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剣の 〜the past〜 [2回目]


 遙か昔──
 魔王シャブラニグドゥの最初の1欠片が目覚める、約1年前──
 世の中は平和であった。
 人々は人生を──
 ──喜び──怒り──哀しみ──楽しむ──
 喜怒哀楽をめざし、喜怒哀楽を忘れる。
 だが何かの影響により──魔法が存在するこの時代──
 運命か、神のいたずらか、魔法とは違う不思議な力を持って生まれる者たちが存在した。
 この世に特別な命を受け生まれた者──
 だが、その能力の開花はまれのことであり、その力は開花に共なりその者の運命さえも変えてしまうという。
 その力のため、多くの者は能力を神から授かる力と言い、より多くの者は能力を魔王の印と言う。
 また多くの者は『光』の能力を持つ者を神の子と呼び、またより多くの者は『剣』の能力を持つ者を魔王と呼び恐れた…



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 どだだだだだだだだだだだだだだだ…
「こうらあ!止まらんかい!ミリィ!!!」
 止まれと言われて、止まる馬鹿はいないわい!!
「だから……止まれと言っとろーが!炎の矢(フレア・アロー)!!!」
 ちゅがっごがっどちゅんっ
 足元で爆発する数個の炎の矢。
「だああああああぁぁぁーーー!!!
 街中でんなもん使うなあぁーー!!!!
 ご近所が迷惑するでしょうがあああぁぁーーー!!!」
「やかましいっ!てめぇが止まれば、万事解決だろうが!!」
「それだけはいやあぁ!!そんなことしたら父さんの所につれてかれるうぅぅ〜(泣)殺されるう
ぅぅぅぅ〜(泣)」
 いや…殺される…と言うのは大げさのように聞こえるだろうが…実はこれ、あまりにも冗談になら
ないのだ。
 何せうちの父さんと言えば…
 軽〜いデコピン一撃で世界一の硬さを誇るオリハルコンの塊を粉砕するは…
 たった一言「消えろ」の言葉だけで、大量発生した数百匹のブラス・デーモンを一瞬で消滅させ
るは…
 中級より少しだけ各下の純魔族を針1本で倒すは…
 …なんか…高位魔族とやけに仲いいし…昔はよくゼラス(獣王)さんや…ガーブ(魔竜王)さん
が遊びに来てお酒を飲み交わしてた…
 火まで吹くし………………………………………………………………………………………
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 …まあ…ドラゴンだから、火を噴けるのは当たり前だが…
 そんな人(ドラゴン)のお仕置きを食らって、生きていられるとしたらもう…それは奇跡としか言いようがない。
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 ……………と…言いつつも…何度かお仕置きを食らって…しっかり生き残ってるあたしって一体
……なれとは恐ろしいものである…
「はっはっはっはっは(喜)そうだ!連れて行く!そーして親父にこってり絞られろっ!泣いてっ!
喚いてっ!ひざまつけえぇっ!!」
「にええぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!父さんのお仕置きだけはあああぁぁぁぁぁぁぁーーーー
ーーー!!!!!!!!!!」
「そうだ!それが俺と親父を心配させた罪だあぁ!!!!」
 再び爆発する炎の矢。
 そのため、砕ける歩道。燃える店の品物。慌てる人々。逃げる野良猫。二足歩行で走り去る荷車
の馬。踊る野良犬。燃えるゾンビ………おっ!?
 どだだだだだだだだだだだだだだだ…
 ある女性の横をすり抜ける。
「はっはっはっはっは…」
「はい…そこまで…爆裂陣…」
 きゅごおおぉぉぉぉ〜
「のへぇ〜!!!!」
 天高く空を飛ぶティム兄………あ〜気持ちよさそうだねぇ…
 どごすっ──そして着地は失敗──
 あ…足がぴくぴくいってる…
「まったく…ミリィちゃんをいじめるだなんて…男の風上にも置けない人です!」
「…リ…リリア…あんたまで何でこんなところに…」
 足元でピクピクと痙攣している男の横に立つ一人の美少女。
 流れるような金髪に、宝石をような青い瞳。
 だが、それ以上に特異すべき物は一般人と並べれば、はっきりと差異が解るその透き通った肌で
あろう。
「きゃあぁ(はーと)ミリィちゃん♪ひさしぶりぃ♪」
 その彼女が元気笑顔で、あたしのほうに手をぶんぶかぶんぶか振りまくる。そんな笑顔の裏では
片足でティム兄をげしげし蹴っていたり…
 …追伸……彼女……その〜お…男に興味のない人で……え〜っと…そのかわり女性が好きで……
………だから…簡単に言えば…レズ……なのよ…
「ふっ…私もいますよ…ミリィさん」
 …て…その声……ぐわばっ
「にゅおわあああああぁぁぁーー!」
「お久しぶりです。ミリィさん…」
「ってあんたイーサン…なに、いきなり抱きついて!!」
 むに…むにゅ…
「んにぃひゃっ!」
 突如、胸とお尻からダイレクトに伝わってきた2つの感覚に、あたしは思わずわけの分からん悲
鳴を上げる。
「ああぁぁ〜…懐かしいこの抱き心地…ふくよかな胸に…」
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「あ…いや…ちょっ…あん…」
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 …こ…この…
「変なとこをさわるんじゃないーーーーーーー!!!!」
「てめぇは妹に何をしとるかあああぁぁぁーーーーーー!!!!」
「あたしのミリィちゃんに何してるんですかあぁぁーーーーーー!!!!」
 どごっめぎしっごきょしっ
 あたしと、息を吹き返したティム兄、リリアのトリプル・ストレートが炸裂!!!
 …ぜえ…ぜえ…はあ…はあ…
 むくっ
 彼は何事も無かったかのようにその場に起き上がると、服についたほこりをはたき、
「ふっ…何を照れているんです?ミリィさん(はーと)…わたしたちの一途な愛には、そのような
物はティクアウトですよ(はーと)」
 髪の毛を書き上げながら言い放つ。
「照れてない!完全に嫌ってんの!あたしは!!」
「何が一途な愛だ!女ったらしのくせに!!」
「一途な愛っていう言葉はねっ!あたしとミリィちゃんのためにあるの!」
 …いや…それは絶対にない…
「はっはっはっはっは…相変わらずウブですねぇ…」
『人の話を聞けー−−−!!!!』


