でご飯がピンク色をしていて、カレーの色が紫なんだ?これ、めちゃく
ちゃ不気味すぎるぞ(汗)
 ちなみに、既に煮込みは終えているはずなのに今だカレーはぼこぼこと泡
を発生させてたりするが、彼は錯覚だろうと思考を明後日の方向に追い出し
ている。それは些細なことと振り払って。
「はい。たっくん」
「──あ──ああ──あんが──と──」
 屈託のない笑顔で彼女から渡されるスプーンを、冷や汗たらたらふるえる
手で達也は受け取った。
「残さず食べてね(はーと)」
「…う゛…」
 ──こいつはオレに恨みでもあるんだろうか?──
 とりあえず、達也はほんの少しだけその物体をすくい取ってみる。
 頬に汗が流れる。流れ続ける。
 今まで武術大会に出場して何度も強敵を相手に善戦してきた達也だったが、
そんな時でもこれほどまで汗が流れ出しただろうかと疑うほどに、あふれ出
す。
 にこにこにこ…
 彼を見つめながら、反対側の席で腰掛け笑顔のまま頬杖を付く妹。
 それは天使の笑顔なのか、それとも悪魔の微笑なのか。
 ──えーい…ままよ!──
 そう心の中で唱え、決心した達也は瞳をきつく閉じ一気にそいつに食らい
つ………どしゃあっ!
 が、お約束通りに派手な音と共に椅子から倒れ、彼の意識は暗転した──
そして2日がたち──


 『正心流拳法道場』っと書かれた看板を掲げる道場の隣に、『夢つくし』
という喫茶店がある──
「で?」
 彼の口から美声が飛び出す。
 こっこっこっこっこ…
 頬杖をしながらカウンターのテーブルに指をたたき続ける達也は、舞の言
葉を待っていた。
 ”答えかた次第では、問答無用で火炎球をぶっ放しちゃる”っと言うオー
ラを発散させながら…いや…すでに何度かぶちかましてたりする事実はある
が…
「…っえ…えっと…その…あの…」
 目を伏せてばかりの舞は何か言おうと目を上げ、彼を見ると、再び目を伏
せる。
「いや…こんち…いいお天気で!」
「ほおぉ…言うことはそれだけか?」
「あうぅぅぅぅ〜」
 そうとうおっかない顔をしているようだ。
「きゃー!たっくん!素敵!女のあたしでもほれちゃいそう(はーと)」
「…んふっふっふっふっふっふ…火炎球ぶっ放しちゃおうかなあ〜」
「あう(泣)あう(泣)あう(泣)」
「…だめよ…たっくん…そんなことしちゃあ…」
 この店の娘である茜が口を開く。
「…あ、あかねぇ…」
 舞は両手を胸の前で組み合わせ、茜を神様と言わんばかりの目で見つめるが、
何となく芝居かかったその動作に胡散臭い物が見受けられる。
「…これに魔法を叩き込むのは構わないけど、人の家では控えてもらわないと」
「…茜…ひどひ…」
「人間誰しも自分が可愛いの(ハート)」  
「うん正論にゃ!」
 人差し指1本おったてて言い切る茜に、その言葉にうんうん頷く秀一。
「あら?面白いことしてるじゃい(はーと)」
「どわあああああああああぁぁぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!」
 どが、がしゃ、ごろごろ、ごしょ、ごひ、ごろごろ、ごす!!!!!
「あら?(はあと)どしたの達也?器用ねぇ…ころんだ評しに転がって別の
テーブル席にぶつかって…再び転がって戻ってくるなんて…」
『わ!すんごい美人』
 茜と秀一がはもる。
「わー。エル様だあ〜」
 舞がはしゃぐ。
「いってってってって……って…か…会長!何でここに――――――!!」
「いいじゃない♪あたしが、どこに居ようとも♪
 大体、世界そのものはあたしが作ったものなんだし♪
 それとも文句でもあるのかな―――達也ちゃんは♪」
「いいえ…ありまぜん(泣)」
 彼の目の前にいるのは、絶世の美女の名を冠するに相応しい女性。
 ロード・オブ・ナイトメア。
 彼女の存在を知っているものは、『エル』と呼び、大抵の者たちは怯え、
振るえ、何もせずとも平謝り。
 ほとんどの、神族と魔族たちは、彼女の元で雨乞い(流血)のために踊り
尽くし…声を張り上げ…程よくして昇天する…
 まあ…言い換えると…
 愛用の大鎌でざくざく切り刻まれ──
 それに悲鳴をあげ──
 混沌へと旅立つ──
 ま…彼女の手にかかってお仕置きを受けた存在は数知れず。
 そんなこんなの、恨みつらみで反逆者なんかも生まれたりして…
 …彼…『S.T.S』の”特別級資格者”トラブルコンサルタントでもあ
る達也…と呼ばれた少年は今は少女となっていた。
 達也の妹・舞。
 彼女は壊滅的な料理のもち、なおかつ1ヶ月に1回は未知なる魔法薬を作
るという特技を持ってたりする…まあ…ここ最近は確立が更に高くなってき
てるが…
 その魔法薬っと言うのがまたいろいろで…食べた人物が小さくなったり、
猫になったり…自分の体だけ2倍の重力が働いたり逆になったり…
 体が小さくなったり、魔法がいきなり使えなくなったり…体が強力な磁力
を発していろいろな鉄を吸いつけていったこともあったり…多種多様である
…この料理…どっかで売ったりしたら爆発的に売れるんじゃないだろか…
 そのせいも相成ってか…達也は…2日前の舞手作りカレーによって、年は
18ぐらいの美女に変身してたのである。
「という訳で達也。あんたちょっとあたしと一緒に着いてきなさい…」
「ついてって…何…って…ちょ…ちょ…ちょ…ちょ…ちょっとおぉーー」
 そして現在にいたる──


 という訳で、達也はお仕事で──
「なんで、女になったまんまでー!」
「そのほうが面白いから(はあと)あ!ちなみにその体、固定しておいたか
ら…しばらくは元に戻れないわよ(はーと)」
「あうぅぅぅぅ〜(泣)」
 ──ここ、セイルーン学園に編入することになった。
 多分、ひどい目にあうだけだと思うが──
 ガンバレ、達也!
 行け、達也!
 飛べ、達也!
 戦え、達也!
 読者のみんなも応援してるぞー!
「そんなもんしなくていい!」
 あ、さいでっか…
 
 
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