「で…ティム兄は解るけど…木の幹をかじりながら、つかの間の平和な生活を好み、のんびりと梅
昆布茶を堪能するのがあたしの生きがいよ!と言いきってたリリアが何でいるの?ここに?」
「…ひ…ひどい…ひどいわ…ミリィちゃん(泣)それじゃあ、まるで…あたしは平和ボケしたドラ
ゴンに聞こえるじゃない(泣)」
 …いや…平和ボケした天然色150%オーバーのゴールドドラゴンじゃないあんたは…
「ふっ…リリアさん…安心してください。あなたはどんな姿をしていても、何をしても魅力的です」
「あんたに言われてもうれしくない!」
 ぶすっとした顔でイーサンから顔を背けるリリア。男嫌いは今だ健在か…
「ドラゴン種族のくせに、美人なら、エルフだろうが、人間だろうが、ワーウルフだろうが、コボ
ルトだろうが手当たりしだい手を出すあんたは何でこんなところにいるかなあ〜」
「ふっ…わたしの大いなる愛は無限なのです。例え、死んでしまっても」
 オーバーなしぐさで訳のわからんセリフを詠うイーサン。
「ほっほー…だったらいっぺん死んでみる?あたしの崩霊裂で?」
「いーや…俺も一緒のダブル崩霊裂でだ…」
「トリプルの間違いですうぅ〜♪」
「いいえ♪遠慮しておきますうぅ♪」
 その時、あたしたちを被う一つの影。
「おぬしら…こんなところで何をやっておるんじゃ?」
 …あ…老将軍ラウンディス…やっぱ…らーちゃんが一番いいや…だった。
 あれ?
 なんかいつもと笑顔が違うような…
「あ…どうもラウンディスさん(はーと)」
 ティム兄が笑顔で挨拶する。
 …………へ?
「地面に座ってお茶なんか飲んで…それにその座布団…どこから…」
「お茶と言えば座布団ですから」
 リリア…それじゃあ…答えになってないって…
「それにティムくん。彼女とは知り合いかの?」
「…あ〜…え……っと、話せば長くなるんですが……ん、……何だ?」
 袖を引っ張るあたしに反応してか、会話を中断してこちらに顔を向けてくるティム兄。
「ねぇ…ティム兄…知ってるの?ラウンディスさんのこと?」
「ああ……って、お前も知り合いか?」
「うん…さっき…ちょこっと…」
「兄?」
「ええ…親不孝者な家出娘の妹です」
「…う゛…」
 いきなり、痛いところを…
 ──家出──
 それは年若い少年少女が慣行する、究極の一大エンターテーメント。
 若き野望の力を逃亡に心血をそそ見込み、親たちに見つからずどれだけ遠くにいけるかを競い合
う鬼ごっこである(大嘘♪)
「…あ…あははははは…んじゃま…そう言うことで…」
「…むわて…」
 逃げようとするあたしを、すかさず、兄は頭をわしづかみにする。
「ええ〜ん…ティム兄…お願いだから今回は見逃してぇぇぇぇ〜(泣)」
「だめだ…」
 ううぅぅ〜…このままじゃあ…連れ戻されて父さんに殺されちゃうよおおぉぉぉ〜
「おや…おや…こんなところにいらっしゃったのですか…みなさん…」
 その声は唐突。
 思わず、あたしたちはその声のした場所へと目を向けていた。
 何もないその空から影が突如わき現れ、かさかさと両手両足をゴキブリのように振り回す、にこ
目で謎に謎を呼ぶ、怪しさ200%割りまし大爆発の変な兄ちゃんが…
「…リリア…」
「なに?ミリィちゃん?」
「いや…そのドラゴン種族だから魔族を嫌うのは解るんだけど…あたしの耳元でナレーションをす
るのはやめて(泣)」
「あら?いやですわ。わたしは別に魔族は嫌ってはいませんわ。ゼロス当人を嫌っているだけですわ」
「…それは納得できるけど…」
「ミリィさん…そこで納得しないでいただきたいのですが…」
「いや…そりゃあ無理ってもんだろオレだって納得してるし♪」
「…ティムさんまで…ひどいです…」
『そうか(そう)?』
 全員でいっせいにハモル。
「…一ついいかの?」
 状況についていけてないらーちゃんが問いてくる。
「なんです?」
「先ほど、こやつのことを魔族と言うとったが…」
「…はい…一家に一台あっても何の役にも立たない生ごみ魔族…のあの魔族です♪」
「…リリアさん…そこまで僕のことを…」
「嫌い(はあと)」
 一見、何が楽しいのか四六時中にこにこ顔の兄ちゃん。こう見えても赤目の魔王の腹心、獣王ゼ
ラス=メタリオムに仕える高位魔族であり…このニコ目で時には怖いことをさらりと言い放ち、あっ
けもないくらいに人を殺すことだって出来ちゃう人(魔族?)である。
「ちなみにあたしたちの父さんは、高位魔族の方々と仲がよく、ちょくちょく、ゼラスさんやガー
ブさん…ダルフィンさんとかが遊びに来てらしたんですよ」
「…あ…ダルフィンさんって紅茶をいれるのが取っても上手なんですよ(はあと)ゼラスさんはとっ
てもワイルドで素敵な方で…きゃ♪」
 あたしの説明に顔を朱に染めながら補足説明を入れてくるリリア。
『…………………………………………』
「…そういや…リリアの初恋ってゼラスさんだって言ってたよね…」
「…だったな…」
「それからですよ…僕がリリアさんに嫌がらせされ始めたのは…」
 ゼロスがぼつりと呟いた。
「…ま…まあ…そういう経緯もありまして…小さかったあたしたちは…ゼロスに遊んでもらって…」
「そうそう…懐かしいよなあ〜……あのゴキブリ叩きゲーム…」
「…生の賛歌ごっこ…」
「…う゛…」
 その言葉にゼロスが顔を青ざめる。どうしたんだろ?
「そん時、ゼラスさんたちが言ってたな…フノカンジョウを肴に一杯やるのもいいもんだなって?
ありゃあ…どういう意味だったんだろうなあ?」
「さあ?」
 兄さんの言葉ににこにこ笑いながら首をかしげるリリア。
 意味わかってるくせに…
「…しくしく…」
 …あ…ゼロスったらうれし泣き♪
「で…ゼロス…お前…ここに何しにきたんだ?」
「あ…それはですね…」
「まってください!」
「何?イーサン?突然」
「ふ…実はですね…私、最近になって特殊な能力に目覚めたんですよ…」
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「…相手の心を読む能力に…」
 …………………………………………………………………………………………………………………
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 …………………………………………………………………………………………………………………
「テレパシーってやつか?」
「ちっちっちっ…そのようなちゃちな物ではありませんよ…わたしの力は相手に触れることをしな
くてもわかるのです」
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 …………………………………………………………………………………………………………………
「ほお…そいつはすごいじゃん」
「そして、この能力は魔族にさえ有効!」
『おおっ!』
 大勢の人たちの驚きの声が轟く。
 あ…いつのまにか回りに人垣が…
「……ただ…」
『…ただ?』
「…ただ…相手の心を読みきるのに10分かかってしまい…魔族さんたちがじっとしてくれいてく
れず、そのままどっかに消えてしまうってことなんですよね…」
『…それじゃあ…駄目じゃん…』
「だが…しかーーーーーし!!!!今回は10分かけてゼロスさんの心を読みました。ずばり!!」
 あたしたちの突込みをよそにイーサンが声を張り上げ、ぽつり…
「……暇つぶし」
『………………………………………………………………』
 …しーん…
「…さ…帰ろっか…」
「…そうね…」
 ………………………………………………………………あ…
「てめぇ!なんだそれは!!」
「時間、無駄にしたじゃないか!」
「ああ!すみません!すみません!」
 イーサンのやつ…一般市民に袋叩きにされてる♪
 良きこと良きこと♪



 
 
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